歩いて行けるところにある映画館で上映していると知って
無理に早く起きて観にいった。
公開前のCMやテレビの特集のしつこさで
一度は観るのはやめようと思っていたのだけど。
小説の残像をそのままで残しておきたかったから。
ストーリーはもちろん分かっていたのに
映画が終わってもボロボロと涙がこぼれ落ちてしばらくは立てなかった。
横ではタロウが私の様子を見て席を立った。
一番大切な人が誰なのかを分かっていて
そしてその人が同じように私を大切に思ってくれているのはとても幸せなこと。
素直にならなくちゃ。
いつも強がってばかりじゃいけないよね。
そんな風に思った。
食事をしながら
「あのフィレンツェの駅で私がアナタに電話したこと、覚えてる?」
って聞いたら忘れてたけど。
もう3年も前のことだもんね。
「今回、東京に帰ってきてよかったよ」
とタロウが言った。
たくさんの悩み事を抱えていた彼は私といることで
それが吹っ切れたと言った。
ただ、一緒にいただけなのに。
離れていると分かりあえてるつもりでもそうじゃないときがある。
こうして顔を合わせることでちょっとのズレが
少しずつ小さくなり始めたのかもしれない。
* * * * * *
「デリーラ」
本当はもっと高貴な紫色の薔薇。 |