その子のやることはいたずらの域をこしていた。
友はいつも嘆いていた。
「私の手には負えない。」
「あなたにあげるわ。」
車で家族旅行をした数日後。
9月。その子は、踏み台を運んで高いところにかけてあった車の鍵をとって、家の玄関から出て、ロックを解除して、ドアを開けて、エンジンキーを差し込んで、ハンドル操作をして、向かいの家の駐車場まで車を動かして停めた。そして、何事もなかったかのようにすべてを元に戻しておいた。
10月。早起きして前の日に買った4人分のお菓子をすべて食べつくして、友や兄たちに酷く叱られたこともある。
11月の土曜日の朝。
その子はまっしろな家の壁にらくがきをしていた。
友は叱ろうとした。逃げた。隠れた。
上の兄たちを学校に送っていく時間がせまっている。
迷った。
幸い、2回の寝室には父親が寝ている。
結局、みつけだせないその子を置いて友は出かけた。
30分後。家に戻った友の目にうつったのは燃えている家だった。
「不審火」として片付けられた。
けれど、鎮火したあと、家の中に入った友にはすぐにわかったそうだ。
あるはずがない場所に踏み台が、置いてある。
その先には父親が隠してあったライター。
そういえば、数日前、トイレのタオルの先がほんの少しこげていた・・・。
その火事で2歳のその子は父親を連れていってしまった。
友の嘆きはいうまでもない。
「あんなこと、言わなければよかった。」
「酷く叱らなければ良かった。」
何度も、何度も聞かされた。
「いてくれるだけでよかったのに。」
だから、私は自分の子供が産まれたとき、「いてくれるだけで充分。」。
そう思うように努力しようと思った。
怒ったりイライラしたりする毎日だけど。
それでも。
そばにいてくれるだけで、しあわせなの。
そして明日、上のムスメがその子が超えられなかった3歳の誕生日を迎える。
世界中の人たちに感謝したいくらい、嬉しい。
※仰向けに転がしておいたのに、いつの間にかこっそりTV見てるし・・・。次はこの子が心配。 |