2002-08-09 「パブロフの犬」
2002-08-09 「独身男性に、夢と希望を」
2002-08-09 「あのときもあのときもあのときも」
2002-08-09 「様々な引き金」
2002-08-09 「私の心の奥のほう」
2002-08-08 「ちゃと君」
2002-08-08 「今度の休みには行ってみようと思う」
2002-08-02 「それは教えられないな（ふっふっふ）」
2002-07-30 「夏のおきて」
2002-07-25 「真夏の夜の、怖い話」

「すいませ〜ん取ってくださ〜い」

その言葉ともに転がってきたサッカーボールを
私は、少年のほうへ蹴り返してあげました。

もし、転がってきたのが野球のボールだったら
私はきっと手で取って投げ返していたことでしょう。

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「あ〜。会社に来てるほうが、楽だ」

ソファにどっかりと座るなり、そうぼやいたのは結婚4年目のTさん。

「だろ？家にいると、いろいろと五月蝿くてなぁ」

と、同意したのは結婚20年を迎えたIさん。

「せっかくの休みなんだから、ゆっくりしたいんですけどね」
「あいつら『休みなんだから、どっか連れていってよ』って言うだろ？」
「そうそう。向こうはず〜っと家にいて、毎日休みみたいなもんじゃないですか」
「そうだよなぁ」

あの〜。
一応「旦那さま」なんだからびしっと言ってみたらどうなんですか？
「休みたいんだから、休ませろ」って。

そう何の気なしに聞いてみたところ
二人は口をそろえて、なぜかあたりをはばかるように言いました。

「後が怖いから、言えねぇよ・・・」
「おっかなくて、言えっかぁ。んなこと・・・」

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助手席でオンナノコが寝ちゃうとさ『あぁ。このコはすっかり安心しているんだ』って思って、うれしくなっちゃうんだ。それで、そぉっと起こさないように。でも急いでオンナノコの門限に遅れないように、家まで送ってあげるのさ。

すると、そんな私の自慢げな話を聞いた彼女は
電話の向こうで深い深いため息をついて言いました。

「あのねぇ。それって『許可』がでてるんだってば。門限になんか間に合わせなくていいの」

えっ！？
そ、そうだったの？

あぁぁぁぁ・・・。
私はいったい幾つののチャンスを無駄にしてしまったんでしょう・・・。

「オンナノコはきっと怒ってたと思うよ・・・『ここまでしてあげてるのに！』って」

あうあうあう。
つ、次にそういう機会があったら、迷わずウインカーを右に出すことにします・・・。

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6年に及ぶ同棲生活を、彼と彼女はあっさり解消しました。

いや、彼のほうは未練たらたらだったのですが
彼女の方が、限界だったようです。

その日も朝から、いくら言っても直らない
彼の女ぐせの悪さについて言い争い、彼の
「もう二度としないから」という、いつもの謝罪の言葉で一応の決着を見ました。

涙でぐずぐずになった顔を洗うために、洗面所へ向かった彼女は
そこにあったものを見て「あぁ。やっぱり信じられない」と、
先ほどの許しを撤回したそうです。

「洗面台にね、何回も何回も『使った後にはちゃんとふたを閉めて！』って言っていた歯磨き粉が、やっぱりふたが閉まっていない状態で置いてあったの」

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満員電車の中で
「○○ちゃんの髪の毛は、いい香りがするね〜」
「うふふ。いやだぁ・・・」
なんてやってる2人とか。

氷川丸の先端で「立ち入り禁止」と書いてあるにもかかわらず
「タイタニックごっこ」をしてみたりする2人とか。

はい。

ばかっぷるですねぇ。
むかむかしますねぇ。
いらいらしますねぇ。

ぐーで左脇えぐりこむように打つか、目の前に正座させて小一時間説教したくなりますねぇ。

でも、ちょっと待ってください。
左手を胸に当てて、よく考えてみてください。

「もしかしたら、自分はああいう風にしたいのかも」

なんて思ったりしません？

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「しゃべり出したら、絶対きみにお小言言うよ『君には前々から言いたいことがあってなぁ』って」
「そしたら、神妙に正座して『うん。うん』って聞くわ」

人語を話す猫というのは、怖さのほうが先にくるはずなのに
彼女は逆に、なんだか熱望しているようにも見えました。

しかし、彼は彼女の願いをかなえることなく
先日、その居場所を彼女のひざの上から
神様のひざの上へと移すこととなりました。

以前ここに登場していただいた、オスの猫「ちゃと君」。

人間で言うなら１１０歳の大往生でした。

合掌。

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最近はすっかり縁遠くなってしまったので
今はどうなっているのかはわかりませんが
子供のころの私は、日本橋にある高島屋に行くのが楽しみでした。

いくらこましゃっくれたガキだったとはいえ
高島屋が誇る数々のハイソな物品ではなく
私の興味の対象は、そのフロアを結ぶエレベーター。

扉が格子になっていて、透けて見えるそのエレベーターは
メカニカルなものが大好きだった私のココロをがっちりわしづかみ。

その開閉スイッチは
今のエレベーターについているような安っぽいものではなく
がっしりとした、金色に輝くノブでした。

しかも、そのノブを白い手袋で覆われた
細い指で操りながらも
「本日もご利用くださいましてありがとうございます」
と、鈴が鳴るような声でアナウンスするのは
とても美人のお姉さんたち。

私の「嗜好」を決定付けた
あの日本橋高島屋は、今いったいどうなっているんでしょうか・・・。

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お客さんが不思議そうに言いました。

「コース管理の君たちの姿が見えなくなると、ほんとに数分で雷がくるんだよな。なにか探知機でも持って歩いてるの？」

私たちゴルフ場で働く人間にとって
雷に遭遇するということは、うっかりすると「死」に直結しかねない大問題。

それに、ある意味メシのタネでもあるんだし。

「いやぁ。まぁ、なんとなくわかるんですよ」

そう笑顔でお茶を濁して立ち去る私たちです。

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母が「今日は暑いから、お昼はそうめんにでもしましょうか」と言った場合。

一応「提案」の体裁を取ってはいるものの
それはほとんど「宣言」です。

試しに「え〜〜？またそうめん〜〜？」
って言ってごらんなさい。

ほかのメニューを提示せずに
「あら。じゃぁ、お昼ご飯食べないのね」
っていう答えが返ってくるはずです。

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彼が夜中に目覚めたのは、その晩未だ下がらぬ気温のせいばかりではありませんでした。

彼の左側から注がれる、じっとりと
それでいて、どこか食い入るような視線。

その視線の持つ「ただならぬ雰囲気」は
彼に、左側を向くことをためらわせませした。

しかし、いつまでもそうしているわけにもいかなかったので
恐怖を押さえつつ左側へと顔を向けた彼。
その彼の目に映ったのは、明かりもつけずに布団にぴたりと正座した
彼の糟糠の妻の姿でした。

視線の持ち主が、想像していたような
「あやかし」の類でなく、長年連れ添ってきた妻であったことに安堵して
彼が「いったいどうしたのか」と妻に訊ねようとしたその時。

彼の妻は、思いつめた表情を変えずに
低く押さえた声でぽつりと言いました。

「あなた。最近あたしが何を考えているか、知ってる・・・？」

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