himajin top
ナライフの「怒涛の映画&サッカー日記」

サッカーも映画も前世紀に大いなる飛躍を遂げました。さて、この新世紀、この2つはどう進んでいくのでしょうか?誰も分かりません。でも好きなんです。

目次 (総目次)   [次の10件を表示]   表紙

2002-06-19 クラシックの質問にお答えしてA
2002-06-19 クラシックの質問にお答えして@
2002-06-07 開幕1週間を経て
2002-05-30 今なら言い放題! 予想してみました
2002-05-30 明日です!!
2002-05-21 ゴダールの『愛の世紀』を観る
2002-04-12 ベスト4が決まりました
2002-03-25 映画の賞と同時代の評価
2002-03-18 ポルトガルのお年寄り、健在!〜『家路』を観て〜A
2002-03-18 ポルトガルのお年寄り、健在!〜『家路』を観て〜@


2002-06-19 クラシックの質問にお答えしてA

08. メロディーは分かっているのに曲名が思い出せない!ってゆーのはある?

あるけど、曲名が分からないだけに、ここに書きようがない。
 
09. 涙が出るほど感動したCDは?

モーツァルト「フィガロの結婚」(指揮;ジュリーニ)
  粋な曲に粋な演奏。「フィガロ」はいつ聴いてもモーツァルトの才能に涙します。
モーツァルト「ピアノ協奏曲23番」(ピアノ;ポリーニ、指揮;ベーム)
  純粋な器楽曲としてのこの奇蹟的な美しさ。第2楽章には涙します。
バッハ「ゴールドベルグ変奏曲」(ビアノ;グールド)
  これもバッハの天才ぶりとグールドの天才ぶりの出会いに泣けてくる。
ベートーベン「交響曲第4番」(指揮:カルロス・クライバー)
  ベーム追悼記念ライブ録音で、終盤クライバーが常軌を逸した演奏をしている。
  その気が狂った演奏ぶりに怖くて涙。

10. CDについて、感想を述べあうことはありますか。それは誰と?

あまりありません。

11. あなたはその人(10の質問の)の影響を受けている?

ということで、なし。

12. 乗り物の中で、近くでCDを聴いてる人が居るとき、その人が何を聴いているか気になる?

たいして気にならない。その人が口ずさんでいたりすると、曲を当てたくなるが。

13. 「このメロディーは好き!」。そんな曲があったら、教えてください

・Mozart の Piano Concert No.23の第2楽章
・Mozart の Don Giovanniでの二重唱「手を取り合って」

14. 好きじゃないけれど、、って言う作曲家・演奏家はいる?

チャイコフスキーかな?

15. 情景が目に浮かぶ、と思う作曲家は?

プロコフィエフとか?

先頭 表紙

クライバー好きを発見して嬉しくて小躍りしてます。ブラームスの4番とベートーヴェンの運命は、最高ですわ。しかし、4番は聴いたことがない。オペラも。ナライフさんのおかげで、聴いてみたい曲がいっぱい出てきました。ありがとー! / ぷち山 ( 2002-06-20 11:06 )

2002-06-19 クラシックの質問にお答えして@

5月31日から僕の頭はワールドカップのことでいっぱいです。正直言って、日記を書こうにも、見るだけで精一杯でした。さて、今日は試合がありません。久し振りに何か書こうと思ったのですが、サッカーのことだとあまりに色々あってどうにも書けそうにありません。そんな時、ぷち山さんの日記で質問コーナーがあったので、無邪気にクラシック音楽についての僕の返事をいたします。興味ない方、ごめんなさい。

01. あなたの得意分野と苦手な分野は?

得意→オペラ 苦手→室内楽曲

02. 「クラシックなんて興味ないよー」という人にCDを貸すなら、どんな順でCDを貸す?

洋楽好きの方には、例えば、Billy Joelの「イノセント・マン」とBeethovenのピアノ・ソナタ「悲愴」を同時に貸す。Billy JoelのThis Nightと「悲愴」の第2楽章が同じメロディーなので、「同じようなもんじゃん!」と言う。「だったらBilly Joelの方がいい!」と言われたら素直に引き下がる。

03. 夢中になった演奏家・作曲家はいる? その名と、ワケを教えて。

作曲家→モーツァルト、バッハ、ヴェルディ

演奏家→指揮者では、カルロス・クライバー
    ピアニストでは、グレン・クールド
    
ワケ→2人とも、有名で誰でもが知っている曲を、これまで聴いたことがないような新鮮さで演奏してくれるから。あまりに有名だが、クライバーであれば、ベートーベンのSymphony第5番とか第7番、Shubertの「未完成」、BrahmsのSymphony第4番、あるいは、ヨハンシュトラウスの「こうもり」、ワグナーの「トリスタンとイゾルデ」など、彼の数少ない全てのレコーディングが、天才的。他の指揮者の演奏と全く違う。ミラノスカラ座が来日した時、彼の指揮によるプッチーニの「ボエーム」を観たが、鳥肌が立ってしまった。グールドも、また、クライバー以上にユニーク。あの、あまりに有名なバッハの「ゴールドベルグ変奏曲」だけでなく、シェ-ンベルグやモーツァルトでも素晴らしいCDがお気に入り。

04. 人にCDを貸して、「いいねー!」と言われたときのあなたの反応は?

「ね、いいよね。」

05. 逆に、「あんまし」と言われたときの反応は?

「へ〜。」

06. とても欲しくて、でも手に入れることが出来なかったCDは?

特になし。

07. 手放した・紛失したことを後悔しているCDは?

