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揚水の「人生薔薇色計画」

僕のハンドルは「ようすい」ではなく「あげみ」と読みます。表記はaghemiとしています。

妻の海月は「くらげ」と読みます。



ふりぃのかうんた

yesterday ふりぃのかうんた today ふりぃのかうんた


自分が何者であるか今よりももっとわからず身悶えしていた学生の頃、何をしたらいいのかについて友達と話しに話した。
結論は出なかった。どころか何をしてもいいんだということにすらなった。
ただし、本当に何をしてもいいというのではなかった。
一つだけ基準がある。
それは俺の、俺たちの、ひいてはほかの人たちの人生を薔薇色にするか、その一点。
時々それを思い出しては行動する。
それが僕たちの人生薔薇色計画。



    よそいき仕事日記   

目次 (総目次)   [次の10件を表示]   表紙

2003-06-02 おいおいもう6月じゃんかよ
2003-05-31 べたべた
2003-05-30 遅ればせながら
2003-05-29 そりゃ無茶だろう
2003-05-25 生まれてきてくれて、嬉しい
2003-05-22 流浪 16  いつか来た道、やがて行く道
2003-05-22 流浪 15  桃の里
2003-05-22 流浪 14  水車小屋
2003-05-22 流浪 13  謁見
2003-05-22 流浪 12  銃泥棒


2003-06-02 おいおいもう6月じゃんかよ

スキャナ不調。
でもってパソコンを振り出しに戻した。実に10時間以上もかかって。
普段怠っていた分、バックアップにえらいこと時間かかるんですわ。

結局スキャナは動いてくださいませんでしたとさ。
10時間かけて無駄でしたとさ。
ちゃんちゃん。

しかも海月と僕の大事な記録のファイルが一個とんじゃった。

もう6月になってんじゃん。
しかも2日だよ。

うへえ。

先頭 表紙

ほお! / 揚水 ( 2003-06-10 07:15 )
いえ、仔細あってHNが変わりました。kotaさんとつっこみまくっていた化け猫です。 / 風歌@久しぶりにつっこんだの ( 2003-06-09 07:21 )
ねえ(笑)。 / 揚水 ( 2003-06-05 20:54 )
ああ、そうか、そういう見方もできるんだと妙に納得。気付かなかった。迂闊。 / 揚水@おはつでしたでしょうか? ( 2003-06-05 20:53 )
パソの根本的なお手入れ、ずっと先延ばしにしてていい加減やろうと思った矢先にここ読んで、再び挫折。そうなのよ、時間と手間と労力・・・で、スッキリしないんじゃねぇ・・・・ / 働くおばさん@kotarou? ( 2003-06-04 10:12 )
もう1年が半分・・などというベタなことは言いません・・・・怒涛の後半です。 / 風歌 ( 2003-06-02 07:54 )

2003-05-31 べたべた

くっついて離れてまたくっついて、眠る。

久し振りに2日も休みが重なった。

ただ一緒にいるだけ。

先頭 表紙

でがしょ? / 揚水 ( 2003-06-05 20:50 )
それが何よりでげす。こっちも一緒。 / 夢樂堂 ( 2003-06-01 12:46 )

2003-05-30 遅ればせながら

『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』、買いました。

映画『ブレードランナー』観てないんですけどね。

先頭 表紙

2003-05-29 そりゃ無茶だろう

わったっしゃっお〜んがっくっかっ、やっまっのっこっりっすー♪

「仔」リスである必要はあるのか?
リスでいいだろ? リスでさあ。

メロディーライン上、音(おん)が一個余る。
栗鼠だ。
そうだ、仔リスにしちまえ。
これですべての問題は解決さ!

辻褄が合いさえすればいいのか?
乱暴だなあ、と思う。

でもこの歌、大好きです。
上手にヴァイオリンは弾けませんが、数少ない下手くそなチェロのレパートリーですし。

ごめんなさい、焼酎でかなり酔っ払ってます。
おやすみなさい。

きゅきゅきゅっきゅっきゅー、てなもんだ。

いかがです?

