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烏丸の「くるくる回転図書館 駅前店」

 
今後、新しい私評は、
  烏丸の「くるくる回転図書館 公園通り分館」
にてアップすることにしました。

ひまじんネットには大変お世話になりましたし、
楽しませていただきました。
その機能も昨今のブログに劣るとは思わないのですが、
残念なことに新しい書き込みがなされると、
古い書き込みのURLが少しずつずれていってしまいます。
最近も、せっかく見知らぬ方がコミック評にリンクを張っていただいたのに、
しばらくしてそれがずれてしまうということが起こってしまいました。

こちらはこのまま置いておきます。
よろしかったら新しいブログでまたお会いしましょう。
 

目次 (総目次)   [次の10件を表示]   表紙

2000-09-04 『アキオ紀行 バリ』 深谷陽 / 講談社(モーニングKC)
2000-09-04 『KYO』 たかしげ宙 原作,皆川亮二 作画/小学館(少年サンデーコミックススペシャル)
2000-09-03 『ナース』 山田正紀 / 角川春樹事務所(ハルキ・ホラー文庫)
2000-09-03 『これが投手だ!』 別冊宝島編集部/宝島社(宝島社文庫)
2000-09-01 『Heaven?』 佐々木倫子 / 小学館(ビッグコミックス) 現在1巻
2000-09-01 『縄文人は飲んべえだった』 岩田一平 / 朝日新聞社(朝日文庫)
2000-08-31 アン・ドウ・トロワを排して 『アラベスク』 山岸凉子 / 白泉社
2000-08-31 『らんぷの下』『茶箱広重』 一ノ関 圭 / 小学館(小学館文庫)
2000-08-30 『摩天楼のバーディー』(全6巻) 山下和美 / 集英社(Young you特別企画文庫)
2000-08-29 [非書評] Oの謎


2000-09-04 『アキオ紀行 バリ』 深谷陽 / 講談社(モーニングKC)


【ナシチャンプル,サテカンビン,ラワール】

 1995年のまだ寒い時期,というと,まだWindows95が発売されておらず,インターネットも今に比べればぜんぜんメジャーじゃなかったころ。そんなある日,モーニング誌上でこのマンガの連載が始まったときは,正直言ってなんだかよくわからなかった。

 マンガには,暗黙の了解というか,一種の約束ごとがある。視点を四角く線で囲まれたコマ割りで変えていくことや,普通のフキダシが実際に発音された言葉,ギザギザフキダシは叫び声,oO〇で語り手と結ばれたフキダシは心の中で考えたこと,といった具合。
 バリ島に長期滞在する日本人青年アキオの生活と恋を描くこの『アキオ紀行』は,その意味では立派に現代マンガの外見を整えてはいる。よくある海外旅行,滞在をテーマとしたコミックエッセイの類に比べれば,コマ割りは丁寧だし,バリ島の風習や食事をエッセイ風に描くのが主眼かと思いきや,ストーリーもニンゲンカンケイを綾なししっかり動いていく。……しかし,人物,とくに顔の描写がどうも違う。少なくとも,主人公が一目ボレするバリ島の美少女(?)アマリアは,従来のマンガの系統樹のどこにも類似品がない。というか,はっきり言ってゴムでできたオバサン仮面にしか見えない。アジア人の鼻をリアルに描こうとする傾向のためだとは思うのだが。

 これは,ありそうで,案外ないことなのだ。現在のマンガ家というのは,大半,誰か私淑するマンガ家のコピーからスタートし,その先の壁に当たったり破ったりする。だから,誰もが個性的でありながら,誰もが誰かとどこかで手法的に結びついている。アシスタントとして,より直接的な影響を受けることも少なくない。
 それなのに,この深谷陽は,そういった系譜のどこかに結びついているようには見えない。かといって,画学生の類が見様見真似で描いてみた,と想像するには,スクリーントーンをはじめ,マンガの表現技法に手慣れすぎている。

 とかなんとか思っているうちに,お話はどんどん進み,当初は違和感バリバリだった描線もまあこんなものかと慣れてくる。言葉の通じないアマリアとの恋は,やがて……。

 うーむ,単行本になって何度か読み返してみると,思った以上によく出来ている。トゥリマカシイ(ありがとう),スラマッ パギ(おはよー),マカン(食べる)とインドネシア語が身についたつもりになったり,主人公(アキオ)と作者(深谷陽)が全く同一人物と思い込んだりするのは読み手のカルハズミというものだが,それにしても本職不明のアキオは四捨五入すると30歳,「仮面専門の木彫り職人」イ・ワヤン・ムカが「アキオの師匠」。何者なのだ,深谷陽。

先頭 表紙

「あの〜,このコーヒーで,おつりいくら?」「80リラ」 / 烏丸 ( 2000-09-05 16:15 )
スペイン語圏で思わず「あの〜」と言ってしまうとか。 / ぽた公 ( 2000-09-05 10:39 )
タイに行って、「コーヒー」と言わないように。 / 口車大王 ( 2000-09-05 03:19 )
それなら,イタリアで買い物してて,おばちゃんに「これ,いくら?」と聞いたら,その答えが……アッ,いかんいかん。烏丸のイメージが。 / どんなイメージ? 烏丸 ( 2000-09-05 00:27 )
小学校の頃、世界地図を見て「エロマンガ島」というのを発見し、皆で大騒ぎしたことをキンタマーニ山で思い出しました。 / ぽた公 ( 2000-09-04 22:21 )
木彫り職人は、山の上の方に住んでいます。我が家に果物の木彫りがあります。 / 口車大王 ( 2000-09-04 22:14 )
キンタマーニという、お山があります。少なくとも1000メートル以上はあったような。高原は、棚田があって、なかなか美しいところです。でも、隠遁するならタイの方が楽だと思います。日本人とよう似とる。 / 口車大王 ( 2000-09-04 22:12 )
バリ島の高いところの標高ってどんなもんなんでしょうね。 / 隠遁についてちと考えている,烏丸 ( 2000-09-04 19:57 )
PASTI Guest House in Baliなんて見つけたんですけれど、なんかよさそ。 / くっちー ( 2000-09-04 19:18 )
バリには二度行きましたが、何度行ってもいいっす。バリ人は性格が非常に穏やかで、盗難があると「ジャワ人はどこだ!」となるそうです。 / 口車大王 ( 2000-09-04 19:08 )

