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Hideyの「蛍の光の下で」

帰国に伴い長い間ご愛読いただいたこの日記を終了させていただきます。
もうこのサイトに文章を綴ることはありませんが
もしこの先もおつきあいいただけるようであれば
メールをいただければ幸甚です。
皆様、本当にありがとうございました。お元気で。

絵日記

目次 (総目次)   [次の10件を表示]   表紙

2002-12-24 Pokemon -Japanese Invasion- 2
2002-12-24 Pokemon -Japanese Invasion- 1
2002-12-17 二年生秋学期終了 3
2002-12-17 二年生秋学期終了 2
2002-12-17 二年生秋学期終了 1
2002-12-13 友人たちとの時間 2
2002-11-23 友人たちとの時間 1
2002-11-15 つかの間の帰国
2002-11-08 デジタル・エンジェル 3
2002-11-08 デジタル・エンジェル 2


2002-12-24 Pokemon -Japanese Invasion- 2

そして伝説は誕生した。1998年9月に放映を開始したアニメの「Pokemon」は2〜11歳の子供の視聴率ランキングにおいて14週連続ナンバー1になり、同じ月に発売されたゲームソフト「Red」と「Blue」の売上は1999年末には1350万本に達し、過去の記録をすべて塗り替えた。カードの売上は400万枚にのぼり、手に入りにくいカードはブラック・マーケットで100〜400ドルで取引された。寝ても覚めてもポケモンのことしか話さない子供たちに不安を抱いた大人や学校は、学期中のカード遊びを禁止するほどであった。映画「Pokemon: The First Movie」の封切りの週の興行収入はいきなりタイタニックが樹立した記録を上回った。たった3年間で全世界累計70億ドルに達したポケモン関連のグッズの売上は、1959年から発売されたバービー、1977年からのスターウォーズ関連グッズの累積売上に次ぐ第三位にまで至った。

この授業の本質は、一時的流行に過ぎない「fad」と呼ばれる現象がどのようにして社会的に市民権を得る段階である「franchise」と呼ばれるステージに進みうるか、さらに一定不変の素材が定期的な衣替えを繰り返しそれが文化として受容される「platform」という次元に格上げされるには何が必要かを学ぶことであった。教授は「fad」、「franchise」という最初のふたつのステージに達するための必要条件として、「パッションの創出」、「伝播の促進」、「離脱者の回避」を挙げた。

消費者があるブランドにパッションを感じるためには、ブランドはその消費者を「自分は特別である」または「特別なグループに属している」と思わせる必要がある。常に大人によって与えられるばかりで、大人のつくった社会という体系の末端にしか位置していなかった子供たちに対し、ポケモンは、大人には容易に理解できない子供たち独自の規則性やコミュニティ性を付与した。親が知らないもしくは立ち入れない小さな世界を彼らは初めて手にしたのだ。子供たちは大人ですら悩んでしまうほど複雑多岐な情報を迅速に処理し、その世界を泳ぐ術を身につけた。子供たちは大人を排除した「特権的クラブ」に属し、同様に子供たち自身もポケモンのカードやゲームを手にしなければそのクラブには入れなかった。こうしてポケモンは子供たちのパッションを創造し、まずは「fad」になり得たのだ。

子供の頃僕は近所の森で友達と一緒に大きなほら穴を見つけたことがあった。現実の家と比べればはるかに小さくて薄暗かったけれど、そこは僕たちだけの別世界だった。そんなところに住めるわけもないのに家からマンガ本やその他自分が大切にしていたおもちゃを持ち運び、現実の生活とは別の生活を創ろうとした。子供にも自分たちが統治する別の現実が与えられるとき、それは彼らを夢中にするのだ。

ポケモンの独自の世界観や特権性は現代の日本においてさらにその効果を増幅したのではないかと、自分なりの考察を書いたメールを授業の後で教授に送った。受験戦争、いじめなど特有の社会的プレッシャーのもと、日本の子供たちはアメリカ人以上に早い段階から大人のつくった社会体系に属し、競争することを強いられている。必然的な現実逃避の行き先が、ポケモンに代表される非大人的でバーチャルな世界なのだ。その小さな世界の中には数百のモンスターという構成員がいて、彼らの間にはヒエラルキーも存在した。そしてこうした非現実を通じて、現実の世界で互いに絆を失った子供たちは再び結ばれ、ある種異質な友情を育むことができるのだ。そして時としてそこには病的な要素も含まれる。

(つづく)

