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Hideyの「蛍の光の下で」

帰国に伴い長い間ご愛読いただいたこの日記を終了させていただきます。
もうこのサイトに文章を綴ることはありませんが
もしこの先もおつきあいいただけるようであれば
メールをいただければ幸甚です。
皆様、本当にありがとうございました。お元気で。

絵日記

目次 (総目次)   [次の10件を表示]   表紙

2001-10-20 後藤久美子さんのこと 8
2001-10-20 後藤久美子さんのこと 7
2001-10-15 後藤久美子さんのこと 6
2001-10-15 後藤久美子さんのこと 5
2001-10-15 後藤久美子さんのこと 4
2001-10-13 後藤久美子さんのこと 3
2001-10-09 後藤久美子さんのこと 2
2001-10-08 後藤久美子さんのこと 1
2001-10-05 「ベニハナ・オブ・トーキョー」に学ぶ芸術的経営学 3
2001-10-05 「ベニハナ・オブ・トーキョー」に学ぶ芸術的経営学 2


2001-10-20 後藤久美子さんのこと 8

12月19日早朝。朝焼けが旧法王庁の土色の壁を紅く染める。我々は後藤さんの到着前から長い時間をかけていろんな角度からロケーションを眺め、話し合っていた。どうしたら坂が最も坂らしく見えるかを検討していたのだ。

人は普段、平衡感覚が保たれた視野の広い目で風景を眺め、体で傾斜を感じながら、坂道を認識している。これが、風景の一部を切り取り、平衡感覚を無視した無機的なカメラを通した絵になると、坂を強調したつもりが、単に遠近感のある平らな道にしか見えなくなってしまう。

あれこれ検討した結果、監督が画期的な撮り方を提案する。綴れ折りの坂がヘアピンカーブになっている部分を、ヘアピンの外側からローアングルで撮るという手法だった。画面の左には下り坂が見え、そのまま綴れ折りになった上り坂が、画面右側に不自然なくらいの角度を作り出す。後藤さんが画面左の坂を遠くから登って近づき、ローアングルのカメラのすぐ前でタイヤが強調されたダイナミックなカーブを描き、右の坂道をぐいぐい登って遠ざかってゆく、という凄いカットだった。

後藤さんが来る前にスタントで実験してみたのだが、カメラの直前で、所定の位置でヘアピンカーブを決めて坂を登るというのは、非常に難しいことが分かった。しかし本番で後藤さんは軽々とこなしてしまう。さすがF1ドライバーのパートナーだ。運動神経がいいとは聞いていたが、これほどとは思わなかった。

朝からジャンがエレナマイノちゃんを連れてママの撮影を見学。エレナマイノちゃんにとっては初めて見るママのCFの仕事ではないかと思う。

この日のラストカットは、後藤さんが朝市で買い物をしたり、ポルシェのプレイボーイに声を掛けられたりするカットだったが、僕個人にとって一番大事な仕事は、CF撮影が終わった後、普通のデジタルビデオカメラで、販売店大会用に後藤さんの挨拶ビデオを撮るという作業だった。

前日までに、日本に残ったクライアントとやり取りをして、僕が挨拶の言葉を作文した。巨大なカンニングペーパーを用意して、カメラの上に掲げることで、後藤さんは目線をこちらに保ちながら文章を読み上げることができるという仕組みだ。

しかし驚いたことに後藤さんは既に僕が書いた文章をすべて暗記した上で、自分になじんだ言葉遣いに直してくれていたのだ。カンペを用意することはちゃんと伝えていたのだが、自然な表情、口調がいいからと、後藤さんが自ら進んで暗記してくれたのだ。断言しよう。普通のタレントさんは、CFの仕事で、それもテレビに映るわけではなく販売店大会で映すビデオのために、こんな努力は絶対にしない。おかげで撮りは一発でOK。後藤さんのプロ根性を見せつけられた出来事だった。

撮影の合間に、僕達が数日前に行ったアヴィニヨンのパキスタン料理屋(!)が余りにもうまかったという話をしていたら、「じゃあ今日私も連れてってよ」ということで、この日の夜は後藤さんを囲んでのエスニックディナーになった。

みんな赤ワインで気持ちよく酔っ払ってしまって、よく覚えていないのだが、後藤さんとだいぶ恋愛論を闘わせた事実だけは覚えている。人は結婚しようとも、パートナー以外の異性と会うとき、相手を100%ただの友人や知り合いとして認識するなんてのは嘘だ、と僕は話し、私はひとりの人を愛したらその人のすべてをとことん愛し抜くのよ、と後藤さんは話した。お互い違うことを言っていたわけではなかった。

大事なカットはほとんど撮った。あとは、後藤さんの家として設定したお屋敷での撮影が残るだけだった。

(つづく)

先頭 表紙

2001-10-20 後藤久美子さんのこと 7

日曜日は現地スタッフの料金が2倍になってしまうので、一日休暇となった。土曜日も同じなのだが、スタジオでのスティル撮影で、それほどスタッフの数も時間も必要ないため決行したのだ。そんなわけで、日曜はクライアントの希望もあり、マルセイユ観光。本当は論文を書いていたい気持ちもあったが(同行のクライアントにだけは留学の件は打ち明けていた)、ここまできてマルセイユという街を見ないというのもないだろうと思い、一日羽を伸ばすことにした。フランスとは思えない、南イタリアのゴミゴミした港町を彷彿とさせる街だった。

撮影三日目、12月18日月曜。いよいよ今日からCF撮影だ。まずは朝市篇のトップカット、アヴィニヨンの目抜き通りを走る後藤さんというカットからだった。アヴィニヨンらしいセンス溢れるミニバスをチャーター。その他にも渋滞を表現するための自動車を沢山並べた。

晴れ男が二人いたこともあって朝から抜けるような青空だったが、とにかく寒かった。簡易テントを張って石油ストーブを焚く。ケータリングのクロワッサンが感動的に美味しい。コーヒーはエスプレッソ。しゃきっと目が覚める。

後藤さん登場。青いデニムのジャケットにボーダーのインナー、ベージュのセミロングのスカート。今までの広告にはないくらいまったりとしたファッションだったが、後藤さんが着るとちょうどいい按配になるのが不思議だ。販売店大会用に、僕がリバーサルフィルムでメイキングを写真撮影することになっていたので、ファインダーで後藤さんを追うことが多かったのだが、彼女の端整で知的な横顔ににはちょっと感心してしまった。この人は横顔が一番美しい人なのだ。

三日目にして初めて自転車に乗ってもらったのだが、これが結構営業としては気を遣うところだ。自転車業界的に正しく美しい乗り方というものがある。背筋を伸ばし、脇を締め、腕はリラックス、ハンドルは握ってもブレーキには手をかけない。ペダルには土踏まずではなく、爪先に近い部分をかけ、足をできるだけ地面に平行な形に保って軽やかにこぐ。やってみるとこれが難しい。もろもろの撮影条件がそろい、よい表情を引き出し、さらにこのようなルールを守った絵ということになるので、かなり時間をかける必要があった。

後藤さんはこれまでのタレントやモデルと比べて驚くほど飲み込みが早く、初めから美しいこぎ方をしてくれた。できるだけ条件にあった絵が欲しかったので何度もNGを出したが、その度に明るい声で応えてくれた。ブレーキに手をかけずに最後まで走り抜けるのはちょっと怖いのだが、これも難無くこなした。

この日のラストカットはアヴィニヨンの街を背景にしたローヌ川沿いの撮影。一点の曇りもなく青い南仏の空に12月の短い陽が傾いている中、光る川面を背に後藤さんがどこまでも平らに続く道で自転車を走らせる。これまでこの商品については9本のCFを撮ってきたが、こんなに美しい絵は初めてだった。この絵だけで15秒つくってしまいたいくらい綺麗だった。

ジャンが例のイタリア料理屋の主人を連れて現場に来ていた。妻の仕事振りに目を細める優しい夫の顔だった。ワンカット撮り終わるごとに、モニターの前に二人で座り、今撮ったばかりのシーンを楽しそうに話しながら眺める。朝から夕方まで気が張った撮影で、こうしてリラックスした表情をしてくれるのは我々にとっても非常にありがたかった。

明日はいよいよ最も大事な坂道のシーン。クライアントのダメ出しの末選び抜いた、旧法王庁の坂道での、朝イチの撮影が予定されていた。

(つづく)

先頭 表紙

確かに今の彼からは怖いなんて想像できないのですが、本人曰く昔はよく怒ってたけど、「もうやめた」そうです。 / Hidey ( 2001-10-27 06:45 )
えっ昔からひょうきんに人だったように感じるけど...男の人には怖いのかな?実は宮沢以外にもかなりご一緒しました。 / りさ子 ( 2001-10-23 14:41 )
宇恵さん、昔はだいぶ怖かったらしいけど、今はとても優しくて人を笑わせるのが好きで、しかもできる人ですよね。 / Hidey ( 2001-10-23 09:01 )
宇恵さんなんだ、懐かしい。私も昔宮沢りえのお仕事でご一緒しました。 / りさ子 ( 2001-10-22 19:25 )
演出家というか、監督は宇恵さんという、松嶋菜々子のマックスファクターや、トヨタの天才卵エスティマなどをつくった、巨匠です。 / Hidey ( 2001-10-22 18:56 )
これ演出家、誰ですか? / りさ子 ( 2001-10-21 19:15 )