これもなし。

先頭 表紙

ここっ、こんにちわ!ああ、意外にこの質問が広がっているのにビックリし、それ以上にもっとマシな質問を・・と反省が募る私。ああ、お腹が痛い!さっきの納豆のせいだわ〜!うおお。 / ぷち山@あ、変な名前ですがよろしく・・ ( 2002-06-20 11:01 )

2002-06-07 開幕1週間を経て

 連日熱戦が続いているワールドカップ、仕事もそっちのけでTVに噛りついており、今回は自国開催なので時差もなく、睡眠不足は回避出来ると思っていたら甘かった。やはりTVに接する時間の増が睡眠減にそのまま反映される、ということのようだ。
 ワールドカップは、国と国との戦いであるため、普段行なわれているクラブチーム同士の戦いと全く違う意味合いを持つようになってきている。一昔前までは、クラブチームも自国の選手が大半を占めていたが、ボスマン判決以降特に欧州のクラブチームは、国籍の箍が外れたと言ってよく、どのチームも多国籍軍とでも言うべきメンバー構成になっている。レアルマドリードのレギュラークラスを見ても、スペイン、フランス、イングランド、ポルトガル、ブラジル、アルゼンチン、といった国籍を持つプレーヤーばかり。ある意味で、純粋に「フットボール」を競うための場がクラブチームになっているのだ。そこでは「フットボール」以外の要素が入りこむ余地がない。
 ところがワールドカップは、「国」という「縛り」を入れた中でのチームとなるため、極論を言ってしまうと、「フットボール」という要素だけでなく、そこに「国」(あるいは「地域」)という要素が加わってくる。そこが、元々は純粋にフットボール世界一を決めるための大会だったワールドカップが、別の次元での関心事を惹起することとなり、良く言えば「フットボール」に関心の無い人をも巻き込むビッグイベントにしているが、逆に言うと、純粋な「フットボール」以外の要素が「フットボール」そのものを楽しみたい視点からは邪魔をしているも言える。
 恐らくプレーのレベルだけを見れば、欧州チャンピオンズリーグの方がワールドカップより高いのは、ほぼ明らかだ。クラブチームには何しろ「国」という縛りがないのだから今や当然といえば当然だ。今年4月の「レアルマドリードVSバイエルンミュンヘン」を超えるゲームなどそうそう無いだろう。だが、その一方で、ワールドカップには、何か説明し難い魅力があり、フットボールとしての楽しさだけでない興奮に溢れており、やはり私を4年ごとに熱中させてくれる。メディアの過剰な報道、偏った論調、等々嫌気が差すことも多々あるが、何か全てを受け入れてこの1ヶ月思う存分ワールドカップに浸りたい。矛盾しているのはじゅうじゅう承知しているのだが、開幕1週間を経て改めて今、そう思っている。

先頭 表紙

返事遅くなっちゃいました。今、トルコ戦のハーフタイム。頑張れ!!逆転だ!! / ナライフ ( 2002-06-18 16:31 )
はじめまして。サッカーのワールドカップに関してはようやく日本人の関心がグローバルスタンダードに近づいてきたって感じでしょうか?そういう意味ではアメリカはまだ? / スーパーしえろ ( 2002-06-16 21:45 )
こちらも同様です。テレビは会社もつきっ放し。金曜日はゲームの合間に仕事かな?? / 夢樂堂 ( 2002-06-13 16:24 )
りゃん吉様、私の父もラグビー好きなのですが、晩酌しながら楽しんでいる様です。 / ナライフ ( 2002-06-11 11:19 )
Hidey様、ご返事遅くなって申し訳ありません。ご無沙汰しておりました。僕も純粋にサッカーを楽しみたいと思っているのですが、W杯だけは、それ以外の「国」とか「歴史」とか「文化」といったものがプレーやプレー以外の様々な所に見えてきて、やはりそういったところにも熱中してしまいます。 / ナライフ ( 2002-06-11 11:18 )
杏綬さま、にわかでもなんでもいいのですが、行き過ぎたナショナリズムにはなって欲しくないですね。 / ナライフ ( 2002-06-11 11:12 )
八百八六助様、そうですね、マラカナンも一杯になるでしょうね。きっとスペインはやはり、国別対抗よりは地域別対抗の方が熱が入るのでしょうね。熱の入り方にも、各々の歴史や文化背景により違いがあり、探ると深い世界なんでしょうね。 / ナライフ ( 2002-06-11 11:10 )
クマ様、縛りがあったほうが面白いのかも知れませんね。んだ、んだ。 / ナライフ ( 2002-06-11 11:06 )
サッカーに興味のない俺の親父まで熱狂している。凄いことです。(普段はとりあえず巨人と言っている人間です) / りゃん吉 ( 2002-06-09 12:48 )
ご無沙汰しました。技術だけを楽しむのではなく「国」という要素から来ているプレーの性格の違い、サポーターの国民性、歴史、経済環境などを重ねて見られるからやはりワールドカップは面白いですね。ああ、いよいよ明日だ。ドキドキ。。。 / Hidey ( 2002-06-08 13:12 )
にわかナショシナリズムの高揚という係長の言葉が、ちょっと胸に突き刺さりました。…は〜一ヶ月したら多分私は抜け殻です。 / 杏綬@バファリンごくごく ( 2002-06-08 00:44 )
日本のサッカー熱,はじけてますね.ブラジルのように20万人入れるスタジアム作ったらいっぱいになってたかも.国別対抗というのが何か血をかき立てるというか,なんなんでしょうね. / 八百八六助 ( 2002-06-07 23:38 )
んだねー、条件が、縛りがあったほうが面白いのは確か。金の力で。。。。というものは案外おもしろくない / クマ ( 2002-06-07 12:30 )

