2002-06-08 すべて
2002-06-07 喧嘩するほど
2002-06-06 贈る、言葉
2002-06-05 瓢箪から駒
2002-06-04 献立
2002-06-03 水入らず
2002-06-02 は行の法則 か行の例外
2002-06-01 キャベツの食べ方
2002-05-31 にほえろ
2002-05-30 風に捕らわれて

人は、全てを
手に入れることはできないから

全てを、手に入れることができないからこそ得られるそれは、
全て以上の全て

そしてそれは、全てとはまた、それを手に入れるのではなく、
自分はそれをすでに手にしていたのだと、
自身で知ること

先頭 表紙

仲がいい、ということはあるものなのでしょうか。

今日は今月の後半から働くことになっている仕事の関係で、午頃から半日以上車で走り回っていました。
家を出る時、車のドアを開け放したまま忘れ物を取りに行って戻ってみると、後部座席にはちゃっかり陸丸が座っていたので、彼も付き合わせました。

だんだん道路も渋滞し始めた夕暮れにはまだ少し間がある頃、脇道から僕の車の前に、物凄い勢いでワーゲンバスが割り込んできました。僕は割り込まれたが為にすぐ先の信号に引っ掛かってしまったけれど、そのワーゲンは半ば信号無視をして先に行ってしまいました。僕とワーゲンの間には何台もの車が入ってきて、ずいぶんと離されました。

信号が青に変わって、僕も前に進みました。その信号を越せば、結構な長さの一本道が続きます。
１キロほど行くと、道の脇に例のワーゲンが停まっています。運転手の姿は見えません。
すぐ傍には脇道もあるのに、こんなところに停めるなんて邪魔くさい奴だと思って、僕はその脇を一度は通り過ぎました。
ずっと車に乗せられていた陸丸がそわそわし始めました。丁度いいやと思った僕は、自分の車をワーゲンをやり過ごした脇道に入れて停め、少し陸丸を散歩させようと考えました。

陸丸と車を降りてほとほと歩いていると、車を停めた脇道の入り口から数百メートル先に、ワーゲンを運転していた若者の姿がありました。彼は若い女性の腕を取っていましたが、女性はその腕をほどこうとしているようです。僕は女性が乗っていることには気付かなかった。だんだん彼らに近づいていく僕の目には、二人が険しい目つきで無言のままお互いの目を見ているように見て取れました。

多分、車のなかで喧嘩が始まって、女の子が「私降りる、車停めて」、とでも言ったのでしょう。
こちらに向かって若者が戻ってくるようですが、どうも様子がおかしい。戻ってくるのは若者の方だけで、女の子はすたすた歩いていってしまうようです。振り返り振り返りしていた若者は、とうとうこちらに向かって駈けだしてきました。

僕は回れ右をして自分の車に戻ることにしました。若者は僕と陸丸を追い越した。
自分の車に戻った彼は、僕の車の前に割り込んだ時と同じように物凄い勢いで車を発進させ、混み合った車の群をかき分けるようにして、おそらくは恋人を追いかけていきました。それとも怒ってどこかに去ってしまったのでしょうか。

一本道の両側に拡がる草っ原では、ツバメが空を切っては舞い上がり、ヒバリがぱたぱたと舞い上がっては降りを繰り返していました。
何度も、何度でも。

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素晴らしい縁があって、素晴らしい言葉に触れる機会を得ました。


純粋な恋をしている人は、自分の恋人のためなら、
その「恋」を忘れることさえ出来る
そんなことは無理だというならば、その人は恋をしているのでなく、
自分を愛しているに過ぎない


恋人でなくてもいいと思います。
純粋に何かを求める人であれば、この言葉の意味は、自ずと知れるものと確信します。

この言葉を、僕の言葉に耳を傾けてくださる全ての人に捧げます。

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今日のブランチ。
ブナシメジと玉葱と葱の味噌汁に、トマトも入っているかのように言ってしまって、人に誤解させてしまったようです。
海月は「でもそれはきっと美味しいに違いない」と言って、試しに作ってみました。
美味しかった。

メインは冷や麦です。
薬味になるものがショウガしかありません。
以前人からいただいて庭に仮植していたワケギがあったのを思い出しましたが、夏に向かって勢いを増す草に負けて無くなっているのではないかと思っていました。
確認してみると、雑草に囲まれて確かにか細くなってしまっていましたが、いただいたときの太った状態より却って薬味に適していました。