2000-09-04 『KYO』 たかしげ宙 原作,皆川亮二 作画/小学館(少年サンデーコミックススペシャル)


【闇を 引き裂く 怪しい悲鳴】

 たかしげ宙原作,皆川亮二作画,要するに「スプリガン」のコンビニ寄る,じゃーなくてコンビによる(うう,ベタだ)推理短編集『KYO(キョウ)』ゲット。小学館,500円。

 30代半ばより上の方なら,タケダアワーで「ウルトラセブン」の次に放送された「怪奇大作戦」という番組をご記憶であろうか。「科学捜査研究所(S.R.I.)」という民間組織が警察の委託を受け,怪談めいた説明のつかない難事件に科学捜査と推理,起動力を働かせて立ち向かっていく,なかなかよくできた円谷プロの特撮ドラマだった。子供向きにしてはあまりにも暗く重いストーリー,映像。牧史郎役の岸田森の演技が異様にシブく,トータス号というS.R.I.の車がかわいいのもポイントだった。ちなみにこの烏丸,テーマソングのソノシートはもちろん,欠番扱い(LD-BOXも回収)になった第24話もビデオでおさえてある(問題は,アナログレコードプレイヤーが手元にないことと,βのプレイヤーがいつ動かなくなるかだが……)。
 さて,その往年の名作「怪奇大作戦」を狙ったとしか思えないコミック短編集が,この『KYO』である。主人公はIQ250(なぁんだ,烏丸のたった倍か)にして12歳で学位を3つ取っている天才少年・保科恭と,科学特捜課のお荷物刑事・久我山鏡。この2人が,次々と起こる怪事件,難事件に向かい,やがて久我山鏡の素性も少しずつ明らかになってくる……。
 『スプリガン』1〜3巻あたりの「おおー,そうくるか! この手があったか!」ほどではないが,個々の犯罪がなかなかよく練られており,また,1巻で完結というのがいさぎよくてよろしい(同じ皆川の『ARMS』はちょっと……)。

 ところで,この『KYO』,読み直して巻末の初出に驚いたのだが,なんと掲載誌は小学館の「小学六年生」! 今どきの御ガキ様ドモの読むモノはレベル高いのだなあ。をじさんにも見してくれい。

先頭 表紙

原節子も吉永小百合も夏目雅子も「昭和」ですなあ。 / ぽた公 ( 2000-09-05 22:19 )
ふと思う。岸田森って,「昭和」だなぁ。論拠なし。 / 烏丸 ( 2000-09-05 19:08 )
岸田森といえば『傷だらけの天使』。綾部のババア(岸田今日子)とともに、いい味わいでした。特に最終回はよかったなあ。DVDで出ないかなあ。 / ぽた公 ( 2000-09-04 12:35 )
なんだそうな。お話は,ある機械で頭がパーになったら殺人を犯しても無罪,そのあとでまたもとに戻してもらう,というもの。ウルトラセブンの12話ほどアブないようには思わないんですが(といっても,セブンのだって,言葉がマズいだけですが)。その機械を作った犯人の設定や,囮捜査にはまる岸田森の演技,哀しいBGMなど,むしろ傑作といってよい1話だと思います。 / 烏丸 ( 2000-09-04 11:51 )
へ〜、24話って欠番なんだ。ウルトラセブンの第12話「遊星より愛をこめて」みたいなもんですかね。 / ぽた公 ( 2000-09-04 11:31 )

2000-09-03 『ナース』 山田正紀 / 角川春樹事務所(ハルキ・ホラー文庫)


【おちょくってはいけないもの】

 さて,500万部のベストセラーになった『おたんこナース』である。これは,ハムテル,二階堂らが活躍する『動物のお医者さん』で北大獣医学部の受験倍率を上げに上げたと言われる佐々木倫子が,看護婦経験をもとにしたエッセイ集で知られる小林光恵の原案を得て……おっかしいなあ。烏丸が買ったこの本,文字ばっかりで,コミックじゃないみたい。

 という一人ボケはさておき,山田正紀『ナース』だ。

 まず,復活を果たした角川春樹に,おかえりなさいと言いたい。そうだよな。あのカドカワ映画のラインナップが,『REX』で幕ではサマにならない。そういえば,カドカワ映画のOPは,不死鳥,フェニックスのマークだった。さあ,またあの,「2回見る気にはならないが,1回見る分にはなかなか話題性に富む」作品と宣伝で,邦画界をにぎわしてほしい。詳しくは枕元に立つ信玄のお告げを待つべし。

 続いては,山田正紀。この人は,ヘンな作家。星,小松,筒井に続く世代の代表としてSF界に登場したときは,新人とは思えないストーリーテリングの巧みさと,小松作品を彷彿とさせるスケールの大きさで注目を集めたものだが,『神狩り』をはじめ,当時の代表作はいずれもなぜか日本SFのスタンダードとはならなかった。その後,冒険小説,コンゲーム,本格ミステリと,次々に挑戦し,その都度あっと驚くような作品をものするのだが,今ではそのいずれもが,忘れ去られている。「器用すぎるんだろうなぁ」,と烏丸はにらんでいるのだが。
 最近では幻冬舎文庫で手に入る『女囮捜査官』シリーズの全5巻(触覚・視覚・聴覚・嗅覚・味覚)が実によくできたミステリ・サスペンス作品としてお奨めだ。とくに4巻目『嗅覚』の二階堂黎人の解説が,なぜ新本格の連中が不快なのか,自分たちで証明してくれているという点でポイントが高い。必読ですよ,ぽたりんさま。

