これから書くのはある曲からのイメージの延長です。
気付かないフリが得意なボクは
やがて気付けなかったことを知る。
今の今まで、そこにあった音が消えた。
気がおかしくなりそうなほどの痛みの中、
かろうじて頼りないゆっくりとした足どりで、
飛び出しそうな気持ちを押し込め、
「もうすぐだよ…」
その厚い重い扉の奥に向かっていた。
手をかけ、一心で、そこが救われる場所と疑わなかった。
後ろ手で閉めた冷たい重い扉。
ある勇気を持ってそこに向かうほど、心に余裕はなかった。
頭痛と混乱とのぼせあがる身体。
止めたくても止まらない涙。
自分が泣いていると客観視できても、息せき切って溢れ出す。
でも、
そこにいた人は、ボクの思い通りには動かなかった。
驚きも、心配も、哀れみも、
ただ、
この扉の内側に入ってきた侵入者を計るような目でボクを見ていた。
もしかしたら驚いていたのかもしれない。
しかし全く感情の流れを感じとれないままで、ボクはその空間に浮いていた。
落胆。
そこにいた人にしたってしょうがない。
一瞬でも扉の向こうを疑わなかったボク自身に。ボク自身の行動に。
一刻も早く正気に戻って社交辞令のような言葉を発したかった。
扉の外に出た。
ひどく淡々と、ひんやりと長く感じられた時間。
「はっ…」と一笑したいほど…
ボクはそこにある何を信じて向かったのだろうか。
ボクはね、羽を広げていたいんだ。
いくつもの事柄、いくつもの人々が通り過ぎて、例えふみにじられても。
誰かしらと、いつか分かち合う為に、そう、包み込めるほどにね。
10年前、気付けなかったことを、今、知った。 |