午後からは雨になったりみぞれが降ったりしていたけれど
会社を出る頃にはやんでいた。
吐いた息は白く、当たり前なのにもう本当に冬なんだと思う。
老舗のレストランはとても家庭的な雰囲気だった。
私はワインリストを見ることも許されず、
彼はソムリエとなにやら相談をしていた。
「FRANCESCO RINALDI & FIGLI 1993」
とラベルに書かれたワインはグラスに注がれるとルビー色に輝いた。
本当においしかった。
アンティパストにはたくさんの料理が2台のワゴンに乗って
運ばれてきた。
負けず嫌いの私たちは同じものを選ばないように
目で合図を送りながら選ぶ。
結局お行儀悪いねと言いながら
お互いのものを少しずつ味見をしてしまうのだけれど。
魚介をたくさん煮込んだスープもおいしかったし
アンコウの肝を上品に焼いたメインも格別だった。
ドルチェもまたワゴン2台に乗っていた。
私はどうしても外せないプリンとクラッシックなチョコレートのケーキ
そしてあと一つはパンプキンを使ったケーキを選んだ。
彼はまた違うものを。
螺旋階段を上がりレストランを出るとさっきまでは人通りの多かったこの道も
静まりかえっていた。
そこから部屋までの道は歩いて10分。
ゆっくりゆっくり歩いて冬の夜の散歩を楽しんだ。
部屋に帰ると冷蔵庫で待っていた丸いクリスマスケーキを切った。
二人ともベットに座りおいしいと言って食べた。
彼は不意に私の手をとり自分の背中のほうに回した。
そのとき私が触れたものは小さな四角いものだった。
私は恐る恐るそれを見えるところに持ってくると
それは赤いリボンのかかった小さな白い箱だった。
クリスマスプレゼントはディナーだけにしようって言ったのに。
私が何をプレゼントしてもあなたはきっと困ると思うから
何もなしにしようねって言ったのに。
クリスマス、夢が叶ったお祝い、会社の卒業祝い
ピンクゴールドのペンダントにたくさんの思いを込めて。
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アネモネ「モナリザ」
開くと鮮やかな笑顔になる。 |