私の知り合いの、或る人の事です。
奥様が、「あれして。」「これして。」と何かを頼むたびに、こう答えていたのです。
「俺は忙しい。金で解決できる事は金で解決しろ。」と。
確かに彼はエリートサラリーマンで、高給取りでした。
でも、ツマが欲しいのはそういう言葉じゃないと20代の私は思っていたのです。
彼女が欲しかったのは、「労わり」とか「優しさ」、「一緒に何かをやりとげる充実感。」そしてできれば「感謝の言葉」だと。
だから、若かった私は、その人に反感を持っていました。
でもツレは「ふむふむ。理にかなっている。あれだけ稼いでいたらその位いばってもよかろう。」って言ってました。自分もできれば、そんな台詞を言ってみたいとも。
「金で解決。」という言葉をあんなに嫌っていたのに、ツレを亡くして、手が足りなくて、今の私はいつの間にか「金で解決できるものはお金で解決しよう。」と思うようになっていました。
お風呂が汚い→近いうちに業者に頼もう。
植木の剪定→自分でやってみて首を痛めた。→やっぱり植木屋さんに頼もう。
母子家庭。お金の使い方さえ間違えなければ、意外と普通に暮らせるじゃん。って。
なので。今日もできたばかりのレゴランドに行って家族サービス。
食事も子連れにしてはセレブなbills。
メニュウを見てもちんぷんかんぷんだった娘たち。
そして、運ばれて来たチキンシュニッツェルを見て「あー。どうしよう。大失敗!」と突然アイが涙ぐんだのです。
私の前で泣く事なんてほんとんどないので驚いて、「どうしたの?」と聞いても、こぼれ落ちそうな涙を抑えることに必死でしばらく無言のまま。
ようやく出た答えが。
「あの時真面目に、パパにちゃんとフォークとナイフの使い方を聞いておいたら良かった。」
「なにそれ。左手でフォークを持って肉を押さえるの。それで右手に持ったナイフで切ればいいのよ。」って答えて、ああ、アイはパパとおんなじ左利きだった〜。今度、マナー教室に通わせてあげなきゃ。って思ってから気がつきました。
違うんですよね。
私、お金の力を過信していました。
充分なお金を使っているから、娘たちに寂しい思いはさせていないって。
多分、そう思う事で、至らない自分を保てていたんだとも思いますが。
アイは私に似て不器用で、寂しさや悲しさをうまく表現する事が出来ない子です。
でも、それをすっかり忘れていました。
今、改めて気がついて良かった。
アイが本当に伝えたかったのは。
ここにパパがいてくれたらどんなに良かったかって。
もっと、パパにいろんな事を教わりたかった。って事。
お金では埋められない父親の不在。
本当に大切なものはお金では買えないって事。
それを良く頭に置きながら暮らしていかなきゃな。って、改めて思った出来事でした。
※billsのパンケーキ。写真を撮る前に食べ始めちゃいました。 |