himajin top
揚水の「人生薔薇色計画」

僕のハンドルは「ようすい」ではなく「あげみ」と読みます。表記はaghemiとしています。

妻の海月は「くらげ」と読みます。



ふりぃのかうんた

yesterday ふりぃのかうんた today ふりぃのかうんた


自分が何者であるか今よりももっとわからず身悶えしていた学生の頃、何をしたらいいのかについて友達と話しに話した。
結論は出なかった。どころか何をしてもいいんだということにすらなった。
ただし、本当に何をしてもいいというのではなかった。
一つだけ基準がある。
それは俺の、俺たちの、ひいてはほかの人たちの人生を薔薇色にするか、その一点。
時々それを思い出しては行動する。
それが僕たちの人生薔薇色計画。



    よそいき仕事日記   

目次 (総目次)   [次の10件を表示]   表紙

2003-07-26 「950円になります」
2003-07-25 流浪 19  雄弁
2003-07-24 僕たちの可愛い筍
2003-07-24 俺は河童をまだ見ない
2003-07-21 目の前を急に横切ったりなんかされるとびっくりするじゃないか、君
2003-07-18 流浪 18  陵辱
2003-07-17 パッキャラマド
2003-07-16 流浪 17  針屋への道すがら
2003-07-15 使わないでいるとダメになる
2003-07-14 美しい日々


2003-07-26 「950円になります」

僕はイマドキのムスメというのが苦手なのである。
自分はかつて茶パツにも金パツにもしていたくせに、たとえば茶パツのムスメっ娘というのはダメなのである。

イマドキ風に、きれいに整えた眉とか、睫毛にラメなんか入っていたりなんかしたらもう、ダメなのである。
どっこい、どんなんがイマドキのムスメの装いなのかつゆ知らないが。

格好はまあともかく、とにかくイマドキのムスメっ娘は、誰もなんとも言わないが、誰がなんと言おうとダメなのである。
それはもちろんあくまでも外見だけのハナシだけれど。
なんか苦手。

20数年前ムスメっ娘だった人間にべた惚れなのだから、今のムスメっ娘が苦手なのはそれはそれで道理ではあるが。

ローソンの制服は左右両側にポケットが付いている。
そんな当たり前のようなことに、今日いまさら気が付いた。

夜勤というか夕勤というか、今朝5時に勤務が終わって帰り道、ローソンに寄って買い物した。

「950円になります」
コンビニではレジに人が溜まると、すかさず隣のレジで「こちらへどうぞ」というのが通例になっているようだけれど、今日のレジの女の子二人はひとつのレジに二人がかりだった。
どちらかがまだあまり慣れてないんだろうななんて思いながら自分の番を待っていた。

いざ自分の番になって金額を告げられてみれば、なんとこっ恥ずかしい、財布の中には948円。2円足りない。

「うわ恥ずかしー、2円足らんわ」

僕がそう言うと同時、4本の腕が同時にひゅっと伸びて二人の両の手がそれぞれの左右のポケットに突っ込まれた。

びっくりした。何事だ?

片方の女の子が「あ、あったあった」と言う。

何が?

彼女の左手からは10円玉。
特に何を言ってくれた訳でもないが、どうやらそれを足して買い物しろと言ってくれているらしい。
僕はしどろもどろ。
「いやそんな」

そのくらいの端数が足らない客が来た時にはそうした対応をとるようにマニュアル付けられているのかもしれない。
そのための金は自腹ではなく店が用意しているのかも。
客に残念な思いをさせないように、恥ずかしいには恥ずかしいけれど恥ずかしさを少なくさせるように、そうした対応が教育されているのかな、などと想像した。

そのマニュアルが全店共通のものなのかその店の接客なのか知らない。
そもそもそんなマニュアルがあるかもしれないだなんてことは僕の想像に過ぎない。
バイトの仲間内でごく自然に生まれてきたものかもしれない。

そんなことはどうでもいい。

ああ嬉しかった。
恥ずかしかったけどね。

「車にあったら返します」
「いいですよいいですよ」

「では今度返します」
「いいですよいいですよ」

残念なことにズボラなのか何なのか、二人とも名札をつけていない。
4本の腕の伸びるすばやさはあんなに鮮やかだったというのに。
名札がないのがたとえズボラでも、この対応、気の入った仕事であることは間違いない。
いい娘たちだなあ。

どうにも、お礼を言ってモノを買った。
「ありがとうございました」

頭をぴょこんと下げて店を辞した。

僕の苦手なタイプの女性。それはもちろんあくまでも外見だけのハナシだけれど。
惚れそうになるわ。

ラブレターってどういう風に書けばいいんでしたっけ?