2001-10-15 後藤久美子さんのこと 6

二日目はアヴィニヨン郊外のフォトスタジオでPOP用の撮影。アヴィニヨンにはスタジオなんかないという噂があったが、そんなことはなかった。暖かい室内で、天気も気にせず撮影を済ませた。

この日はスタッフ一同が後藤さんの家に招待された。ジャンの友人のイタリア人がやっている美味しいイタリア料理屋があるというので、そこにみんなで行くことになったのだが、その前に軽くシャンペンとチーズでも、ということで、20人くらいの人数で噂のお屋敷へ向かった。

庭にワインを作るためのブドウやオイルを作るためのオリーブが植えてある話は有名だろう。建物も外観は南仏風のシックで簡素なつくりに見えたのだが、中の豪華さについての記述はgossipyな雑誌に任せるところである。写真撮影などは困ると言うことだったので、ここでの記述は控えておく。

ただ、ひとつだけ無難な表現をしておこう。「このシャンペン開けといてくれる?」と後藤さんに言われて、景気よく開けたのだが、シャンペンのコルクが天井にも壁にも当たらずに、きれいな放物線を描いて床を転がっていく様を見たのは、生まれて初めてのことだった。それくらい広い家だった。

長女のエレナ・マイノちゃんは、大勢の客に興味津々の様子。エレナちゃんはフランス語のほうが話しやすいようで、後藤さんにもフランス語で話し掛けるのだが、後藤さんは徹底して日本語で答える。「二つの国を背景に持つのは素晴らしいことだから、どんなことをしても日本語は覚えてもらいたい」ということだった。まだ幼いジュリアーノ君は風邪を引いて寝ていた。

しばらくするとジャンが帰宅。F1ドライバーというのはヨーロッパではどこの国でも英雄なのだそうだが、そんなことは微塵も感じさせない柔らかな人柄。我々とも気さくに話をした。特にクライアントもF1事業を展開しているので、話があうようだった。

ジャン行きつけのイタリア料理屋へ。こぢんまりとして庶民的な店だった。シェフと言うには余りにも気さくで賑やかな主人が、ジャンを兄弟のように迎える。ジャンも嬉しそうだ。イタリアで育った彼はフランスにいてもイタリアの温かさを求めるようだった。

クライアント、後藤さん、ジャン、僕がかたまって座った。営業の役得だ。特にジャンは日本語はそれほどできるわけではないし、英語なら問題ないので、僕が隣に座ることになった。本当に、彼は微塵も偉ぶった様子がなく、美しい女優の妻の付き添いの気のいい亭主、という感じで我々に接してくれる。サッカーの話になり、「ローマのナカタはなかなかすごいね」と話す。あなたはどこのチームを応援しているのか、と訊くと、「やっぱり親友のジダンがいるユベントスだね」とのこと。フランスがワールドカップで優勝したときは、ジダンのユニフォームとジャンのヘルメットを友情の証に交換したそうだ。

後藤さんはワインが大好きと公言しているだけあって、結構強い。地元のCote du Rhoneを随分ついであげた記憶がある。

「ジャンはイタリア出身だから、本当に家族を大事にしたいと思ってるのよ。だから私も同じようにしてあげたい」と後藤さんはしみじみ話していた。

後藤さんとジャンの仲睦まじさは、周りの誰をも幸せな気持ちにさせるほどだった。誰にはばかることなく自分の選んだ伴侶を愛してやまない姿は気高さすら感じさせるものがあった。

翌日の日曜日は一日オフ。誰もが毎日緊張を持続してきたので、久しぶりにスタッフ一同気持ちよく酔っ払った夜であった。

(つづく)