先頭 表紙

2002-12-24 Pokemon -Japanese Invasion- 1

1999年11月、出張でニューヨークを訪れた僕は五番街で信じられない光景を目にした。ポケモンのキャラクター、ピカチュウが巨大なビルの壁一面を飾り、マンハッタンを見下ろしていた。場ちがいとかそんなことは通り越して僕は一種の感慨をもってその光景を眺めた。それがポケモンのアメリカにおけるテレビ放映権、映画化権を取得したワーナーブラザーズのショップの入ったビルだということは入ってみて初めて分かった。ポケモン絡みの人形や衣類、カードやゲームが溢れ、子供に手を引かれた親たちがフロア中に充ちていた。Japanese invasionという言葉が去来した。

もう三ヶ月ほど前のことになるが、Consumer Marketingの授業でポケモンのケースを取り上げた。ソニーのAIBOにつづくふたつ目の日系ブランドのケースである。

1996年2月に任天堂によって発売されたゲームボーイ用ソフトの「赤」と「緑」がその年末には合計1000万本以上の売上を記録し、10月に発売されたトレーディングカードも好調に推移していると聞き、Nintendo of America(NOA)はアメリカでの商品化を検討しはじめた。数万本の売上でもヒットと呼ばれるゲーム業界で当初の目標の10〜20万本をはるかに上回る驚異的な数字に促された形だった。しかし関係者の間には強い懐疑心があった。単純明快を旨とするアメリカのおもちゃ業界でこれほど高度で複雑なゲームが受け入れられるのか。子供たちは文章を読み込む必要があり、計算や論理的思考が求められ、ゲームのコンセプトは知的で幻想的だった。そしてアメリカの子供たちが常に求めていたスピードや鮮やかなグラフィクスが欠けていた。迫力ある音もなければ暴力的要素もなかった。

しかし日本を訪れるたびにポケモンブームがさらに勢いを増し、これまでのあらゆるブームを凌駕するさまを見て、NOA関係者は「日本とアメリカで子供はそんなに違うものか?」と自問するようになった。決定打となったのが1997年11月に任天堂が開催した「スペース・ワールド・ショー」だった。幻のモンスター「ミュウ」をダウンロードするために何千もの日本の子供たちが列をつくっている姿を見て彼らのひとりはつぶやいた。「もう否定するわけにはいかない。これ以上様子を見守るにはポケモンは既にあまりにも大きすぎる。これはアメリカでも必然的に起こるべきことなのだ」

とは言えポケモンの「翻訳」作業は緻密な戦略性を要した。NOAは英語でも意味をなすべくモンスターの名称を巧みに意訳する一方、全体の三分の一程度のモンスターは「クールで日本的な趣のある」元の名称をそのまま採用した。日本でのキャッチフレーズ「ポケモンゲットだぜ」に対応する「Gotta Catch’Em All」というフレーズを開発しコレクション性を強調した。キャラクター同士の関係性やポケモンの世界観を描くために日本で製作されたアニメを放映することは絶対条件だった。しかし台詞をそのまま訳すことは文化的に意味をなさないため、ほとんどすべてをリライトする必要があった。

(つづく)

先頭 表紙

2002-12-17 二年生秋学期終了 3

Business Marketingは通常の試験形式だった。この授業はBtoBマーケティングを学ぶ授業であり、内容的には極めて心躍らない商品に関するケースばかりであった。スウェーデンのエレベーター・メーカーのマーケティングとか、木材などを束ねるためのスティール性の素材のマーケティングとか。とても簡略化した言い方をすれば、自社の優位性に合った正しい市場を選び、正しいターゲットをセグメントし、それに照らして正しい商品を開発して売るために、正しい価格政策と正しいマーケティング戦術を、正しいディシジョンメーカーにぶつけるという整合性を学ぶ授業である。しかし後から痛感したのだが、うちの会社は偉そうにクライアントにマーケティングを語っておきながら、顧客管理を含めた自らのBtoBマーケティングができていないというのが現状だ。社全体としてのビジネスの効率を考えるためにももう少し我慢して真剣に授業に臨めばよかったと反省している。

試験の内容を簡単に書くと、製薬会社の販売代行員用の顧客管理ソフトを開発する企業が、アメリカ・ヨーロッパ・日本という性格・状況の異なる市場に合わせて現在の販売政策をどのように改めるか、また販売に関わる複数の職種が存在するが、現在の作業内容・クライアント社内各部署の思惑・今後のビジネスチャンスといった要素を擦り合わせるとどのような新しい作業体制が望ましいかを提言するというものだった。書き出すとあまりに複雑怪奇なので書かない。

