中待合室で待っていると、ドクターの厳しい声が聞こえてきた。
「あなたはどういう治療をしたいの? 何が希望なの?」
母と顔を見合わせて、「えー、今時こんな先生いるの?」
あんな言い方されたら、患者が萎縮しちゃうよ。
話の内容から、ガンの治療方法について話してるみたいなの。
全然関係ない人に話が聞こえちゃうってのも嫌でしょ。
どうかこの先生じゃありませんようにって祈ってたのに、呼ばれちゃったよ。
見かけは普通のドクターだった。 毛深いのが気になったが。
「うちのSは乳がんで有名なドクターなんだけど今日はいないんですよ。
私でいいのかな?」
「・・・で今日は何を聞きたくて来たんですか?」
「N病院で乳がんと診断されて、木曜日に手術をする予定なんですが
私の場合、手術以外に治す方法がないのかどうか知りたいんです。
もしも、手術をしなくて済むならその方がいいので・・・」
先生は、「ガンは100%治らないんです。」といきなり言った。
なんてこと言うの!って思ったけど、不思議と動揺はしなかった。
自分の中で、”絶対に治す。”って言う気持ちが強かったからかな。
そのあと、乳ガンについて、治療方法について話してくれた。
今までに聞いた話もあるし、初めて聞く話もあった。
先生は、紹介状とフィルムを見ながら
「手術以外の治療方法を知りたいってことだけど
あなたの場合、早期だからまず手術だね。
あのね、手術できるってことは治る可能性が高いってことですよ。
治らない人には、手術を薦めたりしませんから。」
C先生と同じ意見だった。 それを確かめられたので、私は満足であった。
これで安心して手術を受けられる。
それにしても怖いドクターであった。 C先生の良さを再確認できたわぁ。
ここの病院、暗いし古そうだから、ここで手術をするのも嫌だし。
帰りはなんとなく元気が出てきた。
自分の進む道がはっきり分かったからかもしれない。
母とイタリアンのランチを食べた。 当分食べられないもんね〜。 |