2002-05-30 今なら言い放題! 予想してみました

 優勝予想、グループ順位予想を開幕前日のこの段階で発表させていただきます。

A組 1位 フランス   2位 セネガル     
B組 1位 スペイン   2位 パラグアイ
C組 1位 ブラジル   2位 トルコ
D組 1位 ポルトガル  2位 アメリカ
E組 1位 ドイツ    2位 カメルーン
F組 1位 アルゼンチン 2位 イングランド
G組 1位 イタリア   2位 クロアチア
H組 1位 ロシア    2位 日本

優勝 ポルトガル  準優勝 ブラジル  3位 イタリア  4位 アルゼンチン

得点王  ロナウド

若干の客観的見地と個人的希望とを織り交ぜました。
客観性を重んじれば優勝は、アルゼンチンかイタリアのような気がするのですが、個人技術と攻撃性を重んじてここは思いきってポルトガルにしました。得点王は、98年ファイナルから不幸続きの「怪物」君に雪辱を晴らしてもらいたい、という僕の希望と、比較的相手に恵まれたグループリーグでの大量得点の可能性から予想してみました。

先頭 表紙

ガス欠コイン様、やはりポルトガルには是非勝ち進んで欲しいですよね。フィーゴやルイコスタの調子が気になりますが。何となく74年のオランダとダブって見えるんです。 / ナライフ ( 2002-05-31 09:09 )
TAKE様、A組2位はほんと読めないです。真っ当にいくならデンマークやウルグアイなんでしょうけど。 / ナライフ ( 2002-05-31 09:08 )
しまお様、そうなんですよ、好き放題言えるのも開幕前まで。1週間後にはがらっと予想が変わったりして(笑)。 / ナライフ ( 2002-05-31 09:06 )
八百八六助様、応援しているのは韓国なんですが、どうもアメリカが地力をつけているような気がして… / ナライフ ( 2002-05-31 09:05 )
KATSUMI様、僕も2位韓国にしたかったんですけどね、迷いました。 / ナライフ ( 2002-05-31 09:04 )
前回、失態を演じたので、順位予想はお任せするとして(笑)、ポルトガルが優勝したら、泣いちゃうでしょうね、僕。 / ガス欠コイン ( 2002-05-31 06:53 )
A組、先日まではオイラもセネガルにしていたんですけど、最近は人気薄のデンマークに乗り換えてます(競馬的発想ですが^^;) オイラもポルトガルの日本登場を切に願ってます。 / TAKE ( 2002-05-31 00:51 )
うわあ。わくわくする。そうですね!今のうちに言っておかなければ。それにしても、予想できるのも、いよいよ今日までなんですね。ああ、まだ信じられない。。。 / しまお ( 2002-05-30 23:18 )
D組2位,アメリカですか.この国は,こうみえてもそれなりの力ありますからね.微妙ですね.オリンピックでアメリカに負けたのはいまだに悔しいですが. / 八百八六助 ( 2002-05-30 23:07 )
おー、D組の2位が韓国なほかは全部一緒だ。ちょっと変化をつけてみようっと(笑) / KATSUMI@狼男 ( 2002-05-30 22:07 )

2002-05-30 明日です!!

 いよいよ明日です。待ち切れません。TVに噛り付き、街に出てお祭りを思う存分楽しみたいと思います。
 我らが日本代表がどこまで勝ち進めるのか、フーリガンはどうなのか、故障選手は復帰できるのか、チケット問題は解決するのか、等々、色々と取り沙汰されておりますが、何はともあれ世界最大のイベントであり、お祭りです。誤解を恐れず敢えて言うと、死傷者が出ても徳島の阿波踊りもリオのカーニバルも、祭りとして盛り上がり、皆楽しみます。そう、マスコミがしたり顔で細かい事を危惧するのを「ナンセンス」と葬り去って、全てを楽しみたいと思います。
 幸運なことに、21日(金)静岡で行なわれる準々決勝のチケットをget出来ました。順当に行けば、フランスVSブラジルでしょうか。あるいはH組を2位で突破し、ベスト16でブラジルを破った日本とフランスの対戦かも知れません。試合は勿論、会場の空気、街の空気、各国サポーターの熱い応援、彼らとの交流、TV観戦する各国の人々の視線、全てを体感し、楽しみたいと思います。
 

先頭 表紙

八百八六助様、前から5列目とは凄いですね。前評判がいまいちのドイツ、結構今回はいいんじゃないかと思ってます。対照的なチーム同士の対戦、まさにワールドカップならではですね。 / ナライフ ( 2002-05-31 09:02 )
良いカードになりそうですね.私は同じく静岡でドイツvsカメルーンを見に行きます.メインスタンド,移動席の前から5列目だった.どんな感じで試合を見られるんだろう.とにかく楽しみます. / 八百八六助 ( 2002-05-30 23:10 )
KATSUMI様、是非是非。 / ナライフ ( 2002-05-30 16:33 )
ガス欠コイン様、そうですね、ついに来ましたね。神戸のゲームですね。頼むから2位で抜けてくれ、っていう感じですよね。 / ナライフ ( 2002-05-30 16:32 )
いよいよ明日ですね。もうなにもかも投げ捨てて、我を忘れて楽しみます。一緒に楽しみましょう! / KATSUMI@狼男 ( 2002-05-30 12:24 )
僕はその前のC組1位とH組2位のゲームに行って来ます。ついに、ここまで来ましたね。 / ガス欠コイン ( 2002-05-30 11:06 )