そして最後にManagement in Perspectiveという授業の自宅での試験。これは楽勝だった。もともと楽勝科目ということでひとつくらいは息を抜きたくて取った授業なのだ。うちの学校を卒業して現在経営者となった人たちをゲストスピーカーとして招き、ただただ2時間質疑応答を続けるという授業。試験は5つの質問から3つを選び、合計1000ワード以内で回答するというもの。僕が選んだのは、我々は仕事、家庭生活、趣味などすべての興味を追い求めることができるか、若い経営者が自分より年長の役員、パートナー、投資家などと仕事を進めるときに大切な要素は何か、複数の企業が合併するとき異なる企業文化をどのように扱うべきか、という3問であった。これも解答は割愛。

一年生のときと違って論文がかなりの部分を占めたことにより、ネイティブと同じ条件で短時間にかなりの英文を読み数千ワードに登る回答を書くという試験による消化不良が少なくて済み、とても充実した解答になった。これで駄目なら諦めもつく。

ということで待ちに待った一ヶ月の冬休み。クリスマスはメイン州のかつてのホストペアレンツたちと祝い、その後正月にかけてオレゴンに留学中の妻の従妹が台湾人の友達とともにうちに遊びに来て、正月開けには僕はシチリアへ一人旅に出かける。予定もすべきこともたくさんあるけれど、できるだけ面白かった授業などを振り返り、日記をアップしたい。

