through the sleepless nights i cry for you
and wonder who is kissing you
somehow through the day i dont give in
oh the sleepless nights will break my heart in two
ノラ・ジョーンズが歌うsleepless nightsは、「東京タワー」という映画に流れている主題歌だった。特に印象に残らなかった映画だったけれど、オープニングに流れるこのsleepless nights のメロディーラインと、夜の東京タワーの映像の組み合わせが、涙がでる程綺麗だったのを覚えている。
東京からの東海道線、終電にちかい時間帯で座ることができるのは稀だ。電車のドアにおっかかっていると、高層ビルとビルの狭間に東京タワーが見える。あわてて音楽プレーヤーの曲をsleepless nightsにあわせた。一瞬だけ見えるあのだいだいいろの光。その残像とピアノのメロディラインを電車のドア越しに「感じる」。
都心に住んでいるあの先生。大学で出会った初めてのビジネスライクな先生で、キャンパスにいる殆どの先生に感じる洞察力をもって、キャンパスの先生が殆ど講義中に着ないスーツを、いつも全くスキのない形で身にまとっていた。そしてキャンパスにいる他の先生には見たことがない無垢さを持っていた。
私は先生との付き合い方に失敗し、そして失敗せざるを得なかった。その失敗から彼の信用をなくした。どう足掻いても、結局自然に信用をなくしていたと思う。あの時私が失いたくなかったのは、彼の信用よりも大きかったんだろうか。ただあの時の私は先生を失望させるしか方法を見出せなかったし、今でもそれ以外の方法が見つからない。
人生で初めて、本当は保ちたいとおもうその人との交友関係を、自分から崩さなければいけなかった時だ。私と先生は今でも時々、本当に時々メールを交わすが、先生は昔ほど私を信用していない。
時々訪れた先生の家の窓からは、東京タワーが見えた。とても間近にみることができる。生徒が大好きで、彼の家で開かれるホームパーティによく呼んでいた。私も時々そのパーティにお邪魔して、限りなく近い東京タワーを友人たちと一緒に見ていた。パーティはいつも夜で、部屋は間接照明で薄暗い。そこから見える東京タワーは、部屋の中で一番明るかった。あの部屋からは、とても強い光のようにみえた。
30人あまりが集まったあの部屋、それでもその時の記憶はとても静かだ。東京タワーが見える薄暗い部屋、sleepless nightsのメロディラインが響く。
sleepless nights will break my heart in two
静かに流れる歌声は、あの大きな部屋中に記憶の中で響く。
東京タワーがふと視界から消える。都心から離れてゆく電車からは、もうあの光が見えることはない。先生の部屋は、今この瞬間にも東京タワーからの光を受けているだろう。窓の外、薄暗い風景の中、ノラ・ジョーンズの歌声だけが耳に残る。 |