先頭 表紙

パンドラさん、こちらこそいつもありがとう。本当に、パンドラさんの日記が日々の支えになってます。先日の応援の言葉も心に染みました。本当にありがとう。 / Hidey ( 2001-10-20 22:55 )
みなみさん、光栄ですが、今さら昔の文章を読まれるのはちょっと気恥ずかしいものですね。見習うなんてとんでもない、毎日息絶え絶え、挫折寸前です。でもひまじんの皆さんの努力を思ったりしながら、何とかがんばってます。これからもよろしく。 / Hidey ( 2001-10-20 22:54 )
Hirokoさん、はじめまして。後藤さんのすべてがすべて素晴らしいということではもちろんないし(第一そんなに知らないし)、でも人には簡単に真似できないことをしてしまっている彼女の強い部分は、誰が見ても評価に値するところなのだと思います。誰もがお互いどこかしらを見習いあえればそれはとても素敵なことですね。 / Hidey ( 2001-10-20 22:52 )
浪花撫子さん、掃除の件はちょっと分からないですねー。でもあれだけ広いお屋敷を掃除するのはどんなに働き者の主婦でも大変だと思います。うちもコルクは3回くらいぶつかります / Hidey ( 2001-10-20 22:48 )
口車大王さん、はじめまして。僕はほとんどテレビは見ない人で、芸能界やスポーツ選手の裏話もまったく興味がないのですが(よくこれでこの仕事をしていると思う)、後藤さんも、中田もイチローも、数少ない好きと言える著名人です。ケーススタディーについては、ひまじんで興味を持って読んでいただけるものだけを選んでいますが、本当は毎日かなり深くつっこんで難解で、その分奥が深いケースを学んでいます。これは本当に凄いことです。毎時間が芸術を味わっているかのよう。日本の教育も早く変わってほしいものです。 / Hidey ( 2001-10-20 22:45 )
Hideyさま、おめでとうのメッセージありがとう・・・とってもうれしかった。そして、1週間おつかれさまでした。Hideyさまにカンパイ! / パンドラ ( 2001-10-20 22:44 )
↓TAKEさんへ。 / Hidey ( 2001-10-20 22:39 )
ジャンの最後、見届けたかったです。後藤さんが「徹子の部屋」に出たとき、「ジャンはとても慎重な人だから、不思議だけどどんなに危険な仕事をしていても、安心していられる。この人なら間違いは犯さないと」と話していたのがとても印象的です。 / Hidey ( 2001-10-20 22:38 )
たらママさん、たしかに、本物と言われる人たちとの出会いは大変貴重です。この仕事をしてから、セレブリティということではなくて、あらゆる分野の本物の人たちと切磋琢磨できたことが一番大切な経験でした。 / Hidey ( 2001-10-20 22:36 )
ぴぴさん、そうですね、お互いゴクミもうらやむ夫婦になることを目指しましょう! / Hidey ( 2001-10-20 22:34 )
さららさん、はじめまして。残念!子供乗せ自転車こそ電動が一番いいのですが。子供を乗せると重くなって坂も大変だし、ふらつくので転倒して子供が怪我をしやすい。電動ならスムーズに運転できるので、楽で安全なのです。 / Hidey ( 2001-10-20 22:33 )
makiさん、誰の人生でもやっぱり自分が主役。makiさんだけの素晴らしい人生の記録、これからも楽しみにしています。 / Hidey ( 2001-10-20 22:31 )
おとじろうさん、おと吉さん、本当に、広告人生を振り返ってもきっと忘れられない思い出のひとつになりました。江角マキコさんとの仕事もとても素晴らしかったのですが、ちょっとしばらく過去を振り返るシリーズはお休みしたいと思います。思いのほか長くなってしまい、ちょっと書いてて疲れました。 / Hidey ( 2001-10-20 22:30 )
Chieちゃんは、Chieなりにとってもいい経験を積まれてると思いますよ。みんな、他の人とは違った形で大人になってゆく。だからこうしてひまじんを読んでいてもお互い勉強になりますね。久しぶりにお会いしたいですね。 / Hidey ( 2001-10-20 22:27 )
パンドラさん、この仕事のいいところは、誰もが見ている夢を、その代表者になってかなえられるところです。それくらい夢がないとこの複雑な世の中で商品は売れていかないし、そういう仕事も必要なのです。普段の仕事は地味で激しいことばかりなのですが。。。 / Hidey ( 2001-10-20 22:25 )
りりさん、おっしゃるとおりですね。僕も自分のことをいろいろ考えさせられました。目標にしたいカップルです。 / Hidey ( 2001-10-20 22:23 )
oggiさん、いつかオフででもお会いできたら、豪邸の中身をたっぷりとお知らせしましょう。ほーんとに信じられないくらい凄かったですよ。あんなこと、こんなこと、色々あったのですが。。。お伝えできなくて残念です。 / Hidey ( 2001-10-20 22:22 )
ゆーさん、本当に骨の隋まで冷えました。気力だけでもたせた年末年始。あのカップルは本当に素敵。ここではお見せできない二人のアツアツの写真もあるんですよー。 / Hidey ( 2001-10-20 22:20 )
Hideyさんの日記 おくればせながら最初から読ませて頂きました。 中でも、学校のお話やDadのお話が印象的でした。 刺激的な毎日を送ってらっしゃるんですね。 私も見習わねば!! / みなみ ( 2001-10-20 18:38 )
「国民的美少女」と呼ばれていた頃の彼女は好きじゃなかったなー。でも、25anでよく見るようになってからの彼女は本当に輝いて見えます。きっと年齢や今の時代がようやく彼女の内面に追いついたという感じなんじゃないかと思うんですけど。うまく表現できません。くやしい。あんなマッダームになりたいもんです。憧れ!! / Hiroko@はじめまして! ( 2001-10-20 10:40 )
ゴクミ孃は、ご自身のパワーの注ぎ先(美の受け止め先)が定まったんですな。彼女とアレジはんの充実ぶりが読んでいて伝わってきます。まさしくソウルメイツはお二人。ところで愚問。お屋敷のお掃除は、やはり担当の方がなさるんやろか? / 浪花撫子@シャンペンのコルク当ります。 ( 2001-10-19 04:18 )
あ、文脈が変だ。「教育ということに興味があるという見地から」という一文が抜けてしまいました。 / 口車大王 ( 2001-10-18 16:43 )
さらにさらに、計測工学科というところに在籍しながら教育工学が卒業研究のテーマだったのですが、また、会社を始める直前3年ほど大学に勤めていたのですが、すべてとは言いませんが、その時に垣間見た日本の大学教育の現場と比べると、もう話にならないくらい授業内容に差がありますね。口車の勤務先、日本の大学教育の現状を打破すべく作られたキャンパスだったのですが。元々「実学」の重要性を標榜している大学だけに、暗たんたるものを感じます。 / 口車大王 ( 2001-10-18 16:42 )
ちなみに、計装設計と工程管理と積算とシステム構築と管理をやっておりました。容量の足りない不安定な仮設電源で、しかも溶接機といっしょにつながっているコンピュータをちゃんと安定して動かす、なんてことが得意です。 / 口車大王 ( 2001-10-18 16:37 )
で、突っ込みできなくなってしまったのでここに書きますが、口車、さらにその前、プラント建設の会社に勤めておりました。ブドウジュースの製造工程の話、かなり単純化していますね。不連続プロセスと連続プロセスがあった場合、連続プロセスは止めないようにするのが常識です。この場合でも、下流の濃縮工程は連続運転できるわけですが、上流の工程に左右されて止めてしまうと、もしも熱源を使っていた場合ものすごいロスを生むことになる。また、食品ですから止めている間に雑菌を発生させることもあり得ます。 / 口車大王 ( 2001-10-18 16:35 )
口車、かつてクライアントの立場でオスカープロモーションとは、ちょこっとお付き合いありました。社員の皆さん、なかなかすばらしかった。 / 口車大王 ( 2001-10-18 16:29 )
業界裏話でも、こういう話はいいですね。後藤久美子、「独立自尊」という感覚を持っている希有な日本女性ではないでしょうか。だから、日本のアホなマスコミには「生意気」と映る。彼らは、自分達の考えた通りのリアクションをしないと、だれでも「生意気」と表現しますから。中田ヒデキしかり、イチローしかり。 / 口車大王 ( 2001-10-18 16:02 )
ジャン・アレジ、やっぱりいい奴なんですね。大きなケガをすることもなく無事現役を終えて、久美子夫人も内心ホッとされていることでしょうね。 / TAKE ( 2001-10-17 16:34 )
いい光景ですね。本物の人たちといい時間を過ごされたのは貴重ですね。 / たらママ ( 2001-10-16 22:59 )
ますます後藤久美子さんのファンになっちゃう。夫婦ってこんな風にできあがっていけたら理想ですね。 / ぴぴ ( 2001-10-16 18:44 )
このCM、個人的にとっても好きでした。欲しくなりましたよ、子供乗せ自転車を買ったばかりでしたけど。こういう形でこのCMのお話が聞けて嬉しいです。素敵なお話です。 / さらら ( 2001-10-16 17:30 )
すごいなぁ。。。私も少しでもいいから、近づけたらなぁ。。。ヾ(≧▽≦)ノ" / maki ( 2001-10-16 15:57 )
全てが夢のようなお話だわ。読んでいてこっちまでうれしくなっちゃう。一番うれしい部分は、ゴクミとジャンはお互いにいい伴侶に巡りあえた、ということですね。貴重な思い出でしたね。 / おとじろう&おと吉 ( 2001-10-16 12:14 )
改めて読んでも、興味深いお話です。(6)まで読んで、「私もゴクミちゃんをちょっとでも見習いたいな」って思ってしまいました。私とは全てが正反対で素敵な女性だけど。。。意識的にも頑張らないと!って気持ちにさせてくれます♪この後も楽しみ。 / Chie ( 2001-10-16 07:20 )
なんだかゆめみたいなお話だなあ〜〜すごいです。 / パンドラ ( 2001-10-16 01:11 )
愛し合ってるカップルっていいですね。豪邸よりも何よりも、そのことがきっと彼女を美しくさせているのだと思います。 / りり@続きが楽しみ ( 2001-10-16 00:31 )
欲を言えば、お家の内装について聞きたかったです。雑誌には素敵なお庭が載ってました。昨日のF1もすごかったですよ。アレジは途中でリタイアしちゃったけど、インタビュー時のゴクミの堂々たる姿!あれは態度が大きいと勘違いされても仕方ないけど(笑)立派なマダムの姿でした。うっとりよ / oggi ( 2001-10-15 23:28 )
周囲をも幸せ気分にさせちゃう夫婦かぁ〜♪理想だわっ☆↓寒空の元ご苦労様でした!!!ヨーロッパの寒さって、骨の髄まで冷えますねー。 / ゆー ( 2001-10-15 19:04 )

2001-10-15 後藤久美子さんのこと 5

昼過ぎからはアヴィニヨン郊外の丘の上で、スポーティーな軽量モデルの撮影。これは非常に辛かった。と言うのは、この車両がまだ完成しておらず、ぎりぎりのタイミングでヨーロッパに持っていったのは、プロトタイプと言われる試作品だった。透明のプラスチック製のチェーンケースを無理やり接着剤で固定したので、撮影車両は取り扱い最大注意状態だった。しかもスポーティーなモデルで一本足のサイドスタンドだったため、誰かが冬の吹きっさらしの丘の上で、片時も離れず車両を支えていなければならない。「誰か」とは当然僕を指していた。

再び背景のセッティングなどがあったため、車両とともにロケ地に早めに到着。アヴィニヨンの街を見下ろす絶好の場所だが、そんなことはどうでもいいくらい、寒い。結局僕は一時間くらいバカみたいに風に吹かれて、自転車を支えて立っていることになった。スタッフがコーヒーを持ってきてくれたり、カメラマンが気を遣って色々はなしたりしてくれるのだが、寒いものは寒い。

そんなわけで、「後藤さん入りまーす!」というプロマネの声は天使の声のようだった。後藤さんは、袖の短い薄手の水色のピンストライプのシャツにピンクのパンツ、スカーフという、かわいそうなくらい寒そうな格好でポーズをとる。かわいそうだがこれが仕事なのだ。天気が回復しつつあったので、雲がなくなるのを待ってもう少し撮影しようと、少し間を置くことになった。

後藤さんも手持ち無沙汰になったので、なんとなく会話がはじまった。
「…でも、ヨーロッパにこんなに長く住むことになるなんて想像もしてなかったんじゃないですか?」
「私、ほんとはアメリカに住みたいのよ。アメリカの方が好き。特にニューヨーク」
「そうですか。僕は来年からニューヨークに住もうと思ってるんです」その頃の第一希望はコロンビアだった。
「へー、羨ましい。ニューヨークで何するの?」
「ビジネスの勉強をするんです」
5分くらいだったが、なんとなくそんな会話になった。彼女もジャンに会う前から寸暇を惜しんではベルリッツに通って英語を学んでいたこと、ジャンと会ってからは必死でフランス語を勉強したことなど、いろいろ話してくれた。

ようやく空が青々としてきて、理想的な絵が撮れた。この日はちょっと早いがこれで終了。午後4:00頃にはホテルに着いた。夕食はクライアントやスタッフとワインを交えての食事会なので、この間を利用して小論文を書く。まだ時差ボケもあったため、大概朝4:00頃からも小論文を書いていた。ようやくコロンビアの出願資料が完成し、逸早く送りたかったので、ホテルにFedexを頼んでもらう。南仏ののんびりしたホテルで、Fedexなんてこの方何ヶ月も来たことがないという感じだったが何とかお願いしてピックアップしてもらうことになった。本当に大丈夫なのだろうか?不安の残る出願だった。

(つづく)

先頭 表紙

2001-10-15 後藤久美子さんのこと 4

アヴィニヨンという街の名前に聞き覚えがあるとしたら、きっとそれはフランス民謡の歌詞からではないかと思う。「アヴィニヨンの橋で、踊ろよ、踊ろよ…」と日本語に訳されているあの歌だ。南仏プロヴァンス地方の、ワインで有名なローヌ川のほとりにある、かつてローマ法王が住んでいた歴史的な街。街の真中に旧法王庁が今も厳かに威容を誇り、周囲にはかつて街を外敵から守っていた城壁がそびえる。アヴィニヨンの橋は、正式にはサン・ベネゼ橋といい、ローヌ川に途中まで懸かって切り落とされたような形で残っている。