2002-05-21 ゴダールの『愛の世紀』を観る

 ゴダールというフランス人映画監督は、一般的には「難解」とか「哲学的」とか「前衛的」というレッテルで「理解」され「流通」している。恐らくそれは、映画はストーリーを過不足なく観る者に理解させ楽しませてくれることが第一義にあるためだろう。僕は映画におけるストーリー自体にはほとんど興味がない。勿論見ながらそのストーリーを楽しんだりしてはいるが、実際に観る者が触れられるモノ、それは瞳と耳で触知するものであり、即ち「映像と音」そのものが映画の全てであると思っている。
 この日記の最初の方でも時折触れている通り、映画にはリメイクが沢山あるが、ストーリーは一緒でも映画としては全くの別物だし、一方は面白く他方はつまらないという例はザラだ。ゴダールはまず、ストーリーなんて気にするなよ、とでも言いたげな「ハチャメチャな」映画を一貫して作り続けて来た。デビュー作の『勝手にしやがれ』から最新作に至るまで、彼の映画の魅力は、物語を上手に語るための演出ではなく、まさに映画的な、つまりは、画面と音響と、そしてその連鎖において常に突出して天才的な点にある。
 しかし、それは「さあ、どんな面白い物語なのか、楽しむぞ」という気持ちが前提で接しようとする観客にとっては、「?」だらけの映画となってしまい、冒頭のようなレッテルを貼られることとなる。この、物語そのものを楽しもうとする「前提」は、一般的ではあり、メジャーだとは思うが、映画と接する一つの側面に過ぎない。映画とは比較にならない程の歴史を持っている絵画の場合、平面的描写から三次元的描写へ、また、事物の擬似物としての絵画から抽象的絵画へ、等々といった具合に、その歴史上様々な「転換」があり、観る者もその都度様々な視点を持ち得てきた。映画はたかだか生誕100年である。サイレントからトーキー、画面のワイド化、CG導入等々といった技術的進歩は、映画と観る者との間に革命的変化を生み出してはおらず、ゴダールが言うように、「映画はグリフィス以来進歩していない」のである。(グリフィスとは1910年代からハリウッドで活躍した監督。映画の父と言われる。代表作として『イントレランス』、『散りゆく花』、『東への道』等。)
 さて、新作の『愛の世紀』を観て来たが、実に初々しく美しい作品だった。前半モノクロ、後半カラーそれぞれの撮影の美しさは驚嘆に値する。ゴダールの映画はいつもキャメラがとてもいい。80〜90年代の作品のような、モノローグや音響の洪水が大人しくなった分、シンプルに映画の美しさを追及した感じだ。しかもゴダールが撮る久々のパリ。デビュー作『勝手にしやがれ』を観ているかのような眩暈を覚えた。物語などあってないに等しく、それでいて90分近く飽きさせないのだから不思議だ。今、東京では、この新作以外に70年代の傑作『ウィークエンド』やゴダール出演作の『そして愛に至る』などが上映されており、ゴダールの名が溢れ出している。ちょっとだけ時代より先に行ってしまっているが故に奇妙なレッテルを貼られ続けているが、ひたすら無心に映画と向き合えばこれほど楽しい作品も滅多にないと思う。

先頭 表紙

マイケル様、ああなるほど、言い得て妙ですね。僕、あの馬鹿さ加減が大好きなんですよね。 / ナライフ ( 2002-05-30 17:29 )
「女は女である」は何か映画オタクが無理して明るい話を作ってみました的作風がダメでした。どこまでも伸びる電話線はツボにはまりましたが。 / マイケル ( 2002-05-30 12:28 )
しまお様、おっしゃる通りですよね。今回もそのパリの映像が映画として素晴らしいと思いました。天才的だと思います。 / ナライフ ( 2002-05-28 11:15 )
マイケル様、「マリア」と「中国女」というのもなかなか渋いですね。「女は女である」はどうでしょう?馴染めない方でも面白いのではないでしょうか? / ナライフ ( 2002-05-28 11:13 )
ぽん様、そうですね、アメリカ批判に関してはかなりストレートにやっていましたね。僕は実はその部分はあまり気に入ってませんが… / ナライフ ( 2002-05-28 11:11 )
ひたすら無心に映画と向き合うかあ。最近そんな感覚をすっかり忘れてるような気がする。ゴダールの映画はいつも町の空気感をばしっととらえていて好きだなあ。「勝手にしやがれ」を見るとショートカットにしてパリの街を歩きたくなります。 / しまお ( 2002-05-23 23:28 )
ゴダールは多分10本以上見てると思うのだけど、「面白い!」 と思ったのは「マリア」と「中国女」くらいです...どうも馴染めなくて... / マイケル ( 2002-05-23 01:29 )
「愛の世紀」まだ見ていない〜。ナライフ様のお話を読ませていただいたら、モーレツに見たくなりました。くそー、今日が水曜日だった。。。来週の水曜レディスデーまで待たなくちゃ。なんかアメリカ批判が、気持ち良いくらいズバッと決まってる映画らしいですね。 / ぽん ( 2002-05-22 14:46 )

