2002-01-27 トムの孔（あな）
2002-01-26 偽悪者の偽善者振り
2002-01-25 メカブ
2002-01-24 休肝日
2002-01-23 階梯練習
2002-01-22 ワサビ
2002-01-22 怠惰をムサボル
2002-01-21 俺は男だぜ！
2002-01-20 鵡川のシシャモ
2002-01-18 従業員証の行方

英語にピーピング・トムという言葉があるそうだ。サムだったかな。
日本語にすれば出歯亀といったところだろうか。こちらが、出っ歯の亀さんが覗きで有名だったことから出来た言葉だとすれば、かつてのイギリスだかアメリカだかではトムさんが覗きで有名だったのだろうか。さしずめトムが覗きに使った孔は「トムの孔」とでも呼び得るだろうか。

道を歩いていたり車を走らせたりしていると、たいていの風景の中には、ビルやマンションやアパートや一戸建て、人の住まう建物が目に入る。
日常の生活において、昼間は風景の中の要素は均質で、どこかに意識を集中でもしない限り、或いは風景を眺める、風景のうちのどこかを眺めることそのものが目的でない限り、特にどこに目を引かれることはない。
人はその風景の中を目的地に向かって進む。

こと夜になると事情が少し変わる。
明かりの灯された窓は、意識を向けないでも闇に浮かぶ額縁のように鮮やかに浮かび上がり、人の視線をそちらに誘う。
特に窃視症的な興味がなくとも、夜の道を行く人間にとって、明かりの灯された窓はそういう力を持つように思う。
その力に影響を受けやすい人や受けにくい人、受けやすい時や受けにくい時もあるだろうが、そういう力がないだろうか。
窃視を誘う力。
あの暖かい明かりの下には一家の団欒があるかもしれない。夫婦がけんかしてるかもしれない。子供が親に叱られて泣いているかもしれない。兄弟がけんかしているかもしれない。恋人たちが食卓を挟んで見つめ合っているかもしれない。そして灯りの消された窓の向こうにも人がいる。
一度そうした経験をすると、昼間の建物の窓でも、道行く車のウィンドウ越しの車内でも、窃視の対象となる。
窓という額縁がトムの孔になる。
直接、窓を覗き孔に見立てて中で行われていることを覗き、目にするのでなくとも、想像力をかき立てられ、団欒を思い柔らかな、或いは諍いを思い苦笑混じりの、或いは淫靡な気持ちにさせられる経験はないだろうか？　柔らかな、苦笑混じりの、或いは淫靡な気持ちは、窓の向こうばかりでなくそうした思いに駆られた自分にも向けられる。
そうした経験が少しでも、一度もない人というのはきっとよほど精神が健康な人なのだろう。

大なり小なり窃視的な欲求を持つことが病的なものであるとすれば、それは視線が、閉じられた空間を対象に向かう、その方向性に起因するのではないか。
方向を転じて窓から外を眺めてみる。家の、ビルの、車の、電車の窓から。
閉じられた空間から開かれた空間を、「覗く」。
窓の外から室内を覗き込んでいる人が見えるかもしれない。見る者は、すなわち見られる者となる。お互いに。
人を覗こうとする者は、その姿を白日の下にさらす宿命にある。
しかし「窓」という孔は「孔」と言うには少し大きすぎる。