先頭 表紙

わかな!ごめん。つっこみ返すの忘れてました。もうとっくにNYだよね。早くて料理を食べさせてあげたいのになかなか機会がないね。こちらも休みに入ってからすぐにお客様とか色々あって忙しくなってしまいました。ボストンにはいつ帰るのかな?年始にでもぜひ何とか実現したいですね。 / Hidey ( 2002-12-27 00:14 )
りぃなさん、お疲れ様でした。ご無事で安心しました。NYはどうだったかな?また改めて例の件は日記に書かせていただきます。とりあえずゆっくり休んでくださいね。メリークリスマス! / Hidey ( 2002-12-24 18:03 )
マイケルさん、僕は出張で二度バルセロナに行きました。港のそばで「バルセロナの夜」、たっぷり堪能してきましたよ。唯一の難点はオリーブオイルがちょっと濃いということかな。3日いると胃が辛くなります。やはりイタリアのほうがあってるみたい。 / Hidey ( 2002-12-24 18:02 )
あややん、同じだね。僕はレンタカーで、気に入った村があればそこに泊まるという感じ。最悪車でも寝られるし(?)。だからホテルもひとつも予約していません。また色々報告するね。 / Hidey ( 2002-12-24 17:59 )
しゃどうさんはお休みはもっと少ないのでしょうか?ほんとにもうすぐ卒業。そんな気持ちで街を見ているととても悲しくなります。とにかく充実させないと。 / Hidey ( 2002-12-24 17:57 )
whitecatさん、いらっしゃいませ。お久しぶり。長い休みな分きちんと充実させて、皆様にもいいご報告をしたいと思います。 / Hidey ( 2002-12-24 17:56 )
Ecruさん、ありがとうございます。すでに気楽に遊んでいる、と言いたいところですが、なんだかんだでやること一杯。今も朝4:00です。 / Hidey ( 2002-12-24 17:54 )
夢樂堂さん、でもこれからの社会ではきっと必要なことになるでしょうね。日本の文化とはなかなか相容れないので副作用も大きいでしょうけど、正しい経営には不可避なんでしょうね。 / Hidey ( 2002-12-24 17:53 )
azzurriさん、続きです。企業文化とは企業の求める価値観と、その価値を達成する方法論、その両方においてどれほど社内的な合意があるかによって定義されます。複数の企業が合併するということはそれらの合意がなくなるということ。再び合意に達するためには、価値観については違う価値観の人間をやめさせたりまたは敢えて部署などを分割することで同じ価値観の人間を集めるしかありません。方法論についてはトップの指示した方法論が成功体験を重ねることによって合意を得ることが可能になります。 / Hidey ( 2002-12-24 17:52 )
azzurriさん、簡単に書きましょう。すべての興味ということについては、生産管理においてAPPという、限られたりソースを計画的に配分する方法論があるのですが、それを応用すべきと書きました。優先順位をつけて計画的にことをなすべきと。若い経営者については、絶対的な才能をもっていなければならないこと。その才能とは、theoreticalなマネジメント能力、絶対的な技術的expertise、またはvisionaryという三種類。それぞれにおいて必要な組織の形態、人材の種類がことなるということ。 / Hidey ( 2002-12-24 17:47 )
ライラックさん、シチリア旅行は全然かっこよくないんですよ。妻の友達がその時期家に来ることもあって半ば追い出されるようなものなのです。シチリアは以前も書いたことがあるのですが僕がイタリア人になりたいと心に決めた場所です。でも訪れるのは12年ぶり。グレートブルー、味わい尽くしてきます。 / Hidey ( 2002-12-24 17:40 )
つっこみ途中で失礼します。無事に帰国しましたことを、お知らせします。家に着いたら、またメールしますね。本当にありがとうございました。 / 今母が来ました、のりぃな@関空 ( 2002-12-24 17:39 )
しゃむさん、はい、ファイナルです。論文は充実する分相当疲れました。試験だと受けている間の4、5時間は辛いけどあっという間に過ぎていくし、大概オープン・ブックなのでほとんど試験勉強はしないし。そう、あと実質4ヶ月学校に通ったら卒業なのです!こわいこわい。やるべきことをちゃんとやっておかないと。 / Hidey ( 2002-12-24 17:37 )
akemiさん、ひとり旅、ゆっくり楽しむと同時にイタリア人化計画の一環ですから、さらに歩を進めないとね(笑)。義理のお母様がそのように郷愁を感じさせてくれるというのは幸せなことですね。akemiさんこそ一年分の疲れを少し癒してきてください。 / Hidey ( 2002-12-24 17:34 )
こちらは半年後のアンダルシア旅行計画に命賭けてます。Hideyさんはスペインに行かれたことは? / マイケル ( 2002-12-23 06:25 )
お疲れ様でした!しばし魂の休息ですね。シチリア、私も一人旅しました。「ここの景色が気に入ったから」と電車を降りたりする無計画な旅だったけど、一生忘れられない。北の方で食べるのとは全然違うアランチーニを是非。 / あやや ( 2002-12-22 11:12 )
私も今日やっと終わりました・・・!嬉しい! / わかな ( 2002-12-19 14:41 )
いいなぁ、一ヶ月も冬休み〜。って、羨ましがっててもしょうがないか。今までの分も含めて、たくさん楽しんで下さいな。とうとう、三学期目も終ってしまいましたね。あと、もう少しで卒業ですね。なんだか感慨深いです。 / しゃどう ( 2002-12-18 18:02 )
ランダムジャンプで来ました。あっ、お久しぶりです。(笑) 試験が終ったのですね。お疲れさまでした。 1ヶ月の冬休みか・・・。いいな〜&懐かしい。(遠い目) 体に気を付けて、休みを楽しんで下さい。 / whitecat ( 2002-12-18 00:34 )
お疲れさまでした。やるべきことをなした後の休暇、きっと晴れ晴れとしたお気持ちと思います。どうぞ楽しい休暇をお過ごし下さいね。 / Ecru ( 2002-12-17 23:18 )
この前のノーベル賞の記者会見で、田中さんに『先輩たちに対するアドバイスは?』という質問が出ていました。リスペクトもしながら何か口を挟まなければならない状態、やはり遠慮してしまいそうだ。 / 夢樂堂 ( 2002-12-17 16:59 )
Hidey様が解答を割愛された内容にも興味津々ですが、さまざまな国の人とディスカッションをしながら、ひとつのものを作り上げていく事や興味深い授業内容、そこへ行き着くまでも大変ですが、その後も本当に大変なんですね。それでも学んだ事は公私共に自分自身にかなりのプラスになりそう、、、とにもかくにも疲れ様でした!シチリア旅日記も楽しみにしています♪ / azzurri ( 2002-12-17 13:24 )
して、やはり最後は地域密着型ですか(笑)。それにしても最後のシチリア一人旅のオチまで・・本当にどこまでもカッコいいんだから・・・(笑)。シチリア・・・グレートブルーの世界に憧れる私にはまたしても涙が出そうなほど羨ましいですよ!!頑張った者だけが勝ち得るとっておきのリゾートタイムですね。そこらヘンが普通の旅行者とは違うところ。う〜ん、すごい! / ライラック ( 2002-12-17 09:14 )
ファイナル(というのかな?)お疲れ様でした。楽しみがたくさん待っていますね。来年になるともうすぐ卒業という気がしませんか?あっという間ですね。 / しゃむ ( 2002-12-17 02:51 )
ひとり旅〜〜〜♪素敵ですね。たくさん楽しんできてくださいね。難しい試験を終えたんですからのんびりと。^^ お正月はあたしも楽しみ。2年ぶりの里帰り・・ってあたしの里じゃないんですけど。。。田舎の山々はそこに育ったわけでないあたしにも郷愁を感じさせてくれるのです。4人の父母のうちもう群馬のかあちゃん、しかいないのだし。 / akemi ( 2002-12-17 01:00 )

2002-12-17 二年生秋学期終了 2

Consumer Marketingは教授がざっくばらんな人で、ペーパーはきちんと纏まっていれば3ページ程で構わない、その時間をむしろ課題の検討に充ててほしいとのことだった。メキシコ人のRodrigo、Javierと三人で提出したペーパーは実に50枚近く。教授とは事前に話し、このテーマなら細かくなっても仕方がないという了解の上でのことだった。