 さて,かんじんの『ナース』だが,おそらく,才能あふれる山田正紀,この220ページのホラーごとき,きっと一晩で書けたのだろうなあ。よくもあしくも,そういう出来である。
 カバーから,内容の一部を紹介しよう。「ジャンボ機が標高1000メートルを越す山中に墜落。日本赤十字の七人の看護婦たちが急遽現場へ向かうことになった。そこで見たものは……」
 もの書きには,通常,おちょくってはいけないものがある。15年前のあの事故や,赤十字,そして人間の死体というのが,多分それだ。しかし,山田正紀は平気。もうぶんぶん,「壮絶ノンストップホラーアクション」なのである。500人分が,ちぎれ,もぐれ,飛び,はね,ああもう! なのである。人間数百人分の死体をずたずたのぬちゃぬちゃにさばいたプールで泳ぐような話,とでもいえばよいか。

 SFやミステリには,こういうことはできない。どうしても,理屈に足をとられてしまう。だからホラーは面白い,という見方は可能だろうし,だからホラーはつまらないという言い方も,また,正しい。「それ」が何なのか,「それ」はどうしようとしたのか,どうやってナースたちは「それ」と対抗できたのか。答えなんかない。「いいじゃん」と笑う山田正紀の声が聞こえるような気がする。「ホラーなんだし」。

 ところで,烏丸はこの『ナース』を通勤の電車で読み終えた。電車を降り,家に向かいながら,自分がしきりに,早く帰って手を洗わねばと考えていることに気がつき,愕然とした。別に,何に触ったわけではない。
 そういう本なのだ。『ナース』。

先頭 表紙

「シンジ×カヲル」のような妙なお味のお野菜でございますが、どうぞご賞味あれ。 / ぽた公 ( 2000-09-04 22:20 )
「あらまあ,野菜とお団子の本をいただけるのでしたら,本棚をお片付けしませんと」と家人が喜んでしまうのですわ。 / 烏丸 ( 2000-09-04 21:02 )
そういうことをすると、「くるくる回転図書館 駅前店」に大量の「やおい・お耽美」が届けられることでせう。 / ぽた公 ( 2000-09-04 20:24 )
マスカメ書店に忍び込んで,こっそり本棚に隠し置いてみる。その棚の本を手にするたびに,なぜか手を洗いたくなるぽた様。…… / 烏丸 ( 2000-09-04 19:58 )
あ〜、死んでも読みたくない一品ですなあ。 / ぽた公 ( 2000-09-04 17:57 )
集英社文庫『寄生虫博士の中国トイレ旅行記』(鈴木了司),先週ゲットしたばかりですわ。 / 烏丸 ( 2000-09-04 17:27 )
ああ、オーテマチエンヌさんのチベットで思い出しちゃった。中国のトイレの話でした。 / ぽた公(身震い) ( 2000-09-04 17:11 )
椎名誠のは……なんでしょう? そんな,内容的に「無性に手を洗いたくなる本」をたまたま古本屋で,それもたまたまあまり綺麗とはいえない状態で手に入れて読んだ場合は,さすがに「しまった」と思います。プラシーボ効果? / 烏丸 ( 2000-09-04 12:44 )
話は変わりますが、無性に手を洗いたくなる本、ありますよね。それが何だったかについては、思い出したくないのですが。椎名誠でも一冊あったんだよなあ。なんだったっけかなあ。 / ぽた公 ( 2000-09-04 12:34 )
そういうことを気にしていたら,烏丸の好きな一連の中公文庫など,紹介できません。このサイトに限らず,あの路線で盛りあがるサイトなんて,そう多くはないだろうし(笑)。しかし,なんにしても不愉快ですわよお,二階堂黎人。 / 烏丸 ( 2000-09-04 01:03 )
しかし、このサイトではミステリはほとんど見向きもされませんので、本格だ新本格だ島田派だと言っても誰も興味を持ってくれないのでしょうね。でも、二階堂の解説は立ち読みしてみます。 / ぽた公 ( 2000-09-03 12:29 )

2000-09-03 『これが投手だ!』 別冊宝島編集部/宝島社(宝島社文庫)

