もたくそ物語 2月17日(月)
その駄菓子屋にはちゃんと「K商店」という名前がありましたが、誰もそう呼んでいませんでした。
「もたくそ行ってきま〜す」と言って玉子たちはこづかいをにぎりしめてその駄菓子屋に通いました。
店番をしているおばあちゃんが「もたもたしているクソばばあ」なので「もたくそ」と言うらしいのですが。。。
いつからそこで商売をしているのかわかりませんが、親子二代でもたくその顧客だったという人もいたので。。。ずっとこの地域のガキのパラダイスだったのだと思います。ときどき「糸つき三角飴」などを玉子にもらったりしました。
遠足の前の日など、もたくその前の狭い道路は子供たちの自転車で埋まります。
決められた遠足おやつの金額内でどれだけ多量の駄菓子を買うか。。。子供たちは
計算しながら駄菓子を買いあさります。
ある日、午後になってももたくその戸が開きませんでした。
「もたくそが死んだ」というニュースはあっという間に地域じゅうにひろがりました。ひとり暮らしのもたくそのばあちゃんは、急病でひとりで亡くなっていたのです。
元気だったころ、もたくそのばあちゃんは売れ残ったミルクパンをノラ猫やスズメに与えていました。いつももたくその前には子供たちと猫と鳥がいました。
もたくそばあちゃんが亡くなって数日後、学校帰りの第三が言いました。
「もたくその前に猫がいた。おすわりしてじっと閉まった戸の方を見ていたよ。スズメもたくさんいた。本当にもたくそ死んだんやね。。。」
それから子供たちはコンビニやスーパーで菓子を買うようになりました。
でも。。。その菓子は衛生的かもしれないけど。。。なんか温かみがないような気がします。
「もたもたしているクソばばあ」失礼極まりない表現だけれど、子供たちは愛情込めて「もたくそ」と呼んでいたのです。思い出をいっぱいありがとう、もたくそ。 |