2002-03-09 半月の夜に想う、その３。
2002-03-09 半月の夜に想う、その２。
2002-03-09 半月の夜に想う、その１。
2002-03-02 あくせす。
2002-02-25 この角度。
2002-02-24 しゃどう猫の逆襲。
2002-02-18 卵を投げる。
2002-02-17 岩に貼りつく。
2002-02-15 つかんだもの その２。
2002-02-15 つかんだもの その１。

つづき。

翌日の朝が早い友人は、それでも、やっぱり少しは眠った方がいいと、朝方、横になった。しばらくしてから、私はじゃぁね、っと言って、そっと、彼の家を抜け出した。空は少し白みかけていたけど、濃い蒼色で、痩せた半月が、ぽっかりと浮かんでいた。降り止んだ雨の匂い。静かに車を走らせて、自宅のベッドに滑り込み、私も、泥のように眠った。

翌日、授業のなかった私は、昼頃に起き出して、いつものように大学へ向かう。いつものように実験室に向かい、オーブンからサンプルを取り出し、実験を始めた。ふと、気がつくと、日が暮れる時間になっていて、顕微鏡から目を上げて見た窓の外の、木の葉の間から、零れてくる日の光が、透明から薄い赤色に変っていた。その時、わたしは、一度だけ会った事のあるキウイの光景を、急に思い出した。

そう、彼は、beautiful guy だった。実験室の、ポンプの調子が悪いといったら、ポンプにそっと手をあてて、耳を傾けていた。そう、優しく話し掛けるみたいに。工具を取り出すしぐさも、歩き方にも、作業の仕方も無駄がなくて、思わず見惚れてしまうような動き方。４０も半ばの年だというのに、綺麗で、打算のない、ピュアな眼をしていた。シャイだけど、優しい物腰と、喋り方で、たった一度しか会った事ないのに、しっかりと覚えている。

モニターが、霞んで見える、頭の後ろが熱い、イツノマニカ、涙が溢れてきていた。自分でもびっくりして、開け放していた部屋のドアを慌てて閉めた。涙も止まらない、時も止まらない、戻らない。知らない人が見たら、実験がうまく行かなくて泣いているように見えるんだろうか。私には、なにもできない。なにもできないのに、私が涙を流したって、何一つ、解決しないのはわかっているのに、ただ、彼の痛みだけが強烈に伝わってきて、どうしたらいいのかわからないくらい、伝わってきて、私はただ、今日が金曜日の夕方で、研究所に人気がなくなってきたのを幸いに、思いっきり泣いた。

その夜、友人からの電話があった。

面接は、いい感触だったよ、そろそろ眠くなってきた、ありがとう。

そうだね、せめて、いい夢を見て眠って欲しい。たとえあなた達が気付かなくても、力不足な私でも、いつか頼りになれる日がくるように精いっぱい頑張るから。きっと、いつか。

しゃどう。

先頭 表紙

つづき。

「いつものようにキウイが朝方、仕事をしていた時。高いところから落ちて、右肩を強打したんだ。そのまますぐに病院にいったんだけど、治療がいきとどかなくて、３週間後、Ｘ−ｒａｙ検査をしたんだ。そしたらな、肩が、完全に壊れていたって。壊れてたってな、骨が完全にくだけてなくなってるんだ。それだけじゃない、キウイの、最も信頼のおける、エンジニアがな、いつもキウイを手伝っている彼がな、昨日、交通事故に合ったんだ。病院から、いつ出てくるかわからないどころじゃない、今、昏睡状態なんだ・・・」

「明日、キウイは手術をする。そして、俺は、大事な仕事の面接が、朝早くからあるんだ。眠らなきゃいけない、けど、眠れそうになくて、ビールを飲んでいるんだけど、眠れなくて・・・」

それから、しばらく黙り込んでしまった。しばらくしてから、何とか口にできた言葉は、
「今から行ってもいいかな。眠くなるまで、話し相手になるよ。」だった。

友人の家につくと、入り口のドアは開け放たれていた。中に入ると、蛍光燈の光と、アルコールの匂いが漂う。友人は、寝室のベッドの中に丸まっていた。声を掛けると、少しだけ顔が明るくなったけど、すぐにまた、押さえ切れないような鳴咽が込み上げてきて、彼は声にならない声を出して、泣いていた。