【闇の昭和史伝】

「で,烏丸さん,次の1冊ですが」
「そうですな。これは1999年10月に宝島社から発行された『別冊宝島471号 大投手黄金伝説』の改訂版」
「ほう。黄金伝説。となると,金田,米田,稲尾,江夏,鈴木,山田,野茂……いや,楽しみですな」
「ところが,残念ながら前半は現役投手,上原(巨),石井(ヤ),黒木(ロ),斉藤(横),岩本(日)らが中心」
「やや。それでは,エースとして歴史に残るかどうかも当落線上の,ただの好投手陣ではありませんか」
「そう。最近は,先発なら『エース』,抑え役なら槙原でも『守護神』と。大バーゲンですな」
「なるほど,言葉が軽い」
「ですから,本書の場合,インタビュー内容も,まだ薄い壁を一度か二度乗り越えた程度の,若手の苦心譚に過ぎません。あるいは,後半の歴史上の名ピッチャーを扱った記事も,なにしろ書いたライターの側が若くて,実際にその投球を見てないで書いているのがもう明らか。たとえば大野豊を扱ってもあのフォームの躍動感には触れていないなど,内容的には記録とインタビューを無理に積め込んだごった煮に過ぎない」
「それでは興醒めと申しますか」
「そこで,ここでは,プロ野球に関わる,昭和史の秘話を少々ご紹介しよう」
「秘話。それは楽しみですが,いったい」
「うむ。1959(昭和34)年6月25日,巨人阪神11回戦。昭和天皇がただ一度プロ野球を観戦した,いわゆる天覧試合。昭和の英雄長島茂雄が阪神村山実からサヨナラホームランを打った,あの試合であります」
「手元の読売新聞,翌日の朝刊によれば,『両陛下ナイターご観戦 長島選手にニコニコ 五ホーマー−体を乗り出す』」
「ところが,この烏丸,この試合に重大な疑義がある」
「あのホームランはやっぱり,ファールだった,と」
「いや,そんな甘やかなものではない。昭和史の最暗部に属す,世にも恐ろしい陰謀です」
「陰謀,ですか」
「そう。話は少々飛ぶが,1989(昭和64)年1月,昭和天皇崩御」
「我々昭和人としては,天皇制の是非は別として,忘れられない出来事でありますが」
「その年,さる筋の指揮により,各界の主だった人物が昭和天皇の御供,つまり贄として暗殺された」
「なんと。それは穏やかでない」
「いやいや。昭和64年,すなわち平成元年に亡くなった顔ぶれを見てご覧。経済界からは松下幸之助,芸道から美空ひばり,漫画家では手塚治虫。いずれも昭和の時代を代表する人物ばかり。吉田茂や力道山,川端康成,湯川秀樹らはもう亡くなっておりましたし」
「おお」
「暗殺には,名前は出せませんが八瀬童子縁故のある人物があたった。相撲界からは大鵬,若乃花とどちらがという議論の末,少し遅れて栃錦清隆すなわち春日野理事長が翌1990年1月10日に亡くなって,大葬の礼に間に合わせている」
「うーむ。それは」
「しかし,ここで注目していただきたいのは,ではなぜプロ野球界から誰一人大物が選ばれなかったか。本来,昭和を代表する人物として,長島茂雄ほど御供にふさわしい人物はないはず」
「言われてみればその通りですが」
「いや,そもそも,昭和天皇が長島の天覧ホームランを本当に心からお喜びになられたのなら,なぜ天覧試合は二度と設けられなかったのか。警備が難しい,ということになっているが,相撲はあのようなオープンな場で何度もご覧になっているわけです」
「ふーむ」
「これらの事実は,すべてある1つの事実を指し示している」
「そ,それはいったい」
「昭和天皇は………実は熱烈な阪神ファンであったのです!」

先頭 表紙

松坂でも可。 / 口車大王 ( 2000-09-04 19:23 )
近鉄 vs ロッテの天覧試合があってもよいと思う……。黒木のシュートを中村が振り切る映像が平成の逸話として残る。 / 烏丸 ( 2000-09-04 01:07 )
そうか.阪神が弱いんで,展覧試合がなかったんだ. / 八百八 ( 2000-09-03 11:44 )
あ、ジャイアンツの松井といっしょだ! / 口車大王 ( 2000-09-03 09:02 )
しまったなー,『これが投手だ!』 ,表紙をスキャンする前に速攻で棄ててしまった。ま,いっか。 / 烏丸 ( 2000-09-03 00:06 )

2000-09-01 『Heaven?』 佐々木倫子 / 小学館(ビッグコミックス) 現在1巻


【減塩30%】

 『おたんこナース』はなんと累計5000000部売れたのだそうだ。その上この5月から通常の単行本サイズで新装刊。いずれは小学館文庫にも収録されるだろう。よい商いであると認めること,やぶさかではない。
 それはともかく,この烏丸,ここ数年身内にホトケが頻発し,おまけに自らちょいと無粋な精密検査が相次いで,はっきり言って病院,看護婦モノで笑える気分ではなかった。従って,雑誌でぱらぱらとしか見ていない『おたんこナース』はパス。で,新作の『Heaven?(ヘブン)』である。

 舞台は「この世の果て(ロワン ディシー)」という名のレストラン。
 どの駅からも,繁華街からも,住宅街からも,利益からも遠く,なによりも理想のサービスから遠かった……しかし,この不景気の盛りにフレンチレストランが舞台と言われても困るが……まあ,影の薄い主人公・伊賀観をはじめ,登場人物たちも困っているようだからいいか。
 なぜ困るか。まず,先に紹介したようなロケーションである。しかも墓地の真っ只中。集められたシェフ,店長,ソムリエたちたるや……いや,そのあたりまで詳しく書いてしまっては興を削ぐことになろう。それよりトドメはオーナーである。漆原教授を若い女性にしたような。や。これも書きすぎてはまずい。

 ともかく,佐々木作品の場合,この第1巻前半のように加害者がはっきりしている話はまず間違いなく笑えてよろしい。漆原教授しかり,菱沼聖子しかり。
 もっとも烏丸が佐々木作品で最も好きなのは,加害者でなく,被害者がはっきりしている作品なのだが。たとえば『代名詞の迷宮』の山田の猫の買主であるとか……。