先頭 表紙

おお! そうだ、お礼状でいいんだ! / 揚水 ( 2003-07-31 01:44 )
昔はせっせと実家に帰った恋人に文を書き送ったもんですが。「やっぱり恋人っていうより友達としか思えない」とか言われて。玉砕(笑)。メールがあるから書かないですね、今では。書いたほうがいいかしら。 / 揚水 ( 2003-07-31 01:43 )
あら素敵だなんて。照れちゃうわ。20数年前ムスメっ娘だった人間にべた惚れなのだから、ラブレターを書く必要なんか本来ないんですけどね。素敵だなんて言われりゃ舞い上がっちまう。 / 揚水 ( 2003-07-31 01:41 )
うふふ・・・・取りあえず、お礼状にしておけば?素敵じゃない?失礼しました!(^m^) / みるみる ( 2003-07-29 10:23 )
確かに。遠い昔のことで忘れてしまったわ(笑) / ゆず@そのうち息子に教えるか ( 2003-07-28 11:02 )
“ラブレターってどういう風に書けばいいんでしたっけ? ”…コレとても素敵。 / ちづぞー。(^^) ( 2003-07-26 19:11 )

2003-07-25 流浪 19  雄弁

べて積んでいく。窯の屋根になる高さまで炭の材料になる薪を積み上げる頃には日も暮れようとしていた。かわらけと赤土で屋根を葺くのは明日の仕事になりそうだ。仕事をする間も僕はほとんど無言だったが、食事の際に重い口を開いて今日の出来事を男に語った。未遂だからといって許されることではないだろうし、娘がお針子の家に住んでいることやその娘と親爺の人相風体を語ることは避けたつもりだったが、男は襲った男も襲われた娘もどこの誰だか承知しているようだった。僕はかいつまんで話をして、後は黙って男の話に耳を傾けた。あの爺に会ったか、あの酒飲みのどうしようもない男に。この里は。僕の見るところ男は普段この小屋と里とを対比するものと考えているようだったが、ここでは一括りに語った。この里はどこにもいられなくなったような人間が、半ばなにかに追い立てられるようにしてやってくるところだ。追い立てるのは自分自身だったり、他人だったりまちまちだろうが、何かに追い立てられるような奴、そういう人間が最後に辿り着く場所だ。他所じゃみんな役立たずか邪魔者さ。だけど勘違いしてはならない、だからこそ、そんな役立たずでもこの里にいる限りは誰かの役に立たなけりゃならない、ここはそうしたところだ。あいつにはそれが判らない。どこまでも甘ったれた野郎だ。ああいう輩は簡単に許しちゃあならねえ。はっきり言やあ、あの爺は屑だ。でもな、そういうあいつでも追い出す訳にもいかない。どうあれこの里に来る奴は程度の差こそあれ似たり寄ったり、どこかにいられなくなってここまでやってきた訳だ。あいつを追い出すことはすなわち自分をここから追い出すことと同じ事さ。だから誰もあいつを追い出そうなどとはしない、そう思いもしない。あいつがどんなに屑でもな。そうです、か。僕はやっとそれだけ答えた。そうさ。男は僕の次の言葉を待つ素振りをしたが、僕は何も答えることが出来なかった。あいつが自分から気づくのを待つばかりだな。今夜の男は、僕が問いかけなくてもいつになくよく喋る。嫌がる女を、自分より弱い女をいっぺんでも襲ったような奴は、またやっちまうんだよ。そしてあの娘は。娘は? あの娘のどこが悪いわけでもないんだが、そういう奴に狙われやすい。これはもう彼女が悪いとか悪くないとかそういうことではなくて、もう今のところどうしようもないんだ。多分、彼女が誰も攻撃することがない、誰かの心を踏みにじることがない優しさに付け込まれるんだろうな。僕は娘が親爺の頭に石を振り下ろしたことを思い起こしたが、それについては黙っていた。男の言うことはそういうことではない。悲しいことですね。そう、悲しい。多分彼女はそうした奴らにとって、彼女を襲うことで救われるというか癒されるような気がするんだろう。憂さを晴らすのか甘えているのか俺なんかにゃ判らないがな、彼女にしてみればこの上もなく迷惑な話だ。自分の優しさが自分を傷つける人間を呼び寄せるんだからな。僕はまた黙ってしまった。二人の間に沈黙が横たわる。これまでは二人の間にそんなに多くの会話が為されないことの方が常態であったので、ひとたび多くの言葉を費やした後の沈黙は奇妙に重く感じられた。多くの言葉といってもそれほどたくさんの言葉ではなかったはずなのに、普段ほとんど話すこともない二人が常になく話したものだから、僕らはいやにお喋りをしたように感じていた。だからいつも身近にあったはずの沈黙が、今夜はやけに重かった。いやな話だな。男はばつが悪そうに笑って僕の木椀に汁をよそってくれた。今夜の汁は僕が前日に獲

