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揚水の「人生薔薇色計画」

僕のハンドルは「ようすい」ではなく「あげみ」と読みます。表記はaghemiとしています。

妻の海月は「くらげ」と読みます。



ふりぃのかうんた

yesterday ふりぃのかうんた today ふりぃのかうんた


自分が何者であるか今よりももっとわからず身悶えしていた学生の頃、何をしたらいいのかについて友達と話しに話した。
結論は出なかった。どころか何をしてもいいんだということにすらなった。
ただし、本当に何をしてもいいというのではなかった。
一つだけ基準がある。
それは俺の、俺たちの、ひいてはほかの人たちの人生を薔薇色にするか、その一点。
時々それを思い出しては行動する。
それが僕たちの人生薔薇色計画。



    よそいき仕事日記   

目次 (総目次)   [次の10件を表示]   表紙

2003-05-16 流浪 9  撃たれる
2003-05-15 流浪 8  川を渡る
2003-05-15 流浪 7  山中の王
2003-05-14 味噌汁療法
2003-05-14 流浪 6  鹿
2003-05-13 流浪 5  さらに落ちる
2003-05-13 流浪 4  清浄な汚穢
2003-05-11 砂漠に一滴の水を求む
2003-05-11 流浪 3  淡い燐光放ち深く澄んで
2003-05-09 流浪 2  屋上の猿


2003-05-16 流浪 9  撃たれる

めの音ではないように思われる。一体誰がこんなところで銃を使う必要があるのだろう。腰に皮袋を結びつけながら僕は訝しく思った。答えはすぐに知れた。潅木の繁みを漕ぎ樹間を走り岩によじ登って銃声の元に近付く。たららららららら。今度はセミオートの銃声が響く。大きな岩の上に身を潜めて下を除くと、数人の男たちが場違いにも戦争をしていた。双方ともに、疲れきっている様子が見てとれる。小競り合いは突然始まり、そしてまた唐突に終わった。傷ついた男が一人取り残されている。他の男たちは三々五々そこを立ち去った。残された男を連れて行こうとする味方もいない。もう彼は手遅れなのかもしれなかった。僕はまた王の怒りが膨れ上がるのを感じた。なぜ殺す、なぜ殺す、なぜ殺す? 王は怒っている。戸惑いながら怒っている。王にはきっと理由もなく殺しあっているようにしか思えないことだろう。食べる訳でもない。そのまますれ違ってしまえばお互いの縄張りを侵すのでもない。進んで縄張りの境い目に火種を起こして、殺し合う。王にはきっとその殺し合いの理由が理解できない。僕は取り残された男に近付いた。注意して歩いていたつもりが、僕の靴の下で小枝の折れる音がした。死にかけている者とは思えない身のこなしで、男の拳銃が火を吹いた。そちらに避けるのが正しいのかどうかも判らないまま、反射的に体を右に捩った。左の頬がちりりと熱くなった。ぬるりとしたものが頬を伝う。小銃以外にもまだ銃があるのか。一体どれだけの武器を携行しているのか、僕は呆れた。なんだ、民間人か、すまない。男は僕の姿を認めると力無く、つまらなそうに、詫びた。どうしてこんなところにいる? 僕は判らない、と答えた。あなた方こそどうしてこんなところで戦争しているんです。僕は逆に尋ねた。知るもんか。男は僕から目を逸らした。僕はポケットからぼろぼろに崩れた煙草を取り出し、自分の頬の傷口に当てた。何をしている? 血止めです。そうか。男はけだるく自分の背嚢の中を探った。ほらよ。男が投げてよこしたものを空中で受け止めると、ファーストエイドキットだった。俺にはもう必要ない。そのようですね。僕は男の顔を見た。目の周りがどす黒くなっている。出血が多すぎる。どのみち助かるまい。男の救急セットを開き、煙草の葉の上から傷口に絆創膏を貼った。逃げないのか? あなたが死んだら埋めてあげます。そうか、じゃあ俺が死ぬまではここから離れられないな。僕は黙って男の向かいに腰を下ろした。せっかく開放されたように思っていたが、どうやらそれも錯覚のようだ。もともと逃げるという自覚があったのでもないが、自分が人間であることから逃げ出すことは出来ない。男は自分でももう判らなくなってしまったいきさつを語る。その語りはいかにも言葉足らずだ。そもそも自分たちが何故戦争をしているのかすら判ってはいない。だから当然どうしてここが戦場に選ばれたのか、彼に知る由もない。戦う場所がどうして戦場となったのか、戦う理由がなんなのかを知らずとも戦う。兵士とはそうしたものなのかもしれなかった。ともあれ彼らはやってきて戦争を始めた。彼は職務に忠実な軍人だったようだ。戦争に没頭していた。しかしそのうち味方の数も減り、それに相俟って敵もまた数を減らしていっているようだった。規律も次第に乱れ、数人がしっかりと団体行動をとることも次第に難しくなってきたようだ。それは敵にしても同じことだったようだと彼は語る。何故俺たちは殺し合いを続けなくちゃならないんだ? 僕はつい、判りませんと答えてしまった。そうだろうな、