先頭 表紙

烏丸が平気なのは本の中だけ。ナマものは魚もさばけません。 / 烏丸 ( 2000-09-04 17:25 )
私、死体も寄生虫も苦手です。「くさったしたい」なんて怖くて怖くて。だから、ドラクエもあまりやりません。今回のドラクエにも「くさったしたい」は出てくるんですかねえ。 / 怖がりぽた公 ( 2000-09-04 16:55 )
ちなみに,ずっと読んでなかった『おたんこナース』も,新装刊のほうで買って読んでいます。が,やっぱり何編かある「告知」ものが笑えない。『動物のお医者さん』や『Heaven?』 のほうが,烏丸的にはよいです。 / 死体の本は平気なのに,烏丸 ( 2000-09-04 15:37 )
私もスピリッツは買っていません。月曜日はポストか現代なんですね。 / 烏丸 ( 2000-09-04 01:05 )
伊賀観の母親って出てきましたっけ? あ、スピリッツで追いかけてるから先行してるのかな? 週刊誌まったく買わないもんで^^; / ぽた公 ( 2000-09-04 00:40 )
伊賀観母がすごかった。 / 口車大王 ( 2000-09-03 19:20 )
『おたんこナース』のことだと思っていたら、見事な二段落ちでした。参りました。 / ぽた公 ( 2000-09-03 12:30 )
このあと,『ナース』の書評を予定しております。 / 烏丸 ( 2000-09-03 00:07 )
買ってきましたぜ、カラスマル先生。これで何冊目のカラスマル文庫やら。オーナーは確かに漆原教授と菱沼聖子を足して2で割らないような人ですね。しかしまあ、最終頁を見ると、またまた綿密な調査を敢行しているようですな。1巻序盤で「もうフレンチ食べたくない!」とオーナーが叫ぶシーンは、佐々木倫子の気持ちそのままなのではないかと。あと、「消防マンね、そうね、わかるわ、彼は結婚できるんじゃない? そうねえ、そうかしら」には笑ってしまいました。 / ぽた公 ( 2000-09-02 11:54 )

2000-09-01 『縄文人は飲んべえだった』 岩田一平 / 朝日新聞社(朝日文庫)


【ジョーモンの奇妙な冒険】

 このところ,コミックに偏りすぎたかもしれない。猿より深く反省し,少し違うジャンルの本を取り上げることにしよう。よっこらしょ。なに? 本棚の本かかえるのに声が出るようになったらもう年だ? ……ほっといてくれ。

 え,さて。
 インプリンティング(刷り込み)が起こるのは子ガモに限った話ではない。不肖この烏丸,いまだ地球の人口は36億人だし,1$は360円(だからトヨタパブリカはぴったり1000$)。イグサ日本一が岡山県なら007はショーン・コネリー。無論スリランカはセイロン,ミャンマーはビルマだし,邪馬台国は北九州にあって,縄文人は狩猟採集,コメなんて口にしたこともない,はずであった。
 ところが。近頃の縄文人は,どうもそうではないらしい。水田耕作こそしていないものの,コメを含む畑作に励み,食事は栄養的に優れ,ヤマブドウやサルナシを発酵させた酒まで飲むのだそうだ。しかも,弥生時代以降と違い,当時日本には下戸はいなかったというのである(*1)。

 岩田一平(*2)の『縄文人は飲んべえだった』は,バイオ,CGなどの最新テクノロジーが古代史研究を塗り変えていく,そのあたりの経緯を丁寧に教えてくれる。下戸(ALDH2不活性型)の遺伝子やイネの遺伝子の解析,コンピュータを活用した言語分析,水銀鉱脈の分布と邪馬台国の関係(*3),タコ壺漁の消滅からうかがえる気候の変化,あるいはクソ石にごく微量残っている脂肪酸から明らかになる食生活。これらの研究から,日本人のルーツ,古代人の食生活,日本国の推移が少しずつ明らかになっていく。読み手の古い常識が覆される楽しみと,明らかになっていない史実への尽きない興味。

 著者は,1つの説に固執するより,さまざまな説が入り混じった状態をよしとするタイプなのか,わからないことはわからないと率直に手を上げる。
 新刊の『珍説・奇説の邪馬台国』(講談社)でも,「魏志倭人伝」の表記だけでは邪馬台国の位置は特定できないと説き,70にもおよぶ邪馬台国候補地からジャワ島説,新潟説,山陰説,岡山説,四国山上説などかなりアクの強いものを取り上げ,現地を訪ね,あげく「奮起せよ,全国の邪馬台国」と呼びかける(*4)。
 つまり,社会派邪馬台国,ユーモア邪馬台国に対して新本格邪馬台国派が台頭,日常の謎邪馬台国,妖怪問答邪馬台国の一方,すべてが邪馬台国に……う,うざい。

*1……『孤独のグルメ』の井之頭五郎の先祖は,つまり弥生時代以降に大陸から渡ってきたことになる。

*2……「週刊朝日」副編集長。少し前のデキゴトロジー欄には,ゴキブリのフライを食べている氏の写真が掲載されていた。仕事とはいえ,同情を禁じえない。

*3……『縄文人は飲んべえだった』の次のような一説は,『陰陽師』の読者にも興味深いのではないか。「全国には,丹生(にう)という地名や丹生神社という名前の神社が数多く点在している。『丹生』は『丹を生ずる』という意味であり,古代に辰砂の採掘を行っていた名残と考えられる。(中略)中でも鉱脈の豊かな大和水銀鉱床にある和歌山県の丹生都比売(にうつひめ)神社には,丹生都比売のお使いのシカが,高野山の開祖の弘法大師空海を高野山に導いたという伝承がある。」

*4……こすもぽたりん氏の「神田マスカメ書店」で紹介された鯨統一郎『邪馬台国はどこですか?』も,牽強付会ながら笑えない,と紹介されている。意外にも(失礼),本格者より考古者のほうが懐が深いのか。

先頭 表紙

「近頃の縄文人」というフレーズがなんともナイスでございますなあ。 / ぽた公 ( 2000-09-01 14:02 )
いえいえ,日ごろのつっこみのご愛顧に比べれば,千里の道も縄文人の川流れでございますわ。 / 烏丸 ( 2000-09-01 13:34 )
拙文をご紹介いただき、まことにありがとうございます。 / ぽた公 ( 2000-09-01 12:02 )