先頭 表紙

あらためまして下の記事にまとめレス。みなさんおめでとう。 / 揚水 ( 2003-06-05 20:52 )
訂正済み。もり→やま。 / 揚水 ( 2003-05-30 09:06 )
伴奏つけてあげよっかぁ!山の子リス〜♪じゃなかったっけな? / みるみる@Atelier ( 2003-05-30 07:18 )
ベースもギターもチェロもドラムも、ほんのさわりだけ(笑)。 / 揚水 ( 2003-05-30 00:16 )
弾けません(笑)。音が出せるくらいです。チューニングに30分は掛かる(笑)。 その三味線なら夢樂堂さん、僕も弾けますよ(笑)。 / 揚水 ( 2003-05-30 00:13 )
ゴーシュ、ということは弾けない、ということですねえ(笑)。当たりです。 / 揚水@ちゃんと読んでないや ( 2003-05-30 00:10 )
酔っぱらいながら一緒にセッションしたいものです。横レスすいません 夢樂堂さん、三味線!すごいですね!! / りょう ( 2003-05-29 23:06 )
チェロが弾けるんですか。夢樂堂は三味線しか弾けない。楽器ではなく・・・・ / 夢樂堂 ( 2003-05-29 15:06 )
うん、上手、上手。(^v^) セロ弾きのゴーシュみたい♪  / ぷらら(^▽^) ( 2003-05-29 09:30 )

2003-05-25 生まれてきてくれて、嬉しい

いつか機会があって君に聞かせる日が来るかもしれない。
でもそんな日は来ないかもしれない。

君が生まれてきて、お母さんやお父さん、おじいちゃんやおばあちゃん、そうした人たち以外にも嬉しい人間がいることを、君にいつか知ってもらえる日が来れば、その時僕はどんなに嬉しいだろう。

そのことを想像するだけで、僕は自然に目が細くなる。

僕も彼女も、君が生まれてきてくれて、嬉しい。

今日は君の一歳のお誕生日ですね。

おめでとう。

先頭 表紙

↓酔っ払ってるかも、言葉が変だ(苦笑) 誕生日もだけど、毎日がブランニューです^^ / りょう@親ばか再び ( 2003-05-29 23:09 )
生まれた日、そして誕生日、毎年が感動です。ものすごいプレゼントだなあと、毎年思います・・・^^ / りょう@親ばか ( 2003-05-29 23:07 )
とりあえずまとめレス失礼。この言葉は、皆さんにも言うことが出来ます。 / 揚水 ( 2003-05-29 02:40 )
おめでとう。 / jinko ( 2003-05-28 10:22 )
私ももうすぐ誕生日です。私にもこうやって思ってくれる人がいるだろうか・・・ってちょっと考えてしまいました(笑) / 綺羅 ( 2003-05-28 04:08 )
おめでとう!生命の誕生は素晴らしきもの。そしてその成長も。 / みるみる@Atelier ( 2003-05-27 11:52 )
全てに感謝!! / もげんぴのハニー ( 2003-05-27 09:02 )
誕生、それは無尽蔵の可能性を秘めているのと同じ意味を持ちます。ブラボー、中島みゆき風にいうなら『生まれてきて ウェルカム』切れの / 夢樂堂 ( 2003-05-26 17:37 )
ありがとう!慧地君ばんざーい!揚水ばんざーい!海月ばんざーい!ハニーばんざーい!私ばんざーい! / もげんぴ ( 2003-05-26 09:52 )
揚水さまにも、おめでとうを。  / フローラ ( 2003-05-26 05:45 )
一歳のお誕生日に戻って、その言葉を聞きたくなりました。(^v^)  / ぷらら(^▽^) ( 2003-05-25 23:29 )