先頭 表紙

あいあい、承知。 / 揚水 ( 2003-05-17 23:55 )
ただいまシンクロ率70%です。もうしばしお待ちください^^;。 / あみすけ ( 2003-05-17 09:47 )
あいややや、まだ観に行ってないわ、そういや。 / 揚水 ( 2003-05-16 12:51 )
お越しを首を長くして待ってましたよ、あみさん。 / 揚水 ( 2003-05-16 12:51 )
どうされましたか? ぷららさん。 / 揚水 ( 2003-05-16 12:50 )
さてはおぬし、ソフィ カルに触発されたなー? / もげんぴ ( 2003-05-16 09:19 )
おひさです!あまりに久し振りに来たので、ゆっくり読ませていただきますね!わくわく!! / あみすけ@再起動準備中! ( 2003-05-16 05:23 )
あれっ・・・? キョロキョロ・・・。 / ぷらら@サバイバー? ( 2003-05-16 00:49 )

2003-05-15 流浪 8  川を渡る

岸から上がった場所に戻ることにした。釜から野草を取り出し川原の平らな石の上に拡げて干す。試しに蕨を食べてみた。どうにか食べられそうだ。ナイフにはのこぎりも錐も付いている。水筒を作ろうと竹薮を探してみたが見当たらなかった。川から離れて行動することは難しそうだ。沢を探しながら歩かなければなるまい。蔓草を集め、川縁の石の上で別の石を使って叩き、ほぐしておいた。自分の小指より少し細い縄を、一尋分だけなう。なった縄はポケットに押し込み、僕は余りの蔓を腰に巻きつけた。罠を確かめに行く。草の先端を他の草の胴に滑って移動できるように結わえ付けておき、胴に結わえ付けられた方の先端を、同じように今度は逆に先端を結びつけた方の胴に結わえておく。そうするとそこにけものが顔を突っ込めば締め上がるようになっている。兎が二匹かかっていた。一匹はまだもがいていたが、もう一匹はずいぶんぐったりしていた。こんなちゃちな罠に同時に二匹も獲物がかかることも少ないだろう。僕は二匹の首を折って締め、頚動脈を切って、片手で瓶を二本持つようにして踵を指の間に挟み、ぶら下げて岸に戻った。蔓草で枝に下げて血抜きをする。頃合いを見て中が中空の草の茎を頸の傷に突き立て、皮と肉の間に差し込む。茎を口に咥え、思い切り息を吹き込む。めりめりと皮が剥がれる。首と四肢の先を落とす。皮を体から剥きとる。四肢の先は皮をめくって焼いて食べた。首は穴を掘って埋めようと思ったが、草叢に放り投げた。誰かが、何ものかが食べるだろう。体から剥いだ皮は裏返し唾液をまぶしてなめし、木陰に吊るした。膀胱と腸を傷つけないように注意して腹を割き、内臓を取り出した。腸は川辺で裏返し、中をよく洗った。焚き火の火を再び起こし、一匹は食べられる分を焼いて食べた。内蔵は川に晒して血抜きをし、これも焼いて食べた。あとに残る肉とまるまる一匹分、捌きやすい部分は焚き火の火を弱め生木と生草を積み、中に入れて燻した。骨についた肉はナイフでこそいで石ですりつぶし、洗った腸に詰めた。腸にはまだ余裕がある。空いた部分には体の肉を足すことにした。これも焚き火の枝や草の中に突っ込んで燻した。腸詰はそのままにして肉は干し肉にしようと岩場に並べた。しばらく寝た。午を少し過ぎた頃起きた。干しておいた野草を四肢の部分を縛った皮袋に詰めた。肉はまだ生乾きだったが、幅広の草の葉を三角形になるように折りたたんで包んで、その包みをいくつか作り、腸詰と一緒にもう片方の皮袋に詰めた。僕は火に土を被せ、上流に向かって歩き出す。王は、やはり怒っている。急がなければならない、僕にはなぜかそう思えた。川幅が狭く流れが緩やかな場所を見つけて、さらに少し上流に歩いて川原に出た。僕は服を脱ぎ皮袋二つと蔓草をシャツに包み、袖を縛った。さらにそれと靴、靴下や下着を上着に包んでこれも袖を縛り、蔓草でなった縄で頭の上に結わえた。その時、対岸で銃声が響いた。鳥の群れが飛び立つ。やはり僕のほかにもこの世界への侵入者がいる。王の怒りの元は、彼らに向けられたものだったようだ。僕は川に入って対岸に向かって泳ぎ始めた。僕が行ったところで対岸の騒ぎがどうなるというものでもないだろう。けれど僕はあちらに行かなければならないように思った。思ったより流れは緩やかで、目標にした川原よりもずいぶん上の淵に泳ぎ着いた。岩が切り立ってそこからは上がれそうもないので、僕は川の流れに身を任せてしばらく流されていった。川原から岸に上がり、出来るだけ素早く身支度をした。その時もう一度銃声が響いた。狩りのた