2000-08-31 アン・ドウ・トロワを排して 『アラベスク』 山岸凉子 / 白泉社


 先の一ノ関圭『らんぷの下』書評にて,漫画を捨てることができたことについて,一ノ関が

 「その何かを描くために苦心惨憺するうちに,その主題がさらに深化し,あるいは変貌する,その過程を知らないということである。」

と述べた。あるいは

 「ある日巧い歌手の真似をしたら素晴らしく歌えてしまった歌姫にとって,歌を歌わないことには先に進めない切実さはあるだろうか。歌を歌えなくなることへの恐怖はあるだろうか。」

とも書いた。
 そうではない作者,作品の1つの例として,『アラベスク』を紹介しておきたい。

 『アラベスク』は山岸凉子デビュー2年目の連載であり,文字通り出世作といえる。山本鈴美香『エースをねらえ!!』と並ぶ少女漫画,スポーツ漫画の古典の1つであり,くだくだしい説明は省く。

 『アラベスク』では,それまでのバレエ漫画伝統の掛け声だった「アン・ドウ・トロワ」がついに一度も書かれなかったことを最初に指摘したのは飯田耕一郎である(「ユリイカ」臨時増刊「総特集少女マンガ」,青土社,1981年)。
 決して絵が巧いわけではなかった当時の山岸凉子は,どれだけ意識的だったかはともかく,「アン・ドウ・トロワ」という掛け声に代表されるバレエもの「っぽい」描写をすべて退け,主人公ノンナを描くにあたり,「アダージオ」「グラン・フェッテ・アン・トールナン」「ロワイヤル」「アチチュード」等々の厳密な用語,フォームをもってすることを自らに課した。それは結果的に,作者をして逃げ場のない本格的な表現者として漫画に向かわせ,『アラベスク』は連載当初には予想もできなかったあらゆる問題を内包しつつ,表現者ノンナと表現者山岸凉子を引き上げていくこととなる。

 たとえば,第1部におけるノンナの強力なライバル,天才少女ラーラは,たった一度の敗北に,ボリショイのプリマバレリーナという地位を捨ててしまう。

 「ほんとに悩み苦しんでそれこそ石にかじりつかんばかりにして地位を得たものはどんな障害があろうともその地位を決して捨てやしない」

 「彼女はいまの地位をとんとん拍子に手に入れた なにひとつ苦しむことなくそれこそ天才という名にふさわしくなんの困難もなくだ」

 そしてノンナの前に開かれたものは,

 「この道は永遠に良しということのない苦しみの道なのだが 扉を開いたからには進まなければならない」

 この言葉はそのまま表現者たる山岸凉子の宣言でもある。

 そして『アラベスク』は,あろうことか,通常のスポーツ漫画なら1幕の決着にあたるこの瞬間から,ある意味本当の物語,それも勝敗などという安直な結末では語りきれない物語をスタートさせる。そしてそれは若く健康な「女」性であるノンナの個と肉体の表現者であることの拮抗の上に止揚する,文字通りの(しかし苦々しい)成長物語なのだが,ここではその第2部について触れる余裕はない。

先頭 表紙

…………………………  (← 綾辻あたりの探偵の口調を思い出そうとしているが,さっぱり出てこない) / 烏丸 ( 2000-09-01 13:35 )
はっはっはっは、ボクはすべてを知っているのさ、関口。なんたって名探偵だからね。大手町駅から地下駐車場を通って幻の「丸の内駅」へ行くのだ。そこで本屋が待っている。さあ、さっさと憑き物を落として帰るぞ。おなかぺこぺこのぺこちゃんだ! / 榎木津ぽた次郎 ( 2000-09-01 12:37 )
甘い,甘いぞ御手洗ぽたりん。島田掃除(ママ)の名を出しておきながら,表紙のスキャン画像のチェックを怠るとは! アラベスクを踊る手の長いダンサーの手足,ここに秘密が隠されている。この表紙は,実はあの複雑な大手町の地下道を表しているのだ! / 有栖川烏丸 ( 2000-08-31 18:25 )
なるほど。トリックの鍵は「バレエ」と「バレー」。うむ、島田掃除(ママ)も納得。書名は迷わず「苦しくったって殺人事件」なのですわ。オチは「だって、涙が出ちゃう。女の子だもん」と来るのですわ。あ〜あ、格調高い書評が台無しなのですわ。 / こすもぽたりん ( 2000-08-31 16:32 )
舞台は山荘から孤島に移り,ライバルが一人ずつ死んでいくのですわ。最後の一人は,砂浜で発見され,探偵はそこではじめて気がつくのですわ。「あっ。すると,バレエはバレエでも,これはビーチバレエ!」。なんの話をしていたんだか,はりゃりゃんなのですわ。 / 烏丸 ( 2000-08-31 16:10 )
「アン・ドゥ・トロワ」とともにバレエのお約束と言えば「トゥ・シューズの画鋲」と「床に撒かれたワックス」。そして傷心ののプリマドンナはとある山荘へ。しかし思いもかけぬ大雪で山荘は孤立、気がつけばライバルが暖炉の前で撲殺され、壁には血文字で「グラン・バットマン」。難しい事件だ。ここはやはりバレリーナ探偵・二階堂蘭子様の登場を待つの「ですわ」。(サイバラ的ぶち壊し突っ込みですんまそん^^;) / こすもぽたりん ( 2000-08-31 15:07 )

2000-08-31 『らんぷの下』『茶箱広重』 一ノ関 圭 / 小学館(小学館文庫)