先頭 表紙

2003-07-24 僕たちの可愛い筍

情けない国の情けない男の、情けない性器。

彼はそれを無為にぶら下げて、今日もうろついている。
性交能力をもてあましながら。

かわいそうな男性性器。

だらしない国のだらしない男の、だらしない性器。

彼はそれを無駄に屹立させて、今日も彷徨っている。
生殖能力も振るえないまま。

かわいそうな男性性器。

女性のそれの周辺の体毛は、彼女の望まないままに日の目を見た。
しかし彼はいつも布に覆い隠されている。

(秘所を曝こうという視線はいつも「男性性」のものだから、か?)

かわいそうな男性性器。

それと生まれたからには、
強く、硬く、大きく、そして、
女性を導かなければならないとの錯覚を強制されている。
(その錯覚を強制させる男性性がひとえに男だけの持ち物と断定することは酷なことではあるが)

かわいそうな男性性器。

女の中にすら巨根神話の歪められた教義を信奉するものもいる。
それは誰だ?
説明するのも面倒くさいから各々よく考えてみてくれたまえ。

犯す、犯される、そこに生まれる快感。
それをまでも否定はしない。

けれど。
人とのかかわりを征服・被征服でのみ語ることはよしてくれ。

やってなんぼ、やられる方もヨロコンでいただなんてくだらないことは聞かせてくれるな。

それはもう語りではなく騙りだといいかげん気付いてくれ。

僕らのペニスはそんなかわいそうなものではないはず、だ。

たとえばね。

僕たちの可愛い筍を、愛に溢れつましく愛しておくれ。

先頭 表紙

僕はも少し性器でいきます。も少しね。 / 揚水 ( 2003-07-31 01:34 )
「真心」。そりゃまたそうね、その通り。僕は2〜3日前に女の子になった夢を見ました。そのうち多少脚色して書きますね。また今度いつか。 / 揚水 ( 2003-07-31 01:33 )
カワイイっすよ(笑)。 / 揚水 ( 2003-07-31 01:31 )
共感いただけて光栄至極。 / 揚水 ( 2003-07-31 01:30 )
もう。泌尿器でいいや。 / 闇猫 ( 2003-07-25 08:23 )
一ヶ月くらい男になってみたいとよく考えます。どんな風に愛情を持つのかなって。 / りょう ( 2003-07-24 23:42 )
せっく○は「真心」です。←全然違うか。ゴメンナサイ。大きさや固さよりも重要なものがたくさんあって、でもってつまり、←書けって言われてませんね・・・ ・・・。 / りょう ( 2003-07-24 23:38 )
ホントにカワイかったりして(^m^) モノより思い出・・・ / kotarou ( 2003-07-24 21:57 )
ふむふむ。最後のフレーズは同感だ。 / 夢樂堂 ( 2003-07-24 14:31 )

2003-07-24 俺は河童をまだ見ない

世に河童という生き物がいるということだが、残念ながら俺はまだその姿を見たことがない。
俺がこの先どれだけ生きるか知らないが、死ぬまでに一匹くらい見る機会がないものだろうか。
人間なら毎日見ているのだが、河童は見ない。