2002-04-12 ベスト4が決まりました

 欧州チャンピオンズリーグのベスト4が決まった。今週半ばに準々決勝のリターンマッチが次々と行なわれ、まさに寝る暇の無い日々だった。フィー子さん、起きてますかー?それにしても寝てはいられないほどの面白さ。実にレベルの高い、しかも緊迫したゲームの連続だった。この大会、決勝戦を除くと、ホーム&アウェイで進めていくので、やはり最初の1試合目はどうしても様子見がちになる。しかし、2試合目は、これで全て決着することになるので、やはり面白さがぐっと増す。
 「事実上の決勝戦」とか「早過ぎた決勝戦」などと言われた、レアル・マドリードVSバイエルン・ミュンヘン。ミュンヘンで行なわれた1試合目、バイエルンが2‐1で勝っていた。マドリードに舞台を移した2試合目、当然レアルは開始当初から自慢の攻撃陣が怒涛の如く攻め込んでいった。ジダン、フィーゴ、ラウル、ソラリ、ロベカル、…といったオールスター軍団は、それだけで溜息が出るプレーぶりだが、試合巧者でディフェンスだけだったら間違い無く世界一のバイエルンのゴールは果てしなく遠かった。試合後のボール支配率が、レアル65%、バイエルン35%である。両者の得失点が同じだった場合、アウェイでのゴール数が多い方が勝ち、となるルールでいけば、レアルは1‐0でも準決勝進出を決められるのだが…後半途中、コーナーキックを蹴ろうとしていたエッフェンベルグの頭にレアルサポーターから投げ込まれた何かが当たってエフェンベルグが倒れたりとか、そのエッフェンベルグとフィーゴが相当やりあっていたりするなど、レアルのサポーターの凄まじさが両チームのプレーヤーのむき出しの闘志をさらにヒートアップしていて、手に汗握る展開となった。レアル待望の得点が後半20分過ぎに生まれ、最後には駄目押しの2点目が入り、決着はついた。あれだけやりあっていたプレーヤーたちが、試合終了後には笑顔も交えて互いを称え合っていて、気持ちのいいゲームだった。
 3:30に起床し、試合が終わったのは5:30。続けて、前日に録画していたバルセロナVSパナシナイコスを観る。これもバルセロナ自慢の攻撃陣が爆発し、パナシナイコスに逆転勝利。サビオラは本当にうまい。あれでアルゼンチン代表に入れないのだろうか。もったいないことこの上ない。
 レバークーゼンVSリバプール、マンチェスターユナイテッドVSディポルティボの2試合もどちらも非常に見ごたえがあった。残念なのはベッカムの負傷だ。今朝のニュースだと骨折しているという。ワールドカップに間に合うのだろうか。常識的には間に合わないだろう。
 ベスト4の顔ぶれを見ると、どれも攻撃的なチームばかりだ。セリエAのチームが全て2次リーグで姿を消した。セリエAのチーム全てが守備的だとは思わないが、ローマやユベントスの戦いぶりにはその傾向があったと思う。6月のW杯でも上位に来そうなチーム、優勝候補に挙げられているチーム、フランス、アルゼンチンなどは、守備とのバランスを考えつつも攻撃力は突出している。何となくではるが、流れがオフェンスに傾きかけている感じがする昨今、是非チャンピオンズリーグもW杯も、攻撃的なサッカー、イマジネーション溢れる楽しいサッカーを、見せて欲しいものである。「点を取られなければ負けることは無い」のではなく、「点を取らなければ勝てない」という視点が好きだ。

先頭 表紙

Hidey様、こちらこそすっかりご無沙汰してしまっています。いつも拝読させていただいているのですが… お帰りなさい。確かにお会いするのも気恥ずかしいですね。。 / ナライフ ( 2002-05-07 15:44 )
一方は意外なチームとなりましたね。もう一方はあまりに順当でした。結果も楽しみですが、W杯にどういう影響を及ぼしそうなのかも楽しみです。 / ナライフ ( 2002-05-07 15:42 )
すっかりご無沙汰してしまいました。ちょっとサッカーの話はなかなかついていけないので別の話を。そろそろ一時帰国します。5月22日の午前中、うちの学生80人でうちの会社を訪問。4階のホールでlectureを予定しています。その前後でもお邪魔するかもしれないけど驚かないでね。実際会うのってでもなんか気恥ずかしいよね。 / Hidey ( 2002-05-05 07:12 )
ベスト2が決まりました。ね / フィー子 ( 2002-05-03 15:59 )
ガス欠コインさま、お疲れ様です。↓にも書きましたが、きっとTBSで準決勝とかも生中継するんじゃないでしょうか。確認していませんが。 / ナライフ ( 2002-04-15 09:42 )
八百八六助さま、WOWWOWには大変お世話になっている昨今です。ただ、レアルVSバイエルンはTBSでも生中継していましたよ。 / ナライフ ( 2002-04-15 09:40 )
フィー子さま、きっと「4強」というタイトルで更新されるのでは、と思ったのですが、僭越ながら私も書かせていただきました。 / ナライフ ( 2002-04-15 09:38 )
KATSUMI様、レアルとバイエルン、まさに「ライバル」ですね。それを言ったら、準決勝のクラシコも正真正銘のライバルですしね。見逃せない対戦が続きます… / ナライフ ( 2002-04-15 09:33 )
超多忙につき、見ることも叶いませんでした。最も、僕もWOWOWに加入していながら、BSチューナーの不具合で現在見られない状態が続いているのですが。準決勝は、仕事が落ち着いたら、高田馬場までチャリンコ飛ばして、フットニックで見よう(笑)。 / ガス欠コイン ( 2002-04-13 13:27 )
フィー子さんの所でも読んできたのですが,凄い試合だったみたいですね.残念ながらWOWOWは加入していないからなぁ. / 八百八六助 ( 2002-04-13 00:02 )
今アップしたところでこちらにきたら、同じようなことを書いていました!(笑)本当に見ているこちらもどっと疲れが、という感じですよね。 / フィー子 ( 2002-04-12 23:26 )
今年はレアルが雪辱を果たしましたね。見たかったなあ・・・。これでスペインダービーの準決勝ですね。これも激しそうで、見逃せませんね。 / KATSUMI@故障リスト ( 2002-04-12 15:14 )