【二十九でこれだけの仕事です。実におしい…】(作中,美術商が青木繁の死を惜しんで曰く)

 この6,7月,一ノ関圭の代表作が文庫でも入手できるようになった。小学館文庫の『らんぷの下』『茶箱広重』の2冊である。

 実力派漫画家・一ノ関圭が登場したのは1975年。青木繁の存在に苦しむ売れない洋画家の苦悩を堂々たる筆致で描いた『らんぷの下』が第14回ビッグコミック賞を受賞。その後,黒田清輝率いる白馬会の裸体画モデルお百と,挫折して消えていった画家を描いた『裸のお百』をピークにいくつかの作品を発表するが,1986年の『ほっぺたの時間』を最後に漫画の新作はない。

 一ノ関圭作品の特徴は,第一に白土三平の影響を強く受けた骨太な表現力にある。そのダイナミックな筆致と確かなデッサン力は,漫画の歴史を俯瞰してもそう見受けられる水準でない。
 第ニに,『らんぷの下』『裸のお百』,さらに二代広重を描いた連載『茶箱広重』に見られる,江戸・明治期の画家の生活や風俗に対する資料の裏付け。江戸といえば『合葬』『百日紅』の杉浦日向子だが,一ノ関圭はさらに写実的な描線だけに,時代考証がさぞや大変だったろう。
 第三に,作品に登場する,しなやかな肉体と精神を併せ持つ,強い女の生き様。そしてその強さをもってしてもあがないきれぬ,時代と運命の壁。
 実際,ビッグゴールド誌に一挙100ページ掲載された『裸のお百』を見たときは,そのあまりの水準に鳥肌が立ったものだ。本作は切り抜いてカバーで覆い,20年経った今も大切に保存している。

 ではなぜそれほどの漫画家が,のちにペンを絶ってしまったのか。『らんぷの下』に寄せられた林望氏のエッセイ「三つの謎解き」に,思い当たることがあった。
 林望氏は,一ノ関圭の画力と「女」の描き方について,前者には東京芸大の油絵科の学生であったこと,後者には作者自身が女性であること指摘し,謎の解としている。だが,待て。それは逆に,一ノ関圭の漫画家としての限界を示すものではないか。デビュー時点であり余るデッサン力,表現力を持つということは無論大きな強みではあるが,同時に総合メディアである漫画において,最初から「かなりなんとか出来てしまう」ことでもある。また,林望氏は一ノ関圭が女性であることについて「なーんだ,そうだったのか。(中略)だから,これほど深いところまで血の通った『おんな』が描けたのだろう。」とする。これは一ノ関圭が,自分自身「女」であるという経験や資質のみから「女」を描いたと感じられる,ということではないか。
 それはすなわち,内なる何か不明解なものの出口として漫画を選んだのではないということである。また,その何かを描くために苦心惨憺するうちに,その主題がさらに深化し,あるいは変貌する,その過程を知らないということである。

 たとえば,ある日巧い歌手の真似をしたら素晴らしく歌えてしまった歌姫にとって,歌を歌わないことには先に進めない切実さはあるだろうか。歌を歌えなくなることへの恐怖はあるだろうか。
 もちろん,これは全くの想像に過ぎない。一ノ関圭がペンを置いたのには全く別の,明らかな理由があったのかもしれない。しかし……彼女がいくつかの作品で描いてみせた画家たちは,いずれも,自分が何を描くか,いかに描くかばかりに腐心し,最後まで,誰に何を伝えるかを考えない職人であった。それは画家としての1つの資質ではある。しかし,そういった画家がいつか絵を棄てられることは,また,一ノ関圭が描いてみせた通りなのである。

先頭 表紙

この人はねー,ペンはうまいんですよ。しかし,ねー。 / 烏丸 ( 2000-09-03 00:05 )
あ〜、やっと見つけました。両方ともありましたぜ。ふ〜、暑かった。 / ぽた公 ( 2000-09-02 22:29 )
はいはい,「金松堂」でございました。「北」「てんや」も確認しました。ちなみに「金松堂」はB1が文庫コーナーで計3F分でありました。 / 烏丸 ( 2000-09-01 22:23 )
一ツ木通り沿いの2階建ての本屋でございます。隣が天丼「てんや」。その向かいの麻雀「北」に時折出没しております。黄色い看板です。「ぺー」ではなく、「きた」です。そこで食べる冷やし納豆うどんは格別です。橋場という店からの出前なのですが、橋場で食ってもうまくないのに、出前だとうまいのです。 / ぽた公 ( 2000-09-01 19:12 )
それはウルトラマンの背中のほうの本屋(1Fのみ)だったかしらん? / 烏丸 ( 2000-09-01 17:24 )
「金松堂書店」でございましたっけ? / ぽた公 ( 2000-09-01 14:03 )
それは残念。円通寺坂下って右の書店2Fには『らんぷの下』,今日もありましたのに。 / 烏丸 ( 2000-09-01 13:32 )
売ってなかったっぴ〜。悲しいっぴ〜。 / ぽた公 ( 2000-09-01 10:25 )

2000-08-30 『摩天楼のバーディー』(全6巻) 山下和美 / 集英社(Young you特別企画文庫)


【老いてなお,否,老いてこそ】

 少し前に文庫化が完了した『摩天楼のバーディー』(全6巻)。作者は『天才柳沢教授の生活』の山下和美で,こちら(バーディー)もなかなか面白い。
 古いアパートメントの最上階に住む「なんでも屋」のトキオ。長髪,タトゥー,細く鋭い目で危険な男にしか見えない彼が実は……という設定で,彼の仕事がらみでさまざまな事件が起こり,それが解決するまでの悲劇,喜劇を描く読み切り型連載。