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2003-05-15 流浪 7  山中の王

まな色と光に溢れている。水を飲みに岸まで戻って、僕はいつまでも空を眺めていた。王は、怒っている。朝、体中のあちこちが痒くて目を覚ました。光の宴に気を取られていた時刻からすでに何箇所も吸血昆虫に襲われていた。疲れと満足感からその時は気にとめていなかった。虫は夜中もさらに、毛皮の防護をまとわずひ弱で食事するのに普段のものより楽で都合のよい、また滅多に出会うことのない獲物に遠慮仮借なく襲撃してきたようだった。飛来する羽音を少し煩わしいと思っただけで、僕はぐっすりと眠っていた。陽が昇り暖かくなり、体中が痒くて起きてしまった。そこいらをぼりぼり掻きむしりながら立ち上がり、蓬を探して若芽をちぎり摘み取った。口に含んでよく噛んで、虫刺されの皮膚に摺り込んだ。たいていの場所の腫れと痒みは割合いすぐに引いたが、数箇所しつこく残りそうな腫れの引かないところがある。今夜から気をつけなければならない。岸に出て口を漱ぎ顔を洗い、水を飲んだ。それから昨夕いくつか仕掛けておいた蔓草を手繰り寄せてみた。あまり期待していなかったのに、結構魚がかかっている。先に薪を集めておけばよかった。食べられるだけの数を選び、小さいものから順に川へ放した。上着のポケットには折りたたみナイフとライターがある。煙草はすっかり形が崩れてしまっていた。まだ少し湿っている。捨ててしまおうかとも思ったが、こんなところに異物を捨てることははばかられた。僕はいったん取り出した煙草の包みをまたポケットにねじ込んだ。日向の乾いた平たい場所に浅い穴を掘って火を起こし、串状の小枝に魚を刺して焼いて食べた。けものみちの罠にはまだ近づかないでおいた。腹もふくれてまたもう一度口を漱いだ僕は、また下流に向かって歩いていくことにした。王は怒っている。僕は草を編んで魚を獲るものより大きめの籠を編んで、野草を摘んでまわった。出掛ける前に焚き火の火を強めにして、その中にいくつも石を放り込んでおいた。穴を掘って粘土を集めた。川原の石をどけて釜状の窪みを作り、中に集めた粘土を張り込んだ。焚き火の中から灰を集め、窪みの下に敷きこむ。集めた野草をその上に置き、さらに上から灰をかけ、よくまぶす。広い形をした葉っぱで柄杓状のものを作り、水を汲む。灼いた石を放り込む。水が沸き立ったところで棒でかき回す。さらに石を加える。葉のよく繁った木の枝をいくつか折り取って窪みに押し込んで蓋をしておいた。僕はそれから下流へ、擁壁に向かって歩いていく。どうも、気になる。対岸から、岸のこちら側にいてそれと判るほどの怒りの気配がする。初め、いきなりやってきた僕が生き物を採集していることに対するものかと思ったが、どうも僕に向けられた怒りでもなさそうだ。僕のほかにも侵入者がいるのだろうか。擁壁の上に立って滝の先を見遣る。いくつも山並みが重なり遥か彼方まで続いている。川はいずれ海に注ぐのだろう。けれどここからはまったく海らしき姿は見えない。山は笑っているようにも見える。今まで見慣れた山並みとはどこか違う。しばらく青々とした山を見下ろしていて、ようやく僕はその理由に思い至った。杉一色、檜一色に埋められた山肌が見受けられない。植林された土地がここからは見ることが出来ないのだ。これだけ広い範囲に人の手が入っていない山があるということがありえるのだろうか。広葉樹が芽吹いていてその若芽の輝く柔らかい色があちこちに溢れ、それで山が笑っているように見えるようだ。ところどころ桜も咲いている。王は、まだ怒っている。なんとか早く対岸に渡ろう。僕は寝床にした、昨日

