3日目 そのA
評議。
これは裁判官、裁判員、補充裁判員で要点を纏めていく。
まずは有罪か無罪か。
これは証拠を照らし合わせ証言等から有罪無罪を決めていく。
そして有罪の場合は懲役何年が妥当なのか過去の判例から決めていく。
まずは1回目の評決(投票)。
これは有罪無罪を書き、懲役何年が妥当かを書いた紙をホワイトボードに張っていく。
まあ、過去の判例から当たり前のように
指示役、有罪2〜3年
運転主役、有罪〜3〜5年
実行犯、有罪7年〜11年
前にも書きましたが被告人@は発砲しただけで懲役7年確定してます
3年以上は執行猶予が付きませんから実刑確定です。
ここで重要なのは直前に銃刀法違反で10年近く喰らってるという事実。
時系列的にはカチコミ→家宅捜索→拳銃実弾発見(銃刀法違反)→先に裁判→実刑。
ですが、裁判的には銃刀法違反→カチコミ。
しかも日数が微妙で併合罪にならずに個別に裁判し懲役を喰らう。
つまり(仮に)懲役11年+11年で計22年とかになるんです。
これが併合罪で裁判されていれば「併合罪の法定刑は刑の長期を罪が重い方の刑期×1.5とする」
という文脈を見つけてきました。
併合罪であれば娘の高校卒業式には間に合わないが成人式にはギリギリ間に合う刑期になるのです。
ここで俺の力説。皆の前で語りました。
正直見つかった時期が悪かっただけで少しのタイミングのズレで本来併合罪で懲役が短くなるはず。
そして本人は反省、かつ娘の成人式を見たいと。それはケジメであり更生する余地がある。
確かに犯した罪は重いが反省の弁もあり、カタギに戻るという本人の意志を尊重するならば
そこを逃してはいけないと。娘の成人を見届けて真っ当な道を歩む可能性は
本人の陳述と周りの意見から信頼すべきものである。
逆に懲役が長くなりそれが叶わないなら投げやりになり、また元の道に戻る可能性もあると。
性善説を元にするならば、被告人の弁護に来た彼女の意見、涙。
また被告人の後悔する発言、涙。
これを信じられないならば何を信じて裁判をするのか?と。
また、刑期が実行犯→運転主役→指示役と順に軽くなっていくが、それが今後の犯罪抑止に繋がるか?
否!!!!
例えばまた同じ犯罪が起こるとする。
あー、俺運転手なら刑期軽いからヤリますよ。
指示するだけでこれだけなら、俺が指示役やりますよ。
俺、ハクつけたいから実行犯やります。
これ解決になります?未然に防げます?
ならない。全て同じ刑期にしてこそ同じ犯罪を防げると。
実行犯10年?運転手10年?指示役10年?
運転手割に合わないよね?だったら誰もやらないよね?
やらなかったら、もしかしたらこの犯罪は起こらなかったかも知れない。
指示役もほぼ幹部クラスで懲役10年もいったら割に合わない。
つまり未然に防げる可能性が非常に高い。
刑期に差をつけるからじゃあやります的に犯罪が起こる。これはどう考えてもおかしいと。
だから俺は一度目の評決で実行犯、運転手、指示役、全てに同じ刑期を書きました。
そして裁判長からその理由を聞かれ↑の理由を話しました。
かなり端折って書いてますが、完全に全員を言い伏せるだけの強い、そして
自分の信念、確実にそう思える信条のもとに語りました。
そして語り終わった後…
静まり返る… |