 全体のストーリーはそのアパートメントをめぐるトキオの成長譚,恋愛譚にもなっているのだが,実のところ主人公以上に,いくつかの事件に登場する老人たちの心の問題のほうが生々しい。なにしろ事故で家族すべてを失い,今さらに記憶を混濁させた独居老人,孫にきたないと言われてしまったもと女優,そんな人々が次から次へ,しかも実に印象的に登場するのである。

 2巻以降ギャグ漫画であることから足を洗ってしまった『柳沢教授』でも「引退」や「老い」はたびたびメインテーマとして取り上げられており(モモを犬にやる先輩教授の老いっぷりはことにすさまじい),この作者が老いというテーマについて非常に強いアンテナを持つこと,またそれを十分描けるだけの筆力があることをうかがわせる。それも単に老人を引退者としていたわる話でなく,あるときは厳しく突き放し,あるときは描かれる対象が老人であることを忘れる,といった塩梅なのである。悲惨な老い,栄光の老い,ただ延長線上にある老い。老いへの抵抗,老いへの誘い,老いへの無頓着。
 人は誰しも老いる。当たり前のことなのだが,意外と少年誌,青年誌,女性誌いずれでも,老人を老人としてきちんと描ける作家は多くない(老婆を描いて抜群なのは高橋留美子だが,高橋の老婆は絵柄だけ,の場合も少なくない)。

 山下和美には,ありきたりの恋愛モノより,とりあえずこの「老い」というテーマを今後とも突き詰めていってほしい。また,このように老人を正面から描くことは,今後のコミックの1つの大きな潮流となるような予感もしないではない(たとえば老人の生計,恋愛,結婚,離婚,セックスなど)。
 なにしろ,マンガの描き手も読み手も,そこらの元気のよいおにいちゃんもおねいちゃんも,よほどの疫病の流行や戦争でもない限り,たいていはこれからただどんどん年を取っていくのだから。

先頭 表紙

烏丸は,最近のスーパーマン化しちゃった教授その人より,周辺の「老嬢」「老教授」たちのほうが好きざんす。弘兼憲史は面白いざんすが(実際,本棚1段分以上持ってるざんす),あの方,ときどきズルというか,一番キツいところをパスしちゃうのが。 / 烏丸 ( 2000-08-30 15:23 )
柳沢教授、けっしてギャグだけでなく、教育問題についても、ものすごくするどい突っ込みを入れています。一時期大学職員でもあった口車、大学の裏側を見ていますので、「をを、よくここまでするどく突っ込むものだ。」と感心する瞬間があります。あと老いを追いかけ始めた漫画家が、弘兼憲史ですね。 / 口車大王 ( 2000-08-30 14:01 )

2000-08-29 [非書評] Oの謎


【夏休みの感想文特別支援編】

 20世紀最後の夏休みも残すことほんの数日,宿題の自由研究,図画工作,感想文のでっち上げに追われる小・中・高校生の親御さんも少なくないことだろう。ここではそんなお父さんお母さんのため,1時間で仕上げられる感想文の便利な素材,O・ヘンリーをご紹介しよう。

 まず,作者の経歴から。
 O.Henry(1862〜1910),アメリカの短編作家。本名はWilliam Sydney Porter。10代半ばで学校を退学,さまざまな職に就くが,オースティンの銀行勤務時に公金横領の罪で投獄され,獄中で執筆活動を始めた。出獄後はニューヨークに移り住み,「最後の一葉」「賢者の贈り物」など,13冊の短篇集,272の作品を発表した。イギリスのSaki(本名はHector Hugh Munro)とともに短編の名手として世界的に有名となったが,私生活は幸福とはいえず,高い評価を得たのも,死後,全集が刊行されてからだった。

 続いては,新潮文庫『O・ヘンリ短編集』(大久保康雄訳,全3巻)から何か適当な短編を読んでそのあらすじを書こう。「最後の一葉」「賢者の贈り物」の2作は有名に過ぎるので,できれば避けたい。新潮文庫のこの3冊は,必ずしも名訳とも思えないが,読みにくいというほどのこともないし,なにより廉価でかつ入手しやすい。
 なお,インターネットにアクセスできるなら,原文もあちこちで手に入る。英語の原文を添えれば,それだけでポイントアップ間違いなしだろう。

 さて,これだけではあまりにも安易なので,最後に以下のようなことを書き加えておこう。

「ところで,このO・ヘンリーの『O』が,なんらかのファーストネームを略したイニシャルではないのをご存知だろうか。つまり,この『O』はオニールでもオブライアンでもなく,全くの記号なのである。それは,作品だけを見てほしい,という作者のプロ意識の現れだったのだろうか,それとも……」

先頭 表紙

んでは負けじと,小川ローザの「オー!モーレツ」 ……ちょと待て。本ですらないぞ。 / 烏丸 ( 2000-08-30 15:49 )
そこまでいくなら、遠慮した「おー...さわ悠里のゆうゆうワイド」も出しちゃえ! / こすもぽたりん ( 2000-08-30 15:40 )
それを出すくらいなら「平凡パンチOh!」でせう。 / 烏丸 ( 2000-08-30 15:25 )
ジャンポール・ベルモントの映画にも、「Oh!」というのがあったんよ。昔の話だけど。 / mishika ( 2000-08-30 12:31 )
そちら方面にも,引っぱたかないほうが……。 / 烏丸 ( 2000-08-29 17:41 )
おー...嬢のものがたり… / こすもぽたりん ( 2000-08-29 17:40 )
小松左京に「物体O」という短編がありますが,そこまでは引っ張らないほうがよいと思います。 > お父さまお母さま方 / 烏丸 ( 2000-08-29 17:31 )
おー... / こすもぽたりん ( 2000-08-29 16:02 )

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