次女と二人で、スーパーで買い物をした。
レジを済ませた後、品物をエコバッグに詰めていると、頭上から涼やかな声が聞こえてきた。
「こんにちわ。」
見上げたそこには、背の高い、見知らぬ女性が立っていた。
人違いだわ。顔をもとに戻そうとする。でも、その人は私を見ている。
そして、再び眼が合った途端、にっこりと微笑んだ。
なんて綺麗な人!
でも・・・。知らない人。
私とは、別世界の人。
透き通るような、真っ白な綺麗な肌。
少女漫画の主人公のような大きな目。
それに加えて、すらりと伸びた長い手足。
まるで、モデルのような、何一つ無駄なものをつけてない、抜群のスタイル。
ん?モデル?
モデルさん?
モデルさんだー。
その人はまさにモデルさんでした。
長女のお友達のママ。
つい2年前までは幼稚園の送り迎えで毎日のように顔をあわせていた、ママ。
現役のモデルさんだとは聞いていたけれど。
園で見かけるときは、ボブの髪をひとつにひっつめて、黒ぶちめがねをかけて、薄化粧で。Tシャツにジーンズ。普通のママにしか見えてなかったのに。
一人で佇む彼女は、すごく綺麗で。そのオーラに圧倒されてしまって。
「こんにちわ。」
そう返事を返しただけで、恥ずかしさのあまり、私は次女を促し、そそくさとお店を出てしまった。
彼女に比べて、私のなんとみすぼらしかったこと。
あとから湧き上る、敗北感。
美しさを商売にしている人と比べても仕方ないのだけど。
比べる以前の問題で。
同じ土俵にもたっていないのだけど。
ううん。私が感じたのはそんなことじゃなくて。
彼女の醸し出す、自分の生き方に対する自信。そこからくるオーラの強さに圧倒されてた。
幼稚園児のママをきちんとこなし、子供が小学校に入学して、それまでセーブしていた仕事を再開して、仕事が軌道に乗り始めて。自分の選んだ道を、自信を持って突き進んでいる、だからこそ、美しかった彼女。
未だに、幼稚園ママのスタイルから抜け出しきれていない、中途半端な今の自分が、恥ずかしかった。だから、話もできなかった。
次は、ちゃんと話せるように、私も前に進まなきゃ。ちょっとずつでも。
※ピアノのミニ発表会のために長女の髪の毛をセットしてみました。われながら上手♪ |