けれど人は河太郎なんざより余程奇妙な生き物かも知れぬ。
今はそれで満足しておくべきか。

なにやら、今日は「河童忌」という日に当たるらしい。

俺はそれでも多分まだ河童を見ない。

先頭 表紙

夢樂堂さん、そうした河童も確かにおられますね。 / 揚水 ( 2003-07-26 10:42 )
kotarouさん、ぷららさん、なるほど見ましたわ。 / 揚水 ( 2003-07-26 10:41 )
妹尾河童なら見たけどね。 / 夢樂堂 ( 2003-07-24 14:32 )
↓あはは♪ ワタシも見た見た☆ 4ヶ月ぶりにハニーに会いに、魔女の宅急便みたく飛んでったよね(^-^)  / ぷらら(^▽^)  ( 2003-07-24 10:04 )
昨日かなぁ。某ひまじんさんのとこにいたよ(笑)箒に乗って北へ向かってた / kotarou ( 2003-07-24 09:10 )

2003-07-21 目の前を急に横切ったりなんかされるとびっくりするじゃないか、君

念願叶って草を刈ったのである。
僕の草刈機はエンジンこそかかるもののスロットルを開くと止まってしまうので、友人の家の草刈機を借りてきた。

草刈りを終えて、車一台ほどの狭い坂道、道路から家まで上がる道に散らばった草を熊手で集めていたと思いねえ。

僕は眼下の狭い範囲のみに視線を向けていた。

と。

目の前を走り抜ける明るい褐色の物体。

「うわ、びっくりした!」

誰もいないのにそう叫んだ間抜けなわたくし。

走り抜けたほうを見遣れば彼のイキモノもちょうどこちらを振り返っていた。
で、すぐに走り去った。

大きな栗鼠だった。
山の方から来るならともかく、彼奴は道路の方から上ってきたぞ。

なんでまた。

栗鼠のやってきた方を見ると、僕の視線に仔狸がぎくりと立ち止まった。

「ちぇ」

名残惜しそうに振り返り振り返り立ち去る仔狸はそうつぶやいたように思えた。
狸が栗鼠を追っていたものとみえる。

悪かったな、邪魔しちまってよ。

先頭 表紙

いやさにゃえさん、それはちょっと穿ちすぎかも(笑)。確かに「僕」は僕と重なる部分もありますが、僕はどちらかといえば「僕」よりも訳も判らず殺し合っていた兵士に近いように思います、自分で自分を見て。「流浪」は多分まだまだ続きますからこの先どうなるのか…。書きますからまた読んでくださいね。 / 揚水 ( 2003-07-23 07:27 )
わたくしも蛇はちょっとギョッとします。 / 揚水 ( 2003-07-23 07:24 )
なんか当たり前に見てますので。でも家を離れていたのでずいぶん久し振りに見ました。 / 揚水 ( 2003-07-23 07:23 )
りすりす、りすなのよ(笑)。 / 揚水 ( 2003-07-23 07:22 )
栗鼠のいる環境っていいなあ。 流浪の少女が栗鼠で親爺が狸で主人公があなたなのね。 / さにゃえもん ( 2003-07-22 23:07 )
昔、ユースホステルの庭を草刈したことがあります。その時は蛇がたくさん。蛇なのに鳥肌が立ちました。 / 夢樂堂 ( 2003-07-22 13:32 )
栗鼠に狸?いいですなぁ。生き物は心を和ませてくれます。私は昨日、都会の住宅街を「ブタ」が散歩しているのに遭遇しました。詳細は今夜。 / kotarou ( 2003-07-22 09:54 )
よかったねーー!念願の草刈り。あー、うちも剪定しなきゃなぁ・・・。でさ、狸が何を追っていたのぉ? / みるみる ( 2003-07-22 09:00 )