2003-05-22 流浪 16  いつか来た道、やがて行く道

る物はぼろぼろだ、里の女に頼んで二揃い誂えておいたから、それを自分で取ってこい。僕は今日は勝手に炭を焼く気になっていたのでなんだか調子が狂ったように感じた。それに僕はここに来てから男以外の人間に会うのは初めてだ。食料を持ってくる農婦にも鉄屋にも顔を合わせたことがない。僕の心の動きを読んだか、男は言った。心配するな、里の人間は知らないうちに知らない奴がいるようになることには慣れっこだ。もとは自分もそうやってやってきた人間ばかりだからな。仕事に熱中するあまり、初めのうち感じていていつのまにか忘れそうになっていた疑問を、僕は男に問うてみた。いったい、どういうところなんですか? その、里、というのは。どうもこうもない、そういうところさ。男の答えは簡潔だったが、僕にはどうも要領を得ない。重ねて僕は同じ事を問うた。男は答えにくそうに、それでも判りやすいよう言葉を選んで話してくれた。説明するのは難しいんだ。どうしてそうなのかは判らない、いつからあるのかも判らない、ここの里は、どこにも行きようのない人間がやってきて暮らしている。どうしてやってくるのか、またやってこられるのかも判らない。行き場のない人間すべてがここに来るというのでもなさそうだ。新しい人間がやってくるのはたまのことだからな。僕のように、ですか? そう、だな。人間そのものが生まれ変わる訳じゃないさ、それでも今までの役割から降りて、ここで新しい役割を与えられる。与えられる? 与えられる、というのも違う、新しい役割を得る機会を与えられるのかな。だとすれば僕に与えられる役割とはなんなのだろう。男の言葉を聞きながら僕は考える。一人で暮らす者もいれば所帯を持つ者もいる。ここで生まれた人はいないんですか? もちろんいる。そんなに次々と、いくらたまにではあっても人がやってきて、里に人が溢れるようなことはないんですか? ああ、それはないな。何故? やってきた人間ここで生まれた人間の区別なく、いなくなるんだ。いなくなるんですか。そう、やってきたときと同じように、すうっと、今度はいなくなる。残された人は悲しくないんでしょうか。淋しいとは思うだろうな、けれど悲しむことじゃない。ここに来て自分の役割を得たのと同じように、またどこかで新しい役割を得ているんだろうからな。まあ、上手く説明出来たかどうか判らないが、ここはそういうところだ。僕は納得したようなしないような、なんともあやふやな心持ちだった。とにかく行ってこい、ついでにこれも届けてくれ。男は油紙に包んだ縫い針を僕に手渡した。僕は男に教えられた道順どおり、小川に沿って歩き出した。男の小屋は林に囲まれているが、しばらく歩くと視界がひらけてきた。小川から分かれて用水が切ってある。代掻きの済んだ田圃には水が張られている。それよりも。林から出た僕の視界の一番先に、そして視界の一番多くを占めたのは、桃。一面咲き乱れる見事な桃だった。田圃より高いところにある畑、草葺きの家々の庭、道筋、山の斜面、至るところに桃が植えられている。来たはずもない場所なのになぜか懐かしい。道を行く僕を見て、田や畑で作業する人々が頭を下げて挨拶してくれる。自然に僕も会釈を返した。その彼らの顔にも説明できない懐かしさを感じた。かつてどこかで会った、それも親しくしていた顔があるのかもしれない。けれど僕には誰がかつて会った人間なのか、それが誰なのか、どこで会った人間なのか判らない。里とは、こうしたところなのだろう。男に説明を受けても判らなかったことが、この場所にいればなんとは

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今回は長いっすよ、多分。文字制限は確かにそうなんですけど、それでもいいところで区切ってるつもりでいるんですよぉ。 / 揚水 ( 2003-05-29 02:39 )
ぬお 久しぶりの長編ね。読んでます。いいとこで終わるんじゃなくて・・・突然終わるの・・(笑) 文字制限ね? / りょう ( 2003-05-24 01:26 )

