2002-06-03 水入らず
2002-06-02 は行の法則 か行の例外
2002-06-01 キャベツの食べ方
2002-05-31 にほえろ
2002-05-30 風に捕らわれて
2002-05-29 おっぱい大好き
2002-05-27 笑い話にもならない
2002-05-26 祈願する
2002-05-24 東京だよおっ母さん
2002-05-23 お題

「少年と砂漠のカフェ」、観てきました。
試験に落ちた後海月と二人で。

今から僕たちはミズダコの刺身とボイルされたまつぶ貝とキャプリンをオチャツミに、コンチャイ・トロのカベルネ・ソーヴィニョンを飲むのです。

では、そういうことで。

先頭 表紙

お気付きの方もいらっしゃるでしょう。
は行の文字は全て、その繰り返しにより書き言葉において笑いを表すことが出来ます。

ははははは。
ひひひひひ。
ふふふふふ。
へへへへへ。
ほほほほほ。

それだけで笑いを表すに足りるのですが、接頭してあ行の文字が付くこともあります。

あはは。
いひひ。
うふふ。
えへへ。
おほほ。

この時、あ行そのものが表す母音とは行の母音は同じものとなります。
けれど、一つ例外があります。
あ行の文字のうち、「う」一つが、どのは行の文字とも接することが出来ます。

うはは。
うひひ。
うふふ。
うへへ。
うほほ。

これが「は行の法則」です。
その他のさらなる例外として、「あはは」と「うはは」の中間に位置するものとでも考え、「わはは」を挙げてもよいかもしれません。

は行の他にも笑いを表すことの出来る行はないものか。
あります。か行です。か行の音・文字の繰り返しだけでは不自然だと思われる場合、これまたここでも「う」を接頭すれば、割合問題は解決するのではないかと思われます。

かかかかか。
ききききき。
くくくくく。
けけけけけ。
こここここ。

うかか、は却って不自然でしょうか。
ききき、でも、うきき、でもどちらでもいいように思われます。
くくく、の方が、うくく、よりもより自然でしょうか。
けけけ、でも、うけけ、でも、これもどちらでも良さそうです。

ただしかし、一つ「こここ」だけが、そのままでも「う」を頭に付けても、不自然なように思われます。
これが「か行の例外」です。

言葉はナマモノですから、上に挙げた例のうち「自然」としたものもかつては「不自然」だったかもしれませんし、この先不自然になっていくのかもしれません。
それに「不自然」の例として挙げたものが、この先「自然」な表現とならぬとも限りません。

面白いですね。

先頭 表紙

ただ焼酎ばかり飲んでいるだけではお腹も空くし、なんだか体に良くはなさそうだ。
オチャツミを作ろうにも、手の込んだものどころか火を通すものを作ることがそもそも面倒臭い。
何があっただろうか。
キャベツでも刻もう。

僕は台所に立ってキャベツを刻む。
ざくざく、ざくざく。ざく。
小振りな陶製のボウルに刻んだキャベツを盛って、あまり多くなり過ぎないようにマヨネーズを掛ける。
ほんの少しゆずポン酢を加える。
これはこれで旨そうだ。
でも何か物足りない。もう少しタンパク質系のお腹にたまるものには出来ないだろうか。
僕はそこにツナ缶でも放り込もうかと考える。なかなかいい考えではなかろうか。
でも、貴重なツナ缶は、もう少しきちんと料理を作る時のためにとっておこう。
せこい考えに捉えられた僕はツナ缶追加案を却下する。
何か他にないだろうか。

ああ、そうだ、卵ならたくさんあるぞ。
キャベツに生卵を掛けるのもどうかと思ったが、僕は昔一週間以上キャベツと塩だけで食いつないだことがある。
卵掛け飯も好きだ。それを思えば、キャベツに生卵を掛けても良さそうな気がした。醤油も掛ければ卵掛け飯と似たようなものになるだろう。
それはどうかな、というもう一人の僕自身の陰の声を聞きながら、面倒臭かった僕はその声を無視した。

全ての材料を加え、さらに韓国粉唐辛子も加えて、キャベツその他を混ぜる。
なかなか旨かった。

でもやはり卵を入れたのだから、火を通す料理にまでもっていった方が旨かったかなあ。
それにどうせ火を通すのであれば、いっそ小麦粉を水で溶いて加えればなおいいのではないだろうか。
ツナは入れなかったけれど、替わりに豚肉を入れても旨いかもしれない。イカなんかを入れてもいいな。