2002-03-25 映画の賞と同時代の評価

 今日はアカデミー賞の発表がある。WOWWOWで生中継しているようなので、見ればきっと結果も分かるだろうが、ま、きっと夜のニュースで取り上げられるだろうから今(25日14時現在)は特に追いかけて知ろうとはしていない。
 結果を知らないので、知らないなりに言うと、こういった映画賞の結果ほど面白くないものは無いと個人的には思っている。1映画ファンとして、毎年の結果は気にしているし、賞の模様も衛星放送で見たりしているが、ショービジネスの国アメリカだけあって、イベントとしては流石だと思うが、結果そのものは純粋な映画だけの視点で見ると、毎年選考委員の瞳を疑いたくなってくる。
 アカデミー賞を取った過去の映画で、今も光り輝いているものはどれほどあるだろうか。あるいは、才能ある映画監督を、特にその現役の時に名誉ある賞を与えたケースがどれほどあるだろうか。死の直前の老いたチャップリンに、やっと「特別賞」を与え、ヒッチコックやホークス、ルビッチといった全盛期ハリウッドを支えた天才たちの作品は全く無視。アメリカ映画そのものと言って良いジョン・フォードには、さすがに何回か監督賞を与えているが、と言っても『駅馬車』や『捜索者』といった西部劇には与えず、作品賞も『わが谷は緑なりき』の1つだけ。
 映画に限ったことではないが、歴史が評価を確定していく、という視点からすれば、同時代というのは評価が難しいのかも知れない。だからこそ「特別賞」みたいな枠を設置しているのだろうが、日本の文化功労賞とかみたいで見ていて情けない。ハリウッドのミュージカル全盛期を支え、今に至るミュージカル映画を築いたフレッド・アステアも、確か現役の頃は貰ってない。やはり晩年に特別賞をもらっていた。チャップリンにしてもアステアにしても、その場は非常に盛り上がる。かつての黄金期を支えた人間が、よぼよぼしながら登壇すると、会場はスタンディングで称え、作品賞等よりよっぽど盛り上がる。私も、「おお!アステアだよ!!」などと興奮しながら中継映像に食い入ったりするのだが、その一方で、アカデミー協会の予定調和的な策略と、擬似慈善的な演出に辟易したりする。
 さあ、今ごろ結果は出ているのだろう。明日の新聞も色々と書きたてるだろう。果たして50年後の映画ファンが見ても納得の結果になっているだろうか。

先頭 表紙

ねご様、トム・ハンクス、僕も同感です。どうも演技があざとくて好きになれません。僕の感覚では、いわゆる「演技派」=あざとい演技をする人、というイメージなのです。ちょっと苦手です。 / ナライフ ( 2002-04-10 19:08 )
つっこみ、ありがとうございました〜♪トム・ハンクスもいかにも「賞狙い」な作品が多くなって最近つまらないです。それは本人も感じているようですが。賞狙いの映画って、つまりは客が観たい映画とは相反するものになる確率がとても高い。それに多額の資金をつぎ込むのもも / ねご ( 2002-04-09 01:28 )
しまお様、そういうやり方もあるんですね!先日、『ビューティフル・マインド』を観ましたが… ラッセル・クロウには辟易しました。監督のロン・ハワードって、僕好きなんですが、よりによって賞を獲得した作品がこれとは・・・という感じです。 / ナライフ ( 2002-04-04 15:10 )
Hiroko様、僕も知らないものでした。多分まだ上映されてないと思いましたよ。タイトルも忘れてしまいましたが。 / ナライフ ( 2002-04-04 15:06 )
わたしは逆に、アカデミー賞受賞の作品は見ないことにしています。そういう意味では役にたっているかも?だってどれもこれもつまらない作品なんだもの・・・。でも友達に言っても、あんまり同意されないの。ナライフさまが言ってくださってすっきりしました♪ / しまお ( 2002-04-04 00:49 )
よく覚えてませんが、黒人の女性が賞をとった作品は名前も知らないものでした。日本で上映されてなかったのかな? / Hiroko ( 2002-04-03 00:30 )
さくらもち様、僕も見ましたが、あまり面白くなかったというのには同感です。確かにフィルムのコラージュって、毎年楽しみなんですけどね。ジーン・ティアニー、僕も大好きです。 / ナライフ ( 2002-03-29 17:01 )
今年のアカデミーはイベントとしてもつまらなすぎ。ダンス・パフォーマンスは10年前から全然ダメになってましたけど、今年はフィルムのコラージュものもつまらなかったです。 / ジーン・ティアニー好きなさくらもち ( 2002-03-28 22:23 )
ガス欠コイン様、グラミー賞もきっとそうなんでしょうね。そう言えばクラプトンも「アンプラグド」でグラミーを総なめしてましたが、あれもクラプトンど真ん中ではないですしね。(好きですが) / ナライフ ( 2002-03-26 17:44 )
フィー子さま、賞=凄いの図式の方がマジョリティだとは思いますけど…ま、役者もギャラが上がるらしいですし。 さすがに日本アカデミー賞=凄いと思っている人はあまり居ないでしょうね。あれはひどい。 / ナライフ ( 2002-03-26 17:37 )
きっと色んな圧力があったり、バランスを考慮したり、… 純粋に作品を見ることだけからの選考って、あまりないんでしょうね。賞目当てと言えば、スピルバーグって賞目当てになるとつまらないですね。ジョーズとかレイダースとかETの方がよっぽど面白い。 / ナライフ ( 2002-03-26 17:33 )
バロンドールと最優秀選手、そうですね、サッカーも。今年はW杯があるから優勝国から選ばれがちでしょうが、去年なんかは難しいですよね。フィーゴ、オーエン、ジダン、ラウル、ベッカム、カーン、等々… / ナライフ ( 2002-03-26 17:29 )
僕に言わせてもらえば、グラミー賞もしかり。大好きなSantanaが獲った時は、正直ショックだった。「Super Natural」は最もSantanaらしくないような気がして。ずっとマイナーでやってきたから、功労賞ということなのかと。へそ曲がりなので、その年の日本公演も行きませんでした。 / ガス欠コイン ( 2002-03-26 14:11 )
ほんとほんと。ラズベリー賞の方がよっぽど面白かったりして。賞をとってるから=凄いと思うような単純さは徐々に減ってきているのではないですかね。なんてそんなことないのかな。 / フィー子 ( 2002-03-26 09:28 )
最近の審査員、なに考えているのでしょうか???選ぶ基準がよくわからないです。カンヌでしたっけ?リュック・ベッソンが審査員長の時も納得いかず。。。明らかに賞目当ての作品も多いですね。 / ぽん ( 2002-03-26 03:09 )
一つの時間軸で、評価を「一つだけ」しようと決めていると、失われるモノが多い気がします。バロンドールと最優秀選手、異なる方が普通でよいのではないでしょうか。 / KATSUMI@故障リスト ( 2002-03-25 17:01 )