僕たちはお互いに「眼」という窓、トムの孔を使って、内的世界から自分の外的世界を覗き込む、そういう存在ではないだろうか？

先頭 表紙

友人の家に行くのに車を走らせていた。
山合いの村は車が無いとなかなか不便だ。目的地はたいてい遠いし、曲がりくねった道は起伏も激しい。

上り坂を軽自動車でうんうん唸って上っていると、道ばたの縁石の上に１人のおばあさんがちょこんと座っていた。
いったん通り過ぎたものの、気になってバックで２〜３０メートル戻った。
車を降りて、
「何しとんの？」と尋ねると、
「座っとるんだがね」とのお答え。
そりゃそうだ。
「誰か待っとるの？　どこまで行くの？」と重ねて尋ねると、
「いや、家に帰るとこだ。エラいで（疲れた、という意味の方言）座っとる」
「ほーか、ほんなら乗りん（乗りなさいよ）」
「あんた、どこの人だ？」
おばあさんは少し警戒していたようだ。
そりゃあ、紺色のサングラスに金髪に近い茶髪、オレンジ色のジャケットに緑のジーンズの見知らぬ男の車にいきなり乗れと言われたら、たいがいの人は警戒するだろうなあ。
「心配せんでもこの村のもんだて。まあ乗りん。送ったげるわ」
警戒を解いて、おばあさんは僕の申し出を受けてくれた。
「ほりゃすまんな。乗せてもらうわ」
車を走らせながら、どこから帰る途中で家はどこか尋ねると、乗せた場所から５キロほど下ったところから２キロほど上ったところまで帰るという。
「そりゃ大儀だなあ。えらい遠くまで出ただねえ。ほんでも元気だ、そこまで行ったんだで」
「元気はええけど、まー、エラいわ」
「ほーか、ほーだねえ。下りはええけど、上りはねえ。ほんでもやっぱ、元気だ」
「元気だ元気だって、わし幾つに見える？」
「あん？　まー、７０は越えとるかん？」
「なーにが。８０越えとるが」
驚いた。

「あんたはどこまで行くだったね？」
僕は目的地の字の名を答えた。おばあさんを送っていくと３キロほど遠回りになる。彼女はそれを気にしたようだ。
「ええよ、別に。送ってったるでさ、心配せんでもええんだて」

道順を聞きながら運転していると、おばあさんが隣でカバンをごそごそいわせている気配がした。
やばいなあ。
やばいと思いつつも、チャリチャリ音がするので少しだけ安心した。
でもなあ、なんだかなあ。

おばあさんを降ろそうと彼女の家の前で車を停めると、「親切にありがとうな」と言って、案の定お金をくれようとした。
５００円玉をダッシュボードの上に置くので、僕が「えーよ、ほんなつもりでおったんじゃないんだで。却って悪いがね」とその硬貨を返そうとすると、両手で押しとどめる。
「えーわ、親切にしてくれたんだで。あめ玉でもねぶりん（あめ玉でもなめてくれ。小遣いをくれるときの決まり文句のようなもの）」
「ほーか、ほんならいただくわ」
ありがたく頂戴することにした。

「ほんじゃ行くわ」
僕は彼女を降ろして車に乗り込んだ。
「ありがとうな、親切なことで」
「いや、却って悪かったね、ゼニ使わせてまって」
「ほんなこといいわ、ありがとう」
「ええよ、好きでやったことだでさ」
「ほんだら、また行き会ったら（会うことがあれば）頼むわ」
いい顔で笑うなあ、と思った。
「ああ、ええよ、いつでもそうしてくれ」
一度ドアを閉めて、言い忘れたことを言うためにもう一度ドアを開けた。
「今度からはゼニは要らんでね」
おばあさんは笑った。僕も笑った。お互い手を振って別れた。

かわいいおばあさんだった。

感謝の気持ちを形で表そうとするのを断るのは難しい。
なんせ相手は律儀な年寄りだから、なおのこと難しい。

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ワカメの根（？）の部分です
さっと湯にくぐらせてたたいて細切れにして酢醤油で。
ごま油も少々。

大家さんに、大根５本と白菜６玉（！）をもらって野菜大名です。
だからちょうど買ってきた鶏の手羽元とねぎと大根と白菜の鍋。

今日はシシャモのオスの干物を見つけましたので焼きます。
キャプリンはメスしか食べないようですが、シシャモはそうではないと聞きます。

クラゲがほとんど作ってくれました。

さあ食べよう。

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今日は休肝日です。

一昨日クラゲがアル中の人が出演したテレビ番組を見たらしく、
「私がお酒飲まない日を作ってって言ったら揚水くんどうする？」
とせっぱつまった様子で電話してきました。