撮影一日目は、雑誌、カタログ、ポスター等で使用するスティル撮影。スタッフは日が昇る前から、何の変哲もないアヴィニヨンの広場を朝市に仕立てるべく、大道具、小道具のセッティングをする。果物屋や花屋を雇ってきたり、エキストラのフランス人を10人ほど仕込んだり。12月という季節性が出ないように、枯葉を掃いたり、枯れ枝をくくって画に入らなくしたりする。

天気は今ひとつはっきりしない曇り空である。この時期のプロヴァンス地方は天候が非常に不安定で、雨も多いとのことだった。下手すると雪ということだってありうる。大変前時代的だが、こういうときには晴れ男が貴重な存在になる。自他ともに認める晴れ男のクリエーティブ・ディレクターに加え、僕も確率的には8割打者くらいの成績を収めていた。前年に二人揃ってロスに撮影に行ったときは最悪の大雨を呼んでしまったのだが。

「後藤さん、入りまーす!」プロダクション・マネジャーの女性の甲高い声が響く。分厚いダウンジャケットで重装備をした後藤さんが登場。設定は春や初夏の撮影ばかりで薄着が多いので、暖かくしてもらう必要があるのだ。

僕の一番大事な仕事は車両の管理とセッティング。クライアントよりもこの商品の担当が長いので、クランクやペダルの位置・角度、サドルの高さ、タイヤの空気入れの位置などを、責任もって確認するのだ。後藤さんの位置決めができたところで、「ちょっと済みません」と言ってセッティングをする。

撮影開始。かなり決め込んだ構図だったので、後藤さんの色々な表情を引き出し、あとは空の色のいいときを見計らって必要枚数を取り、簡単に終了。とは言いながら、薄手のシャツにパンツでは相当寒かったと思う。何だかんだでもう昼近くになっていた。

(つづく)

先頭 表紙

2001-10-13 後藤久美子さんのこと 3

淡々と書いてきたが、僕自身、後藤久美子さんに関心がなかったわけではない。むしろ昔から非常に注目していたタレントだった。「愛(めご)にござります」という科白で、伊達正宗の幼き正室として衝撃的なメジャーデビュー。少女の体には不釣合いな、鼻筋の通った、強い意志を感じさせる顔立ち。その美しさは、捉えようのない、独立して機能するといった種類の美しさだった。

大人になってからは、より意味性のある、現実的な美しさが備わってきたように思う。アレジ氏と肩を並べて写ったいくつかの写真での微笑みは、人に多くを与えるような、そんな微笑みになっていた。貫いてきた生き方がより洗練されて、柔らかな薄肉のように彼女を覆っていた。

日本を発つ前に彼女の所属するオスカー・プロモーションを訪ね、社長と簡単な事前確認をしていた。最後に社長がこう話した。「生意気とか言われてますが、久美子は曲がったことが嫌いで嘘が言えないだけですから。『久美子ちゃんよかったよ』なんて言われても、『どこの部分がどうよかったの?』と鋭く切り返したりする。だからできるだけ正直な対応をしてやってください。そのほうが彼女も真面目に取り組めますから」

「寅さん」の山田洋二監督は、初対面のとき、余りの緊張感に水を飲みすぎたのと、うまく会話が続かないのとで、一時間に二度も三度もトイレに行ったそうだ。

でも僕にとってはそういう人のほうが全然楽だった。僕もどちらかというとそういう部分があるし、僕の周りにもそんな人が多かった。

12月14日。前日の夕方にパリ経由でアヴィニヨンに着いた僕は、スタッフと合流し、朝からロケハンに出た。撮影候補地を順番に回り、クライアントと一緒に最終確認をするのだ。クリエーティブ的見地に加えて、坂が坂らしく見えるか、左側通行を前提にした構図になっているかなど、営業的な細かいチェックをする。仕事とは言いながらも、一筋一筋が趣のあるアヴィニヨンの道を歩き、土地の人たちのくつろいだ年末の情景を眺めるのは楽しいことだった。

ロケハンを終えた夕方6:00頃、僕は自分のホテルで諸用を済ませ、スタッフの集まるホテルに向かった。10日間借り切った会議室では、昨日までとはうって変わった静寂の中で、ポラロイドのシャッター音だけが響いていた。後藤さんが既にフィッティングを始めていた。20人くらいのスタッフの視線が集まる中、雑誌広告のカンプやCFコンテを基に、後藤さん専属のスタイリストが集めてきた数々の衣装を後藤さんが次々に着てみせてくれた。

カンプに忠実に選ばれた光沢のあるグリーンのパンツに、花柄のシャツ。ボーイッシュな黒のジャケットに白いシンプルなインナー、黒のタイトなパンツ。水色のピンストライプのシャツにフレアー。青いデニム地のジャケットにシックなベージュのロングスカート。6、7通りのパターンを試してもらって、スティル撮影用(雑誌など)に2パターン、CF撮影用に2パターンを選択した。

日本を出発する前に銀座の博品館で僕が買ってきた、二人のお子さん用のクリスマスプレゼントを、クライアントからということで渡した。後藤さんはとても喜んでそれ受け取り、クライアントと後藤さんを中心に、しばし談笑が続いた。簡単な日程の確認をして、「明日からよろしく」と彼女は去った。

後藤さんの第一印象。二児の母の強さと貫禄。穏やかな笑顔に、対照的な鋭い目。あけっぴろげな話し方と笑い声にも、うっすらと漂う緊張感。想像していた通り、いまやある種のスタイルを身につけた、立派な大人の女性だった。

(つづく)

先頭 表紙

ゆーさん、本当に見習いたいですね。自分をだますことなんて簡単ですから。たった一人、誰にも見られないところにいたとしても、自分を甘やかさないでまっすぐ生きる力。本当に見習いたいです。 / Hidey ( 2001-10-15 12:12 )
浪花撫子さん、彼女も確かに丸みを帯びたのだと思いますが、基本線は変わってないですね。本当に、山口百恵さん以来、日本の誇れる女性であり、母であるような気がします。 / Hidey ( 2001-10-15 12:09 )
パンドラさん、本当にそうですよね。自分自身でいること。。。僕はできているだろうか、と考えさせられます。そんな風に考えさせられる人だったので、僕にとっては特別な出会いだったのだと思います。 / Hidey ( 2001-10-15 12:07 )
oggiさん、昔はそんなことも多かったのかもしれませんね。少なくとも我々と同行のカメラマン、監督は、そんな迎合はしない人だったので、誰にとっても気持ちのよい撮影になりました。かえってカメラマンや監督は頑固な人が多いので、後藤さんはそういう人たちとはウマが合うと思いますよ。代理店の太鼓もちが嫌いだったのかな? / Hidey ( 2001-10-15 12:05 )
ぴぴさん、筋を通すということは誰にもできることではないですよね。かつては矛盾に満ちた世界の中で予防線を張るためにも肩肘張って「生意気」な口をきかなくてはならなかったのだと思いますが、今はそんな必要もなく、ただただスタイルがきわまったという感じでした。 / Hidey ( 2001-10-15 12:02 )
おとじろうさん、はじめまして。あの有名な方ですね。僕もひまじん読者暦は1年くらいあるので、かつては読ませていただいてました。光栄です。ゴクミちゃんは和装も洋装もかっこよかったですね。 / Hidey ( 2001-10-15 11:59 )
一貫して自分を持ちつづける強さが人をひきつけるものなんですね。見習わなきゃって思います。 / ゆー ( 2001-10-15 11:10 )
どうも、ゴクミ孃ご本人は以前からそのままで、時代が彼女に追い付いたという事ですやろか? あるいは、年齢が彼女に追い付いたという事ですやろか?女の子からオバハンになって(されて)しまう日本女性の中でも、マダムへと成熟できた希有な人ですよね。 / 浪花撫子@オバハ─ン ( 2001-10-15 02:22 )
私自身でいることって実はとてもむずかしい・・・。でも、後藤久美子さんはそれができる人なんだな、と感じました。その強さをうらやましいと思います。 / パンドラ ( 2001-10-14 22:05 )
撮影時にカメラマンが気分をよくさせようと「いにね〜きれいだね〜」褒めまくるんですよね。そういう薄っぺらな世界で生きてきたから、具体的にどこがいいのか聞きたくなるのかな。 / oggi ( 2001-10-14 15:38 )
彼女の顔には、彼女のスジの通った生き方が反映されているわけですね。若い頃は、それを生意気と言われてしまうことがあるのかもしれないけれど、このくらいの年になると、もうそれはポリシー、とかスタイルということで彼女の大事な基盤なんですね。続き、待ってます。 / ぴぴ ( 2001-10-14 07:57 )
「めごにござりまする。」の美しさは強烈な印象が残ってます。その後桜田淳子に替わって、あれ?でしたね。あ、それた。現在のゴクミは自分のスタイルを持ち、貫禄と自信に溢れた魅力を感じますね。 / おとじろう ( 2001-10-14 03:43 )
akemiさん、まあ、華やかといわれても仕方ないでしょうね。そういう仕事ですからね。「気になることが…」ってのは何でしょう?ああ、気になる。 / Hidey ( 2001-10-14 00:37 )
そうなんですか。こちらのつっこみが「後藤久美子さま絶賛」っだったのを裏付けるようなお話の数々…なわけなんですね。ここいらへんは、本当に華やかな世界、って感じで進んでいきますね。 / akemi@気になることが… ( 2001-10-14 00:14 )