2003-05-22 流浪 15  桃の里

か、里の下からやってくるか、それだけのことだ。上からか下からか、何か違いでもあるんですか? なに、たいした違いもない。まあどっちにしろ上にも下にもいられないような者がやってくるところさ。その言葉を聞いて考えた。あの兵士たちのうちどれだけかは里に辿り着いたのだろうか? 男もまたどこかにいられなくなってここにやってきたのだろうか。僕はどこにいられなくなってここにいるのだろう? 男は、鍛冶屋だった。鋤や鍬や鎌、包丁などを打っている。小さなところでは釘や鎹、釣針やヤスも打つ。鍋釜の鋳掛もやるようだ。僕はまだ里がどんなところなのかさえ知らないが、里の暮らしに必要な金物の仕事の類一切は男がやっているということになる。打たないのは刀くらいのものだ。僕は男の仕事を手伝いながら居候させてもらうようなかたちになった。水車小屋は男の仕事場だった。小屋中に革のベルトが張り巡らされ、水車の回転を動力に、鎚や鞴や砥石が動くようになっていた。僕がやってきた時は動力の源のベルトがはずされていて静かだった。流れてくる鉄屋から受け取るのだという玉鋼や砂鉄、打ち直すために里から持ち込まれた農具や刃物、炭、そういったものを運ぶ単純な作業の次に覚えさせられたのが、どのベルトをどこのどの軸に掛ければどこの動力になるかという組み合わせだった。まわっている軸によく張られた革のベルトを掛ける際に指を巻き込まれないように気を付けさえすれば、力は必要だったが難しい仕事ではなかった。しばらく小屋の仕事を続けるうちに僕の何かを認めてくれたのか、男が他所からやってきた者と何らかの交渉をもっている間、それは鉄屋でもあれば野菜や米を持ってきてくれた近在の農婦であったりもしたが、男が客の訪問を受けている間、荒打ちをやらせてくれるようになった。彼が小屋の外で話をしている間も鎚音が響くのを聞いて、訪れた人間は彼以外にもこの小屋にいる者があることを自然に知ったようだった。俺の古着で悪いがな。彼はまた、そう言いながら数少ない衣類の中から作業着兼普段着の、しっかりした生地の木綿の股引と筒袖の単、腹掛けを分け与えてくれた。手で鎚を振るって刃物を鍛える際は地面の上で中腰で行うが、荒打ちは地面に掘った穴に腰掛けて行う。穴は二段に掘られていて、浅いところに腰掛け、深いところは足を伸ばせるようになっている。伸ばした足の間には金床があり、その先には火床がある。金床の上には上下に動く鎚が設えてある。水車の動力によって断続して鎚が刃物を打つ仕組みになっている。右手には楫棒があり、少しずつ段差のついた円錐状の軸に掛けられたベルトが動かせるようになっている。軸の細い方にベルトを掛ければ回転が速く、太いほうに掛ければ回転が遅くなる。一番太い方の外側には空転する、鎚とは連結していない別の軸があり、そこにベルトを掛けておけば鎚は動かない。左手には手押しの鞴がある。水車の動力による鞴は炭の火を熾しておくだけの空気しか送っていない。鋼や鉄を灼くために火床の炭火をさらに強く熾す時、手押しの鞴を押す。あちこちの軸が軋む音、ベルトが空を切ってしなる音、さまざまな速度に自分で調節した鎚の響く音、暗い小屋の中に入ると、そうした音の中で僕は鉄を打つ仕事に没頭した。炭火ばかりが、赫い。小屋の外ではさまざまなものを運んだ。男の一日の仕事は陽が昇れば始まり、陽が沈めば終わった。だから外ではたとえ雨天でもすべてのものが明るかった。僕はどちらの仕事も好んだ。里に行ってこい。ある朝男が言った。今日は急ぎで片付ける仕事もない。お前の着て