「こんな事ってあるか？ キウイは、ただでさえ、ひどい持病で、毎日痛みを押さえる薬を飲みながら、でも、本当に仕事を愛していて、働いて、働いて、働いて。そして、今度は、肩をなくした。ひどい痛みだ、片腕はもう使い物にならない。キウイは、エンジニアとしては天才的な腕で、誰よりも優しくて、誰よりもピュアで、いいやつで、俺は、本当に、本当の親友で、俺は彼が好きなのに。」

「病院にいったときにな、俺の顔みて、キウイが言ったんだ。Things could be worse ってあいつ、あんな状態で俺の事慰めようとして。そしたら、何が起こったと思う？ キウイの仕事仲間が車に跳ねられて入院したんだよ。昏睡状態だよ。なんでこうなるんだよ。」

「なんでキウイばっかり苦しまなきゃいけないんだよ。あんなに働いて、いつも他人の事ばっかりきにかけて、全然自分の事を気にかけないんだよ。だからって、あんなことになって。なのに、俺は何もできないんだよ。助けが必要なのは、キウイなんだよ。俺じゃないんだよ、」

って、声にならない声で、絞り出すように、友人は叫んでいた。私は、掛ける言葉が見つからず、ただ、何も言えず、彼の悲しみが少しでも和らげればいいのに、と思いながら肩を貸しているだけだった。自分のために流す涙に、掛ける言葉、励ましの言葉、思い付かなくもない。でも、他人を思って、こんなになるまで思って、無力感に引き千切られそうになりながら、泣いている友人に、やっぱり、なにも言えなくて。

つづく。

先頭 表紙

昨日の夕暮れ、やっとのことでしあげた原子分光学の宿題。全部で３０問。いままで化学系として過ごしていたため、わからなさ、半端じゃない。用語の意味もわからず、問題の意図も読み取れず、辞書と本と、くびっぴきで解いた。高校生程度の物理の知識で、いきなり大学院のアドバンスクラスをとった、と、想像していただければ、どれほど無謀か、想像つくかもしれない。追いつくために、頭がフリーズするほど勉強した。なんとか終った。霧が晴れるような思いと、そのまま眠りこみたいくらいの開放感、が、あったけど、軽めの夕食を済ませた後、おかげで手付かずになっていた実験をしに、研究室に向かった。

夜の研究所には誰もいなくて、実験室には、小さな機械のモーター音がぶぶーんっと。少しだけ安心したのは、たまに、逃げ出したくなるけれども、やっぱり、わたしは、この仕事、好きなんだなぁっと思ったから。

いい結果なんて、そんなに頻繁に出るもんじゃない。たいていは、うまくいかなくて、また試しても、うまくいかなくて、もてるアイデアを全部使っても、やっぱりうまくいかなくて。いらいらして、さらに失敗して。そのうちに機械が壊れたり、洪水になったり、そして、ほんの少しのきっかけで、前に行く道が見えて、一気に攻め込むと、先に進める。その先にある、蜜の味は、他に喩えようもないほど、甘美だ。でも甘いのも一瞬、すぐに蜜は乾いて辛口の蜂が、針を持って追いかけてくる。研究は、たとえるとそんな感じ。

今夜はなにか、うまくいきそうな気がして、でもやっぱり駄目で、そんなこんなでつっついているうちに、急に流れに乗り始めた！ これはいける、と、興奮し、サンプルを大量に作っているうちに真夜中になった。そろそろ、引き上げるか、と、すべてをオーブンに放り込み、帰り支度をした。

帰り際、しばらく連絡を取っていなかった友達に、借りていた本をいつ返そうか、軽い気持ちで電話をしてみた。気だるい声で話す友人に、寝ていたのかな、悪いな、なんて思いながら世間話を続けていたのだけど、様子がどうもおかしい。何かあったのか、