2001-10-09 後藤久美子さんのこと 2

さっそく後藤さんの事務所と連絡を取り、出演可否の確認を取る。二人の子供と一緒にいることを大事にしたいので、今はどんな仕事に関しても日本に戻ったりすることはできない。フランスでの撮影なら可能、ということだった。フランス、結構。かえってこの状況はプラスにできるかもしれない。クリエーティブが数日考えて作り上げたCF案は、南仏アヴィニヨンに住む後藤さんの日常の断片を切り取り、電動自転車で素敵に暮らす姿を描くというものだった。二つのバージョンを考えた。

<朝市篇>
アヴィニヨンの目抜き通りを爽やかに電動自転車で走り抜ける後藤さん。朝市でお買い物。ポルシェに乗ったプレイボーイが登場。「マダム、家まで送りましょうか?」「Non, merci」さりげなく断る後藤さん。車も要らない、バスも要らない。彼女には素敵な自転車がある。再び自転車に乗り、丘の上の家に向かう。細道もスイスイ。急坂もらくらくクリア。足を開いておどけながら、「ただいまー」とお屋敷の門をくぐる。ラストカットはせっせと自転車の手入れをする執事と運転手。後藤さんが遠くで微笑む。

<花束篇>
「最近奥様が車に乗ってくださらないのだ」と執事に向かって嘆く運転手。ノースリーブにタイトなパンツできびきびと電動自転車を走らせる後藤さん。カゴには花束があふれる。「ロッキュッパ(69,800円)にはお手上げだよ」再び嘆く運転手。アヴィニヨンの街のすぐ脇を流れるローヌ川のほとりを走る後藤さん。川の向こうには城壁と旧法王庁が見える。「ただいまー」とお屋敷に戻る後藤さん。先ほどは嘆いていた運転手も、後藤さんから一輪の花をもらってご満悦。ラストカット。自転車の手入れをする執事と運転手。

10月下旬、マーケティング、クリエーティブ、メディア、セールスプロモーション、PR、販売店対策、WEBなどの包括的な提案が実り、競合プレゼンに見事勝利。

さっそく制作作業に入ったのだが、商品の発売時期、制作スケジュール、及び後藤さんの都合をあわせると、クリスマス前の撮影になることが分かった。僕はこの頃仕事で多忙を極めつつも、MBA留学のための小論文を書きまくり、塾でアメリカ人と一緒に文章の添削を重ねていた。ひとつの学校に対して平均5本、6校で合計30本にのぼる論文を書かなくてはならず、毎日3時間睡眠の生活を続けていたのだ。

12月から1月にかけて各校のapplication(論文を含む願書)締切りが集中しており、クリスマス前にはNYとシカゴの学校にapplyを済ませようと計画していた。クライアントにはまだ留学することは秘密にしていた。CF、雑誌広告、カタログ、POPで、正味5日間の撮影が必要だったので、事前準備などあわせると、10日間フランスに滞在することになる。営業という立場なので、撮影自体に加えて、クライアントのケアなど、仕事は夜まで続く。ロケに行くということは、受験前の一番大事な時期に10日間の空白ができることを意味していた。

この商品に関する営業作業は7年間僕がひとりでやってきたので、商品やプロモーション意図など、細かい部分は僕にしか分からない。何とか人に引き継ぐこともできたが、何より最後の仕事になるであろうこのプロジェクトを完遂したいという気持ちが強かった。悩んだ末に、ロケに行くことを決定。不利になるのを覚悟で、シカゴの学校のapplicationは1月の第2回締切りに遅らせることにした。また、どうせならということで、シカゴの学校の面接を受けてからロケに参加することにした。

そんなわけで、12月10日、僕は成田からシカゴに向かった。12月23日に帰国という、14日間の無謀な日程の始まりだった。

(つづく)