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2003-05-14 味噌汁療法

海月の家に行った。
今朝寝てから何も食べていなかった。

海月はさっと野菜天と長芋の味噌汁を作ってくれた。
その合わせ味噌は海月のお父さんの手作りのもの。

玄米ご飯一膳。
残り物の豚の角煮を解凍してくれた。

普段仕事中は食事を摂る休憩も取れないため、、やるべきことの隙間を狙って押し込むように、コンビニものを早食いする。

久し振りにゆっくりしっかり噛んで嚥み込む食べ方をした気がする。

気付けば頑固な肩こりが和らいでいた。

先頭 表紙

またまたよさげなものをお召しで、夢樂堂さん。お父さんのお味噌、絶品ですよ。 / 揚水 ( 2003-05-16 01:07 )
おお、マリネ! そんな話もありましたねえ。海月味噌汁が食べたい、僕の作ったもの食わせたい。 / 揚水 ( 2003-05-16 01:06 )
自分のためによくないと思いつつねー…。寮の調理場で食事作るのも正直…。仕事離れても話をしたい人がいる反面そうでない人もいる訳で、そういう人に会うときの自分の感情のみみっちさがいやで部屋籠ってしまう。いかんがや。 / 揚水 ( 2003-05-16 01:05 )
結構しゃきしゃきした歯応えですよ、kotarouさん。短冊切りにするととろみが、輪切り銀杏切りにすればしゃきしゃき感が勝る、そう思います。 / 揚水 ( 2003-05-16 01:02 )
昨日の味噌汁は小芋(新じゃが)とナス。季節感があって美味しかった。一汁一菜、それだけで十分です。合わせ味噌、味噌汁、海月さん親子の気持ちが入っていていいな。 / 夢樂堂 ( 2003-05-15 13:35 )
お味噌汁って疲れたとき食べるとにほっと出来るよね。海月さんのお味噌汁なら尚のこと!もうすぐ獅子唐とタコのマリネの季節だわ♪(教えていただいた時期が季節なの^^勝手に決めちゃった) / みるみる@Atelier ( 2003-05-15 10:30 )
コンビ二弁当は良くないよー。このまえやむを得ない事情で久しぶりにコンビ二弁当食べたら、食べてる途中に気持ち悪くなって半分も食べれなかったよ。昔はペロッと平らげられたんだけど。せめてスーパーでごはんと納豆とじゃこを買ってたべるとかさー。あんなん毎日食べてたら絶対体悪くするにー。 / もげんぴ ( 2003-05-15 10:21 )
長芋の味噌汁とは初耳。少しトロンとしていい感じなのかしらん?味噌汁にトロン、彼女の眼差しにトロロン・・・。今度作ってみる。 / kotarou ( 2003-05-15 07:59 )

2003-05-14 流浪 6  鹿

すぐにまた落ちるのはごめんこうむりたかった。下を覗き込むと吸い込まれそうだ。僕は切り欠きに腰をおろして足を水に浸そうとしてみて、止めた。水がきれいなので気が付きにくいけれど、よく見れば水はかなりの流量と速さで注ぎ口の先端に向かっている。こんなところに足を浸そうものならあっという間に体ごと持っていかれるに違いない。川縁まで戻って擁壁と川岸のぶつかる、流れが急でないところに体を沈めることで満足した。僕はそこでしばらく泳いでいた。緩やかではあっても気を抜けば滝の先端にじわじわと引き込まれそうになっていて注意しなければならなかった。最初はゆっくりとでも、あるところまで引っ張られれば、坩堝の先端まではすぐに違いない。これだけ水量の豊かな川の水があんな細い注ぎ口の横から溢れることもなく流れ落ちるのは不思議だったが、そうしたものなのだろう。川は大まかに西に向かって流れている。陽がだいぶ傾いてきた。下流に目をやれば太陽がまともに目に入って眩しい。まだまだ明るいが、いったん暗くなり始めれば日が暮れるのはすぐだろう。僕はそろそろ水から上がって戻ることにした。なぜか気付かなかった。たくさんの魚の姿が見える。初めに岸から上がった場所に戻ると、服も靴も乾いていた。裸の自由が名残惜しかったが僕は服を着け、靴を履いた。青かった空は色のない水色に変わりつつある。西の方はうっすら桜色がかってきた。やがてすぐに桜色は薔薇色に変わり、薔薇色は茜色になり、無色の水色は藍から紺になっていくだろう。誰かが僕を見ている。ふと対岸を見た。立派な牡鹿がこちらを見ていた。先程の、僕が滝を見に行く前の気配は彼だったのか。僕と彼はしばらく見つめあっていたが、彼の方から目を離すと対岸の森の奥に消えていった。もう今日はやがて日も暮れるだろう。僕は明日、彼に会いに行こうと決めた。暗くなる前に今夜の寝ぐらを確保することにした。僕は樹々の間を縫って森に押し入っていく。木洩れ日が美しい。さくさくと足の下で乾いた音を立てる落ち葉。樹の幹に寄りかかって耳を澄ませば地面から樹幹に向けての水の流れが感じられそうに思う。夕刻も迫ってその流れはのろくなる。ところどころ大きな岩がある。たいていの岩は苔生し草や潅木が生えていて、中には上に樹が生えているものまでがある。やがて僕はひときわ大きな岩に辿り着いた。岩の下には小さな岩が、小さいといっても僕よりはずっと大きかったが、いくつか挟まる格好になっていて、その間に人が二人ほど入れるくらいの隙間があった。高さはないがそこで僕一人寝るには十分すぎるくらいだ。森の中にはところどころ陽だまりがある。僕はそこからよく乾いた枯れ葉を集めてきては敷き詰め、さらに積み上げて、その中に潜るようにしてその岩室で眠ることにした。実際中に入ってみると、低くなってはいるが以外に奥行きはある。そこを塞いで寄りかかれるようにするために、僕はかなりの量の落ち葉を集めなければならなかった。たなびく雲が夕暮れの色に染まり始めている。僕は草を編んで籠を作った。地面を掘って捕まえた甲虫の幼虫を籠の中に入れその中の何匹かをつぶしておいた。それに蔓草を結わえ、石を付けて淀みに沈めた。運がよければ、朝までに魚でもかかるだろう。僕はまた頼りなげなけものみちを探し、そこに生えている草と草の先を結び付けていくつか罠も仕掛けておいた。空はすでに溢れる光と色の饗宴。東に向かって淡い水色、濃い水色、藍、群青、紺のグラデーション。西は薔薇色、金色、茜色、薄紫、藤色、その他名前もつけられないようなさまざ