「あのな、ビジネスパートナーのキウイが、事故にあったんだ・・・」

つづく。

先頭 表紙

しゃどうは、軽口を叩いていられないくらい、する事が多くて、大変。といいながら、出掛けたっきりです。夜中近くに帰ってきて夜ご飯を暖めながら、宿題をしています。終るのかな？ 帰るの遅いよ、もっと遊んでよって文句を言ったら、「やらなきゃいけないときって、あるのよ、勝負に出たときは、黒か白か。能書きも理屈もなし！」 って、問答無用でした。いつにも増して偉そうなしゃどう。まったくもう。でも、ずっと膝の上には乗ってたけどね！

しばらくは更新を控えていようと思ったのだけど、今日、研究所のオープンハウスがあって、そういえば、もうすぐひまじん日記も一周年だなぁ、って思って覗きに行ったら、今日が本当に一周年だったから。

しゃどう猫も、しゃどうの膝の上で、うっとり、仲良くお喋りしながら日記を書いています。いつもこんな感じなの。仲良いでしょう？ 羨ましい？

しゃどう猫。

＃＃夕食はチキン猫まんま。しゃどうは、火曜日の昼ご飯の残りのイタリアン。ピンク色のチーズと、太目のマカロニのようなパスタが乗っかっていました。梨のコンポートも、ハーゲンダッツのアイスクリームを載せてバリバリっと。久しぶりの立派な夕食のようです。

先頭 表紙

なぁ、この角度から写すと、知的にみえない？

ｂｙ しゃどう猫。

んなこと言われてもね・・・なんにせよ、キーボードの上に乗っちゃだめ！

双方のボス、共に学会が迫ってきていて、「スライド作れ！ 結果をくれ！」と、煽られているしゃどうである。今週末も、寿司の誘惑も、ロッククライミングの誘惑も断ち切って、洞窟にこもり、実験をするしゃどう。機械を操作しながら、隙をみては授業の課題に精を出しています。実は、提出期限のせまるでかい課題、３０問、来週の月曜日が提出期限。今、１問半終りました。更に、まったく新しい専門分野の授業なので、用語から調べては問題をこなしているのです。無事に終るのでしょうか？ 駄目だったら、たぶん落とします。ふう。

先週も、授業が終って、やれやれ、と、ひとりでランチを食べていると、どこからともなく、陽気なトマト先生がやってきた。「ラボに電話したのに居なかった！」（ランチのお誘い）と、ご不満な様子。

あのね、授業・・・

普段は、雲の上から研究の行く末を見守っているセロリ先生も、いつの間にやら下界におりてきた。やっとのことで時間を見つけて、セロリラボに赴き、ドアを開けると、仁王だちのセロリ。

I haven't seen you long time...

あぁ、もう、先週話をしたばっかりでしょう？ なんて言わずに、そそくさと機械の電源を入れていると、横で、これとこれとこれとこれとこれとこんな結果がでるといいんだけどなぁ、来月始めにネバダで学会があってね、、、、

はいはい、ボス！ と、ばかりに数時間かけてサンプルを作成。さらに土曜日にも改良版を作って、机の上に残してメイルを送ってから、今日は、トマトラボで実験。していたら、

「あっ、解析してみたけど、こうなったよ。だから、此処をこうして、ああして、こうしてはどうかな、それから、これとこれと、これ、やっといてね」

とのメイルが舞い込む。日曜日の夕方に、教授自ら実験なさって・・・まぁ、恐縮。と思っているはしから、トマト教授、しゃどう部屋に入ってくる。

「ちょっとお願いがあるんだけど・・・、明日の講習（企業向けの特別講習で、二日間フルタイム、登録料１１万円する、大きな講習会をやるのだ。）のためにこれとこれとこれとこれとこれとこれが必要だから、手伝って！」

