横浜に向う途中の月は満月に満たなくて
歪な形の褐色だった。
車の窓にはポツポツと雨の雫が降りてきて
時折私達の視界を遮った。
明かりの多いところから少し離れたレストランは
広いけれど遅い時間と雨のせいで空いていて
オーダーをとりにきた髭を生やした外国人の店員はにっこり微笑んだ。
海に近い窓際から外を眺めると
稲妻が反射してキラリと光った。
時も場所も越えてどこかへ迷い込んだ気分になった。
レンガでできた倉庫には暖かい黄色のライトが灯っていた。
雨が上がってデッキのうえを歩くと
暗くて見えない水溜りに何度も足を突っ込んで
彼に笑われた。
今年最初のサンダルはおかげで水浸しだったけれど
静かで暗くて深い海を見ていたらそんなことは忘れた。
* * * * * * *
朝は眩しい光で目を覚ましたけれど
気づかないふりでベットの上で小さくなっていた。
太陽は大きくて温かいから私達にはもったいないと思った。
大きな道路沿いにあるイタリアンレストランに入ると
窓から涼しい風が流れてきて食欲をそそった。
アスパラガスと半熟卵のアンティパスト、魚介のジェノベーゼ、
ドルチェとカプチーノ。
店の脇の急な階段を下りると小川が流れていて木々が太陽を隠していた。
道路を走る車の騒音も聞こえない。
近くて遠いところ。そんな感じ。
* * * * * *
これを何と呼ぶ?
それでも私の生活。 |