himajin top
Hideyの「蛍の光の下で」

帰国に伴い長い間ご愛読いただいたこの日記を終了させていただきます。
もうこのサイトに文章を綴ることはありませんが
もしこの先もおつきあいいただけるようであれば
メールをいただければ幸甚です。
皆様、本当にありがとうございました。お元気で。

絵日記

目次 (総目次)   [最新の10件を表示]   表紙

2001-08-05 ファイナンスのケーススタディー 1
2001-08-05 ファイナンスのケーススタディー 2
2001-08-04 サマースクール開始
2001-08-04 はじめに


2001-08-05 ファイナンスのケーススタディー 1

7月上旬のボストンは、さわやかに晴れる日が続いた。青い空はどこまでも青く、水蒸気でだぶつくことがない。陽射しは強くても、からっとしているので汗ばむほどではなく、日陰に入れば結構涼しい。アメリカ人はエアコンの温度設定を、風邪をひいてしまいそうなくらい低く設定するため、ひとしきり授業を受けたあとには熱い陽射しがありがたいほどである。

ヨーロッパを髣髴とさせるこのボストンの中でも、うちの学校はもっともヨーロッパ的な情緒にあふれている。広大な緑の敷地に、レンガ造りで小窓が特徴的な建物が立ち並ぶ。レンガの壁には歴史の重みを感じさせる蔦が這い、建物ごとに、さまざまな模様をなしている。木漏れ日が揺れる芝生の上には、人なつこそうなリスが遊ぶ。

そんなすばらしい朝の風景をよそに、僕は学生ラウンジに向かった。ファイナンスのスタディーグループが待っていた。

この日のケースは、ドイツの家具メーカーが、二つの小売店からの売掛金の回収が滞っているため、今後どのような取引上のポリシーを取っていくべきか、小売店の財務諸表から分析する、というものだった。各自このケースを多方面から分析し、授業が始まる前の1時間、5〜6人の学生が自主的に集まってスタディーグループを形成、それぞれの意見を交換するのだ。サマースクールはまだ始まったばかりであり、学生はまだファイナンスについては何も教わっていない。80ページのテキストを読まされただけだ。しかも僕は、「今度のCMは藤原紀香にしましょうか?」などと、お気楽な仕事しかしていない。要するに、何も分かってないのだ。

ほとんどはじめてのスタディーグループなので、とりあえず日本人で集まることにした。僕も覚えたての比率分析などやってみたつもりだったのだが、へたな自己主張をしなくて大正解だった。「こっちの小売店は見かけ上は利益を出してるけど、営業活動でも投資活動でもキャッシュを生み出していないよね。」「こっちの小売店はキャッシュフロー的にはほとんど破綻しているけど、ドイツの企業は長期的な関係を重んじるので、なんらかのインセンティブを提示して関係を維持したほうがいいと思うよ。」そーかー、そうなんだ。なるほどね、と人の意見に感心しているばかりで、何も口をはさむことができない。どうして?みんな商社出身ばかりでファイナンスなんてやったことないって言ってたじゃない。しょっぱなの、しかも授業が始まる前から、敗北感を味わった瞬間であった。(次回へつづく)

先頭 表紙

lamancha様、いいえ、MBAレベルのファイナンスの場合、ほとんどが加減乗除やExcel任せの計算で十分。それよりも、計算の結果、何を読み取るのかの方が大事です。 / Hidey ( 2001-08-06 23:46 )
ファイナンスってやっぱ、ブラック・ショールズ方程式みたいに微分方程式バシバシ出てくるんでしょうか。 / lamancha ( 2001-08-06 17:41 )

2001-08-05 ファイナンスのケーススタディー 2

(前回よりつづき)
実際の授業は言うに及ばず。南米系の学生は、発言の中身があろうとなかろうと、とにかく手を上げて発言しまくる。大変流暢だが、独特の訛りがあるため、僕には大変聞き取りづらい。でもアメリカ人の教授にはこれがわかるんだな。やはり言語の距離感というのがあるのだろう。アメリカ人はチャートのど真ん中に座っており、東洋系の英語にもある程度の理解を示し、南米系の英語には日常から慣れている。東洋人と南米人の距離は大変遠いのだ。

しかも、南米人もファイナンスの知識は非常に豊富で、とても覚えたてとは思えない専門用語をびしばし交えて攻めてくる。イスラエル人のZiv君やGady君などは、みんなの意見を総括して、次の方向性を示してくれたりなんかしてしまう。まるで教授が3人いるようだ。同邦のHarukiも、「僕の計算によりますと、こちらの小売店は営業活動、投資活動ともにキャッシュフローがプラスになっています。」と先ほどの理論を展開。さすがの南米系もキャッシュフローの自主計算まではやっていなかったらしく、これまで断片的な数値を論じていたのが、一瞬にして結論を提示され、しばし沈黙してしまった。

