さて、ふくである。
外観は何処から見ても日本猫、正統派の三毛猫だ。飴茶色と黒のコントラストがはっきりしている。頭は人間の髪の毛の部分、体は肩から腰にかけて布を掛けたようにその2色が交互に広がっている。お腹面と両手両足はほとんど真っ白と言っていいだろう。
3歳といえば、人間で言えば10代から20代、「ハジケテ」「箸が転んでも・・・・」という年齢か。しかし、ふくにとってはこの家が住む家としては3軒目、一時野外生活を強いられた事も考えると、寝床としては4個所目である。[家につく]と言われる猫にしては、かなり波乱に富んだ猫生を送り、地獄ぎりぎりだって見てるかもしれないのだ。したがって無条件で愛想良い訳が無い。一方、飼い主は変わっていると言われればそれまでだが、所謂[ちょっと無愛想 ]な猫を飼うことが夢だった。誰にでも愛想の良いのは苦手なのだ。しかも、猫は必ず自分になつく、と猫に対しての自信は相当なものだ。
引っ越してきてから、ふくは思いのほかすぐに家に慣れた。飼い主の家には他の猫や犬の臭いが全く無かったからだろう。移ってから数時間後には家の中をうろつき、夜のうちに見事にトイレで初オシッコ、翌朝にはご立派なウンチも済ませた。これで食欲もあるのだから、新飼い主にとって何を他に心配する事があろうか。
しかし、不愛想は一日二日では簡単に直りそうもない。なかなかの外観なのに勿体無い。何だかかすねている。前の家では一緒に飼われていた[エンターテイメント型オス猫]が周囲の注意を一手に引いたいたため、ふくは自分が注目を浴びることにどうも慣れていないようだ。下から睨み付ける、しかも恐ろしい事にちょっと三白眼ぎみ。目付きが悪いときは一世を風靡したあの「What's Michael」ニャジャラのようなのだ。大きく、ぼてっとした体を横たえ「悪いわね、あたしこの場所気に入ったから、あんたはしばらくどこかに座っててちょうだい!」といわれているようなのだ。牢名主?この家を乗っ取られはしまいか?しかし飼い主は誓う、仕方ない、まだこの家に慣れきっていないふくのため、暫くは、そうホンの暫くは[下手にでてあげよう、と。
明日は仕事だ。初めて一日中家を空ける。ふくは大丈夫だろうか?寂しくて泣き喚きはしないか?そして、もしそうなったら近所から苦情が来るだろうか???様々な不安も一つ一つクリアーして行かなければならない。これからふくと長い付き合いなのだから・・・。 |