冷たいキャベツのオチャツミを食べながら焼酎をあおりつつそこまで考えて、はた、と気付く。
それってお好み焼きちゃうのん？

先頭 表紙

僕は一応長崎市内で産まれたようです。
物心付いた頃うちにあったテレビは依然白黒でした。

色んな番組を見ていたのでしょうが、僕は幼少の記憶が他の人と較べて曖昧なのではないかと思います。これは小学校の中学年か高学年の頃に記憶喪失になった経験が関係しているのかもしれません。
なんとなく印象に残っているのは、「太陽にほえろ」という番組だけです。

僕の父と母は、結婚して僕が産まれる時分までは長崎市内に住んでいたのですが、僕の小学校就学に合わせるように、父の出身地である郡部に家を建て、そこに移り住みました。

小学校中学年のある日、この頃には既に僕の家にあるテレビは、目出度くも総天然色のものとなっていました。
僕は仲のいい女の子二人と、三人が三人とも大好きな番組「太陽にほえろ」について、熱く語り合っておりました。

ひとしきりそれぞれが自分の好きな刑事やエピソードを語り合った後、僕は二人の友人に尋ねました。

「ところでさ、前から不思議に思ってたんだけど、『にほえろ』って、何？」

爆笑されました。

先頭 表紙

僕は車を運転している。
東山通りを西に向かう。
いい天気だ。梅雨もまだだというのに、初夏のような陽差しは暑いくらいだが、窓を開けていれば流れ込む風が心地よい。

耳が痒い。
僕は鞄からなぜか持ち歩いている耳掻きを取り出して、車の流れが緩やかになる時を狙って耳を掻く。
竹製の短いありふれた耳掻きで、掻く部分の軸を挟んで反対側には、羽毛の房が付いている。
さっぱりする。
掻きながら、僕は何か危ういことを感じている。
その時車は流れ始める。
僕は耳掻きを自分の耳から外し、車を前に進める。
右手には耳掻きの軸を器用に挟んだまま。

その時車窓から大きな風の流れが車に吹き込んだ。風があるのではない。
車が動くことで風が起こり、車内外の空気が動いた。
僕は自分の感じた危うさの正体を知る。
僕は知っていた。なぜかは判らないが、この状況で耳掻きを使えば、羽毛の房が風に捉えられて吹き飛ばされてしまうかもしれないということを。

房は車内になだれ込んだ空気が再び車外に逃れるのと共に、吹き飛ばされてしまった。
僕はその姿をミラーで追う。
僕は後悔する。
房が飛ばされてしまったことではなく、飛ばされてしまう危惧を持っていたにも拘わらず、その危惧の正体が模糊としたまま自覚できず、耳掻きを使うという行動に出てしまったことに。
後ろに流されてミラーで追うしかない映像が、なぜかフロントガラスの向こうに見える。
おかしい。

そういう夢を見た。

先頭 表紙

胸の大きい女性を見掛けると、その女性の胸元を見てしまう。
ある意味目を奪われる。

それを見て劣情を催すのではない。
あんな重そうなものをくっつけてて、肩凝らないのかなあ。大変だろうなあ。

他人の嗜好に文句を付けるつもりも胸の大きい女性を貶す気も、毛頭ない。

僕は、流行としての巨乳好きは、純粋な性的希求とは少々趣を異にしていると思う。
無論性的なサインとして巨乳に価値を見ているということもあるであろうけれども、それ以前に豊かな胸に求めているものが、巨乳をもてはやす社会には存在しているのではないかと思う。

何を求めているのか？

それは、「母性」である。
古来から豊満な、大きな胸や腰を持つ女性の偶像が豊饒や多産を意味していたと考え、それを母性と読み替えてもあながち間違ってはいないだろう。この先どれだけ科学技術が進んだとしても、「自然」な形態における生物としての男性が子を成すことはあり得ない。
「巨乳」は女性の母性の象徴なのである。
女性に付随する価値として、母性が性的なサインとなり得ると考えることに異論はない。むしろ自然な成り行きのようにも思える。そこに偏執的な言い掛かりを付けようとは思わない。