先頭 表紙

ガス欠コインさん、ありがとうございます。僕は、ガス欠コインさんが多分一番多く仕事で関わっていらっしゃる代理店の出身です。10年前まではスポーツ関係の部署にもいましたので、かなり共通の知り合いがいるはずです。 / Hidey ( 2001-10-14 02:47 )
Y社のあのCMですか。嫌みのない爽やかなものだった印象があります。Y社ということは、僕はやっていませんが、共通のお知り合いがいるのは間違いないでしょう。やっぱり、この業界、狭いですね(笑)。 / ガス欠コイン ( 2001-10-14 00:36 )
はるぴょんさん、いらっしゃいませ。いえいえ、結構怠けたり、自分で情けなく思ったりすることはしょっちゅうですよ。でも何とかやらないとね。もう仕事をしてたときの感覚はすっかり忘れてしまいました。この文章を書きながら、久しぶりにそんなものを思い出しています。 / Hidey ( 2001-10-13 23:37 )
makiさん、そんなことないです。準備期間だったし、ただただかっこ悪くボロボロになっていただけのような気がします。今もまだ長い準備期間中。いつに日に輝けることやら。makiさんも頑張ってください! / Hidey ( 2001-10-13 23:35 )
Hideyさんがいつも全力で頑張っていらっしゃるのが文章から読み取れます。ステキ!お勉強かなりハードそうですが、必ず目標を達成されるであろうことを確信します。頑張って下さい。 / はるぴょん@なかなか自分にストイックになれない ( 2001-10-12 01:28 )
おぉ〜。なんかすごく格好良いなっ。仕事と夢を全力で頑張ってる人ほど、輝いてみえる人はいないと思う!これを読んで私も頑張りたいって思えました♪ありがとう! / maki ( 2001-10-11 11:34 )
あややさん、ほんとに数少ないカリスマですよね。ほんとはもっとそのカリスマを活かしたプロモーションにしたかったのですが。。。色々あるんです。続き、僕も早く書きたいのですが、ちょっと忙しくて、いつ書けるか。。。少々お待ちを! / Hidey ( 2001-10-11 03:38 )
TAKEさん、このときはトータルキャンペーンだったので、CF、雑誌、編集タイアップ、POP、PR。。。と、死にました。でも、商品を子供のように愛してましたので、何とかやりました。 / Hidey ( 2001-10-11 03:36 )
ゆーさん、残念ながらもうあのCFはなかなか流れないと思います。そもそもが自転車の需要期の春にあわせてつくったものだったし、今はニュースステーションの水曜でやってるかどうかといったところ。会社とは全然連絡とってないのでわかりませんが、来年またやるかな。。。? / Hidey ( 2001-10-11 03:34 )
パンドラさん、僕は指揮はしましたけど、僕がつくったわけではないです。クリエーティブのスタッフが原案を作り、プロの監督さんが仕上げるといった形です。僕はその作品にたどり着くまでの理屈っぽい部分や、作品ができてからどの媒体に載せるか、全体のプロモーションをどうするかなど、包括的なことをやってました。 / Hidey ( 2001-10-11 03:32 )
ume-koさん、ってあのume-koさんですよね?いらっしゃいませ。徹子の部屋は僕も見ました。非常に哲学のある人だと思いました。ゴクミちゃんのイメージに疑問を抱いていたクライアントもあれで納得でした。 / Hidey ( 2001-10-11 03:29 )
りさ子さん、はじめまして。僕もチェックのためにそのサイトに行ったのですが、残念ながらダウンロードできなかったのですが。今はニュースステーションの水曜日にまだやってるかな。。。? / Hidey ( 2001-10-11 03:27 )
たらママさん、そんな年に限って、この仕事を含め、5つも大競合プレゼンがあったのです。昨年は一生で最も忙しい年になりました。今年もかな。。。? / Hidey ( 2001-10-11 03:25 )
oggiさん、僕もクリエーティブではなく営業なので、総指揮を取る立場でした。CFの生まれる源のような、そして最後まで主旨が一貫しているかどうかチェックするというような仕事でした。おかげで11本の作品に深く関わることができました。 / Hidey ( 2001-10-11 03:23 )
みかりんさん、少女の頃のゴクミちゃんは、なんというか、つかみ所がないくらい、独立して機能する「美」という感じでしたよね。今はもっと落ち着いておおらかな、人に多くを与えることのできる「美」という気がします。 / Hidey ( 2001-10-11 03:19 )
浪花撫子さん、そう言っていただけると嬉しいです。ただ、価格がまだ中途半端だったので、効果は今ひとつだったのですが。それでもここ数年のなかではかなり売れたようです。 / Hidey ( 2001-10-11 03:16 )
ぴぴさん、春にぴぴさんも日記に書いてらっしゃいましたよね。フィー子さんとちえちゃんがつっこみで書いてた、「ゴクミの家に行ったことのある友達」というのが僕のことです。あのCMは確かによい作品でした。それほど量が出なかったのが残念ですが。 / Hidey ( 2001-10-11 03:13 )
たまたまさん、そうですね、確かに部署によっては派手な部分もあるのでしょうが、ほとんどの人たちは普通のサラリーマンです。それもかなり疲れた。今は今で大変ですが、たしかに食生活、青空を見上げることが多いことなど、人間的な生活になったとは思います。 / Hidey ( 2001-10-11 03:10 )
akemiさん、それはセコイ!うちも昔は構造的にそういうこともできましたが、最近はめっきり厳しくなって、そういうことは一切ありません。。。と思います。 / Hidey ( 2001-10-11 03:08 )
私もFRAU、今回は買い求めました。憧憬ももちろん、山口百恵的な「結婚して(ほぼ)ブラウン管から消えたけれども鮮烈なカリスマ性を保つ人」としての彼女の魅力に、久しぶりに彼女を見ました。ああ、続きが気になる、早く読みたい!! / あやや ( 2001-10-11 00:00 )
ううっ、ハードなお仕事と留学の準備・・・・。僕は直接CM制作にかかわったことはないんですけど、お仕事の内容とスケジュールの苛烈さだけは良く分かります(想像すると、胃にくる〜^^;) でもすべて前向きに挑まれたのですね。(続きが楽しみです) / TAKE@お祝いメッセージありがとうございました ( 2001-10-10 13:05 )
CM見るたびにHideyさまのお話し思い出します、きっと。できるCMはほんの十数秒なのに、その裏の苦労は計り知れないものなんですね。続きが楽しみです。 / ゆー ( 2001-10-10 09:49 )
<朝市編><花束編>ふたつともHideyさまのプランですか!?すごい〜〜〜!!想像しただけでうっとり^^ 広告代理店ってこういうお仕事するのか、なるほど・・・(無知でゴメンナサイ) / パンドラ ( 2001-10-10 01:32 )
初めてつっこみします。五感にうったえる文章、いつも楽しく読ませてもらっています。徹子の部屋で話すゴクミはとても知的に感じられました。天は二物を与う?!続きを楽しみに待っています。 / ume-ko ( 2001-10-10 01:15 )
ここでそのCM見れますね。http://www.yamaha-motor.co.jp/cf/0006.html / りさ子 ( 2001-10-10 01:06 )
仕事と受験の両立、本当に大変でしたね。 / たらママ ( 2001-10-10 00:01 )
私にも大手代理店勤務の友人がいますが、CM制作ではないので、初めて聞く話に興味津々!しかもゴクミ嬢!うふふ / oggi@次も楽しみです ( 2001-10-09 22:57 )
ゴクミちゃんって。。私の中では、まだ少女だな。。二人も子供がいるママなんですね。。なんだか時の流れを感じます。。。 / みかりん ( 2001-10-09 22:17 )
文字読んだだけでも、綺麗な画像が浮かんで商品価値が上がりましたわ。日常の手段としてのチャ─リ─やなく(特売に走る為の)風を感じたい時にお乗りくださいって事を、ゴクミ孃なら伝えられますなあ。 / 浪花撫子@いやー、美しわあー。 ( 2001-10-09 13:50 )
後藤久美子さん、私も大好きです。それにそのCMも雰囲気が出ていて大好きでした。つづき、早く、早くぅ! / ぴぴ ( 2001-10-09 09:44 )
うーん、続きが気になるー。。。でも、貴社も弊社も世間ではかなり派手なイメージですが、ほんとーはボロ雑巾ですよねー。自分はいまこちらでいかに人間らしい生活を送っているか実感しています。 / たまたま ( 2001-10-09 06:12 )
それが「領収書いただけますか?」と差し出された名刺にあった社名、大手でした。しかも来店されていたのはあきらかに仲間内での食事会だった(しかもこの人の後輩がうちのお馴染みさん、しかも払いはワリカン)ため「セコイ!身銭切って遊べや!」と思ったし、翌日「日付けなし」をもう一枚請求してきたのです。印象悪いでしょう?(笑)でも、こんなことこと細かく覚えてるあたしもイヤな女だ!(爆) / akemi ( 2001-10-09 05:17 )
いや、12時半に一旦寝て3時半にトイレに起きて、誘惑に負けPC立ち上げてしまいました。>ひま中(笑) / akemi ( 2001-10-09 05:09 )
はらぽ〜ん、僕はドラマはまったく観ない人なのでよく分からないですし、ゴクミちゃんの若い頃のこともよく知りません。世の中では「生意気」と言われていたようですが、不安定な若い時期に、虚飾に充ちた芸能界で、流されず自分を守って生きるということは並大抵の努力ではないと思います。人から恨まれることもきっと多かったと思います。 / Hidey ( 2001-10-09 05:07 )
akemiさん、こんな時間まで!お弁当は別にいいじゃないですか〜。でも我々の仕事は、95%までは地味で激しく、ストレスのたまる仕事です。5%の派手っぽい部分は年に数回のご褒美程度。いつもクライアントとメディア、制作者、社内スタッフの間に入って調整をし、ぼろ雑巾のようになってました。確かに(特に小さい代理店やプロダクションに多い)大勘違い野郎も沢山いるのですが。 / Hidey ( 2001-10-09 05:04 )
若い芸能人(ゴクミはもうそんなに若くないか)の鼻持ちならぬ様子が、ドラマ「ムコ殿」や「ブランド」に出てきましたが、ゴクミは若い頃どうだったんでしょう?(情報源がドラマしかない自分、とんでもないフィクションなのにさ。)。芸能人と仕事するのって結構たいへんなんだろうなと思っています。 / はらぽ〜ん ( 2001-10-09 05:01 )
あ〜、こんなにも仕事をし、学んでいる人がいることを改めて知って、安易にお弁当を取った(野球の昼の弁当は作ったの…言い訳)ゆうべの自分を反省。まだまだやれるじゃねぇか!>自分。。すいません、同じ次元で語るつもりはないんで。。(^^;; うちの店で、Hideyさんとおそらく同業の方が見えますが、芸能人と仕事してることをやたらハナにかけて派手な部分だけ誇張して話されるので、イメージ悪かったんです。派手なだけのお仕事じゃないですよね。あたしちょっとうわっつらだけで見てたかもしれません。広告のお仕事。。 / akemi ( 2001-10-09 04:41 )

2001-10-08 後藤久美子さんのこと 1

ひまじんネットでも取り上げた方がいらしたが、FRAUで後藤久美子の特集があったらしい。多数の20〜30代の女性ライターさんが活躍されるこのひまじんでも、他のタレントとは違う意味で、いま注目に値する女性であるようだ。

実は昨年の12月、後藤さんと仕事をすることがあったので、差し支えない程度に、ここに記しておきたいと思う。セレブリティとしての彼女に関するgossipyな話はするつもりはない。仕事で出会った魅力ある人たちの中でも、ひときわ輝きを放っていた人のひとりとして、記憶があやふやになってしまう前に、文章にしておきたいと思った。

それは、ちょうど今から一年前のことだった。10月の中旬、たび重なる深夜残業で、出勤猶予をもらい、それでも8時半頃に目を覚まして、久しぶりに朝のテレビを見ていた。僕は広告代理店の営業をしており、某社の電動自転車のプロモーションを担当してから7年目にして、初めての競合プレゼンを経験するという危機にあった。7年間、総じて満足度の高い作業を行い、常に指名を勝ち取ってきていながら、政治的な理由で、他の代理店の名前が浮かび上がったのだ。

電動自転車という商品も、大きな岐路に差し掛かっていた。当初は社会的な脚光を浴び、価格の低下とともにたまに街で見かけるようになりながらも、今ひとつ世の中に浸透しなかった。普及の伸びは次第に下がり、我々の言う「レーザーディスク化現象」(あったらいいなとは思っても、最後は「なくてもよい商品」というレッテルを貼られる)の危険性が感じられるようになっていた。

そしていよいよ、7万円を切る、スリムで軽い、クライアントとしては乾坤一擲の新商品の発売が決まる。そんな重要なキャンペーンにふさわしいタレントが求められていた。

今回のタレントの選択では、いくつかの要件を満たす必要があった。まず、低下してしまった商品のニュース性を一気に高めることができる人であること。次に、価格の低下に伴うターゲット年齢の低下を象徴できる、30歳前後でできれば既婚者であること。そして、「こんな素敵な生活ができるなら絶対欲しい」と思わせるに足る、ヤング主婦の憧れの的になりうる人。

クリエーティブチームとともにキャスティングの資料をひっくり返して、誰にならそんな条件が満たせるか、思案する日々が続いた。藤原紀香…もう今さらという感じ。ニュースにはなり得ない。松嶋菜々子…本命のつもりだったが、先方の都合が合わず、検討する以前に話が消えた。彼女の場合も、ニュースということではどうかと思う。スコア的には常にトップの山口智子…ちょっと今回は違う。子供という意味では象徴的で、ニュース性も期待できる安室奈美恵…何年も続けてのキャンペーンにはそぐわない。いない。世の中は「あゆ」や「宇多田」という爆発的な人気を誇る女性タレントで充ちていたが、今回のターゲット、商品にマッチする人となると、誰もいない。

そんな状況で、僕は出勤猶予をもらって朝のワイドショーを見るともなしに見ていた。後藤久美子がジャン・アレジの日本グランプリ出場に伴い帰国し、久しぶりにマスコミを引き連れている絵を映していた。ふと何かが心の弦を弾いた。後藤久美子だ。そうだ、日本には後藤久美子がいたんだ。成田空港に降り立つだけでニュースになってしまう日本人タレントなんてそうはいない。