先頭 表紙

確かに読みにくいですね。 / 揚水 ( 2003-05-16 00:56 )
ふー。危なかった。め、目が・・・。 / もげんぴ ( 2003-05-15 10:17 )
あっ・・・とうとうもげんぴさんが遭難してる! 早く助けにいかなくっちゃ・・・。 / ぷらら(^∀^) ( 2003-05-15 09:08 )

2003-05-13 流浪 5  さらに落ちる

生えているかで気が付かなかったが、日向に出れば裸の地面や石くれがあって、時折土踏まずに思わぬ痛みにも似た刺激を感じたりもする。それすらももちろん心地よい。生えている草も日陰より腰が強い。川に向かって左に歩いていく。ちょうど川の流れに従って歩く格好になる。足元を蝶が2匹、僕を追い越し互いに後になり先になり飛んでいった。歩き続ける。再び木陰に入った。草叢に足を踏み入れようとすると、腕の太さほどもあるかという蛇がちょうどこちらに這ってくるところで驚いた。蛇の方は僕のことなど意に介さず、僕とすれ違って悠々と歩み去った。僕も気を取り直してずんずん歩いていく。そのうち僕は尿意を催した。立ち止まってしばらく迷った。川面に向けてか草叢に向けてか、どちらに放尿するか迷った。小さい頃父親に山歩きに連れて行ってもらった折、彼は『山の神さんごめんなさい』と断って放尿するように僕に教えてくれた。結局僕は川に向かって地面に放尿した。大らかな地にあって自分もその一部であるという気になっていたから、自分から見た他者、別物としての対象物という意識が薄く、断りを入れる必要を感じなかった。それで僕は山の神さまに断りを入れなかった。この不思議な一体感を神さまも認めてくださるだろう。足の甲に小便の飛沫が飛び散ったがさして汚いとも思わなかった。ことを終えて滴を切る際に、自分の陰茎をつまんだ右手を少し濡らしてしまった。僕はその指を尻に擦りつけて小便を拭った。どんどんどんどん歩いていった。陽も少し傾き始めたとはいえ相変わらず陽射しは暖かいはずなのに、何か冷や冷やする。僕は初め何故だか判らなかった。遠くのほうでどうどうと音がする。滝があるのかもしれない。川はこの先左に大きく曲がっていて、僕のいるところからはまだ滝があるのかどうかは確かめられない。僕は歩いていく。左に大きく曲がりこんでさらに今度は右に曲がっている川に沿って歩いていく。行く手に水煙であろう、淡い霧のようなものが見えた。ような気がした。がそれは気のせいで実際には水煙は上がっていなかった。最後の繁みの角を曲がってとうとう僕は滝に辿り着いた。やはり滝があるために冷や冷やしていたのだった。その湿った冷気のために水煙があるかのように錯覚した。奇妙な滝だった。僕はそれを滝と呼んでいいのかどうか判断に困った。川を断ち切るように厚さ2メートル強ほどのコンクリートが向こう岸に向かって伸びている。まるで緩やかにくの字に曲がった橋のようだ。ずいぶん古い造作のようだけれど、しっかりとした素材と造りで堅牢さが見て取れる。水が下に落ちるまでに50メートルはあるのではないだろうか。対岸とのちょうど中央あたり、コンクリートの擁壁の上端が4メートルほど切ってある。切り取られた高さも同じくらいあるようだけれど水の深さが測れないので本当のところどのくらいなのかは判らない。その切り取られた部分から坩堝の注ぎ口のようなものが中空に向かって突き出している。緩やかにすぼまっていって先端では幅1メートル強、高さというか内法の深さは1メートルくらい。厚みは根元のほうでは2メートルくらいあるものが先端では60センチくらいまで細くなっている。長さは12メートルくらいで、坩堝の注ぎ口よりはずっと細長い。流れてきた水はそこからはるか下に注ぎ落ちている。僕はその橋のようになっている擁壁の上を対岸に向けて歩いていった。灼けたコンクリートが素足にちりちりと熱い。助走をつければ切り欠きの部分を飛び越えられそうにも思えた。だが僕はさっき落ちてきたばかりだ。今