傷んでいるびわがありました。
海月はその痛んだ部分を包丁で削っていましたが、そのうち食べられる部分を刻んだ方が早いと感じたようです。
刻んだびわと串切りにしたトマトを、僕たちお得意のマヨネーズとポン酢で和えてくれました。

どれも美味しかった。

今日で海月の休日は終わります。
彼女は明日からまた忙しく働きます。
ですから僕はこれから彼女を送っていかなければならない。
しばらく逢えません。

時間が沢山、もっともっと欲しいと思います。

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昨夜のまつぶ貝は、オリーブオイルとワインビネガー、トマトと粗挽き黒胡椒、パセリのみじん切りとでマリネ風に和えた。
美味しかった。

僕たちは今朝ゆるゆると起きたので、朝食と昼食は兼用ということになった。
昨日のまつぶ貝の残り、トマト。
ブナシメジと玉葱と葱の味噌汁。
味噌は五島で買った麦味噌で、麦麹と塩以外の材料は使っていない、とても柔らかく美味しい味噌。
昨日のキャプリンの残りを細かく刻み、マヨネーズと味噌をごく少量加えて良く混ぜ合わせ、すりつぶした。それをご飯の上にまぶして食べた。

夕食。
ご飯にまぶすキャプリンはまだ少し残っていた。
トマト。
玉葱とブナシメジとキャベツを順次加えて胡麻油とショウガのみじん切りで炒め、そこにツナと豆板醤を加えてさらに炒める。
一度それらを中華鍋から上げ、鍋の焦げを落とす。
再び胡麻油を鍋に落とし、材料を戻して葱を薄く斜め切りにしたものを加え、少し火を通す。
前もって用意しておいた溶き卵でとじて、中華風オムレツ風の名前もない料理の出来上がり。
味噌汁は今朝の残りもの。
デザートは僕の両親が送ってくれていた、びわ。

今回の料理担当は、味噌汁が海月、あとは僕。
大変美味しゅうございました。

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「少年と砂漠のカフェ」、観てきました。
試験に落ちた後海月と二人で。

今から僕たちはミズダコの刺身とボイルされたまつぶ貝とキャプリンをオチャツミに、コンチャイ・トロのカベルネ・ソーヴィニョンを飲むのです。

では、そういうことで。

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お気付きの方もいらっしゃるでしょう。
は行の文字は全て、その繰り返しにより書き言葉において笑いを表すことが出来ます。

ははははは。
ひひひひひ。
ふふふふふ。
へへへへへ。
ほほほほほ。

それだけで笑いを表すに足りるのですが、接頭してあ行の文字が付くこともあります。

あはは。
いひひ。
うふふ。
えへへ。
おほほ。

この時、あ行そのものが表す母音とは行の母音は同じものとなります。
けれど、一つ例外があります。
あ行の文字のうち、「う」一つが、どのは行の文字とも接することが出来ます。

うはは。
うひひ。
うふふ。
うへへ。
うほほ。

これが「は行の法則」です。
その他のさらなる例外として、「あはは」と「うはは」の中間に位置するものとでも考え、「わはは」を挙げてもよいかもしれません。

は行の他にも笑いを表すことの出来る行はないものか。
あります。か行です。か行の音・文字の繰り返しだけでは不自然だと思われる場合、これまたここでも「う」を接頭すれば、割合問題は解決するのではないかと思われます。

かかかかか。
ききききき。
くくくくく。
けけけけけ。
こここここ。

うかか、は却って不自然でしょうか。
ききき、でも、うきき、でもどちらでもいいように思われます。
くくく、の方が、うくく、よりもより自然でしょうか。
けけけ、でも、うけけ、でも、これもどちらでも良さそうです。

ただしかし、一つ「こここ」だけが、そのままでも「う」を頭に付けても、不自然なように思われます。
これが「か行の例外」です。

言葉はナマモノですから、上に挙げた例のうち「自然」としたものもかつては「不自然」だったかもしれませんし、この先不自然になっていくのかもしれません。
それに「不自然」の例として挙げたものが、この先「自然」な表現とならぬとも限りません。

面白いですね。

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ただ焼酎ばかり飲んでいるだけではお腹も空くし、なんだか体に良くはなさそうだ。
オチャツミを作ろうにも、手の込んだものどころか火を通すものを作ることがそもそも面倒臭い。
何があっただろうか。
キャベツでも刻もう。

