いろいろ気をつけていたつもりなのに、あっけなく風邪をひいた。
ゆっくり休めないためにずるずると完治せず、未だに予防接種にも行けていない。
困ったわねえ…と言いつつ、友人に連れられて、パリを脱出していたりして。
そういうわけで、ただいま、とある地方のとある村、14世紀中頃に建築されたという城に滞在している(正確には、現在の形になったのが14世紀)。
城といっても、個人が所有できる程度のこぢんまりとしたものなのだけど、中世の城好きにはたまらない。
ちゃんと地下牢とか、武器庫とか、拷問室とか、処刑室とかもあるんだもの。
観光用に公開されている場合,照明やら解説やら注意書きやらロープやらコードやらで興醒めしてしまうけれど、この城には、当たり前だけど、そんな無粋なものは一切ない!
なんて素敵なの……。
もちろん、居住空間には現代の生活が反映されているので、なんとも不思議な感じも。
堅牢な石造りの壁にはやはり中世のタペストリが掛けられているというのに、その前にはテレビがあったりするのだから。
寝室には、内線が引いてあるし。
浴室も、バスタブこそそれ風であるものの、お湯がちゃんと出た。
寝台はオークのゴシック風のもの。
これはさすがにレプリカ、といっても19世紀初頭の作だとか。
ベッドと言えば、今回、初めて、天蓋の幕の必要性を理解した気がする。
自分の感覚として。
この、暖炉を燃しても燃してもどこか冷え冷えとした寝室の中で、幕を降ろした天蓋の内側だけが暖かい。
就寝時には暖炉の火は落としてしまうのだが、眠りにつくまで幕の内部はぽかぽかと暖かいまま。温石のようなものを入れてるだけなのに。
明け方、暖炉に日を入れる時間より先に目が覚めてしまうと、もう冷え切っていて涙目になるけど。
今年の夏でさえ、それなりにしか気温が上がらなかったそうなので、次回は是非、夏に滞在させていただきたいものだ。
ともかくは、隠居するに当たってこの城を購入した友人の祖父上に、乾杯。
明日にはパリに戻らなきゃいけないなんて、本当にがっかり……。
朝の光り。 |