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泉木修の「百物語」

 
あなたは鳥のように這い、蛾のようにしたたる。
魚のようにまぐわい、兎のようにひりひりと裏返る。

まぶたを縫ってあげよう。
耳もホチキスでとめよう。
眠れぬ夜のために。
 

目次 (総目次)   [次の10件を表示]   表紙

2005-08-10      「聞き耳頭巾」 その十五
2005-08-09      「聞き耳頭巾」 その十四
2005-08-08      「聞き耳頭巾」 その十三
2005-08-07      「聞き耳頭巾」 その十二
2005-08-06      「聞き耳頭巾」 その十一
2005-08-05      「聞き耳頭巾」 その十
2005-08-04      「聞き耳頭巾」 その九
2005-08-03      「聞き耳頭巾」 その八
2005-08-02      「聞き耳頭巾」 その七
2005-08-01      「聞き耳頭巾」 その六


2005-08-10      「聞き耳頭巾」 その十五

 
 
 ───うんむ、ぜんたい、どしたちうだ。
 ───もう五日も姿を見せぬ。
 ───気でもちごおたか。
 ───ありゃ、さ。鳥に憑かれたにちがいね。
 ───あんまり鳥にばかりかまうから。
 ───でも、な、鳥の声聞くも嫌がると。
 ───そこらがわからん。のう。
 ───ぜんたい、わからん。
 ───どうしたもんだか。
 ───吉次よう。
 ───……。
 
 

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2005-08-09      「聞き耳頭巾」 その十四

 
 
 おれあ頭巾が欲しい。鳥の話がわかるちう、聴き耳頭巾が欲しい。

 自分の大声に目が覚めた。あたりはまっ暗、暗の暗。しんとして人の気配はない。

 ───なんだ、夢か。どうりで……。

 と、吉次はそこで、汗ばんだ手に握りしめているものに気がつく。

 それは、古ぼけた、小さな頭巾。
 
 

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2005-08-08      「聞き耳頭巾」 その十三

 
 
 ───吉次。おぬしはいつも、心からわたくしの鳥たちを大事にしてくれる。たとい、その住み処のある木を切り倒したとしても、それはおぬしのつとめ、仕方のないことであろう。おぬしが雛の鳴く枝をなるべく残してくれることをわたくしは知っている。鳥たちに代わり、礼を言う。わたくしがおぬしの願いを、一つだけ叶えてあげよう。悔やまぬようおっしゃい。吉次、おぬしの、一番の望みは。
 
 

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2005-08-07      「聞き耳頭巾」 その十二

 
 
 吉次、吉次、と呼ぶ声がある。
 優しい、なつかしいような女人の声である。その声が呼びかける。

 ───吉次、吉次、目をお覚ましなさい。

 はね起きようとするが、体がそっと押さえつけられたようで、どうにもこうにも動きがとれぬ。
 気がつくと枕元に小さな光る女人が立ち、静かに吉次を見下ろしている。

 ───吉次、目をお覚ましなさい。わたくしはこのあたりの、山の神です。
 
 

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2005-08-06      「聞き耳頭巾」 その十一

 
 
 小屋に居て、山に出て、手に慣れた鳥たちの姿を目にし、さえずりを聞くにつれ、これたちの話が聴こえたら、これたちの言うことがわかったなら、と思いつめ、思いつめして、ある夜、不思議な夢を見た。
 
 

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2005-08-05      「聞き耳頭巾」 その十

 
 
 はたしてそんな頭巾が本当にこの世にあるものだろうか。もしもこの世にあるものならば、なんとしても手に入れたいものだと吉次は思う。
 大判小判、山のような宝とあの旅人は笑っていた。そんなものが欲しいのではない。綺麗な娘を嫁にもらって、とも言っていた。そんなことを望んでいるのでもない。
 ただ、ただ、ひたすらに、鳥たちの話がわかったなら、と思うのだ。
 
 

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2005-08-04      「聞き耳頭巾」 その九

 
 
 聞き耳頭巾。
 
 

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2005-08-03      「聞き耳頭巾」 その八

 
 
 ただ、空に、二羽の大鴉が北に向けてゆっくり羽根をうつ姿ばかり。
 
 


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2005-08-02      「聞き耳頭巾」 その七

 
 
 もう少し話を聞きたいと吉次は思ったのだが、二人は茶代を払い、笑って去ってしまう。あわててあとを追おうとするのだが、見失うはずのない峠からのつづらおり、いずこに消えたものか行人の姿は見当たらぬ。
 ただ空に二羽の大鴉が北に向けてゆっくり羽根をうつ音ばかり。
 
 

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2005-08-01      「聞き耳頭巾」 その六

 
 
 ───その頭巾をばかむったならば。
 ───かむったならば、なんとする。
 ───んむ、その頭巾をかむったならば、なんと鳥やらけものやらの話がわかるという。
 ───ほう、ほほう。鳥やらけものやらの話がわかる、とな。
 ───なんでも、かでも、その昔。とある果報者がこの頭巾を手に入れての。鶴の話を聴くなどして長者の病をばたちどころに治し、そのうえ宝をば掘り当てて。
 ───ほう、ほほう。
 ───とびきり別嬪の長者の娘御を嫁にして、一生涯、安楽に暮らしたそうな。
 ───ほっほっ。して、その聴き耳頭巾とやら、近頃どこにあるんかのう。
 ───なんでも、かでも、昔のことだて。今はもう、わからん、わからん。
 
 

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