・・・青筋たってる。スライドづくり終ってねぇよ、何話すか決めてねぇよ、って、荒れています。あぁ、みんな、ストレス、溜まっているのね。

戦え、マッドサイエンティスト達！

宿題やれ、しゃどう！

＃＃夕食は、餃子（冷凍）とポテトとツナとチーズの焼きもの。ご飯と枝豆。調理時間焼く１５分！ 最近、手早くなりました。しゃどう猫は、夕飯前に眠り込んでしまいました。起きたら、なにか食べるはず。

先頭 表紙

たまには俺に書かせろ！


しゃどう猫。


＃＃しゃどう猫の夕食は、ターキー猫まんま。肉汁が美味しいの。いつも、袋から出してもらったら、肉汁を綺麗に舐めてから、肉に噛り付きます。まだ新鮮なうちは美味しいんだけど、一晩たったら、固くなってきて、いまいち。残した分を新しいのに取り替えてもらいたかったので、前足でさっさか、埋める振りをしたら、しゃどうに怒られた。

＃しゃどうの夕食は、豚肉の生姜焼き、ツナとポテトとチーズの蒸しもの。ご飯とサラダでした。生姜焼きは、おろしニンニクを入れると、味が引き立つと語っていた。古くなった梨（絶対、昨年のやつだ、あれ。）をワインと砂糖でぐらぐら煮てなにか作っていた。レモン汁を入れると、酸化が防げるのだそう。美味しいのかな？

先頭 表紙

物理の宿題をやりに、学校に赴く。金曜日に、出張中のトマト君からも、電話があったようだ。

お客様が月曜日にいらっしゃるから、ラボを片づけておけ。特にしゃどう。今、おまえの部屋、ぐっちゃぐっちゃだろう！

・・・よくご存知で。

それはともあれ、慣れない物理のテキストを開く。第一章、読む。

「世界には二つの力がある。ひとつは愛、もうひとつは憎しみ。愛は引き合う力、憎しみは反発する力、のことである。」

と、いうでだし。紀元前４５０年まで、物理はそういうモノだったらしい。ちょっとした論理を証明するのが今回の宿題なのだけど、なにせ、バックグラウンドが薄いので、難しい。ひとやすみついでに廊下を歩いていたら、なにやら、教室からバコバコ、と、破壊音。なんだろうって、覗いてみたら、クラスメイトがなにか作って遊んでいる。

「玉子落としコンテストだよ！」

話によると、建物の４階から、玉子を割れないように落とすコンテストらしい。プロテクションの道具は、日常にある、柔らかいものなら、なんでもよし。ただ、割れないようにするだけでなく、落ちる速さ、標準落下点からの距離、全体の重さ、なども加点されて、最終的な順位を決める。一位には、なんと賞金＄３００！

「しゃどうちゃん、やる？」

「・・・やる！（あぁ、宿題が・・・）」

ラボからいろいろと道具を引っ張り出して、細工する。加速度を弱めるか、それともクッションで保護するか、重さ、速さ、体積、密度、これらが綿密に計算されてこそ、よい結果が生まれるというもの。なにせ、わたしのメジャーは素材工学！ なんていっても、もちろん、計算なんてしてません。適当に材料を拾い集めて、巻き付けて、んー、完成？

建物の屋上に登って、地面に向かって、玉子を投げつける！ あぁ、なんて背徳感。なんていけない事をしているんだろう。一人は、地上で、他の人（ポリス？）が来ないように見張り。ひとーつ、ふたーつ、みーっつ、地面に叩き付けたあと、そうっと包みをあけて、玉子の様子を見る・・・んふっ！ 無事！！！

来週のコンテストが楽しみだわ。ちなみに、二位は＄２００、三位は＄１００の賞金。１〜３位を独占して＄６００。高いレストランに行って、豪快に飲み食いするのだ！ というのが、目下の野望である。

しゃどう。

＃＃夕食は、冷凍の焼き鳥と、雑煮（急に食いたくなった）と、トマト。しゃどう猫はツナ猫まんま。やっと帰ってきて、幸せそうに眠っています。あたま、すりすりしてる、可愛い・・・。