先頭 表紙

まあゆっくり読んでやってください。 / 揚水 ( 2003-05-16 00:57 )
怒涛の更新なのですね?(笑)ゆっくりと読みますわ(^^) / キラ ( 2003-05-14 20:27 )
は、はい。いますー。ちょっと遭難しかけました。 / もげんぴ ( 2003-05-13 20:02 )
もげんぴさん・・・・・・いる?  / ぷらら(^∀^) ( 2003-05-13 18:24 )

2003-05-13 流浪 4  清浄な汚穢

は流れてはおらず、あれだけ大きな楼閣を建てるのに必要な木を集めるのはさぞかし気の長い仕事であろうなどと考えた。いつのまにか、眠ってしまっていた。流れに運ばれて僕は川岸に辿り着く。どこかに辿り着くことが出来るだなんて想像することも出来ないほど広大な川を漂っていたようなのに。ちゃぷちゃぷと河畔に打ち寄せる波の、単調で心地よい振動の繰り返しに目が覚めた。波打ち際には樹々が生い茂り覆い被さり、水面に濃い影を落としている。僕はその影の中にいる。僕の周り、少し離れたところには枯れ葦が何本も幾本も空を指して立っている。ところどころ生っぽい蒲穂も混じっている。真っ直ぐがたくさんだ。枯れ葉が浮いている。僕はゆっくり身を起こす。水から離れると少し肌寒い。風が吹けば水面に小波が立ち、浮かんだ枯れ葉はくるくると回り、水面に葉先を浸すように繁っている草はつられて踊り出す。立とうとして足が脛の中ほどまで泥に潜りこむ。そのまま歩くと靴を取られてしまいそうだったので、僕は靴を脱ぎ、立ち昇った濁りを避けて靴を濯いで岸に歩み寄った。たっぷりと養分を含んでいるであろう、河畔の植物が水に落ちて朽ちたことで出来上がったのであろう泥は、柔らかく優しく、そして温かかった。片方ずつ足を濯いで岸に上がった。びっしりと生えた苔が足裏に気持ちいい。僕は全裸になって着ていた服も濯ぎ、絞ってそこらの樹の枝に掛けた。体が乾いてみれば先程までの肌寒さが嘘のように風が気持ちいい。苔の生えている場所は思いのほか広かった。僕は苔の上に横たわった。尻に背中にしっとりと気持ちいい感触が広がる。ところどころに苔の間に間に生えている丈の短い草の葉先のちくちくとした刺激も混じる。眠ろうと試みたけれど、波に水面にたゆたいながら眠っていたためだろうか、なかなか眠くならない。しばらく樹の枝葉から洩れる空の光を眺めていた。再び僕は起き上がり、片膝立ててもう片方の足を投げ出して座る格好になる。やはり丈の短い草の葉先が太腿の裏や肛門や睾丸や亀頭に当たってちくちくする。さやさやと吹く風の音しかしない。とても静かだ。水はやはり澄んでいる。澄んではいるが僕が眠る前の清浄さとはまた違う。あの清浄さはどこか潔癖すぎるきらいがあった。ここは、落ち着く。なによりあの燐光放つ水の流れる川縁では、小石すらもまた恐ろしく清らかなのだろう。ここの川岸は、水底に腐葉土の汚穢を湛えている。しかしその汚れはどこまでも健全だ。小さな虫の羽音がするのに気が付いた。今の時間帯、刺す虫はまだ出てこないようだ。太陽は中天を少し過ぎた辺りか。樹下の影から明るい陽差しを通して対岸を見遣る。対岸の樹下の影もまた濃い。僕はなぜかしらその影の濃さにとても満足する。その暗く濃い影は同時にとても明るい。僕は立ち上がって衣類を日向に移動する。日陰に置いておいたのに、温かいのだろう、もうずいぶん乾いている。靴だけは時間がかかりそうだ。裸足で歩いても僕を傷つけるものはきっと何もない。たとえどこか擦りむくか引っかかれるぐらいのことがあってもこのような場所でのその程度の傷は、怪我のうちにも入らないだろう。僕は木陰から出て河畔を散策してみることにした。陽射しは柔らかいのに、眩しい。その眩さに目を細め顔を顰めると、視界の端、向こう岸に大きなけものか何かがいる気配がしたように思えた。気のせいだろうか。危害を加えられるような気配ではなかったように思う。陰毛が風になぶられてくすぐったい。木陰では落ち葉が朽ちて積もっているか乾いた落ち葉がその上に積もっているか、または苔が

先頭 表紙

つらいことを思い出させてごめんなさい。下でも書いたように、僕は「死にたい人」、との意識はありません。自覚している範囲では、多分。 / 揚水 ( 2003-05-13 11:20 )
父親が鬱病になった時の事思い出した。辛い。 / もげんぴ ( 2003-05-13 08:42 )

