猫(ねこ)
子供の頃住んでいたマンションの隣の部屋には「夜のおねぇさん」が猫とともに暮らしていた。その猫はペルシャ猫で子供心ながらにも「高そう・・」と思わせる猫だった。
色はシャンパンゴールドで背中にスッと一本線が入り、目は青く細身でしなやか、顔も小さくて気品に満ちあふれていた。私がじっと見ても近づいても「フン子供なんて相手に出来ないわ」って感じで「にゃ」と短く啼いて相手にもしてもらえなかった。
その無駄にこびない所が大好きになり私も猫とともに暮らしたくなった。しかし賃貸マンションだったので本来はペットを飼ってはならずウチの親は飼わせてくれそうもなかった。そのときに決めたのだ。「私は絶対に大きくなったら猫とともに暮らすぞ!」
約10年後。高校生の私は仲良しの家に遊びに行った。
そこの家には猫が二匹同居していた。全身に綺麗な縞の入ったトラちゃんだった。私はうれしくなってなで回し、追いかけ回し、ぎゅっと抱きしめたりした。しばらくすると私の目は腫れて涙目になり、咳が出て息苦しくて喘息のようにのどがヒューヒュー鳴った。「風邪かな?」と思い早めに帰った。でも家に帰るとしばらくして直った。
また猫にあいたくてその子の家に行き、猫と遊んだ。するとやっぱり調子が悪くなって帰る羽目になった。でもやっぱり帰ると直るのである。
そこでふと考えた。その子の家にあって、私の家にない物。・・・・・・猫だ。え?これってもしかして「猫アレルギー?」でも、そんな馬鹿な。私は子供の頃からずっと猫と暮らしたいと夢見る猫好きなのだ。その私が「猫アレルギー」だなんて!!そんな酷いことがあってたまるか。そこでほかの猫でも実験してみた。ダメだった。しかもどんどんアレルギーはきつくなっていき、とうとうその子の家に行くだけで症状が出るようになってしまった。
悲しかった。猫が好きでいつか一緒に暮らすことを夢見ていたのに「体」が受け付けない。これではまるで大好きな大好きな王子様のために声をなくし最後は泡になってしまう人魚姫と同じくらい悲しい話ではないか。と思春期真っ盛りの夢見る乙女は悲しみに打ちひしがれたのである。
さらに10数年後。大人になって誰と暮らしてもよくなった私は今、うさぎちゃんと暮らしています。幸い猫以外の動物はアレルギーになることもなく、いつかは犬と暮らそうと夢を代えて生きています。
でもダメだと言われるともっと好きになっちゃうのよねぇ。あぁ、猫さんと暮らしたいなぁ。 |