僕は台所に立ってキャベツを刻む。
ざくざく、ざくざく。ざく。
小振りな陶製のボウルに刻んだキャベツを盛って、あまり多くなり過ぎないようにマヨネーズを掛ける。
ほんの少しゆずポン酢を加える。
これはこれで旨そうだ。
でも何か物足りない。もう少しタンパク質系のお腹にたまるものには出来ないだろうか。
僕はそこにツナ缶でも放り込もうかと考える。なかなかいい考えではなかろうか。
でも、貴重なツナ缶は、もう少しきちんと料理を作る時のためにとっておこう。
せこい考えに捉えられた僕はツナ缶追加案を却下する。
何か他にないだろうか。

ああ、そうだ、卵ならたくさんあるぞ。
キャベツに生卵を掛けるのもどうかと思ったが、僕は昔一週間以上キャベツと塩だけで食いつないだことがある。
卵掛け飯も好きだ。それを思えば、キャベツに生卵を掛けても良さそうな気がした。醤油も掛ければ卵掛け飯と似たようなものになるだろう。
それはどうかな、というもう一人の僕自身の陰の声を聞きながら、面倒臭かった僕はその声を無視した。

全ての材料を加え、さらに韓国粉唐辛子も加えて、キャベツその他を混ぜる。
なかなか旨かった。

でもやはり卵を入れたのだから、火を通す料理にまでもっていった方が旨かったかなあ。
それにどうせ火を通すのであれば、いっそ小麦粉を水で溶いて加えればなおいいのではないだろうか。
ツナは入れなかったけれど、替わりに豚肉を入れても旨いかもしれない。イカなんかを入れてもいいな。

冷たいキャベツのオチャツミを食べながら焼酎をあおりつつそこまで考えて、はた、と気付く。
それってお好み焼きちゃうのん？

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僕は一応長崎市内で産まれたようです。
物心付いた頃うちにあったテレビは依然白黒でした。

色んな番組を見ていたのでしょうが、僕は幼少の記憶が他の人と較べて曖昧なのではないかと思います。これは小学校の中学年か高学年の頃に記憶喪失になった経験が関係しているのかもしれません。
なんとなく印象に残っているのは、「太陽にほえろ」という番組だけです。

僕の父と母は、結婚して僕が産まれる時分までは長崎市内に住んでいたのですが、僕の小学校就学に合わせるように、父の出身地である郡部に家を建て、そこに移り住みました。

小学校中学年のある日、この頃には既に僕の家にあるテレビは、目出度くも総天然色のものとなっていました。
僕は仲のいい女の子二人と、三人が三人とも大好きな番組「太陽にほえろ」について、熱く語り合っておりました。

ひとしきりそれぞれが自分の好きな刑事やエピソードを語り合った後、僕は二人の友人に尋ねました。

「ところでさ、前から不思議に思ってたんだけど、『にほえろ』って、何？」

爆笑されました。

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僕は車を運転している。
東山通りを西に向かう。
いい天気だ。梅雨もまだだというのに、初夏のような陽差しは暑いくらいだが、窓を開けていれば流れ込む風が心地よい。

耳が痒い。
僕は鞄からなぜか持ち歩いている耳掻きを取り出して、車の流れが緩やかになる時を狙って耳を掻く。
竹製の短いありふれた耳掻きで、掻く部分の軸を挟んで反対側には、羽毛の房が付いている。
さっぱりする。
掻きながら、僕は何か危ういことを感じている。
その時車は流れ始める。
僕は耳掻きを自分の耳から外し、車を前に進める。
右手には耳掻きの軸を器用に挟んだまま。

その時車窓から大きな風の流れが車に吹き込んだ。風があるのではない。
車が動くことで風が起こり、車内外の空気が動いた。
僕は自分の感じた危うさの正体を知る。
僕は知っていた。なぜかは判らないが、この状況で耳掻きを使えば、羽毛の房が風に捉えられて吹き飛ばされてしまうかもしれないということを。

房は車内になだれ込んだ空気が再び車外に逃れるのと共に、吹き飛ばされてしまった。
僕はその姿をミラーで追う。
僕は後悔する。
房が飛ばされてしまったことではなく、飛ばされてしまう危惧を持っていたにも拘わらず、その危惧の正体が模糊としたまま自覚できず、耳掻きを使うという行動に出てしまったことに。
後ろに流されてミラーで追うしかない映像が、なぜかフロントガラスの向こうに見える。
おかしい。

そういう夢を見た。

先頭 表紙