早速クリエーティブとの会議の中で、彼女の名前を出してみた。一瞬の沈黙のあとに、4人のスタッフは「それ、いいね」と同意した。こうして、最近には珍しい、キャスティングを中心に据えたプロジェクトが始動した。

(つづく)

先頭 表紙

TAKEさん、はいそうです。とてもいい方ばかりのクライアントでした。ジャンもこれから登場しますのでお楽しみに! / Hidey ( 2001-10-11 03:06 )
あ、ひょっとしてY社のオシゴトでしょうか^^ 僕はF1好きでもあるので「後藤久美子ママ、なかなかいいなあ、うらやましいぞ、アレジ〜」なんて思ってました。結婚してますますステキな女性になりましたよね。 / TAKE ( 2001-10-10 12:57 )
LANIさん、あの眼差しで微笑まれると、そのギャップだけで心が溶けてしまいそうでした。逆に、どんなに和やかに話をしても、程よい緊張感が走ったものです。 / Hidey ( 2001-10-09 04:53 )
浪花撫子さん、マダームとオバハーンの分岐点、研究しがいがありそうですね。あの人は本当に、美しく歳を重ねていける数少ない人なんでしょうね。 / Hidey ( 2001-10-09 04:50 )
oggiさん、でも藤原紀香は思ったより息が長いですよね。はやりすたりというレベルを超えてしまったようですね。でも確かにCFに関しては、どこの企業のものかよく覚えていない、ということもありますね。 / Hidey ( 2001-10-09 04:48 )
ゴクミは3月生まれの27歳です。独眼竜正宗でのお姫様役でのデビューは衝撃的でしたよねー。これからいよいよ彼女が登場しますのでお楽しみに。 / Hidey ( 2001-10-09 04:44 )
たらママさん、それも彼女の場合は、決して与えられたものでなく、選び取ったものですからね。いろいろ話して勉強になりました。 / Hidey ( 2001-10-09 04:40 )
Chieちゃん、ありがとう。あそこまでの気高さ、強さを持つまでには、様々な経験が必要だったのだと思います。すごいことですよね。 / Hidey ( 2001-10-09 04:39 )
ゴクミのちょっときつめの目が好きです。「マダーム」な雰囲気も嫌みでなく素敵。 / LANI@わしは一生無理 ( 2001-10-08 23:02 )
うちは、年齢ではゴクミ孃に勝ってますが、それ以外は何も対峙できるもんはありまへん。マダ─ムとオバハ─ンの分岐点はどこから発するんか、興味シンシンですわ。 / 浪花撫子@まずミーハー精神を何とかせんと ( 2001-10-08 14:56 )
待ってました。続きも楽しみにしてます。藤原紀香さん、最近「初めての家電CM」が流れてますが・・・私も今更だと思うのです。 / oggi ( 2001-10-08 12:28 )
ゴクミって確か同じ年だったような、、彼女がデビューしたとき同年代でアイドルがと思ったものだー。元マスコミ志望としても続きたのしみにしています。。明日、こちらは学校がります。ぐすん。 / たまたま ( 2001-10-08 10:42 )
そうですね。ゴクミは他の誰にもマネできない独自の地位を築いちゃいましたね。 / たらママ ( 2001-10-08 09:37 )
ゴクミちゃんのお話、前に聞いた時とっても楽しかった!もっと聞きたかったから楽しみ♪本当に素敵な女性なのよね、ワクワク〜♪ / Chie ( 2001-10-08 08:38 )

2001-10-05 「ベニハナ・オブ・トーキョー」に学ぶ芸術的経営学 3

ほとんど同時に8人がセットで出てゆくので、カクテルラウンジで待っている客はいっせいに座ることができる。まるでジェットコースターのようだ。人気店なだけに行列をなすことがあっても、外で待っている客としては、5〜6分おきに景気よく8人セットで出てゆく様を見れば、すぐに入れると思って安心して並んでしまう。

そして、経営学的に最も大事なのは、こうした一連のサイクルをシェフが一手にコントロールしているということだ。専門的にはボトルネック(いわゆる「ネック」)というのだが、一連の作業の中で、最も時間がかかるのがシェフのパフォーマンス&料理である。ここを速くするか遅くするかで、全体のスピードが決まり、回転率が変わる。大勢の客で込んでいるときは、シェフはパフォーマンスも早々に切り上げ、さっさと肉を切ってわたし、野菜で客を満腹にする。逆に客が少ないときは、特別サービスで長めのパフォーマンスを演じ、客と会話をし、客をテーブルに釘付けにすることによって、店が賑わっているように見せかける。

こうしてベニハナ・オブ・トーキョーは、利益構造も回転率も非常に優れた、神業的な商売を展開し、世界中に進出したのである。

授業のために配られた8ページのケースには、こんな親切な解説は一切ない。読み物的な文章の中に、断片的な事実が散らばっているだけだ。我々学生はそんなケースから、奥深い経営学を洞察するのだが、そう簡単にはいかない。80人の学生によるディスカッションが教授の指揮でだんだん深まってゆき、点が線となり意味と脈絡が生まれ、最後に一気に教授が種明かしをする。このベニハナのケースは、何の変哲もないレストランの情景が、80分の授業を通じて、比類なき経営の手本に一変した、芸術的なまでの授業だった。

そんな授業を指揮する教授は、同時に中堅の電気機器メーカーの会長でもある。この学校の卒業生でもあり、めざましい活躍と深遠な知識を買われて今年の1月に教授陣に名を連ねたそうだ。白髪で、眼鏡の奥の優しい眼差しが印象的だ。80人の学生のバックグラウンドをきちんと読み込み、一人ひとりに気を配った、大変丁寧な教え方をしてくれる。8人ずつの小グループで、毎週水曜には学生とランチをともにする。僕も一昨日彼とはじめて食事をし、我々をより理解しようと気を配る姿に感銘を受けた。

試験のほうは8時間にわたる一夜漬けが効いて、何とかなったと思う。教室を後にするとともに、待ちに待った4連休が始まった。いま、10月5日の朝7:00。これから20人くらいの仲間とVermontへ1泊旅行に行く。ここNew England地方にはインディアンサマーが訪れており、久しぶりの陽気が心地よい。ハイキングや乗馬など、つかの間の解放感を味わえるアクティビティが予定されている。そんな話も、後日ぜひアップしたいと思う。

