冷蔵庫(れいぞうこ)
三年ほど前に冷蔵庫を買い換えた。一人暮らしを初めてちょうど二年くらいたった頃だった。訳あって今まで住んでいたところに私が残るという一人暮らしだったため、電化製品はもう全体的に古くなっていた。その冷蔵庫は私が生まれた頃からウチにあった年代物で上が霜がいっぱいつく冷凍室、下が冷蔵庫という昔ながらのシンプルな物だった。壊れてもいないのに買い換えられるほど余裕があるわけもなくその冷蔵庫は夏を前にして突然壊れてしまったのである。仕事から帰りドアを開けると冷蔵庫特有の低いモーター音がかなりの音量でうなっていた。「ん?」と思い近づくと冷蔵庫はなぜか大量の「おもらし」をしていた。よく見るとどうやら冷凍室の方がおかしくなったらしく霜が大量にはり、その霜が押す格好でドアが開きその霜が融けていたのだった。私はとりあえずその霜を割りもう一度ドアを閉め直ってくれることを祈った。しかし次の朝私は大きなモーター音で目が覚めた。冷蔵庫はまた大量に「おもらし」してくれていた。冷蔵室の方のドアを開けると冷風どころか生暖かい温風が出てきた。こうなったらもうダメである。私は観念して電気屋さんへと向かった。
どうせ買い換えるなら今の物よりランクアップさせないと気が済まない。私は何でも冷凍保存しておく方なので冷凍室と容量にこだわることにした。
まずは容量。絶対に今ある物より大きくないといけない。一人暮らしには無駄かもしれないが250Lは欲しい。
次に冷凍室。これにはこだわりがあった。ホームフリージングをするために「急冷アルミ板」がついていること。あこがれの「引き出し式」冷凍室であること。私にとっては一番使う場所なので、真ん中についていること。
この条件を満たした上で予算に見合う物ということになる。
一番苦労したのが意外にも「真ん中に冷凍室」であった。普通は「野菜室」をもっともよく使うらしく上から「冷蔵室」「野菜室」そして一番下に「冷凍室」という作りになっていた。(その頃の流行らしかった)「野菜室なんか一番下でえーねん!」と思い、いろいろ見て回ったがどうやらそのタイプが主流だった。しかしどこの世界にもちょっと変わり者がいるもので「SANYO」と「富士通」だけは「真ん中冷凍室」を守っていた。
「エライ!!」と心の中で賞賛しつつ「SANYO」の270Lを選んだ。
あれから三年、このあいだ電気屋さんの冷蔵庫売り場を何気なくのぞいたら、「真ん中冷凍室」は「SANYO」の一機種のみになっていた。とうとう時代の波に押されてしまったのね「SANYO」さん。でも一機種だけでもいいからどうか次の買い換えの時まで守ってねと願う今日この頃である。 |