広告をするにあたり、商品の属性、市場環境、ターゲット、マーケティング課題といった与件から、どんなメディアをどのように使えばよいかを引き出す「方程式」をつくるというのが二人のパートナーが設定したテーマだった。コンピューターを使って定量的にメディアの最適化を行う「オプティマイザー」と呼ばれるシステムと、それがカバーできない定性的な分析を交えて理想的なメディア・プランを構築するという方法論を探った。しかし正直なところプロとして言わせてもらえば「方程式」など存在せず、個々の与件から「傾向」は引き出せても「正解」は引き出せないものなのだ。というのはあまりにも与件はケースバイケースであり、それに応じてメディアの使い勝手も変わり、予想もしなかったメディアを創造的に活用することでとんでもない効果を生み出したりできるものなのだ。だから方程式のもとになる媒体特性の正しい洞察、経験的成功例などを詰め込んだ人間の頭脳という「ブラックボックス」こそが創造的メディアプランの源になり、そのプランを定量分析ツールであるオプティマイザーと照合して補正するというのが常道である。

しかしよくも悪くもMBA的分析というのは便宜的にすっぱり結論を導くツールをいかに効率的に活用するかというのがその大きな特徴である。極めてアメリカ的な合理主義で、時間をかけず近似値を求めるという意味においては優れた方法論である。それがアメリカ的ビジネスの成功要因でもあり詰めの甘さでもある。いずれにせよ二人のパートナーは広告については素人ながらMBA的思考そのままのアプローチをしようとしていた。文化的な相違を噛みしめながら、まあ無謀ではあるが個人的・文化的テーマとして取り組んでみるのも面白いし、プレゼンテーションとしても「方程式」があった方が見栄えもいいだろうなとも思い、パートナー達と激論を重ねながら辛抱強く理想と現実のギャップをできるだけ埋めてみた。その結果が妥協を許さない50ページとなったのだ。しかし何より素晴らしい二人の仲間と一ヶ月以上にわたり議論を繰り返し、ペーパーとは関係ない四方山話をし、Rodrigoの家にも遊びに行けたのは嬉しかった。

ペーパー提出の前日には、ペーパーの概要をクラス全員の前でプレゼンテーションすることになっていた。各グループ5分という制約もあったので、「方程式」は概念だけを程々に紹介し、実際に「方程式」に合致した過去の成功事例をいくつか見せた。アメリカの過去の事例はなかなか入手できないし僕も知識がないので、日本から僕の知っている事例をFedExで送ってもらった。96年に日本ビクターがオンエアして一斉を風靡した「No, that’s video!」と言ってペンギンが踊りだすポケット・ムービーのCMを見せ、「動き」という属性をもつ商品を最大限効果的に見せられるのはテレビであるという例を示した。また雑誌「MORE」における資生堂のリップスティックのサンプリング広告を見せて、テスティングが不可欠なリップスティックの商品特性と加工性のある「紙素材」という雑誌のメディア特性には、これ以上ない合致があることを説明した。まあ当たり前のことばかりだが、確かにこれらはオプティマイザーにはうまく反映されないことなのだ。

(つづく)

先頭 表紙

Ecruさん、そうですね、多体問題という側面もありますね。概して広告の仕事は複雑系ですから。そんなとき人間の頭ってバカにできません。うまいことバランスが取れてるし。でも勘だけでは駄目駄目なので、限定的にでも因果関係がきちんとわかる定量ツールを併用して補正してやることが重要です。 / Hidey ( 2002-12-24 17:31 )
ガス欠コインさん、ビクターのあれですが、はじめソニーかと思っていて探すのに苦労をしてしまいました。企画プロダクションで優秀なところになると一時期同業種4社が集中したとかで、それこそ戦略を扱う話なのに大変危険ですね。でも機密さえ守られれば同じ業種を多角的に扱うことでより深い知識が蓄積できるし、クライアントもそれを活用できるのですけど。節度のあるナレッジマネジメントが求められていると思います。 / Hidey ( 2002-12-24 17:28 )
ライラックさん、現実においてもアメリカの広告代理店のメディアプランのやり方は限定的な状況を区切ってその中での最大効果を割り出しているようです。日本の代理店はより包括的な効果を求めるので、非科学的な領域が残っても、その分より高い次元で効果を考えたプランだったりします。議論は一つひとつ例示をしなくてはいけないので大変でしたが、それなりに楽しめました。 / Hidey ( 2002-12-24 17:24 )
多体問題になるわけですものね、いろいろ分析はできても、解を求めるのは難しそうですね。あのビクターCMは、とても印象に残っています。 / Ecru ( 2002-12-17 23:16 )
なるほど、ビクターのあれを例に出しましたか。確かに、印象に残るTV-CFですね。僕自身も、もはやあぐらをかいて、仕事の受注を待ってコピーを書くという立場ではなくなりつつあるので、大変参考になります。僕が以前いた会社は、クライアントが株主になっている特性上、一業種一社を貫いていましたが、フリーランスになってから、特にカメラマンは、一業種五社ぐらいの奴もいますね(笑)。でも確かに、この世界、明確な方程式は存在し得ないと思います。 / ガス欠コイン ( 2002-12-17 14:18 )
そうなんですか、やっぱり一見、効率的に見えるアメリカ的合理主義のメディアプランだけでは必ずしも正確な市場は狙えないっていうことなのですね。そう言った意味では様々な国から集まった学生さんと成功した過去の事例をあげながら辛抱強く激論を交わすというのはお互いに刺激的で面白そうですね!実際は相当大変なんでしょうけれど、こうして後で読ませて頂くとカッコいいな〜、Hideyさんて! / ライラック ( 2002-12-17 09:08 )