2003-05-11 砂漠に一滴の水を求む

もう今日は仕事ぐっちゃぐちゃ。
疲れた。
正直最悪だと悪態を吐きたいくらい。

でもそういう訳にもいくまいて。
頭掻きむしっても事態はちっとも好転しはしない。

でも今晩は海月が来てくれた。
なんとか生き延びられる、大袈裟でなくてそんな気分。

先頭 表紙

肩が異常に凝ってます。自分が肩の凝る人間だなんて知らなかった。ドカタの頃は凝らなかったなあ。 / 揚水 ( 2003-05-14 10:30 )
ぢっと我慢の時もあるさ。 / みるみる@Atelier ( 2003-05-13 09:50 )
夢樂堂さん、ありがとうございます。きっとそうなんです。 / 揚水 ( 2003-05-13 06:10 )
おいしいもんというかまともなもんが食いたいです。 / 揚水 ( 2003-05-13 06:09 )
砂漠に水、海月さんもきっと同じ気分だと思うよ。 / 夢樂堂 ( 2003-05-12 16:38 )
海月っちに癒されて、おいしくて栄養のあるものたくさん食べて、頑張ろう。うちのハニーも、昨日は家で徹夜で仕事して、朝仕事にいったよ。大変そうだよ。 / もげんぴ ( 2003-05-12 13:20 )

2003-05-11 流浪 3  淡い燐光放ち深く澄んで

ている。やはり来るべきではなかっただろうか。僕は苦笑する。でもここからでないと、跳べない。僕はペンチで金網を切ると、人一人通れるだけの穴を開けた。じゃあ、行くよ。僕は猿と少女の澄んだ4つの瞳に送られて、踏み切り板の先端に進んだ。板がしなる。何度もこの屋上に来たようにも、初めて来たようにも思える。初めてであれば今日こそはなどとは思わないはずなのに。けれど、この先端に来たのはきっと初めてのことだろう。僕は自分を取り巻く世界が緩やかに変わっていくのを感じる。今はもう二組の媾合の嬌声は聞こえない。お爺さんの灰舞う空に、澄んだ4つの瞳に送られて、僕は跳んだ。落下するスピードは、ごく緩やかだ。あまり重力に引きつけられるという気がしない。最初脚を下にしていた僕は、その緩やかさに気をよくして胸を大きく開いて両手を広げ、頭を下にした。それはまるで落下ではなく飛行しているかのようだった。だがしかし落ちているのであればいつかは下に辿り着く。ぺしゃり。僕の体は落下面に当たって、八階建てのビルから飛び降りたにしては柔らかい音を立てた。僕はその面に突き当たる瞬間目を閉じたが、世界が淡い緑色の燐光に包まれたのを感じていた。ごぼごぼごぼごぼごぼ。僕の体は澄んだ澄んだ水の中に深く深く潜っていく。潜っていきながら僕は、抵抗感の極端に少ない水だと考える。落下のエネルギーと浮力のそれとが拮抗したその時、僕の体は水中深く一瞬間静止する。僕は目を開いた。かなり深い所まで視界が利く。それでも水底が見えない。だからどれほどの深さがあるのか、まったく見当もつかない。その見当もつかない深さから、水中に楼閣が建設されている。東洋風の軒や屋根、場所によっては欄干のようなものまでが付いている部分もあるようだが、そのほとんどは軸組みだけの巨大な楼閣。垂直方向のみならず、水平方向もかすんでしまっていてどれほどの大きさなのか判らない。これだけ澄んでいる水の中でかすんでしまうくらいなのだからとんでもない大きさなのだろう。それだけしか判らない。僕のいるところから楼閣の一番近いところまでも少し距離があるようだが、人影のようなものがまばらに取り付いて作業をしているようにも見受けられる。僕はゆっくりと浮上し始める。やがて僕は水面から顔を出した。まるでそれまで息をするのを忘れていたかのようにほうっと息を吐き、それからゆっくりと、吸い込む。水の中でも息が出来そうなくらい、ここの水は澄んでいて、抵抗感がない。けれど僕は浮いている。水はごくごくゆっくりと流れている。僕は仰向けになり、流れに身を任せる。水上でも、楼閣は建設されていた。半裸の逞しい男たちが流れてくる流木を拾い集め、乾かし、製材し適宜据え付けている。深さや水平方向の広がりほどには、水面上の高さはなかった。けれど次にもし見る機会があればもっともっと高くなっていることだろう。流れに逆らって泳いで行きもっと近くで見てみようかとも考えたが、なんとなくそれは止すことにした。ずっとこの建設は続けられてきたに違いなく、これからも続けられていくのだろう。偶然の闖入者に過ぎない僕がその仕事を邪魔することはためらわれた。僕はここでは流されながらの傍観者であればいい。そうすることが何か正しい態度であるように思われた。水はもう、ぶつかる瞬間に感じた燐光は放っておらず、ただどこまでも澄んでいた。僕同様どこかから落ちてくる者もいるのかもしれなかったが、少なくとも今現在僕以外に流されている者はいないようだった。岸の見える気配もない。流木らしきものも近くに

