少し肌寒い秋の日曜日、
今日が私にとっての最終試合となった。
入社して野球部の存在を知ってすぐに
マネージャーをやると立候補した。
どうも物珍しかったらしく選手達は驚いていた。
試合に出るわけでもないのに見ていて何がおもしろいの?
休日まで会社の人と一緒だと息を抜く暇がないんじゃないの?
って会社の友達には言われることも多かったけど
私はチームを応援するのが楽しかったし
時には選手と同じように悔しい思いや嬉しい思いもしてきた。
当初はマネージャーとして特に期待をされていたわけでもなかった。
以前いた女の子達がそうであったように
女の子はたまに応援に来てくれればハナがあっていいよね、ぐらいの感覚で。
だけど、毎回顔を出してスコアの書き方を覚えて選手の世話をしている間に
だんだんと私もチームの一員なんだと感じるようになってきたし
選手も同じように思っていてくれたと思う。
日曜日の朝早く、眠いのをガマンしてグランドに出掛けるのも苦にならなかった。
一生懸命にプレーをするみんなの姿は私を勇気付けてくれたし
「いつもありがとう」と言って試合の後にご馳走してくれるご飯もおいしかった(笑)。
今日は大事な大事な試合だった。
残念ながら負けてしまったけれど。
試合後のミーティングで
私が会社を辞めることをみんなに告げた。
知っている選手もいたけれど、驚いた顔をした選手もいた。
「来年入ってくる新入社員の女の子、がんばって勧誘してくださいね」
と笑ってみたけれど上手くは笑えなくてちょっとだけ涙が出た。
「会社を辞めても野球には来てよね」って言ってくれたから。
青い空の下でみんなが真剣にプレーをする姿が
本当に大好きだったよ。
嬉しい気持ち、悔しい気持ちを感じることができた
みんなとのこの時間は私の宝もの。
本当にありがとう。
* * * * * *
ゲームセット。
アンパイアの声は広い空に遠く響いていた。 |