ただならぬ様子にどうしたのか問いただすと、テレビで見たその人が大変辛そうだったのだと話してくれました。
「揚水くんは好きで飲んでるんだから私がどうこう言うことじゃないんだけど」
と彼女は言います。
でもいてもたってもいられなくなって電話してきたそうです。
「心配してくれてるんじゃない。ありがとうね」
と僕が言うと、
彼女は
「心配するのも、結局自分が不安になるからそれを解消したいだけ。わがままだよ」
と言います。これはわがままとは言いません。
面倒くさい考え方をする、と言うのです。

でも僕はそんな面倒くさいクラゲが大好きです。

「どうこう言っていいんだよ」
僕はそう言いました。

だから今日は休肝日。
昨日は消防団の集まりがあることが分かっていましたから、飲まないはずがありません。
だから今日にしました。

何ヶ月ぶりでしょうか？

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今日も消防の寄り合いでした。
毎年３月の第１日曜日に、観閲式というものがあって、行進したりポンプ車の放水したりするんですね。


僕らの分団は今年は階梯の担当です。
当日まで毎週練習します。
出初め式の梯子の、上に登らないバージョンだと思ってくれればいいでしょう。
鳶で竹製の梯子を操ります。

過疎化が進み人が少なくてなかなか大変です。

だいたい自分たちで作るのですが、今回僕らの班が夜食の準備を担当して、たまにはいいかと近所の田舎料理屋にお任せで鍋を作ってもらいました。
イノシシってボタン鍋ですよね？

おいしかったです。

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そういえばお正月にエゾジカの刺身を食べました。人んちで。
なぜか僕が持ち合わせていた本ワサビでいただきました。

おいしかった。

クラゲと僕の共同開発レシピに、「ワサビ入りポテトサラダ」があります。
マッシュポテトと生タマネギと水で良く洗った塩蔵ワカメに、たっぷり摺りおろしたワサビを加えマヨネーズで和えます。ワサビとマヨネーズは前もって合わせておきます。ほんの少しポン酢も落とします。

おいしいですよ。

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朝会社に電話した。
また「やることがない」という。休みか。

久しぶりにテレビをつけてみた。
半日、なぜか人に借りていた「エヴァンゲリオン」のビデオを観続けた。

ほとんど観ないで書きものをしていたはずなのに、どうも精神衛生上よろしくなかったのかなあ。考え込んでしまった。
いやまあそんなこたないかな。
ものを書くのにつまずきながらも、なかなか平穏な１日でした。

なのに。
今「ニュースステーション」では新潟の女の子の監禁事件の判決のことを伝えている。

吐き気がする。

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昔いた職場に、全身で、無言有言にそう主張している人がいた。

機会を持たなければならなくて、イヤイヤながら当時僕のつきあっていた女性に引き合わせた後、「いい尻してるなあ、今度貸せ」などとうるさかった。
「替わりにかみさん貸すからさ」などと言う。誰があんなブス。
奥さんにはなんの恨みもない。もともとそうきれいな人でもないかもしれないが、イヤなヤツと長く一緒に暮らしたことでブスな顔になってしまっていた。気の毒としか言いようがない。それに、女をモノだとでも思っているのか？

何せ酒席で、妊娠５ヶ月の奥さんのお腹を蹴ったことを自慢するような男である。それが男だと思っている。
当然そんな人間と一緒に仕事をしていると厭な思いしかしない。２年と少し、一緒に働いた。
最後の頃には、我慢してるうちに気が狂うのではないかとすら考えた。

生まれて初めて人を殺したいと思った。

朝仕事に出ていくと、決まって話題は「昨日はどれだけ呑んでしまった」なんて自慢話だった。
１人で１升空けたら偉いのか？
少なくとも、「俺は男だ」という証明だと思ってはいたようだ。

