この話はフィクションです。
私はクリエーターです。才能には恵まれていないし、やる気まんまんというわけでもなく、ただ、地道にやってきただけなので、ずっと目立たない存在でした。
それが。
最近、組織改革があり、上司の宣伝戦略にのり、私の関わったものが大ヒットしました。
ヒットしたことによって、いろんなイベントの目玉として使われるようになりました。
その、もの自体は私の手から離れてしまっていたので、そのことによって私自身はかわらなかったのだけど。褒められたことにより、人に対して少しだけ優しくなれたような気がしていました。
先週、あるレセプションの帰り、職場の仲間が打ち上げの場所を探していたので、私の知っている、安くて寛げるお店を教えてあげました。通り道だったので、お店の前まで一緒に案内して帰ろうとしたところ、「せっかくだから。」と昔から知っている同僚に誘われて同席することになりました。
宴もたけなわとなり、それぞれの関わったものの話題になりました。その同僚が、私が苦手な同僚の関わっているものについて褒めまくったので、つい「私も、とてもよいと思ってる。だけど、一回だけ、トラぶって上司が調整してたのを見ちゃったわ。」と言いました。それを目撃した人はたくさんいたのだけど。初耳だったようで、とても驚いてました。さらに。その同僚にも「あなたのも大好きだわ。でも、この間エンスト起こしてた。エネルギー不足だったのなかぁ?心配ね。」と。
耳に心地よい言葉をくれる人が本当にやさしい人とは限らないというのが私の信条です。
私は、自分の関わっていたもののデメリットを人から伝えてもらうことで、試行錯誤をくりかえして、その結果、今の大ヒットにつながったと思っていたので、仲間を思う親切心で言ったのです。伝えることで、もっとよいものになっていくといいなぁって。
その打ち上げは和やかに終わったので、その日のことはすっかり忘れていました。
1週間後。仕事の打ち合わせでその同僚にメールをうったところ。
返事の最後に。
「この間は、言いすぎだよ。他の人の前であんな言い方、印象悪すぎだよ。フォローのしようがなかったよ。敵をたくさん作ると困るよー。」。
との追伸が書かれていました。
冷水を浴びせられたみたいな気分になりました。
調子にのりすぎって思われていたのかって。
その同僚とは前の部署でも一緒だったし、私のことを理解してくれてると思ってたから。
私、口は悪いけど。性格もそんなに褒められたもんじゃないけど。
大勢の前で人を辱めようってする人間じゃないって事。わかってくれてると思ってたから。
仲間だと思ってたけど。違ったのかも。ライバルとかだったのかも。
なんかすごーく落ち込みました。
自分のいたらなさに。
そんなに私、あの場所にそぐわないことを言っていたんだと。
知らないことであとで大恥をかく。だから教える。そこまでは間違っていなかったとは思うのです。
でも、タイミングや言葉の選び方が間違っていた?
だから。昔馴染みの同僚も親切で教えてくれた?
きっとそうに違いない。
明日、彼女とすれ違ったりしたら。私はどんな表情をつくればいいのか。
今までみたいに無邪気に微笑む自信がない私です。 |