2002-03-18 ポルトガルのお年寄り、健在!〜『家路』を観て〜A

 洗練の極みとは、言い換えると、観客を馬鹿にしないことだ。「事細かに説明してやらないと分からないだろう」という視点で映画を作ると、当然説明過多のクドイ作りになる。教習所の啓蒙フィルムがいい例だ。中国の才能ある監督だと思っていたチェン・カイコーがハリウッドで初めて製作した『キリング・ミー・ソフトリー』が、あの『黄色い大地』や『子供たちの王様』の作り手と同じ人のものによるとはとても信じ難い出来映えだったのだが、もしかしたらチェン・カイコーはアメリカ人を馬鹿にし過ぎているのではないだろうか、などと変な勘繰りをしたくなってしまった程だ。そう言えば、北野武も『BROTHER』でも武らしからぬ不要なカットが多かった。クリント・イーストウッドに代表されるように、ハリウッドにおいても洗練された映画は沢山作られているので、ハリウッド自身の問題ではないと思うが。とは言え、あの才能豊かなチェン・カイコーの能力だけではいかんともし難い力学が有形無形に働いたに違いない。
 話はそれてしまったが、『家路』はもしかしたら洗練されすぎているために、一見地味で盛り上がりの欠けた映画だと思われるかも知れない。恐らく映画を沢山観ているような評論家でさえ、例えば上記のような洗練された演出を見逃してしまうに違いない。ただ、間違い無く言えるのは、決して『家路』はマニエリスムに陥っておらず、己の瞳で真正面からスクリーンと対峙すれば、これほど面白い映画は、そうそう見当たらない、ということだ。
 洗練の極みとは、また、同じ構図の場面を映画の中で複数回見せることでもある。日本で数多く作られているTVドラマは、キャメラを複数配置し、その中で役者が演技し、撮れた複数ある映像を繋いでいくやり方をしている場合が多く、そのため役者の顔や動きを追うことに主眼が置かれており、繰り返し登場する場所を描写するのに決まった構図でまず示すということをしない場合が多々ある。ところが、サイレント映画期に恐らくアメリカで確立された、ある特定の場所は必ず同じ構図で示すという手法を使えば、1カットで全てを語れてしまうのである。『家路』でのオリヴェイラ監督は、基本に忠実と言うべきか、簡潔に同じ場面では同じ構図のショットを見せる。因みに、黒澤明監督が、『七人の侍』等で複数のキャメラを同時に回して撮影する、という方法を編み出したと言われており、そのやり方自体にはメリットも勿論あるとは思うのだが、あくまで「応用篇」だと思うのだ。それに黒澤明の映画は、説明過多で無駄が多いという意味では、サイレント映画を撮ったことがある小津や溝口やマキノと、トーキーになってから監督デビューした黒澤明との差かも知れない。そう、やはり黒澤明は洗練には程遠いイメージの作家なのだ。
 また、洗練の極みとは、役者の思い入れたっぷりの演技で登場人物の心情なり行動を説明しようとしないことだ。事故で亡くした妻と娘の写真を見て思いっきり役者を泣かせ、そこに感傷的な音楽でもかければ、観る者の涙を誘うことは簡単である。『ニューシネマパラダイス』はそのオンパレードだ。しかし、先程触れたように、『家路』では役者の表情は逆光のため全く見えない。役者は黒いシルエットになっており、外は明るい。音楽は全く無く、庭にいるのであろう鳥のさえずり声が響いているだけなのだ。
 人それぞれ好き嫌いはあろうし、映画の好みも百人百様。『家路』を好まれない方、面白いと思わない方も沢山いるとは思うが、私はこの洗練された明晰さに「映画ならではの面白さ」と作り手の豊かな才能を感じる。
 