2003-07-18 流浪 18  陵辱

見える。押し倒され泣きじゃくりながら、そばにあった石を親爺の頭に振り下ろしたのだろうか。僕は凄まじいものを見る思いがした。だが、彼女はやはり弱い。親爺もまたきっと弱いのだ。だからこの娘を襲う。まだ萎えていない親爺の陰茎が存外に力強く、それでいて余計に哀れなほど親爺を貧相で力弱いものに見せる。けれど親爺の力は娘よりは多分強い。放っておく訳にもいかなかった。口が利けなければ、知恵が足りなければ襲ってもいいのか? 僕は親爺に言わずもがなのことと思いながら問うてみた。案の定親爺は黙っている。僕は、この男は悪者ではないと思った。悪くないというのではない。悪いと知って、してはならないと知りながら、悪事を為す。だから、悪者にはなりきれない。そして悪事を為す自分を止めることが出来ない。弱いのだ。親爺を見ていて僕は恥ずかしくなってしまった。自分の恥部を曝け出された気分にさせられる。僕もまた弱い人間の一人に違いない。たまたま害為す立場にならなかっただけなのかもしれない。彼の、そして自分の弱さを思い、息が苦しくなる。親爺は間違いなく卑怯だが、僕もまた卑怯だ。犯そうとしたのは自分ではないにもかかわらず、何か自分の後ろ暗いところを見せつけられたようで暗澹とした気持ちになった。娘との間に腕組みして立っている僕を上目遣いに盗み見ながら、親爺はのろのろとその場を立ち去った。僕は時間をかけて娘が身繕いするのを待ち、後ろからついていけば不安を感じさせるだろうと思い、先に立って針屋まで歩いていくことにした。陵辱の現場から針屋は意外にも近いところにあって驚いた。親爺はきっと誰にも見咎められないところでは娘を襲うことすら出来ないのだろうと思った。結果としてやり遂せるにしろ阻まれるにしろ、それはあまり関係なく、誰かが自分を止めてくれる場所でなければ安心して悪さもできないのに違いない。僕は彼の弱さを思ってまた再び胸の塞ぐ思いがする。その的にされた娘はさらに悲しい。弱いものが自分よりもさらに弱いものを自分の快楽のために慰み者にする。そんなことはもうたくさんだ。お針子の家は、ここに来るまでのどの家よりも大きくて立派だった。それでも集落の中心や他の洞にはもっと大きな家もあるらしい。鍛冶屋もそうだが、何か特殊な生業を持つ家は中心から外れて奥まった場所に居を置くことがこの里での慣わしのようだった。挨拶をする以外は黙って針を届けて鍛冶屋の心尽くしの衣類を受け取り、また黙ったまま出された茶を啜った。こういう出会い方をするのでなければきっと気のいいおばさん、との印象でも受けたであろうお針子は何が起こったか承知している様子で、悲しそうに、でも僕に向かって微笑んでくれた。どうも娘とは血の繋がった親子ではなさそうだった。ありがとう。沈黙を破って突然に礼を言われ、僕はまごついてしまった。熱い茶がぬるくなってもまだ時間をかけてゆっくりと飲み、針屋を辞した。何か言いたかったが、何も言えなかった。僕は黙っていた。娘も僕がいる間ずっと無言だった。ありがとう。お針子はもう一度僕に礼を言った。僕は黙って彼女の目を見た。彼女は優しく僕の視線を受け止め、振り返って慈愛に満ちた目で娘を見た。僕は衣類の礼だけ言って、あとはまた黙って男の小屋に帰った。そもそも帰り道、話す相手もいなかったのだけれど。帰ってからは、炭を焼く窯を男と二人で築く仕事が待っていた。僕は努めてその作業に専念するようにした。あまり余計なことを独りで考えたくはなかった。穴を掘り伐っておいた木を頃よい長さに刻み、窯の底から隙間なく並

先頭 表紙

2003-07-17 パッキャラマド

ドとレとミとファとソとラとシの音が出ない。

って、全部やん。

クラリネットだって「やってらんねえや!」とか思っちゃったりするのかしらん?

とりあえず今日は仕事を平穏無事に済ませて帰ってきた。
でもなんか、パッキャラマド。

ああなんかやってらんねえや。

さて寝て起きてまた頑張んべや。

ドとレとミとファとソとラとシの音が出せるようになるのだ。

明日はしんどそうだなあ。

先頭 表紙

結構楽ちんだったなあ。 / 揚水@未ログイン他所から ( 2003-07-18 22:06 )

