新宿サザンテラスにあった大きな本屋が閉店した。
正確に言うと、縮小したということらしいのだけど…。
まるで、本屋で本が売れなくなったという事の象徴のようだ。
私が小さい頃。
世の中は、週休2日ではなく、土曜日は半チャンだった。
私の父も、家に居るのは日曜だけ。
夜、帰りが遅い仕事だったので、平日、言葉を交わすこともほとんどなかった。
その父との唯一の共通の趣味が読書だった。
日曜日。父と二人でよく駅前のデパートの中に入っている、大きい本屋に出かけた。
父はすぐに、自分のみたい本のところに行ってしまい、私はずっと児童書のところで面白そうな本を探していた。1時間くらい経つと父が迎えに来て、必ず私にも一冊買ってくれた。
いつのまにか、「怪盗ルパン」は全巻揃った。
小学生の頃は当たり前だと思っていたその事が「当たり前」ではないと気付いたのはつい最近だったと思う。
小学校高学年になって都会に引っ越してからも、父はよく本屋につれていってくれた。
中学生になって反抗期に入っても、本屋にだけは一緒に出掛けていた。
大人になっても、夕食の後の散歩は、二人で本屋にでかけることだった。
こんなに身近だった本を買わなくなったのはいつからだったのか…。
多分、結婚して、狭い社宅にはいるようになってからかもしれない。
そこには本棚も本も置く場所もなくて、仕方なく、1回しか読まない本は、近所の図書館で借りることにしたのだった。
子供ができてからは、手元に欲しい本は、ぽちっとすればすぐに手に入るようになって。
昔は映画は映画館でしか見られなかったし、パソコンやスマホなんてものは影も形もなかった。
本を読む時間は、数少ない娯楽の一つだった…。今はたくさんある選択肢の一つでしかない。
でも。
無くなって欲しくない、大切な時間。
最近は老齢の為、目がよく見えないようになってきて、疲れも酷いのだけど。
それでも。
本を読んで、本の世界に浸れる時間は私にとっては宝物だ。 |