ピルを服用しているのにくる生理痛。
とある飲み会の席で、下腹部にくる鈍い痛みに耐えながら周りの大学院生と学校の話をする。食べ物に手がつけられない。友人がいたので一時的に座った席の向かいに日本人女性がいた。
話が合わない。私が痛みに耐えてるから会話を運べないのか、彼女がクールすぎるから言葉が出てくれないのか。肉の奥にある臓器がズン、としずむ感覚を覚えた。耐えられなくなり幹事に10ドルを渡して皆に挨拶をすることなくそのまま外にでた。イヤホンをバックの中から探り、音楽を流す。痛みを忘れたい。
今日のNYはマイナス3度が最高気温だったらしく、顔に当たる風は痛みを誘う。タクシーを捕まえようかともおもった。でも、私の財布には家に帰るまでに必要な金額の現金がない。あのとき10ドルをわたして、それで残ったのは数枚の一ドル札だけだった。
フィフスアベニュー。車はすべてダウンタウンに向かって走る。目の前でみつけたATMで100ドルをおろした。それでも客がいないタクシーは、ダウンタウンの方向に消える。隣のアベニューまで歩いてタクシーをつかまえ、15ドルを払って家まで行くのか。15ドル。
高層ビルの谷間をぬう風は私をス、と横切り痛みを残す。下腹部の痛みは変わらない。
財布にある五枚の20ドル札を見る。フィフスアベニュー、真冬の格好をした人々は早足に横切る。ipodできく曲は、アンジェラアキのHOMEに変わっていた。歩くたびに痛みは響く。ただこの曲で両親を思い出し、15ドルと天秤にかけてしまった。その結果を受け入れ地下鉄の構内に入る。
58th Street、人が入れ替わり、駅のホームに消えてはすぐ人が入る。立っていた私の目の前には二つ席があき、大柄の黒人女性がその一つにゆっくりと腰掛けた。彼女はそして首を上げ、私を見、座りなさいよ、と声をかける。ありがとう、と言って座った席は少し窮屈だった。
逆隣に座っていた女性が足取りもおぼつかないおじいさんに席を譲った。実は私は彼が電車に入るのを見ていた。でも彼のためにまた立ち上がりたくなかったのだ。おなかが、痛い。この言葉だけで自分を正当化しようとしたのに、顔を上げることができなかった。
薬局で飴を買う。レジの女の子、私が渡した一ドル札を数える手が震えていた。ほんと、さむいのよ、彼女は言った。半そでのシャツしか着ていない。大丈夫?セーターはおったらいいと思うよ、無理しないで・・・。ありがと、と笑った彼女から離れ、薬局を出る。
無理しないで。
凍えそうな寒さで道路を見つめながら歩く。水溜りは凍っている。独りだ、そう感じた。痛みに耐えながら血を垂れ流し続ける自分、この寒さの中外に出て手袋をはめずポケットに両手を突っ込みながら歩く自分、
自分をささえられない、倒れてしまいそうだ。無理しないで、なんて誰が私に言ってくれるのだろうか、誰かが言ってくれたとしても、それは私に届くのだろうか。痛みに耐えながら歩くので精一杯で、その声を逃してしまうのではないだろうか。
誰かを欲しても、それを受け入れることができない。独りにはなりたくないのに独りだ。
痛い、誰か支えてほしい。でも、ここで助けを求めてあげる名前は、結局空を切って消えてしまった。 |