2002-12-17 二年生秋学期終了 1

一昨日の午前にテイク・ホーム形式(自宅受験)のManagement in Perspectiveの試験が終わりようやく二年生の秋学期が終わった。冬休みもたくさんやることがあるけれどとりあえず一息。恒例で純粋に自分の記録のため試験の内容を軽く振り返ってみたい。

Globalization and Strategyでは前にも書いたようにうちの会社の国際化について15ページのペーパー(論文)を書いた。日本で調査したりネットからプリントした1000枚にも及ぶ膨大な資料が片付ける間もなく部屋中に散乱した。社は海外のメガ・エージェンシー来襲から日本広告市場を守り、同時に国内クライアントの国際化に伴いグローバル・ネットワークを拡充する必要があった。そこでこのたびようやく纏まったフランスのエージェンシー・グループとの提携をいかに活用するかが問われていた。

グローバル企業のブランド・マネジメントにおいては、ひとつの代理店が世界共通で行うべきという「グローバル・アカウント」という概念、また例えばコカ・コーラの広告作業を請け負っている代理店はペプシの仕事ができないという一業種一社制度が、広告業界のグローバル・ルールである。これに対して日本だけは歴史的な経緯もあり、例外が適用されているほとんど唯一の市場となっている。こうしたグローバル・ルール、ローカル・ルールの「ねじれ」をうまく利用していかに長期的な利益構造を確立するか、そのために今回の提携をどう戦略的に使うか、ということについて書いた。これ以上の話は差し控える。

Building a Sustainably Successful Enterpriseを担当する二人の教授のうちの一人はClayton Christensenという、企業のイノベーションをテーマにしたジェネラル・マネジメントの権威として世界的に有名な教授である。そして以前にも書いたとおり僕が教わったのは彼ではない方の教授だった。この教授はとても柔和でいい人なのだけれどどこか粘着質的なところがあり、それ程注目されているわけではない自分の研究テーマにこだわって授業をするところがあった。まあ教授というものは皆そうなのかもしれないけれど。彼が来年の3月に出版する「Open Innovation」という著作は、企業がイノベーションを生み出すソースとしてのR&Dは自社内に存在する必要はなく、むしろ社外のリソースを活用することも含めた柔軟なビジネスモデルこそが成功の鍵だという、まあもっともなご説である。

期末が近くなってくると、ペーパーの参考にしてくれと出版前の原稿をせっせと我々に配っていたので、これは余程それに絡めて書いてほしいのに違いないと思い、姑息にも彼の論理に則ったうちの会社のビジネスのあり方、課題解決の方法論を書いた。でも実のところ広告ビジネス、とりわけうちの会社のビジネスモデルは「Open Innovation」の権化のようなものであり、社内的なリソースなどクリエーティブやマーケティング戦略くらいで、あとはほとんどすべて社外が頼りなのだ。授業ではR&Dということでハイテク系のメーカーの話に終始していたので、広告の世界に彼の理論を当てはめ、うちの会社の社外リソース統合型ビジネスモデルがいかに従来的・国際的な広告ビジネスモデルより優れているかを論じた。うちの会社の「Open Innovation」の前提条件はいわゆる「規模の経済」と「範囲の経済」なのだが、つい数週間前に発表されたばかりのライバル企業の経営統合により、これらの優位性は崩壊する可能性が出てきた。そんな中、さらにうちの会社が「Open Innovation」を有機的に活用し持続的優位性を保つための戦略を提示した。これも詳述することは避けたい。

(つづく)

