母から、浮かれきったメイルが届いた。
彼女はある問題を、もう、10年以上抱えている。
これは母だけの問題でなく、祖母や伯母、そして、いずれわたし自身にも波及する難題である。
娘の眼から見ても、母は若い。
実年齢も十分若いのだけど、外見はそれ以上。
肌はハリがあってつやつやしていて、童顔なこともあって、欧米にいると、わたしより男性から声がかかるほど(さすがに日本ではない…今のところ)。
ただ、首筋に皺が出やすい。
どうやら遺伝らしいけど、他には皺なんてないのに、首筋にだけできるのは何故なのか?
この問題の解決は、外科手術を施す以外ないかと思われていた。
ところが、それが解決したらしい。
それも、最新のエステでもコスメでもない、17世紀初めから続く薬局で作られているネック・クリームによって。
フィレンツェにあるその薬局は、今も伝統を守りながら、昔ながらの香水、ヘア&ボディケア用品、石鹸の生産や薬草の調合を行っている。
小さいながらも美しいホールはまるで博物館のようで、フレスコ画や調度品、古い調剤器具で飾られている。
ホールに入って正面にあるカウンターで欲しいものを告げると、壁一面のガラスの戸棚から、ひとつずつ出してくれる。
その時、ネック・クリームは、特別買う予定ではなかった。
適当に戸棚を眺めていたらそれがあったので、「効果があるとは思えないけれどね」といいながら、パッケージに惹かれて購入した。
いつものポプリや石鹸、香水を頼むついでに。
それが、効果があったとは。
まったく期待しないでいてごめんなさい、だ。
そして母は、すっかりメディチ一族?に心酔してしまった。
"Rosa"
ACQUA DI COLONIA
G.UGO STEFANI S.M.NOVELLA |