先頭 表紙

LANIさんパリコレにも出てるんですか。そろそろでしたっけ?ファッションショーは僕も一度見てみたいものです。 / Hidey ( 2001-10-09 04:38 )
プルーさん、教えていただきありがとうございました。たしかに青木氏は賑やかな人みたいですね。東洋人のモデルエージェンシーを作ろうとしたとか、ショービジネスを始めようとしたとか、すべて失敗に終わったようですが、娘さんだけは成功したわけですね。しょうゆでビーフ、僕も大好きです。 / Hidey ( 2001-10-09 04:36 )
しゃどう猫さん、いらっしゃいませ。ベニハナの青木氏の場合、多分直感で始めて、ところどころけちけちしまくって、試行錯誤の末この流れができたんだと思います。このコースは工場の複雑なラインの効率について学ぶコースで、ベニハナはいわば比喩的な概論ということです。 / Hidey ( 2001-10-09 04:34 )
たまたまさん、確かに数学的思考は色々な局面で役に立ちますよね。最近とみに、文系も理系もないのだと痛感しています。 / Hidey ( 2001-10-09 04:32 )
デボン・青木はパリコレでも活躍してる、青木元オーナーのお嬢さんです。 / LANI ( 2001-10-08 23:03 )
実は、私もべにはなには行ったことがない。Midtownにあるのだけどね。それより、Mt.Fujiというのには、数回あります。大抵ウッドベリーコモンへ行った帰りだったりする。たまには、ああいうShowもいいかもしれない。しょうゆあじのビーフっておいしい。デボンは青木氏の娘でシャネルなどのモデルをしています。青木氏は、スピードボートで大怪我したり、脱税で捕まったりと話題豊富です。 / プルー ( 2001-10-08 22:39 )
さらりと解釈を受けると、なるほど、アートなビジネスだな、と感心してしまいます。わかってみると、すぐに思い付きそうなことなんだけど、実際にアイデアを生み出すまでには、長い道程があるのでしょう。奥深さを感じます。 / しゃどう猫 ( 2001-10-08 17:27 )
いろんなこと学べて楽しそうですねー。もちろん、勉強は大変でしょうが、、、自分も社会にでていろんなところで自分の数学的考え方に助けられています。うーん、そういう勉強したいんだなー。 / たまたま ( 2001-10-08 11:15 )
Risaさん、KBSに行かれていたんですか?日本ではビジネスをどのように教えるのか興味津津です。HBSのケースを翻訳する権利をもっていて、それを使っているように聞いていたのですが。。。写真の件、まだ日本にいる妻がデジカメを持ってるので、11月まではアップできないんです。いずれやりますのでお楽しみに。 / Hidey ( 2001-10-08 07:41 )
りりさん、Vermontは紅葉真っ盛りで、とても美しいところでした。ドライブあり、ゲーム大会あり、ビリヤードありで、心から楽しい旅行になりました。 / Hidey ( 2001-10-08 07:38 )
LANIさん、ベニハナには行ったことないし、青木氏についてもほんとはよく知らないんですよ。デボンって誰ですか? / Hidey ( 2001-10-08 07:36 )
たらママさん、この授業を通じて、社会を見る眼が多少変わってきたような気がします。ファーストフード店に入っても、目のつけどころが変わってきました。 / Hidey ( 2001-10-08 07:35 )
しゃむさん、70年代に作られたというこのケースの後半には、当時の青木氏の荒唐無稽な夢が語られていました。ほとんど失敗してしまったようですが、ベニハナだけはうちの学校でも30年の時代の波を超えて、教材として存在しつづけるくらいの金字塔なのです。 / Hidey ( 2001-10-08 07:34 )
ガス欠コインさん、ベニハナはコースの第1回目、概論だったので楽しい授業だったのですが、その後は冒頭のテストの問題のような話がずーっと続いて、結構大変でした。自分の将来を考えると余り関係はないかもしれないけど、いい勉強になりました。 / Hidey ( 2001-10-08 07:29 )
浪花撫子さん、飲食店って商売の構造としては決して楽じゃないですもんね。沢山の競合もあるし、外食率低下、価格破壊の波にもさらされてるし。経営者としてはかなり考え抜いた戦略が必要ですね。 / Hidey ( 2001-10-08 07:28 )
りるりるさん、僕も20年近く前にメイン州にいたときに、日本の鉄板焼屋と称する似たような店に行き、パフォーマンスを見ました。シェフは日本人ですらなく、味もイマイチでがっかりした覚えがあります。 / Hidey ( 2001-10-08 07:25 )
akemiさん、哲学のある、素晴らしいお父様ですね。実は僕はベニハナに入ったことがないので、ベニハナの哲学はあまりよく知らないのです。でも、お父様のおっしゃるような店は日本でも何軒か知っており、その大切さは分かる気がします。 / Hidey ( 2001-10-08 07:23 )
マイケルさん、Vermont特産というメイプルシロップを味わうことはできました。あのカレーはそこから来てるんですかね? / Hidey ( 2001-10-08 07:22 )
パンドラさん、余りマニアックな勉強の話は書いてても面白くないので、このベニハナはちょうどいいと思いました。楽しいといっていただけて嬉しいです。Vermontは本当に楽しい旅行になりました。ちょっと雨が降って乗馬ができなかったのは残念だけど。 / Hidey ( 2001-10-08 07:21 )
KBSでもマーケティングのテーマとしてベニハナはしばしば取り上げらます。青木氏の出身大学ですしね。Vermont!今紅葉が素晴らしい時期ですね!週末旅行で何度か行った事がありますが、大好きな場所のひとつです。是非写真をアップしていただきたいわ… / Risa ( 2001-10-08 00:51 )
Vermontって春樹さんのエッセイ集にもありましたね。楽しい休暇でしたか?ベニハナの仕掛けってこうなってたんですねぇ。消費者としては気持ちよくだまされていたいけれど、これを知った今となっては…(笑)。でもタメになります。今後も色々教えてくださいね。 / りり ( 2001-10-07 18:18 )
勉強になりますなー。 / LANI@不愛想顔のデボンが好き ( 2001-10-07 00:45 )
シェフにいい人材を確保するのが重要ですね。回転率をあげる術がここまで集大成されていると面白いな、と思います。 / たらママ ( 2001-10-07 00:15 )
紅花の経営もそうですけど、オーナーの生きざま&デボンちゃんに興味津々です。 / しゃむ ( 2001-10-06 14:13 )
教える側の熱意も伝わって来る話しでした。芸術的経営学っていい言葉ですね。 / ガス欠コイン ( 2001-10-06 06:44 )
うちの近所に「KOUBE」というもどきがあり、入り口には琉球王国守札の門のノレンがかかってます。ここでは人件費の押さえも徹底してて、鉄板シェフ、ウエートレス、バスボーイ(片付け係)は営業時間=勤務時間。時給の安いキッチンヘルパーに下こしらえを任せてます。鉄板シェフ以外は最低賃金或はチップで賄う。寿司シェフは月給+健康保険等の手当てがあるようですが、彼以外は何もなし。あと、ご飯か焼き飯(残り飯利用)の選択があり、アメリカ人はリサイクルに協力的です。 / 浪花撫子@肉は普通の牛だす。 ( 2001-10-06 04:05 )
トランプの札を一枚一枚めくるような爽快な種明かし。読んでいて引き込まれました。アメリカでこの手のレストラン(8人セットではなかった。)に行きましたが、確かに食事内容はたいしたことがないのにエンターテイメント的な雰囲気で、なんとなく満足してしまった私。まんまとこの戦略にはまっていたんですね。(笑) / りるりる ( 2001-10-06 00:35 )
カウンターで客をこなせてこそ職人、と亡き父は私に言った。手のひらに乗せて心地よくさせておあしを頂く。そんな父は良く「ベニハナスタイル」の話を18の私にしてくれました。「一度来店した客を逃すな」ということも父の話の中によく出てきたっけ。…お疲れさま、いってらっしゃ〜い!(^^)/~~ / akemi ( 2001-10-05 22:02 )
バーモントではやはり林檎と蜂蜜とろ〜りとけてるカレーを食べることができるのでしょうか? / マイケル ( 2001-10-05 20:52 )
うわあ〜〜すごい!!ひとつひとつの種明かしに、なるほど〜!ってうなづいてしまいました。・・・Hidey先生の授業はいつも楽しいよ^^ 貴重なお休みのひととき、十分羽をのばしてらしてくださいね。おみやげ話待ってます! / パンドラ ( 2001-10-05 20:22 )

2001-10-05 「ベニハナ・オブ・トーキョー」に学ぶ芸術的経営学 2

客は店に入ると、まず8人の一組ができるまでカクテルラウンジで待たされる。ヒバチテーブルは8人掛けになっており、客が8人揃わないとシェフとしても効率が悪いからだ。カクテルラウンジで客は連れと会話を楽しみながら、トロピカルカクテルなどを注文する。そこに初めの罠がある。トロピカルカクテルはオレンジやらパイナップルやらのジュースを使用するので、ベースになるラムやジンの味の良し悪しなどはまず分からない。店としては安酒を使ってもごまかせるのだ。ここでまず客は気持ちよく店の利益に貢献することになる。

人数が揃ってヒバチテーブルに通され、メニューが配られる。内容はいたってシンプルで、ステーキ、フィレミニヨン、チキン、海老の4種類の中から好きなものを選ぶか、これらを組み合わせるというスタイル。付け合せは、モヤシ、ズッキーニ、マッシュルーム、オニオン、ライスと決まっている。もちろんここでの意図は、注文の選択肢を絞ることによって、低価格での大量仕入れを可能にし、使われないで捨てられる食材をなくし、貯蔵スペースの効率化を図り、さらにはシェフの作業時間を短縮して客の回転率を上げる、ということである。

二つのヒバチテーブルが向かい合わせにレイアウトされており、シェフはその間のスペースに入ることによって、二つのテーブルで同時に料理をすることができる。

注文は、二つのテーブルをひとりで担当するウェイトレスが受ける。その場で注文に応じて材料を用意するだけなので、いちいちいろんなテーブルに行ったり来たりして複雑な注文をこなしたりと、無駄な動きをする必要がない。また、シェフがその場で料理するということは、材料を出したり、しまったり、そのたびに皿を用意して洗い物が発生したりということが避けられるということでもある。人件費も節約できる。

まずはスープとサラダが出てくる。それも結構量がある。メインの肉にたどり着くまでに結構おなかが膨れてしまう。これによって余分な注文がなくなり、回転率はさらに上がる。

いよいよシェフが登場。巧みな話術で客の心を捉えながら、メインイベントのパフォーマンス。肉を切り分けて食べやすくするというのは、実はこれも食事のスピードを上げるための作戦。必ずしも心のこもったサービスということではないのだ。この間もシェフはバンバン付け合せの野菜を客に差し出し、あっという間に満腹にさせてしまう。

客が満腹になったのを見計らって、シェフは片付けにかかる。食事の最中にシェフ本人がさっさと片付けること自体も効率的だが、何よりそのやり方が大胆にして巧妙だ。シェフは鉄板に水を注ぎ、焦げ付いた食材を取り除く。当然ものすごい勢いで蒸気が舞い上がる。劇的な終了の合図であるとともに、熱を帯びた蒸気が客を否応なしにそろそろ帰ろうという気分にさせる。

デザートはアイスクリーム。まだ冷めやらぬ鉄板の熱で、あっという間に溶けてしまう。食後の会話を楽しむ暇など与えない。

そして決定的なのは、ショーが終わり、シェフが去り、気がつけば、連れはいるものの、赤の他人と席を並べて座っているということだ。プライベートな語らいをする雰囲気ではなく、皆申し合わせたように会計を済ます。こうして、平均1時間という短さで、客は店を出てゆくのである。

(つづく)

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