先頭 表紙

ライラックさん、きちんと読んでくださってありがとうございます。日本でグローバル・アカウントが通用しないのは一応日本の代理店が巧みに媒体との関係づくりをしてきたことと、戦略に沿って広告を作ってメディアに乗せるだけでなくあらゆるマーケティング要素を統合した形のサービスをクライアントに提供してきたことからです。一応努力の賜物。でも下位の国内代理店が外資代理店グループと提携することによってこれまでの障壁がなくなる可能性が出てきています。 / Hidey ( 2002-12-24 17:21 )
今までMBAの全貌って全然わからなかったけど(勿論、その為の基礎知識も何もない訳ですけれど(笑))Hideyさんの日記に触れてとても興味深く読み入ってしまいました。日本がグローバル・アカウントが唯一通用しない国でありながら、それが代理店業界でなんとかまかり通っているのはそれだけ市場のチャンスも大きいからなんでしょうね。だからと言って広告業界はそれにあぐらをかいている訳にもいかないんですね・・・。具体的戦略を書けないのは当然でしょうけれど、Hideyさんの提言も興味あります!(笑) / ライラック ( 2002-12-17 08:39 )

2002-12-13 友人たちとの時間 2

前回の日記と似たような書き出しだが、二年生になって各自のカリキュラムがバラバラになってからは、朝の授業の一時間半前に12人でスタディ・グループを組んで意見を交換し、その日の授業に備えるといったことが物理的に不可能になった。それでも半年以上も毎朝膝をつき合わせた仲なので、たまにはスタディ・グループの同窓会をしようという話が持ち上がる。先週はそんなわけで12人のうち6人がフレンチ=モロッコ・レストランに集まった。集まったのはエジプト人、ペルー人、ブラジル人の男性とアメリカ人の女性、そして僕を含む二人の日本人男性だった。

モロッコ料理なんてさすがに食べたことがなかったが、地理的にもまあまあ近いエジプト出身のRamiが仕切ってくれた。と言いつつメニューを見てちょっと美味しそうだった、生マグロと数種の野菜をみじんにしてきれいに固めタルタルをかけた前菜、レモンがたっぷりかかったサーモン・ステーキを勝手に頼んで大正解。ボストンにはインド、タイ、ベトナム、メキシコなどのエスニックはとても美味しい店があるのだが、いわゆる西洋料理は壊滅的。リストにまたモロッコという国が加わってしまった。今度は妻を連れていってあげよう。

授業のはじめに教授がひとりの学生を槍玉に挙げて5分間ほど叩き台となる意見を述べさせる、いわゆるcold callを喰らって死にそうになった話が出たかと思えば、印象派絵画の成り立ち、ペルーの文学などに話題が移ったりする。ペルー人のナイスガイMartinは文学をこよなく愛し、自身も細々とだけれど詩作を続けていたりする。翌日が彼の誕生日だったのでみんなで乾杯をしたが、近いうちに、英訳本が出版されている数少ない作家である村上春樹の小説のペーパーバックでもプレゼントしてあげようと思っている。

ところで食事の最中にRamiがhookah(フーカーと発音)を試してみるか、とみんなに聞き始めた。はじめは何のことだかさっぱり分からなかったのだが、聞いてみるとモロッコやエジプトの伝統的な煙草だとのことだった。なんだか儀式めいたもののようだったので、じゃあやってみようかとみんなで同意すると彼はウェイターにhookahを2セット注文した。いくつかのフレーバーがあるというので、ふたつともRamiお奨めのアップル・フレーバーにすることにした。

これがなかなかすごい体験だった。hookahというのは高さ60センチくらいの細長い壺のような形をしていて、壺の口の部分には太い葉巻のような煙草が刺さっており、着色されたガラスでできた底の部分には水がたまっていて、その上に煙草の煙が充満している。水が何の役割を果たしているのかはよく分からない。壺の中ほどからチューブが延びており、その先端のプラスチックの部分を口にくわえて煙を吸い込むという仕組みだ。

これが普通の煙草と違ってまったくニコチンの味がせず、ただ甘くて爽やかなアップルの香りが肺に広がるのだ。僕は煙草は嫌いだけれど、これなら悪くないと思ってしまった。もちろん継続して吸いたいとは思わなかったけれど。6人でふたつのhookahを頼んだので3人ずつで代わる代わる同じチューブを使って喫煙した。Ramiによればhookahはこのような社交の場で愉しむものであって、ニコチンも本物の煙草の何分の一かしか含まないそうである。

一年生のはじめに敢えて多国籍軍のスタディ・グループを形成し、その友情がこんな風にずっと続いているということは素直に嬉しい。12人のうちふたりが既にJapan Trekで日本を訪れてくれたけれど、僕はいつかビジネスででも彼らの国を巡り再会を喜ぶことはあるだろうか。