先頭 表紙

2003-05-22 流浪 14  水車小屋

猿ならよかったのかもしれないが、森のけもののうちの誰かに撃たれる危険を冒させるくらいなら、偶然ふらふらしていた同じ人間にやらせる方がいいに決まっている。なに利用されたのならされたで構わないさ。僕は最後に王に会うことが出来て満足した。跳んだ甲斐はあった。僕の周りで宙に浮いている男たちの顔も、何かから開放されたように満足げに見えた。振り仰げば、森の王はいたずらを見つかった子供のような目で僕を見ている。多分王は笑っている。さようなら。僕たちがいなくなれば、彼らはまた束の間かもしれないが、平和な当たり前の暮らしに戻るのだろう。喰うものと喰われるものが仲良く集まったりはしない当たり前の暮らしに。僕は心の中で王に、森のけものたちに別れを告げた。雨が落ちてきた。川は、今日も澄んだ水ながら、黝い。僕は流れに飲み込まれた。おい、死んでるのか? 生きてるんなら返事しろ。僕は肩口を軽く蹴られて目を覚ました。なんだ、生きてるのか。僕は小川の淵に突っ伏していたが、川底から低く斜めに突き立った枯木に両腕をあずけるかたちでいたので溺死せずに済んでいたらしい。はい。僕は身を起こしながら返事をした。こっちは、ああ、ダメだな。少し離れたところから、同じ声が言った。僕と同じように川に突っ伏した、そして僕と違って水に顔をつけた男の肩を僕にしたように足の甲で引っ掛けてすくい上げながら、誰に話すともなく男は言った。おい、手伝え。今度ははっきり僕に向けた言葉だ。まだぼんやりとした頭のまま僕は男を手伝って川から男の死体を引き上げ、穴を掘って埋めた。僕と一緒に流されてきた兵士のうちの一人に違いない。よく晴れている。晴れてはいるが、そこいらに雨の名残りがある。水溜りやぬかるみがあるし、草木の葉はまだたっぷり濡れている。しっかり降って、それから晴れたらしい。水滴が陽射しに輝いている。他の兵士はどこに行ったのだろう? 穴を掘る際、僕は自分のシャベルを使おうと背中を探ってそこにシャベルがないことに初めて気付いた。山菜と、干し肉と腸詰の皮袋は無事だった。固く口を縛っておいたので中身はほとんど濡れていない。濡れて動きにくいので上半身裸になって作業した。男が用意した鋤で穴を掘った。じき午だ。男はまた誰に話すともない口調でそう言った。男は僕を自分の小屋に案内して飯を食わせてくれた。男の小屋は二棟あって、そのうち大きな方は外に水車が付いている。通りすがりに中をちらりと覗いてみたが、中は暗く外からはほとんど様子がわからない。小さな小屋は明るかった。粗末だがよく片付いていて清潔だった。その明るい小屋の中で昼飯をよばれた。玄米と黍の飯に焼いた川魚、蕪の汁物だけの質素な飯だった。僕は皮袋を男に差し出した。男は黙ってそれを受け取った。山菜を自在鉤にかかった汁物の鍋の中に放り込んで、干し肉は炉の火で軽く炙った。余った干し肉と腸詰は、風通しをよくした水屋に仕舞っていた。食事の間、男は終始無言だった。僕も黙って飯を食った。居心地の悪いことはなかった。食べ終わって男が口を開いた。お前は上から落ちてきたクチか、それとも下から上がってきたクチか? 僕は質問の意味が判らず、川に流されてきたはずなので、多分上から、と答えた。あなたは? 俺か? ふ…ん、俺はまあ、下からさ。上からとか下からとか、そんなに人がやってくるんですか? たまにな。その割りに、ここは静かだ。男と僕以外に人のいる気配もしない。僕の疑問を見透かすように男が言った、ここは里の一番はずれだ。この下には小さな集落がある。ここの上からやってくる

