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泉木修の「百物語」

 
あなたは鳥のように這い、蛾のようにしたたる。
魚のようにまぐわい、兎のようにひりひりと裏返る。

まぶたを縫ってあげよう。
耳もホチキスでとめよう。
眠れぬ夜のために。
 

目次 (総目次)   [次の10件を表示]   表紙

2005-08-24      「聞き耳頭巾」 その二十八
2005-08-22      「聞き耳頭巾」 その二十七
2005-08-21      「聞き耳頭巾」 その二十六
2005-08-20      「聞き耳頭巾」 その二十五
2005-08-19      「聞き耳頭巾」 その二十四
2005-08-18      「聞き耳頭巾」 その二十三
2005-08-17      「聞き耳頭巾」 その二十二
2005-08-16      「聞き耳頭巾」 その二十一
2005-08-15      「聞き耳頭巾」 その二十
2005-08-14      「聞き耳頭巾」 その十九


2005-08-24      「聞き耳頭巾」 その二十八

 
 
 炎はひとときすうと低く静まって。
 
 

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2005-08-22      「聞き耳頭巾」 その二十七

 
 
 さよ。

 吉次は頭巾を取り、いろりの炎に蹴り込んだ。
 
 

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2005-08-21      「聞き耳頭巾」 その二十六

 
 
 ──さよ……。

 吉次のなかでぐるぐると回るものがあった。
 なくなった朱い独楽。母の愚痴。鳥たちのさざめき。
 一人の泣く娘の前に、吉次はただ立ちすくんでいた。
 
 

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2005-08-20      「聞き耳頭巾」 その二十五

 
 
 ──さよ……?

 なにかしら思い違い、なにかしら忘れていたことがあった。
 
 

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2005-08-19      「聞き耳頭巾」 その二十四

 
 
 なにか熱くて優しいもの。激しくてなつかしい色であり光であり匂うような涙。
 
 

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2005-08-18      「聞き耳頭巾」 その二十三

 
 
 ふと、吉次は、気がついた。

 そうだ。聴き耳頭巾をかむればこの唖娘の言いたいこともわかるに違いない。

 吉次は懐から小さな頭巾を取り出した。そして、それをかむったとたん、吉次の胸に流れ込んできたものは。
 
 

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2005-08-17      「聞き耳頭巾」 その二十二

 
 
 ───ど、どうした。さよ、泣くな。

 吉次はうろたえたが唖娘は泣き続けた。

 ───さよ、泣くこたあない。なんでもない。こんなこたあ、なんでもない。

 涙はぽろぽろとこぼれ続けるのだった。
 
 

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2005-08-16      「聞き耳頭巾」 その二十一

 
 
 吉次はいつしか大声を上げていた。聴こえるのは鳥やけものの声だけではない。人もまた畜生なのだ。鳥の心も人の心も変わりはしない。なにもかも小汚い。なにもかもが身勝手で、浅ましい。

 さよは吉次の様子に脅えたような、悲しそうな瞳を向けた。その目から再び涙がこぼれ落ちた。
 
 

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2005-08-15      「聞き耳頭巾」 その二十

 
 
 ───じゃ、な、さよ。おれの話を聞いとくれ。

 それから吉次は話し始めた。
 峠の茶店で旅人の話を耳にしたこと。素晴らしい聴き耳頭巾のこと。不思議な夢のこと。目覚めて手に頭巾を握っていたこと。

 唖娘は震えながら目を光らせて吉次を見ていた。いくぶんいぶかしげに。いくぶん聞き入るように。
 
 

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2005-08-14      「聞き耳頭巾」 その十九

 
 
 さよは口を閉じたまま、しんしんと泣きやまぬ。
 
 

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