先頭 表紙

「家路」を観て感動し、ここのレビューを読んで更に感動致しました。有難う♪ / 乱入ごめん ( 2002-05-30 12:32 )
ぽん様、サインいいですねえ!僕も映画館等で何回かお見かけしたことはあるんですが… / ナライフ ( 2002-03-25 09:14 )
「家路」見ようかまよってたんですけど、見てみます!山田宏一さん、この間映画館でお見かけして、サインもらっちゃいました。てへ。 / ぽん ( 2002-03-24 12:09 )
山田宏一さんの文章って、一見何の変哲もないようでいて、映画を観る愛情に溢れていて大好きなんですよね。理屈から入らずに己の直感を大事にしているところとか。 / ナライフ ( 2002-03-22 18:11 )
洗練された明晰さ、いいですね。なにものをもバカにしないで生きていくことができたら世界ももっと変わるのに。自分も含めよく肝に銘じております(-_-)。(山田宏一さんのトリュフォーの本、今読んでます。) / フィー子 ( 2002-03-20 09:28 )
KATSUMI様、おっしゃる通りTVの映像に慣れてしまった人からすればあまりに不親切かも知れません。「慣れ」は無意識的に「制度」を捏造しているということでしょうか。この「制度」を軽々と超えてしまう力を持った作品こそ大事にしたいものだと思います。 / ナライフ ( 2002-03-20 09:19 )
八百八六助様、オリヴェイラ監督に2〜3年前に会ったことがある人の話によると、ホテルのプールで泳ぎまくっていたらしいです。よっぽど頑丈な人なのでしょうね。あと、僕のたどたどしい文章だと、いかにも凝った映像っぽく聞こえるかもしれませんが、実際は簡潔極まりない印象ですよ。 / ナライフ ( 2002-03-20 09:15 )
うーん、説明過多な映像という表現は当たっているかもしれない。でも一度の映像で理解できることも、今の人にとって少なくなっている気もします。寂しいことかもしれませんが。 / KATSUMI@故障リスト ( 2002-03-20 01:39 )
そんなに映像に凝った映画を1年に1本,しかも90歳を超えた監督が作るとは凄いですね. / 八百八六助 ( 2002-03-18 22:26 )

2002-03-18 ポルトガルのお年寄り、健在!〜『家路』を観て〜@

 ひっそりと単館で公開されていて、きっと大した興行成績も上げず、話題にもならず、そのうちに終映となるに違いない映画がある。その作品の監督は、既に90歳を超えているのだが、最近は1年に1作のペースで映画を作り続けており、高齢を感じさせない。驚くべきは、その製作ペースだけではなく、中味の明晰さにある。
 監督の名は、マノエル・デ・オリヴェイラ。作品の名は『家路』。日比谷シャンテで公開中だ。この高齢のポルトガル人監督、私がその名を知ったのは、約10年前の『神曲』。日本では公開されていないが、機会あって観ることができた。次いで93年、日本では初お目見えとなった『アブラハム渓谷』。続いて、『階段通りの人々』、そして、『メフィストの誘い』、昨年の『クレーブの奥方』。『神曲』は同名のダンテの作品がベース、『アブラハム渓谷』はフローベール『ボヴァリー夫人』の現代版、『メフィストの誘い』の下敷きはゲーテの『ファウスト』、『クレーブの奥方』もその原作はラファエット夫人の古典文学、といった具合に、名だたる古典を映画化しており、いかにも「文学の香り」漂う「芸術臭い映画」のようだが、逆に全く「文学の香り」などしない。そもそも脚本自体も原作を大胆にアレンジしていることもあるが、原作通りの描写をすることなどまず無く、映像を映像として見せていき、余計な説明など一切しない(台詞も説明的演出、説明的演技も極力排している)、明晰かつ単純かつ無駄の無い、まさに「映画」になっている。
 最新作『家路』も、淡々と画で見せていく。舞台や映画で活躍するベテラン俳優が、ある日突然、最愛の妻と娘夫婦を事故で亡くし、残された孫と二人だけの静かな生活を送る中で、自らを見つめ直す姿を描いているこの作品、今回はオリジナル脚本のようだが、これまたイヨネスコの「瀕死の王」、シェイクスピアの「テンペスト」、ジョイスの「ユリシーズ」といった戯曲の上演の模様が作品全体のかなりの比重を占めるので、「名作好き」オリヴェイラらしい。しかしやはり、彼の演出は演劇とは対極にある。
 開巻後、舞台の様子を捉えた場面以外は、恐らく10分以上台詞がほとんどなく、必要最小限のショットを積み重ねていく。観る者は、それが余りに自然に展開されるので、台詞の無さを意識することはまず無いとは思う。本来は劇的な場面になり得る、妻と娘夫婦が事故で亡くなったことを主役のミッシェル・ピコリが知る場面は直接画面には示されない。そのことを知ったピコリが、しばらくすると後姿でフレームインし、小走りに画面奥のドアを開けて出ていくだけだ。そして数日後、ピコリは孫が元気に小学校に行く姿を微笑ましく見送り、部屋に戻って来て、机の上の写真立てらしきものを手に持って見る。物語上は、亡くした妻や娘の写真を悲しげに見ているのだろうが、全て逆光で撮っており、ピコリの表情など全く見せない。彼の後ろの窓の外は明るい陽が射しており、外と中の光の具合が素晴らしい。といった具合に、その演出は、オープニングから洗練の極みと言って良い。これぞ「映画」だ。

先頭 表紙


[次の10件を表示] (総目次)