その頃・・・・・ジュンは急いでいた。
前の晩から咳が出てなかなか寝付けないでいた。
その為、寝坊をしてしまった。
だれも、起こしてくれる人はいない。
ジュンは一人で暮らしていた。
前の妻と離婚して、もう数年経つ。
ホタルとの約束の時間まで、あとわずか。
「いそがなきゃ・・・。」
ジュンは着替えると、慌ててアパートを飛び出した。
小型原子力エンジン搭載の四人乗りホバークラフトに乗り込む。
キーを回す。
シュバッ!
目的地を設定して、浮上レンジのスイッチを押した。
機体は浮き、滑り出す。
後は自動制御なので、ジュンは煙草を取り出し、火をつける。
フラノの街を抜け、一気に上空30mまで上がる。
出力全開で、ゴロウの家へと向かう。
・・・・・。
「目的地まで、あと一分。」
自動目的地制御装置が、こう告げる。
煙草を一本吸う時間もなく到着しそうだ。
このアナウンスが流れると、あとはマニュアル操作に切り替わる。
ハンドルを握るジュン。
・・・・・。
ゴロウの家の屋根が見えてくる。
と、その時、ウォーニングランプが点滅し始めた。
ビー!ビー!ビー!
「や、やっべぇ!!!!!」
「過負荷!過負荷!」
制御装置の無機質な声。
慌てていた為に無理がたたった。
フロントガラスに迫る屋根・・・・・。
瞬間、走馬灯の様に、ジュンの頭に懐かしい光景が次から次へと浮かんでくる。
・・・・・。
「お父さん、ホタル。き・・・・・。」
最後の言葉が聞き取れないうちに、機体はゴロウの家へ衝突する。
ボバ〜〜〜〜〜〜ン!!!!!!!!
キノコ雲が上がる。
爆風で木々は倒され、一瞬にして周りの雪は蒸発してしまった。
核爆発を起こしてしまった。
最期、ジュンが言いたかったことは、なんだったのだろう。
こう言いたかったのだ。
「お父さん、ホタル。機体の無理から・・・・・。」
機体の無理から
キタイのムリから
キタのムリから
キタのクニから
・・・・・。
だいぶ無理ありました?
ジュン:これが、この冬の出来事でした・・・・・。 |