昼間、うるさいのが出かけてくれたので、何気なく新聞を広げた。
Oさんの訃報が目に飛び込んできた。
最後にお会いしたのはいつだっただろう。10年近く前になるのか・・・。
デパートでケーキを眺めていたとき、背中をぽんっと叩かれて振り向くと、ニコニコ照れくさそうに笑ってらっしゃるOさんがいた。後ろには再婚された奥様。
どんな会話をしたのかは忘れてしまったけれど、一介の営業マンだった私のことを覚えていて下さったことに感激したのは忘れられない。
とても厳しいかただったと聞く。
そして優しい方だった。
Oさんが載っている雑誌はできるだけ目を通してきた。ファン。と言ってしまうにはあまりにも偉大な方だったけど・・・。そんな感覚。
一度だけ、営業の帰りにバッタリあって「乗ってく?」とお誘いいただき、社用車の後部座席でふたりっきりになったことがある。
新入社員に毛の生えたような私にも、こだわりなく話しかけるようなリベラルな方だったのだけど、あまりにも会話が飛躍するのでついていけなかった。今、思い出しても情けないくらいのとんちんかんな応答をしてしまった。Oさんのおっしゃっていることが理解できたのは数日後だった。
あんなに器が大きくて頭の回転が速い方には出会ったことはなかった。
私が生きてきて「この人にはかなわない。」と敬服させられた3人の男性の中のひとりであることは今も変わりない。
合掌。 |