先頭 表紙

突然だけど、ロッククライミングを始めてみた。といっても、いきなり山に行くわけではない。まずは、ロッククライミング用のジムでトレーニングから。アリゾナは、世界的にもいいロックが、ごろごろしているので有名だ。今までやってみたいな、と、ちらりと思う事はあっても、あれは筋力に溢れた、逞しい男の人でないと無理、という先入観が強かったのだ。わたしは、脚力はそこそこ強いのだけど、未だに腕の筋肉が弱く、ぶらさがってから、腕の力だけで体をぐいっと持ち上げる事はできない。握力も弱い。瓶の蓋があかなくて、右往左往と、筋肉さがしてフロアを歩き回る事も多い。でも、いかにも苦手そうなことに挑戦してみるのも面白そうだ。なにより、岩の隙間を見つけながら、からだひとつで山に登って見るなんて、格好よくて、素敵。

まず、靴と道具を受け付けで貸してもらい、紐の結び方をならう。当然、落ちても平気なように命綱をつけるのだけど、ジムの場合は、天井付近に繋ぎがあり、パートナーが下で綱を手繰り寄せながら体全体で支えることになる。まずは、一番簡単そうな壁に挑戦してみたところ、猫のように、さくさくさくっと、昇れてしまった。はじめのうち、ちょっと怖いのは、降りるために、体重の重心をを綱に掛けるとき。なかなか、自分からバランスを崩すのって、勇気がいるもの。でも、えいやっと、離れてみたら、なんのことはない。ぶらぶら、と、宙に浮いているのだ。高いところってやっぱり気持ちいい。そのまま、綱を緩めてもらって、後は重力に従って降りていった。

難易度をあげて、いろんな壁に挑戦してみた。何度か繰り返しているうちに、腕と手の筋肉がすっかり疲れてしまう。中腹まで登って、あと少しで届きそうなのに、もう、すぐに力が入らなくなってしまうのだ。やっぱり、日頃の運動不足はたたる。でも、やっぱり、女の意地をみせなきゃね、ってことで、少しずつ位置を変えながら、壁を這い登って行く。汗は掻くし、心臓はどきどきするし、ちょっと怖い。だけど、めちゃめちゃ気持ちいいのだ。何度も失敗して、落ちて宙づりになってぶらぶら〜っと、浮いてたりするんだけど、その合間の高揚感というか、爽快感、っていうのが、たまらなく気持ちいい！

見た目、美しいもんじゃないけど、癖になる人の気持ちがわかるような気がしました。わたしも、もっともっとトレーニングしようっと。

上手い人も何人か来ていてました。観察していると、動きがすごくしなやか。体の重心を線上に移動させて、リズムをつけて、するっ、するっと、移動していく感じ。無駄な動きがないのです。筋力もそれなりにあるのだろうけど、力を使ってる！っていう力みが全然ない。バランスなんだなぁ、と、思います。

しゃどう。

＃＃当日の夕食は、サンドウィッチでした。しゃどう猫は外泊（癖になっている）。

先頭 表紙

つづき。

・・・どれがどれだか、わからん。

個人のお店を少し大きくした程度の、ややマニアックなお店で、たまに、他の店では手に入らない希少なパーツが、いつでも常備してあるので、何回か来た事がある程度なのだ。怖そうなおっさん客が多いので、わたしが入ると、とりあえず、じろーっと、注目を集めてしまうのだ。内面はともあれ、外見だけは、大人しそうな女の子に見えるらしい。

え〜と、とりあえず、あのごついおっさんにきいてみよう。すみませーん、これ、どこにあるんですかぁ？ おじさん、無愛想に、教えてくれました。次の奴、これもわからん、すみませーん、これは？ ちゃんと教えてくれました。えーと、じゃあ、次はぁ・・・おじさん、我慢できずに、にやり、と、笑って、リスト見せてごらん、持ってきてあげるから。っと、手際よく集めてくれたのでした。会計の時に、これが、これでぇ、っと、いろいろと、とても親切に教えてもらったのでした。

