その人が待ち合わせに指定してきたのは、オフィスの隣のコーヒーショップ。
早めに行って待っているつもりが、色々あって、お店の前に着いたのは時間ぴったり。
折り返さなければいけない着信が入っていたので、店の前で電話をしていたら、その人は中から出てきて、私に手を振った。
最後に会ってから、20年?
早々に帰らなければいけなくなった事情はメールで送ってあったので、コーヒー1杯だけの再会。
その短い間に、懐かしい話をいっぱいした。
懐かしい人のことを、たくさん思い出した。
最後に。本人でさえ忘れていた、22歳の頃の私を、その人は語った。
出逢った時の最初の印象を教えてくれた。
その頃の私を褒めてくれた。
結局、話がつきなくて、コーヒー一杯飲み終わるのに1時間もかかってしまった。
「また、会いたいね。」
「月に1回くらい、食事でも一緒にしたいね。」
「今は、無理だろうけど、カラオケにも一緒に行きたいね。」
その人は、会話の端々にそんな台詞を散りばめてきた。
22歳の頃、繰り返し聞かされていた、それらの言葉。
いつも、会うたびに、「私のタイプじゃないのに、なんでこの人のことが好きなんだろう?」って不思議だったんだけど。
思い出した。
ちょっとワルぶった、この話し方がスキだったんだ。
そして、綺麗な声の響きがスキだったんだ。
私にいつも自信を持たせてくれた、いろいろな褒め言葉が嬉しかったんだ。
変わらない、その人の言葉を聞いて、納得した。
会わなかった20年。
「魔法の鏡を持ってたら〜♪」って、時々思っていたりする程。
その人とのアレコレは私の大切な宝物だったけど。
20年間閉じておいた宝物の箱を、開けてみたら。
あの頃、キラキラ輝いていた宝物より、ずっとずっと素敵な物を私は手に入れていた。
これでようやく、卒業できる。
さよなら。
恋に恋してた、私。
そうして。
また一歩、前に踏み出せる気がした。 |