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2003-05-22 流浪 13  謁見

は十五人の男たちからすべての銃火器を盗み出した。やはりあなたがここの王だったのですね。牡鹿の瞳は怒りに燃えている。翌朝男たちは自分たちが一切の武器を失ったことに気が付いた。もちろん最初は敵の仕業と考え、血眼になって武器と敵の両方を探し始めた。それぞれが、お互いに。そうこうするうちに敵味方がばったり出喰わした。十五人が一堂に会することとなった。そこで初めて彼らは味方のみならず、自分たちの敵も武器を失っていることを知った。では誰が俺たちの武器を盗んだのだ? 奇妙なことに、十五人の男たちは、敵味方の別なく自分たちから武器を盗んだ犯人を探すことで一致団結した。探せ。探せ。俺たちから武器を奪った盗人を、探せ。彼らはまた殺し合うためにか、それとももう殺し合うことに疲れ切っていたためか、武器を盗んだ犯人を探すことに目的をすり替えた。僕はといえば山菜と腸詰を朝食に食べ終わり、最初の目的どおり鹿を探して、これまでのようにただ横に居合わせるのでなく彼に会い、それから対岸に帰ろうと呑気に構えていた。曇天とはいえ多少なりとも光を浴びたくて、林が切れたところから川を見下ろしながら、川原に出るのに都合のよい道筋を探して歩いていた。昨夜の雲はますます厚みを増してきた。雨が来そうだ。崖を左手に歩いているところを男たちに見つかり、吊るし上げに遭った。お前は何者だ? 何故俺たちの武器を盗んだ? あいつを殺したのもお前か? 答えろ! 答えろ! あいつとは僕の埋めた男のことだろうか。彼を殺したのは僕じゃない、あなた方でしょう。僕は彼らの質問に、それだけ答えた。しこたま殴られた。玄人に殴り続けられたら、これは本当に死んでしまうな。痛みから逃れるためにそんなことを考えていた。そこに森のけものたちが現れた。やはりあなたがここの王だったのですね。先頭に立った牡鹿は多くのけものを付き従えていた。熊、猪、猿、鹿、狸、狐、栗鼠、名前も知らないけもの、虫や蛇、その他多くの禽類。力の弱いものは後ろの方から事の推移を見守るように佇んでいる。力の強いけものたちが押し出してきた。男たちは僕を殴りつけていたときの威勢も忘れ、蒼ざめている。王やその仲間は次々と人間らを川に突き落としていく。僕は違うと言おうとして、止めた。森の王にしてみれば、今や僕も彼らも同じことだ。望まなかったこととはいえ、一方的に殴られているとはいえ、僕も戦闘に参加してしまっているようなものだ。間違いなく僕は彼らと、争っている。やっと会えたのに。僕は体を彼の角にかけられながらそう思った。王の瞳は優しかった。僕はそれを意外に感じた。落ちながら、僕は知った。いずれ王は彼ら戦う人間たちを自分の森から追放したことだろう。けれどそうしたことは今までに何度も繰り返されてきたのだ。人間たちは追い出しても追い出しても、次から次にやってきた。猟をする者。彼らは過分に殺した。樹々をなぎ払い土砂を削り珍妙な箱を次々に作る者。彼らはそこに住み着いた。そして今互いに殺し合うために山の奥までやってきた者たち。彼らはかつての猟師以上に過分に殺した。やがてかつて以上に住み着く者も現れるだろう。ただ僕のように訳も判らずやってくる者はなかった。王には人間たちが何故自分たちの森にやってくるのかその理由は判らなかったが、自分でもよく判らないままにやってくる者はさらに珍しかった。まったくもって僕は闖入者だった訳だ。王にしてみれば、殺し合う人間どもの武器を取り上げるのにその闖入者を上手く利用した格好になる。熊に銃を盗ませる訳にもいくまい。それでも例えば