けれど、雑誌やテレビなどのメディアに登場してもてはやされている胸の大きい女性の多くが、母性とは程遠いような幼い顔立ちの人が多いことはどう考えればいいのだろう。

そのことについて、僕は乱暴な仮説を持っている。
そうした女性は、「癒し系」の「巨乳」という訳の解らない言葉で括られることがある。実はそこに、乱暴な仮説を無理矢理にでも成り立たせるヒントがある。
母性ということであれば、大きな胸を持たなくとも母になれるのだから、それが象徴的な意味合いしか持たないことはよく判る。貧乳であっても立派に子供を産み育てている女性はざらにいる。
キーワードは「癒し」という言葉ではないか。

以下、乱暴な仮説である。
象徴としての母性はマザコンを示している。
何も近親相姦的な背徳の欲望を持ち出さなくとも、母のように優しいものに包まれたいという欲求であろう。
幼い顔つまり童顔は、これはロリコンを示している。
現実に年端もいかない幼女に対して性的な行為を行いたいという欲求を持っているというよりも、これも象徴としての幼女であろうと思う。現に「癒し系」とされる女性の多くは、一応性的に成熟したと見倣される年齢に達してはいる。それでもやはり、象徴的には幼女なのだ。これは何を示すか。象徴的な幼さが、自分の思い通りに出来そうだという勘違いを惹起するということではないか。

母のように優しく、そして幼女のようにこちらの望むように出来るのではないかという幻想。これが「癒し系」の正体ではないか。これは、都合のいい女性にしか癒されないという幼児性を露呈している。

あるいは女性は若ければ若い方がいい、性的なサインはペニスも含めて胸も大きければ大きい方がいいという「価値観」の現れなのかもしれない。
昔アルバイト先の親方が、自分の娘を評して僕にこう言ったことがある。

「うちの娘は中２なのに、胸はＣカップなんだ」

彼はそれが自慢だったようで、返事に窮した僕の様子が不満気だった。
それなら、「そうですか。いやあ、じゃあ若くてピチピチでボインちゃんのその娘さんと一発やらせてくださいよ」とでも言えば満足だったのだろうか。

たとえ自分が欲情するのでなくとも、自分の娘をそうした目で見ることが自慢の父親なんて、馬鹿だ。そして、この上もなく下衆だ。

先頭 表紙

必要書類の不備で受験できませんでした。

また来週。

先頭 表紙

明日は資格取得の実技試験があります。

昨日２５日は大潮の日に当たりました。
予定日を過ぎても産まれなかった僕の友人の子供について、海月は自信たっぷりに「２５日に産まれるよ」と言っていました。
僕たち二人は早くその子供に会いたくて仕方がなかった。無事に僕たちの世界にやってきてくれることを心待ちにしていた。

今日の午前中、僕は実技試験の会場の下見に行ってきました。海月から前もって、その帰りに逢えないかと言われていました。
いつ何時でも、海月に逢いたいばかりの僕に否やがある筈もありません。
下見の帰りに海月と逢いました。

僕はお腹が空いていましたが、なんとなく空腹のままで海月と逢った方がいいような気がして、お腹を空かせたまま、待ち合わせの場所で海月を待っていました。
彼女はお弁当を作ってきてくれた。
以前一面の桃畑だったところが、事情があったものか今では草っ原になってしまって見晴らしの良くなった、その中の道に車を停めて、二人でお弁当を食べました。

梅干しのおにぎり、焼き豚トロ、タコとししとうのマリネ。
昨日の晩、海月のところに親しい友人が泊まったとかで、マリネはその残りだったそうです。以前のマリネが浅漬けなら、今回のマリネはしっかりとお酢や油がなじんでいて、やさしい味がしました。

喧噪しいくらいに鳥が囀っています。
蝶や蛾がひらひらと飛んでいきます。
晴れ渡った空にいくつかの雲が浮かんでいます。

逢えなかった間にそれぞれの身に起こったことを話しました。
話す度に僕は彼女に惚れ直します。

「今日逢いたかったのはね、これを渡したかったの」

海月は紙に包んでリボンのシールを貼ったものを差し出しました。

「うわあ、ありがとう。何？」
「開けてみて」

包みを開いた時の喜びをどうやって表したらいいのか、僕には判りません。
包みの中から現れたのは、赤いフェルトで作ってビーズで飾られたお守りでした。

中に何かコロコロしたものが入っています。
「これは何？」と尋ねようとする前に、僕はそれが何なのか判りました。
「火打ち石だ」
「そう」
海月はさも嬉しそうに笑っています。