2003-07-16 流浪 17  針屋への道すがら

なしに諒解出来るような気がした。代掻きの済む時期に桃が咲いている。この里はまたそういうところでもあるのだろう。ここならば一年中桃が咲いていても不思議はない。後で知ったところによれば、この里は実際に一年中桃が咲き、そして実を結ぶのだという。気の早いところはもう田植えを済ませている。用水脇に生えている丈の高い草を折り取ってそれを振り回しながら歩いていく。道は狭い。人二人が擦れ違うに少し余裕があるくらい。向こうから一人の青年がやってくる。僕は草の茎を振り回すのを止めた。お互いに近付いてきて、僕と青年は会釈を交わした。この男は。他の誰を見てもそれがいつどこであった人間であるのか判らなかったが、彼が誰であるのかは判った。向こうでも僕が誰であるかに気付いたようだ。一瞬男の表情が硬くなった。それでも彼はすぐに思い直したかのように微笑んだ。僕も笑った。言葉は交わさなかった。彼には野良着がよく似合っていた。よく晴れている。通り過ぎて僕は一度振り返ったが、彼はこちらを振り返らずまっすぐ前を見て歩み去った。鍛冶屋に聞いてきた道順によれば、お針子の家に至るには用水の脇の小径から外れるらしい。鍛冶屋の小屋から里への道は全体に緩やかな下り坂になっていたけれど、その道からお針子の家に至るには小径からそれて少し上ることになるようだ。鍛冶屋は板葺きだが、里の家々のほとんどは萱葺きだった。小川は里の中心に、右側に離れていく。僕の歩く小径の右側には用水が流れさらに田が広がり、左側は林になっている。下生えの雑草が、日向では白や黄色の、日陰では青や薄紫の小さな花をつけている。脇道の入り口は林が切れて、その道筋が少しばかりひらけている。そちらにもそこかしこに桃が植えられていた。まず右側に二軒、次に左側に一軒。明るい日差しの下に三軒の家。道が曲がっていて見えないが、お針子の家はそのさらに奥ということだ。字が四軒家で屋号は針屋といったところか。僕は脇道に入って上の方を見遣った。下の三軒を越えてもまだしばらく目指す家は見えなかった。藪の中で何か気配がした。さして気にも留めないで通り過ぎると、今度ははっきり藪の植物が揺れる音がする。振り返った。何も音がしない。動物でも通ったか、気のせいか。僕はまた歩き始めようとする。違う、気のせいではない。人のうめくような声がしている。僕は荷を道端に置き、踵を返して藪に分け入った。驚いた。誰か怪我でもしているのではないかと思って声の方に進んでみると、男が若い娘に覆い被さっている。はじめ逢い引きの邪魔をしてしまったのではないかと心配したが、娘は口に布を詰められ涙を流している。急いで近寄って男を引き剥がした。突然の闖入者に男は抵抗したが、僕が数回殴られる間に一回殴り返すとすぐにおとなしくなった。僕にしてみれば決死の覚悟で割って入ってみたものの、よくよく見れば男は歳のいったおっさんだった。よれよれのおっさんがぺたんと座り込んでしまった。酒臭い。娘は大儀そうにゆるゆると身を起こし衣服の前を掻き合わせている。僕はなるべくそちらを見ないようにするため、じっと親爺を見つめた。親爺は目を逸らす。僕は彼に近づいた。あの娘は喋ることが出来ない、知恵が足りないんだ。そう言ってアル中の親爺は顔をあげ、生臭い息を吐いた。額は血に濡れている。押し倒されていた娘の頭があった位置の近くに両手に少し余る大きさの石が転がっていて、よく見れば血が付いている。桃花源、という風でもなさそうだな。娘は静かに涙を流している。泣きじゃくっていたのが収まってきた、そういう風にも

先頭 表紙

なかなか僕のツボにはまるお言葉で嬉しく楽しいです。岩手の風景とはなぜか非常に嬉しいです。今は海の底ですが、いつか浮上できますでしょうかねえ。 / 揚水 ( 2003-07-23 07:20 )
母の田舎の岩手の風景がフラッシュバックしたよ。 桃源郷のような地獄のような不思議な世界だ。 改行をしない文体の全体像がロゼッタストーンを想起させるわね。 思想の深い海の底にはまった気分だわ。 / さにゃえもん ( 2003-07-17 23:31 )

2003-07-15 使わないでいるとダメになる

昨日今日と連休。
草刈るために村の家に帰ったのに、長いこと使わずほったらかしにしていた草刈機はエンジンがかからなかった。
使う用事がないチェーンソーは調子よく回るのになあ。

