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こひしかるべき


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2007-04-07 何でもない


2007-04-07 何でもない

意を決して、出来る限り万全な策なんかを用意して、会いに行った
私の顔をみた彼は、それまで何も起きていなかったみたいに、ごく普通に「ひさしぶり」と、さらりと言った

短い時間で事が済めばベストだったけれどそうもいかず、人も交え場所も変え、時間はもっと流れる
聞きたかったのは、ただ1つのことだ。

「私はあなたにとって何なのですか」

はぐらかし、はぐらかしで、彼は結論を口にしない
ただ、抱き寄せる腕に力をこめるだけ
ほしいのは感覚じゃなくて言葉だ
きちんとした確証
前は感覚でもいいかと思ったかもしれないけど、こちらは覚悟を決めて来たのだ
ごまかされたくない

最初はあった時間がなくなっていく
―この人は押して動くことがあまりなかったっけ
と無意識に思い出して、思わず言葉がこぼれた、

もういい、わかった、なんでもないんだ

いつ思い出しても、うまい言葉だと思う
あなたにとって何なのか。
答えがないのだ、何でもない

ぴったりの言葉が出て、自分でもはっとした
そうか、なんでもないのか、この人にとって、私はなんでも
もう時間も無駄に出来ない、待ち人がいる
するりと抜け出す

違うよ、と慌てて温かいものが追いかけてきたけど、出て行く用意をする手は長くとめない


しかし、きちんとした答えは聞いていなかった
何かしら引き出さないと、終わろうにも終われない
だから、延々と時間が経ってしまった
ひとに説教しても、自分は出来なかった
でも、今度こそ

最後は心ならずも迫る形となった
「教えて
そうじゃなきゃ、今度こそ永遠にさようならだよ」

でもさ、遠いでしょ
と、ごにょごにょ言う彼を、不思議な思いで見た
今までの約2年は何だ
太平洋を挟んでた時と比べれば、今はなんて近いとも思える遠さ

それがどうした、という顔をあからさまにしていたのだろう
がんばろう、と彼は言った

このひとから初めてまともに聞いた告白だなと思った
時間がたつごとに、このままお別れだと覚悟が決まっていって、頭の中には東京事変の遭難がエンドレスで流れつづけていたのだけど
あっさり続ける方に傾いた自分がいた



恋人未満から、未満がとれた。
かといって、今までとあまり何も変わらない
学生だった頃と比べて、コミュニケーションをとる時間は格段に減って
皮肉にも、理想の男女像を現実にする必要がある
“並び立つ二本の木のよう”

終われないなら、終わるまで続けましょう
行き止まりになるまで
どんなに続けたくても、無理なときは終わりにしかたどり着けない

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