日曜の昼下がり。
母から電話があった。
「お医者様が、『今晩いっぱいでしょう。会わせたい人がいるなら今日中に呼んであげて下さい。』っておっしゃるんだけど・・・。夜、顔出せる?」。
この日は朝からバタバタと出歩いていたので、とりあえず子供二人に昼寝をさせてからみんなで実家へと向かった。
父の息遣いは荒かった。
それでも。
目を見開いて、片手を挙げ、いつものように孫娘二人の髪の毛を撫で、ほっぺたを触っていた。
え?これが危篤の人?
なんだかまだ体力が残ってるみたい。
そう思いながらこの日は家に戻った。
月曜日。
幼稚園の始業式。
午後から二人を連れてまたお見舞いに行って来た。
父はずっと眠ってた。
もう、意識は戻らないかもしれない・・・。
そう思った。
火曜日。
状況は変わらなかった。
水曜日。
父は眠り続けている。
木曜日。
母からの電話。
「お医者様に『こんな人は珍しい。体の中は大変なことになっているのに強い精神力でがんばってる。こんなだんなさんを自宅で看取ろうとしている奥さんも偉いね〜』と褒められちゃったわ。」。
そして今日。
昼過ぎにまた二人を連れて実家に行ってみた。
午前中にヘルパーさん3人がかりで体を拭いてもらったりして疲れたらしく、父は眠っていた。
でも。
子供たちが騒いでいると。
しきりに右手を動かし始める。
試しに。
「おじいちゃまー。」とケイにその右手を撫でさせて、よばせてみると。
そのちいさな手を握ったあと、腕を持ち上げて頭も撫でてくれた。
意識が戻ってる!!!
目はつぶってる。しゃべれない。
でも、ちゃんと耳は聞こえてて、孫が来たことがわかってた。
父はケイの頭を撫でるのが大好きなのだ。
そのことに、危篤の父の側にこの1週間ずっといた母が驚いていた。
「うわぁー。どうしよう。聞こえてないと思ってヘルパーさんにいろいろ言っちゃったわ。怒ってるわね〜。」。
驚きどころが違うのがこの人のおかしいところだけど。
普通は「意識が戻ってよかったわね。」って言ってもいいと思うけど。
まあ、1週間も「今夜が峠。」という患者と二人で暮らしているんだから仕方がないのかな。
精神的にも肉体的にもいっぱいいっぱいなのはわかるし。
父もそんな母を気遣って反応しなかったのかもしれない。
自宅に。母の側に。戻りたくて。ほとんど歩けなかったのに病院を脱走した人だもの。
それか。孫の力は偉大とか。
帰る時もケイが「おじいちゃまばいばーい。」と言ったら手を振っていた。
この先、どうなるかわからない。
母の体力も精神力も限界にきている。
ムスメの私は幼子を抱えていてあまり頼りにならないし。
何しろ、新学期の錯綜だけで、既に、疲れ果てている。
けれど。
体力の続く限り。
あとで後悔しないように。
母も私も行動していきたいなとおもっている。
がんばりやの夫や父をもつのっていうのもなかなか大変です。
※裏の桜が満開だった頃。 |