12月末で退職するひとつ上の先輩と私。
もともと仲もよかったし
有給消化のために休む日が偶然重なったこともあって
少しだけ噂になっていたらしい。
送別会の席でみんなの前に出て挨拶をするときがきた。
「本日は私たちのためにこのような会を開いていただいてありがとうございます。
○○さんと結婚するという話は残念ながら噂でして・・・」
本当は話したいことはもっと頭にあったのに
言葉よりも先に涙が出てきてしまった。
暖かくしてくれたみんなにちゃんとお礼を言いたかったのに。
涙の向こうにはあの人の姿も見えた。
しばらくして落ち着くと違う部署なのによくしてくださった常務が
「いつでも遊びにきてよ、娘みたいなものだから」とおっしゃってくださった。
するとまた涙がこぼれた。
学生の頃から私が通っていた南青山のバーに移動した。
偶然にもマスターと部長は同級生という間柄で
私が入社してからは会社の人とよく飲みに行った。
口ひげをたくわえたマスターは
いつものように私にシェリー酒の入ったカクテルを
みんなには水割りを作ってくれた。
何度目かの乾杯をして酔いも持続したまま。
いつもの光景。
これからもみんなで来たいな。
2時で店を出るとまた違う店に入った。
初めてのお店だったけれどそこのマスターも気さくで楽しい人だった。
カウンターにいたニューヨーク出身の男性も巻き込み
最後にはみんなでアメリカ国歌を歌った。
「僕は9月11日生まれなんだ」と彼は言った。
気がつけば5時。
部屋のドアの前に着く頃には淡いブルーの空から
オレンジの太陽が昇るところだった。
* * * * * *
「チューリップ」
窓のそばに置くと太陽に向かって
おはようって言うんだよ。 |