クズが。

結局僕はその職場を辞めた。クズを憎むことで自分までダメになるような気がした。たとえ僕の方が正しかったとしても。

最近その人のことを思い出すことはほとんどない。
たまに思い出すときに考える。
イヤなヤツなんてそこいらじゅうにいる。
あいつのおかげで少々のことでは腹を立てなくなったなあ。

あれ以来、人を殺したいなんて考えたこともない。

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世の中に流通しているシシャモが実はシシャモじゃないということをご存じでしょうか？
あれはノルウェーやカナダ産の「キャプリン」という名の魚で、シシャモとは近似種ですらない全くの別物だそうです。
それを知ったときは少なからずショックを受けました。僕はシシャモが好きです。クラゲに至っては、居酒屋に行ってこれを注文しないことは考えられないくらい大好きです。
それが実は「ニセモノ」だったなんて。
けれど旨いからいいじゃないか。僕たちはそんな風に話していました。
「でもやっぱり食べてみたいよね」
「うん」
北海道の「鵡川（むかわ）」というところでしか水揚げされないらしくて、ほとんど現地で消費されてしまうらしいのです。

ところが！
昨日僕とクラゲはあるお宅に二人でおじゃまするのに、お酒とそのオチャツミを買いにスーパーに行きました。あったのです。「シシャモ」が。
紛れもなく「本ししゃも」との表示。見慣れた「シシャモ」と違って、ベージュにピンクをうっすら刷いたような美しい色の魚で、キャプリンより一回り小さい魚でした。
「鵡川産」との表示もあります。間違いありません。

当然買っていきました。ラスト一皿でした。

川魚のような匂いのするとてもおいしい魚でした。
この先いつ食べられるか分かりませんが、僕たちは次にシシャモに出会うその時までまたキャプリンを食べ続けるのでしょう。これはこれでおいしい魚ですし。

シシャモは漢字で「柳葉魚」と書くようです。確かに納得できるものがありました。キャプリンは少し柳葉と言うには大きい。

また食べたいなあ。

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一昨日（１月１６日）、仕事の買い物で出た先のショッピングセンターのキャッシュコーナーの前で、従業員証を拾った。

最初「すわキャッシュカードか？」と思ったが、違った。
女の子のものだった

会社の電話番号が書いてあったので電話しようと思っていたのが、すっかり忘れていた。
一昨日は消防団の観閲式の階梯練習の初日だった。
練習が始まる前に会社に電話すると、「ここは本社で、調べたところその社員は本社と別の工場なので折り返しそちらの工場から電話させる」とのことだった。
だがしかし待てど暮らせど連絡は来ない。いらんのか？　いいのか、捨てちまうぞ。

しびれを切らせてもう一度電話すると、「あれ？　掛かってきませんでしたか？」だと。
来ねーよ。
その工場の電話番号を教えるからお手数だが掛けてくれという。
お手数だぞ、ほんと。

工場に電話すると、「着信拒否に合うんですよー」とマヌケなオコトバ。
企業が番号非通知にしてんじゃねーよ。

「本人が夜勤でしばらくしたら出てきますから、電話させます」
「はあはあ」
「取りに行かせますから」
「はあ」
おい、いーのか。女の子なんだろ？　従業員証の写真を見る限りまだ若いねーちゃんだぞ。俺が変なヤツで襲われでもしたらどーすんだ？
郵送するっつってんのに。

しばらくして本人から電話。土曜日（１月１９日）彼女は休み、その日の都合はどうですか、と尋ねられた。
僕も多分休みになりそうだけどまだ分からないから、ことが分かり次第連絡することにして電話番号を教えてもらった。無防備だなあ。
僕は会社に掛けましょうかって聞いてるのに、自分の携帯の方が早いと言う。
そりゃそうだけどもさ。

でも彼氏と一緒に来られたりなんかしたら、きっと俺傷つくなあ。
ケダモノかっての。

なんにせよ持ち主に戻りそうで良かった良かった。

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