授業後、僕と同じ会社から来ているTomoと話した。「いかにうちの会社がお気楽ミーハーな仕事しかしてないか、よくわかったよね。」

とにかくつまらない見栄は捨てることだ。僕は、年下だがファイナンスのことはかなりわかっているMasaにお願いし、週末に今日の授業のおさらいをしてもらうことにした。Masaは快く引き受けてくれて、おかげでなんとなく概念はつかめたと思う。

12年も同じ仕事をしていれば、さすがに知識も備わるし、指導的な立場にも回る。そんな前提は簡単にしょっぱなから崩れ去り、例えようもない悔しさともどかしさを味わった。とにかく受け入れることだ。僕はこの悔しさともどかしさを求めてきたのだ、と言い聞かした。記念すべき、屈辱の始まりだった。

先頭 表紙

よちみさま、僕の失敗談シリーズでよければどんどん励みにしてください。本当に失敗には事欠かず、飽きない1ヶ月でした。 / Hidey ( 2001-08-08 11:38 )
ああ!ひさしぶりに(?)すごく励まされる〜。「悔しさともどかしさを求めてきた」というの、環境やレベルはぜんぜん違うけれどよ〜くわかります。がんばってください!言語感の距離・・・日本語もあやういよちみは一体どうしたら・・・(-_-;) / よちみ ( 2001-08-08 09:49 )
フィー子様、本当は写真もアップしたいんだけど、デジカメは日本にいる妻に取られてしまいました。10月に妻が着次第たくさんUPします。そうだね、35歳にして変身できれば素敵なことですね。 / Hidey ( 2001-08-06 23:24 )
あ、間違えた!↓このつっこみは上の文章にあてたものですー。それにしてもボストンの風景、空想してうっとりしてしまいました。小窓ってのがいい!! / フィー子 ( 2001-08-06 16:23 )
なるほどなるほどー!本当に新しい経験をしているようですね。竹が節目を作るように、きっと今新しい節目がぴしぴししてて、新しく青く素晴らしい芽が出てくるところなんじゃないかと、読んでて思いました。言語の距離感、興味ありますねえ〜。 / フィー子 ( 2001-08-06 16:22 )

2001-08-04 サマースクール開始

サマースクールというのは海外からの学生のための英会話学校みたいなもので、ほとんど遊びのようなものだと聞いていた。ところがどっこい!結局僕ははじめの2週間、平均3時間睡眠の日々を送ることになった。

うちの学校は1学年880人もの学生が入学するのだが、内、インターナショナルスチューデントというのは3割。その中でも英語に難がありそうな学生が55人、サマースクールに呼ばれた。日本人はなんと10人。日本人の語学レベルが分かる。ほかに人数が多いのは、中国人、ブラジル人といったところ。でも、後で分かったことだが、日本人をはじめ、各国の学生の中には、ほとんどネイティブの人もかなり混ざっていた。

7月2日、いよいよサマースクールの初日だ。ディレクターのおばちゃんが、いかにも小学生の英会話学校みたいに「Good morning!」と話しかけると、55人の学生は大まじめに「Good morning!」と応える。この辺が日本とはちょっと違う。簡単なコースの説明が終わり、午前中の「MBA language skills」という、アメリカ式小論文を書くための授業のために、グループ分けをして、めいめい自分の先生の部屋に散っていった。

僕のグループはブラジル人の男が2人、ペルー人の男が1人、中国人の男が2人、韓国人の女の子が2人、日本人の男が僕を入れて2人、日本人の女の子が1人。これから1ヶ月、この授業は同じメンバーで学ぶことになる。

先生は、「この人にあたったらいいな」と誰もが思っていた、唯一若めできれいな女の先生で、Carolineという人。顔に似合った、やさしい話し方をしてくれる先生だ。しかし、期待は裏切られることになる。これから毎日、12〜16ページくらいのビジネスに関する記事を読み、文章の構造をつかみ、別途600ワード以上の作文を提出するように、と宣告された。ほかにも色々授業があって、もっと大変な宿題がいろいろ出ることが予想されるのにだ。量的にたいしたことなさそうだが、結論から言うが、これが毎日続くと、ボディブローのように効いてくるのだ。