面接の時に、海月が火打ち石を模して僕に火を切る真似をして、面接の結果を知るまでも学科試験に際しても、僕の合格を祈ってくれていたあの石です。
どうして彼女はこんなに僕が嬉しくなることが判るのだろう？
僕の期待通りに振る舞う訳でもなく、どちらかといえば思いも寄らない彼女の行動で、僕はこんなにも幸せになる。
受かる落ちるの判断は僕が下すのではなく、僕は出来るだけのことをやって後はその合否の判断は試験官の人に任せるしかありません。
それでもずいぶん楽になったし、力が湧くようです。
僕は海月と別れて家路につきました。

夕方と言うにはまだ少し早い時刻、件の友人からメールが届きました。

やはり昨日、産まれていたそうです。
すぐに電話しました。
友人には「よかったね、おめでとう」、その奥さんには「お疲れさま、良かったね、おめでとう」
それしか言うことを思い付きませんでした。
嬉しい、嬉しい、嬉しい。
この世界にまた新しい命が生まれた、嬉しい。
僕は、このことでも力を貰ったような気がします。

大潮の時刻だったそうです。

先頭 表紙

ファーストリテーリング社が繊維業界や官公庁、あるいは一部のマスコミにいじめられたのには、訳がある。
もちろん「出る杭は打たれる」などの、驚異的に業績を伸ばした者に対するやっかみや恐れ、人と異なることをする者を認めない閉鎖性が大きいだろう。
だがもう一つ隠れた要因があるように思える。
彼の会社が、ある意味もともとは東京というフィルターを通さずに大きくなったこと、地方から出現した経済の動きだということである。

恐るべき中央集権体制。
いくら地方自治や規制緩和が唱えられたところで、実現しなければそんなものは絵に描いた餅でしかない。到底食えたものではない。
この国の経済・政治の中心は言うまでもなく、東京である。企業は東京に出て初めて全国区で「一人前」と見倣されるところがあるし、国政は東京で執り行われている。経済と政治が絡む際、監督省庁はもちろん東京に在する。

なにも政治や経済に限らない。映画演劇美術音楽文学、文化においても東京中心主義とでも言えそうなものが罷り通っている。たとえ沖縄出身の歌手がもてはやされているとしても、大勢は東京経由でしかない。

そうした時のテレビ受像器、テレビ放送網の機構というものの教育効果を考えれば、唸らざるを得ない。
情報の発信元や受け手が意識するしないに関わらず、「価値観の均質化」とでも言えそうなものが起こる場合、このシステムは実に有効にはたらく。

国営放送などの、日本各地の紹介をする朝の番組などを例に取れば、そのことはとても分かり易い。
地方局からであれキー局から派遣されたのであれタレントであれ、紹介される場所、人物のもとを訪れた紹介者は、もちろんその地方特有のものを紹介する。だがしかしその紹介の方法には、東京での普通という基準に照らしての「珍奇」なものに対する視線が含まれることが多い。
大仰に「ここではこうなんですね」、「こうしたことが、ものがあるんですね」と感心する紹介者の顔をブラウン管越しに眺めていると、言葉は悪いが白痴ではないかとすら思えることがある。そこではそれが当たり前なのだ。何をそう大袈裟に珍しがる必要があるのだ。
悲しいことに昨今では、取材される側が取材する側の「基準」に、知らず知らずにとはいえ、寄り添って受け答えをしていることも多い。取材される方も、事前にテレビその他で「基準」の教育を施されているとしか思えない。

東京というフィルターが今でも有用にはたらく場面ももちろんあるのだろう。けれど、その濾過器を通した水がいつもきれいになって出てくるとは限らないのではないだろうか。
なによりこの濾過器は疲弊してもいる。むしろそこを通された水は、通る前よりも濁っている。そうしたことすらないだろうか。
それでも東京を目指す若者は後を絶たないのだろう。けれど、地方に暮らす者に限らず、現に東京に暮らしながら、その疲弊した濾過機能に戸惑う者、憤る者、傷つく者だっているのに違いない。

こういうことを言って地方在住者の僻みととる者がいたとしても、それはそれで別に構わない。

先頭 表紙

次の一文を一連の文章の末とする文章を、１，５００字以内で作成せよ。

「何かが変わる訳ではない。何かを失くす訳でもない。けれど、何かが確実に毀れていく。」

ただし、文頭の空白と改行は、一つ、一回、共に一文字と換算するものとする。

基本的に文はそのままの形で使用するものとするが、本意を変えない程度の省略、時制の変更等は可とする。

先頭 表紙