井戸の水は少し茶色がかっているものの、豊富に出る。
寮でばかり寝ないでまめに帰ろう。

井戸も使わないと水が細くなるからね。

もともと去年空梅雨気味で水が涸れたことから寮暮らしを余儀なくされた。
帰れる希望が出てきたので気分がよい。

海月の部屋でご飯を食べて、とりあえず寮に帰る。

明後日か明々後日くらい、家で寝ようっと。
久し振りに家の風呂に入るのだ。先月くらいまでは風呂の水を溜めることが出来ないくらいに井戸は細くなっていたものだ。
水みちが帰ってきた、のかも。
嬉しい。

草刈りしたいなあ。

先頭 表紙

そうか、カビるんだ。蜘蛛の巣じゃないんだ、ふーん。って、何のハナシやねん、キミタチ(笑)。なんやしらん、ズレてんねんで。 / 揚水 ( 2003-07-19 03:37 )
長く入院していてようやく自宅に帰れた時のこと、さて使うかと思ったのですがミョーに痒くてね〜。婦人科いったすよ。猫旦が一言言いましたわ「使わないとカビるんだな」おーっほほほ / 闇猫 ( 2003-07-18 07:10 )
僕はエンジン式しか使ったことないです。ああ草刈りたい。 / 揚水 ( 2003-07-17 01:33 )
僕らは涸れない。押せば命の泉湧く。なんつって。 / 揚水 ( 2003-07-17 01:32 )
初めて電動の草刈機を使った時は爽快でしたね。でも、雑草を取るなら昼下がりがいいと聞かされて、やり直したんです。 / 夢樂堂 ( 2003-07-16 14:32 )
このタイトルに思わず引き寄せられた今日の私。。。そう、使わないとダメになるんだって。使って使って常に刺激してないと出が悪くなるのよね。ちゃんと使ってね♪ / kotarou ( 2003-07-16 13:07 )

2003-07-14 美しい日々

ひとり相撲。ひとりしずか。ひとり遊び。ひとり言。

ひとりごちる。

焚き火に誘われた火取虫はその火に灼かれて身を焦がす。
そして死ぬ。
燈蛾の死こそ哀れ。

ひとりごちる。

人は誰でも、ひとり。
誰かがそばにいても、ひとり。

焚き火に誘われた火取虫はその火に灼かれて身を焦がす。
そして死ぬ。
燈蛾の死こそ哀れ。

群れ成す燈蛾のようでいても、人はつまるところひとり。
寄り添う人がいても、ひとり。

ひとりぼっち。ひとり暮らし。ひとり立ち。ひとり旅。

否、寄り添うためにこそ、まずは、ひとりでいること。
寄り添うとしても寄り添わないとしても、まずはひとり。
人は一人で生まれ、一人で死ぬ。
それは何も悲しいことというのではなく。

焚き火に誘われ寄り添うように夜を舞う火取虫はその火に灼かれて身を焦がす。
そして死ぬ。生きて死ぬ。
燈蛾の死こそ哀れ。生こそ哀れ。

生まれてきたからには生きるという、ごく当たり前の、

あなたが生きている今日は、

些細でも、瑣末でも、もちろん比類なく美しくあっても当然、

他のなにものにも置き換えることはかなわない。

淡々とした日常。
たまに小さな、あるいは大きな事件が起こる、そういった日常。
嬉しいことばかりではない。かといって悲しいことばかりでもない。

自分も含めたあなたがたが生まれてきた奇跡を、
僕は一人考えてみる。

それはとても幸福なことで、幸せに甘やかされ狎らされた浅薄さを含むことだと、実は知っている。
他人の奇跡を踏みにじる人がいる。
踏みつけにされて苦しむ人がいる。
僕はそれを本当のところではきっと知らない。

それでも奇跡を、僕は考える。
答えは出ない。

かくあれかしと人々の美しい日々。

先頭 表紙

はじめまして、そそそさん。お礼を言われたりなんかすると、嬉しい。嬉しいけれど面映い。面映いけれど、嬉しいなあ、いやはや。美しい日々を、あなたに。 / 揚水 ( 2003-07-16 01:41 )
揚水さんはじめまして。今日はこの日記を読む為に私は休んだのかしら?と何か導かれた気になったり。深呼吸しました、ありがとうございます☆ / そそそ ( 2003-07-15 13:50 )

[次の10件を表示] (総目次)