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2003-05-22 流浪 12  銃泥棒

た。せめてもの虫除けに露出した肌に蓬を摺り込んで、今夜は潅木の大きめな藪にでももぐって寝ることにした。しかし腹が減った。これから火を起こすのが億劫でもあったし暗くなってきたのに焚き火などしては、その灯かりを見咎められる恐れがある。もっとも明るい時であれば煙が目に付くであろうが。今はもう暗い。火は目立つ。そういう時にわざわざ火を起こす間抜けもないだろうと思い、片手を枕に生乾きの干し肉を取り出して齧っていた。腹がふくれても興奮しているせいか昼間寝ていたためか、なかなか眠くならない。ふと繁みの外に目をやると、間抜けがいた。さっきまではいなかったところに人がいるところをみると、眠れないと思いながらも少しはうとうとしていたものらしい。数人の男が疲れきった様子で火を囲んでいる。足音を忍ばせて藪を出た。素人の僕ですらしなかったような間抜けな真似をしている奴らがいる。しかも、そこここに。歩き回って、四箇所に、三人、四人、三人、五人。都合十五人の男を見つけた。それらの男がお互いに敵であるのか味方であるのか、僕にはなかなか見分けがつかない。すべての男が呆けたように火を眺めている。それほど彼らは倦んでいるのだろう。それとも見つかって撃たれて死ぬのを望んでいるとでもいうのだろうか。きっとそこまでも考えてはいないのだろう。彼らは多分、とても疲れている。僕は頭上を見上げた。いつのまにか曇っていて、今夜は星が見えない。明日は雨になるかもしれない。十五人という数字が僕にとって多いのか少ないのかわからない。彼らをそれぞれ訪なって争いを止めるように説いてまわるのか。そんなことは考えるだけでも馬鹿馬鹿しい。怪しまれない訳がない。どうせ説得するなら何箇所もまわるよりも彼らが一堂に会した場所のほうが都合がいい。だがしかし彼らがひとところにいるということはすなわちそこが戦場だということを意味する。彼らの争いのさなかにのこのこ顔を出せば誰かの銃弾に斃れて一巻の終わりというのも間違いないだろう。争いを止めさせるにはその無益さを訴えるだけでは済まされない。けれどそもそも僕が争いを止めなければならない理由があるだろうか? 理由と呼べるようなものはない。だが僕は自分が川を渡った理由なら知っている。僕は、王の怒りに呼ばれてこちらにやってきた。王は人と人が争うことに煩わしさを感じていた。それでも王は彼らを初めのうちは放っておいた。争うことに倦み疲れた彼らがいたずらに森の生き物を殺し始めるにおよんで、煩わしさは怒りに変わった。昨日今日ここにやってきたばかりの僕に、何故だかそうしたことがよく伝わってくる。人間の起こしたことの始末は人間の手でつけなければならない。森の王に任せるのは、それは無責任というものだろう。けれど僕はどうやってその始末をつければいいのか判らない。僕は一番人数の多い焚き火をそっと伺っていた。彼らが寝入るのを待って銃を盗んでまわろうと思う。そして銃を、捨てる。そう考えている。そして同時にそんなことは不可能だとも思っている。それが出来ないと言うのなら、どうして俺はこんなところまでやってきたのだ。僕は途方に暮れた。急に眠気を覚えた。気が付けば僕と少し離れたところから、牡鹿が焚き火の周りの男たちを見つめている。牡鹿は男たちを、人間を眠らせようとしている。それがこれから僕が働こうとしている盗みを手助けするためなのかどうか判らないが、僕には都合がいい。男たちは糸が切れたように寝入ってしまった。僕も眠気を覚えているが、かろうじて起きていられる。牡鹿は姿を消した。僕

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