翌日、買ってきた部品を半田。日本を発つ前に、「日本人」として、化学実験用のガラス細工と、半田のやり方だけは、しっかり、マスターしてきたのだ。手先の器用さは、誇れる文化だしね。横についてもらって、指差し確認しながら、溶接していった。この出来栄えだけは、「うーん、素晴らしい」と、お褒めの言葉をいただきました。やったね！ その間にも、ちょっとしたトリックや、コツなど、職人技を惜しみなく教えてくれた。気分はすっかり、お父さんに工作を習う娘。こんな小さなサーキットでも、こんなに学ぶ事があるんだなぁ、と、ひとしきり感動した。

不幸にも、オシロスコープが壊れていたため、完成を待たずしておじさんは、帰途の足。

「いっしょに働けて楽しかったよ、またいつか会えるといいね。」

っと、言ってくれたので、なんだか嬉しくなってしまった。こちらこそ、いろいろ教えていただけて、感謝しています。ありがとうございました。

というわけで、やっと研究が始められるのでした・・・あぁ、先は長い。

しゃどう。

＃＃夕食はミートソース、コーンスープ、トマト。デザートは桃のババロア。古くはなっていないようだ。まだまだいける。しゃどう猫はビーフ味猫まんま。今日も寝てばっかり。

先頭 表紙

わたしが、帰ってくると、まず、脱ぎたての靴下をキャッチしにくるしゃどう猫。洗濯籠に投げ込むつもりでいても、横から走ってきて、華麗に掴んでしまうのだ。捕まえた靴下は、噛み付いたり、匂いを嗅いだり、蹴っ飛ばしたり。飽きたら、今度は靴の中に顔を突っ込んで、くんくん、なんだか恍惚としている。ちょっと疲れた時の香りが、好きなんだって。ここまで惚れられると、まんざらでもありません。

外はいい陽気になってきた。朝晩は、ひんやりと冷え込んではいるものの、外はすっかり初夏。キャンパスの芝生には、学生が達がワサワサワサっと、転がっていて、愛の語らいをしていたり、寝ていたり、食べていたり、勉強していたり。わたしも、今日は外でお昼を食べたのですが、頭の後ろが、じりじり、じりじり、っとやけてきて、暑かった。もう、夏はそこまでやってきているようだ。今年も、コートを買わずに終ってしまった冬。

先月から組み立てていた装置がある程度ちゃんと動くようになりました。市販のモノを組み合わせて使う予定だったのですが、どうしてもうまくいかない。そこで、回路に詳しい人を雇って、新しい回路をデザインしてもらうことになった。セロリ先生が、大体はアレンジしてくれたのですが、先先週、「しばらく留守にするけど、いい機会だからちゃんと習って、自分で組み立ててみなさい。」っと。しゃどうは、一応、エンジニアですが、電子回路には詳しくない。小学生くらいのとき、市販の４石ラジオキットを、説明書とくびっぴきで作って遊んで以来で、後は、学部生の時に、電気学の授業をとったのですが、つまらなくて途中で放り出してしまい、最後の成績、１３点だけ頂いて単位を落とした。

「また、面白い冗談を・・・」とは思ったのですが、本当に冗談を言っているわけではなさそうなので、関連した論文等を読みながら、少し緊張気味にエレクトリックエンジニアに会った。白い髭を顔半分にたたえた、お洒落な紳士だった。ニューヨークから、わざわざやってきたという。（もちろん、他の用事もあったらしい。）うわー、なんか緊張するなぁ、って思いながら、ミーティングを始めたのですが、少し時間が経って打ち解けてくると、気さくで優しいおじさんでした。おじさんも、人見知りするタイプだったよう。

正直に、ほとんど経験がない事をつげると、んじゃ、サーキットのテスト段階までは、一緒にやろう、ってことで、教えてもらえることになった。パーツリストを作って、このパーツは、こういう形をしているんだよ、なんて、ところから始まって、テストサーキットボードの使い方を説明しながら、ある程度動く事を確認したところで、初日は終了。

「じゃあ、残りのパーツは次までに全部揃えてくるから！」って、意気込んで次の日の朝、電気パーツ店へ。えーと、レジスターは縞縞のあれでぇ、なんて考えながら、店内を一周した。

つづく。

先頭 表紙