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自分で書いててそういう見方してなかった。ああ、そうか。死にたい人、とも取れるんだ。 / 揚水 ( 2003-05-13 06:16 )
死って、私達にとっては、恐怖と苦痛のイメージがあるけど、死にたい人にとっては究極の快楽なんだろうね。体はこっち側にあっても心はすでにあっち側にいっちゃってるんだね。その辺の描写がものすごくリアルで、想像だけで書いているとは思えなかった。 / もげんぴ ( 2003-05-12 12:01 )

2003-05-09 流浪 2  屋上の猿

無機質に戻った箱から解放される。さっきまで愉しんでいたくせに、何か汚らわしいものをくっつけられていたようで不快だ。僕は右の掌で自分の左の上腕を撫でさすった。やっぱりここのエレベーターは、嫌いだ、好きになれない。自分が見当違いな勘違いをしたことを押し隠すために、僕は不当に腹を立てた。上がってきた僕ら以外に先客はなかったようだ。カップルはやっては来たものの所在なげに陳列されたペットを見ている。女の学生の方がつまらないなどと言っているのが風に乗って聞こえてくる。僕の目当ての檻の近くにいる。だから僕は近づけない。老婆はハンドバッグを左手に提げ、右手で孫娘の左手を引いて歩いている。紳士と娘はまったくの他人でいる様子を装いながら、それでもつかず離れず、金網のほうに歩いていく。ぐるりを囲った金網際には、硬貨を入れて下界を見下ろす双眼鏡がいくつか設えてある。僕は目当ての檻の前からカップルがいなくなるまでその双眼鏡を覗いて時間をつぶすのもいいかと思って、ポケットを探ってみた。探り当てた硬貨をスロットに入れて、僕は両目を接眼レンズに押し当てる。今日こそ跳んでやるんだ。ビル、家、車、歩行者、バイク、自転車、看板、街路樹。それらの合間合間に島のような寺社の杜、杜、杜。犬、猫、カラス、鳩、スズメ。どこにレンズを向けても同じような風景。遠くに山、山。さらにその向こうに、海。寺社の杜、杜、杜。かしゃん。とある森を見ている時に、時間が切れた。視界が暗くなる前に、一瞬その黒の前に真っ赤な光景が見えたように思えた。確かめようと思ってもう一枚硬貨を入れる。かしゃん。双眼鏡の向きは変えていないはずだ。血の池で溺れる亡者、業火で罪びとを焼く鬼でも見えるかと思いきや、こんもりとした杜を背景に飛ぶ鳩の群れが見えたのを皮切りに、さっきとほとんど変わらない風景。諦めかけた頃にふたたび、かしゃん。今度は見逃さなかった。いずれ僕もあちら側で焼かれ、茹でられ、溺れることを幾度も幾度も繰り返すのか? 気の迷い、目の錯覚。見逃さなかったのではなく、見逃したくなかったのだということは、判っていた。カップルはペットコーナーに飽きたようで、鉢植えや切花のコーナーに移動していた。大きな観葉植物の陰で、男の学生が何か彼の女友達にささやいている。彼の手は彼女の体を触り続ける。女子学生は嬌声を立てて笑っている。その笑い声にはしかし艶かしさや淫靡さが感じられない。老婆はハンドバッグの口を開こうと少し俯いていて、その右肘に、今度は右手でつかまっている女の子が、ちょうど老婆と体の向きを逆にして、澄んだ瞳で僕を見ている。紳士と娘はあられもない格好で媾合している。彼は死ぬ気なんだな、と僕は思った。彼の悲しさが僕に伝播しないうちに、跳ばなければ。娘のほうは、愉しんでいる。僕は今度は尻ポケットを探ると、階下の家庭用品売り場で求めたペンチを手に、猿の檻に向かった。やあ、また来たよ。僕はこの猿がなんという種類の猿なのかは知らない。僕が知っているのはこの猿が何でも知っているということだけだ。今日こそは跳ぶんだ。もちろん猿は何も言わない。ただくりくりした目で僕を見るばかりだ。実際のところ何も見ていないのかもしれない。けれどこの猿は何でも知っている。それだけは確かだ。振り返れば少女はまだ僕を見ている。老婆はバッグの中から掴み出した灰を撒いている。あれはきっと、お爺さんだ。僕は猿から離れて猿とは真向かいの金網に近付く。飛び込みの踏み切り板が3メートル弱、屋上から突き出している。二組のカップルはまだ交接し

先頭 表紙

まだまだまだまだ。 / 揚水 ( 2003-05-13 06:14 )
もやもやのまま途中で終わってしまった・・。ああ・・。 / りょう@いけず ( 2003-05-10 23:34 )
↓もげんぴさん、がんばって!・・・って、自分も(笑) / ぷらら ( 2003-05-10 23:20 )
ふー。やっと終わった。ってまだあるのかい! / もげんぴ ( 2003-05-10 11:27 )

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