午後はうって変わって気楽な授業がひとつ。55人の学生が再び全員集まって、「Effective speaking」という、いわゆる会話のクラスに臨む。これも結論から言うと、気楽なのははじめの頃だけだったのだが、とにかくこの日は気楽だった。というのも、授業のほとんどは体をタコのように動かす体操で明け暮れたのである。Dale先生いわく、「よいスピーキングは体をほぐすことからはじめるんだ」。結局この日から毎日5分間タコ踊りが繰り返されることになった。

しかし、メインイベントは、ようやく初日の授業が終わろうとしていたときだった。数日後のファイナンスのケーススタディーのために、ファイナンスの基礎を学ぶための80ページのテキストを渡され、全部読んでこいとのこと。もちろん英語だ。普通の文章ならいざ知らず、キャッシュフローやら総資産回転率やら、日本語でもろくろく知らないことが、延々と繰り広げられているのだ。さらに、ケーススタディーは、12の匿名の企業の財務諸表を渡されて、どの企業がどの業種かを推理せよというもの。これを各自が分析して、根拠を示さなくてはならない。

本当にこれが遊びのようなサマースクールなのか???聞いてた話と違うぞ!!と嘆いているひまもなく、たった5分の時間も何に使ったらよいか、真剣に考えなくてはならない日々が、いよいよ始まった。

先頭 表紙

reiさん、原則的に甘いものは食べないのですが、アイスクリームだけは別です。明日(今日?)downtown方面に行く用があるので、ぜひ試してみます! / Hidey ( 2001-08-05 15:43 )
忙しいでしょうが、Newbury StreetのJ.P.Licksのアイスクリームを食べる時間は作ってください。感動的です。 / rei ( 2001-08-05 11:00 )
フィー子さん、ようやくデビューしました!ボストンは、住めば住むほど好きになりそうな街です。これから町のことも色々書いていきたいと思います。時々サッカーの話にもつっこんでみます。 / Hidey ( 2001-08-04 23:43 )
えつさん、さっそくのつっこみありがとう。君なら難なく、しかも楽しくこなすんだろうけどね。まじめに英語の勉強をすることから遠ざかっていたので、たくさん宿題が出ても、「ラッキー、ラッキー」と思うようにしてます。本当に、仕事から解放されて英語の勉強ができるなんて思わなかったもんね。 / Hidey ( 2001-08-04 23:39 )
苦しいけど幸せそうな感じが伝わってきます〜。ボストンの町の雰囲気なども今後書いていただけるのかしら?楽しみにしています! / フィー子 ( 2001-08-04 22:35 )
正に「自己鍛錬」ですね。1時間にホットドック20コ食え!と言われるのとどっちが苦しいか、今考えています。 / えつ ( 2001-08-04 22:06 )

2001-08-04 はじめに

この「ひまじん」を覗くようになってからかれこれ1年くらいは経っていると思う。二人の友人が投稿しているのが直接のきっかけだが、たくさんの人の日々の思いに触れ自分を重ね合わせたりなどし、いつの間にか「ひまじん」が生活の一部と化していた。想像力が会ったこともないライターさんの顔を勝手に作り上げ、彼らは既によく知っている人々のようにネットの上で行動する。それでも自ら日記を綴ろうとしなかったのは、語るに足る生活をしている自信がなかったからだ。

6月にボストンに渡り、MBA取得のための2年間の学生生活が始まった。1ヶ月が経ち、今なお発見の多い日々を送っている。人に語るに足る生活を送っているということでは決してない。しかしまずは自分のために、日記という鏡に自分を映しこんでみたいと思うようになった。不器用ながらも何かを形づくっていくであろうこれからの日々を、自分の目と同時にネットを介した他人の目で眺められれば、多少の自己洞察ができるはずだ。

のっけからおカタイことを書いてしまったが、これからは他愛のない日々の経験を気楽に記していきたいと思う。1ヶ月経ってしまっているので、はじめは少し過去を振り返りながら書いていきたい。

先頭 表紙

気→き / えつ ( 2001-08-04 21:58 )
いろいろと君の感じたことを読ませていただ気、それを「考えるヒント」にするのを楽しみにしています。 / えつ ( 2001-08-04 21:58 )
いらっしゃいませ、システム管理者です。末永く、宜しくお願いいたします。 / システム管理者3号 ( 2001-08-04 21:06 )
真賀さん、初めてのつっこみありがとう。おお、それだけは思い出したくないGMAT!ご愁傷様ですと、お友達にお伝えください。 / Hidey ( 2001-08-04 17:09 )
がんばってください!友達もGマットがどうのこうのと 毎日がんばっているようなのです。Hidey様もおきばりやす。 / 真賀砂州子 ( 2001-08-04 15:54 )

[最新の10件を表示] (総目次)