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泉木修の「百物語」

 
あなたは鳥のように這い、蛾のようにしたたる。
魚のようにまぐわい、兎のようにひりひりと裏返る。

まぶたを縫ってあげよう。
耳もホチキスでとめよう。
眠れぬ夜のために。
 

目次 (総目次)   [次の10件を表示]   表紙

2005-08-14      「聞き耳頭巾」 その十九
2005-08-13      「聞き耳頭巾」 その十八
2005-08-12      「聞き耳頭巾」 その十七
2005-08-11      「聞き耳頭巾」 その十六
2005-08-10      「聞き耳頭巾」 その十五
2005-08-09      「聞き耳頭巾」 その十四
2005-08-08      「聞き耳頭巾」 その十三
2005-08-07      「聞き耳頭巾」 その十二
2005-08-06      「聞き耳頭巾」 その十一
2005-08-05      「聞き耳頭巾」 その十


2005-08-14      「聞き耳頭巾」 その十九

 
 
 さよは口を閉じたまま、しんしんと泣きやまぬ。
 
 

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2005-08-13      「聞き耳頭巾」 その十八

 
 
 唖娘は何気なく覗いて在り様に驚いたのだ。目を見開いて吉次に歩み寄り、輪を指して首を横に振る。ぼんやり寝そべっていた吉次は、突然の娘の涙にたじたじとなった。

 ───さよ、どうした。んしが泣くことはない。泣かんで、いい。

 さよはいっそう激しく泣き出した。肩を振り、強い目を伏せながら。

 ───泣くな、な。さよや、泣くな。
 
 

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2005-08-12      「聞き耳頭巾」 その十七

 
 
 
 
 
                                         コト リ
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

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2005-08-11      「聞き耳頭巾」 その十六

 
 
 薄暗い吉次の小屋の中。
 梁には縄の輪。
 
 

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2005-08-10      「聞き耳頭巾」 その十五

 
 
 ───うんむ、ぜんたい、どしたちうだ。
 ───もう五日も姿を見せぬ。
 ───気でもちごおたか。
 ───ありゃ、さ。鳥に憑かれたにちがいね。
 ───あんまり鳥にばかりかまうから。
 ───でも、な、鳥の声聞くも嫌がると。
 ───そこらがわからん。のう。
 ───ぜんたい、わからん。
 ───どうしたもんだか。
 ───吉次よう。
 ───……。
 
 

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2005-08-09      「聞き耳頭巾」 その十四

 
 
 おれあ頭巾が欲しい。鳥の話がわかるちう、聴き耳頭巾が欲しい。

 自分の大声に目が覚めた。あたりはまっ暗、暗の暗。しんとして人の気配はない。

 ───なんだ、夢か。どうりで……。

 と、吉次はそこで、汗ばんだ手に握りしめているものに気がつく。

 それは、古ぼけた、小さな頭巾。
 
 

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2005-08-08      「聞き耳頭巾」 その十三

 
 
 ───吉次。おぬしはいつも、心からわたくしの鳥たちを大事にしてくれる。たとい、その住み処のある木を切り倒したとしても、それはおぬしのつとめ、仕方のないことであろう。おぬしが雛の鳴く枝をなるべく残してくれることをわたくしは知っている。鳥たちに代わり、礼を言う。わたくしがおぬしの願いを、一つだけ叶えてあげよう。悔やまぬようおっしゃい。吉次、おぬしの、一番の望みは。
 
 

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2005-08-07      「聞き耳頭巾」 その十二

 
 
 吉次、吉次、と呼ぶ声がある。
 優しい、なつかしいような女人の声である。その声が呼びかける。

 ───吉次、吉次、目をお覚ましなさい。

 はね起きようとするが、体がそっと押さえつけられたようで、どうにもこうにも動きがとれぬ。
 気がつくと枕元に小さな光る女人が立ち、静かに吉次を見下ろしている。

 ───吉次、目をお覚ましなさい。わたくしはこのあたりの、山の神です。
 
 

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2005-08-06      「聞き耳頭巾」 その十一

 
 
 小屋に居て、山に出て、手に慣れた鳥たちの姿を目にし、さえずりを聞くにつれ、これたちの話が聴こえたら、これたちの言うことがわかったなら、と思いつめ、思いつめして、ある夜、不思議な夢を見た。
 
 

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2005-08-05      「聞き耳頭巾」 その十

 
 
 はたしてそんな頭巾が本当にこの世にあるものだろうか。もしもこの世にあるものならば、なんとしても手に入れたいものだと吉次は思う。
 大判小判、山のような宝とあの旅人は笑っていた。そんなものが欲しいのではない。綺麗な娘を嫁にもらって、とも言っていた。そんなことを望んでいるのでもない。
 ただ、ただ、ひたすらに、鳥たちの話がわかったなら、と思うのだ。
 
 

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