*hookahを愉しむMartin


先頭 表紙

マイケルさん、それは危険なパーティーでしたね。僕もイタリアで誘われて吸ったことはあったけど。こちらではというか、この学校ではまずありません。でも宴会、懐かしい。 / Hidey ( 2002-12-24 17:17 )
azzurriさん、やはり有名なんですね。僕はエジプト史が好きなんて言えるほど知識はありませんがクレオパトラの話を読むのは好きです。男専用社交カフェとのことですが、うちのグループも含め、この店にはhookahを吸ってた女性がけっこういました。なかなか様になってましたよ。 / Hidey ( 2002-12-24 17:16 )
マイアミにいた頃友人のパーティーで進められたけど、タバコがだめなんでパスしましたけどうまいのかなぁ? でもその後時間が進むにつれ「マリファナあるけどどぉ」なんて話にもなってきて... それ以来どうも”パーティー”って苦手です。やっぱ宴会の方があってます、自分には(^_^) / マイケル ( 2002-12-23 06:10 )
アラブ諸国では有名な水煙草ですよね?・・・名称までは知らなかったのですが、エジプト史好きなazzurriは興味津々(笑)。街角でこれを囲みながら、談笑している殿方がよくテレビなどに映っていました。イメージは男専用社交カフェ@エジプト版!? / azzurri ( 2002-12-17 13:05 )
フィー子さん、やっぱり知ってるね、皆さん。自分の無知を思い知らされました(笑)。昨日から冬休みに入ったのでさっそく街でクリスマスっぽい写真をまとめて撮ってきました。順次お届けします。 / Hidey ( 2002-12-17 00:38 )
ライラックさん、ほんと疲れました。ようやく最後の自宅受験の試験も終わり、一ヶ月の冬休みです。水煙草、けっこう皆さん知ってるんですね。僕は知りませんでした。煙草を吸わない女の子も美味しそうにやってましたよ!僕もエジプトはぜひ一度行きたいです。 / Hidey ( 2002-12-17 00:36 )
PACHIさん、いつか機会があったらやってみてください。喫煙しない人でも大丈夫ですよ。でもあまりやりすぎて翌日少し喉が痛くなりました。おっしゃるとおりこちらにはその国の人がつくった料理を出す店が多いです。でもインドカレーとかは概してアメリカ人向けに甘口。すかさずホットでと注文します。先日もおいしいインド料理屋を見つけました。ボストンでは最高レベル。 / Hidey ( 2002-12-17 00:35 )
reiちゃん、あなたにはあまりにhookahが似合いそう(笑)。ほんとに友達みんなでゆったりできるよね。確かにもう少し我慢した方がいいかもね。そろそろ日本へ帰国かな? / Hidey ( 2002-12-17 00:32 )
テレビの旅番組で何度か見たことがありました。面倒くさそうだなと思っていたけど社交の意味があるものなのね。クリスマスや年末年始のそちらのご様子、楽しみに報告待ってます! / フィー子 ( 2002-12-14 13:19 )
お疲れさまでした〜♪実際は大変なんでしょうけれど、そういう環境に憧れますね。もう一度勉強したいです。水煙草ってたまにテレビや本で見かけますが、普通の煙草と違うんですか・・不思議!私も煙草は吸わないけど、甘い香りだったらやってみたいな〜。女性も吸えるんですか?壷フェチの私にはこの美しいガラスの壷がとても魅力的!エジプト、モロッコは私も是非訪れたいです。 / ライラック ( 2002-12-13 16:30 )
論文お疲れ様でした。 写真のこれはいわゆる水煙草というやつですね?私はタバコは吸いませんが、この器具がとてもエレガントなので、ちょっと憧れてたりします(笑) USAでエスニックに比較的ハズレが少ないのは、料理人がちゃんとその国の人で、へんなアレンジをしないせいかしらとか、なんとなく思ったり。 / PACHI ( 2002-12-13 15:51 )
hookah大好き。仲のいい友達とおしゃべりしながらまったりするのに最高。すごいメローな気分になれるし、あのリラックス感が好き。でも、禁煙してからやってないな。何か少しづつまたタバコに戻ってしまいそうで、まだ自分自身を信用できないから。(笑) / rei@未ログイン ( 2002-12-13 13:56 )
ようやく三本の論文(paperといいます)が終わり、あとは比較的気楽な自宅受験の試験を17日までの任意の日に受けるだけ。いま酒盛り中です。ずっとつっこみにいけず済みませんでした。この日記はもう3週間ちかく前に書かれたもの。つっこみ返しすらできない状況でしたが、冬休みには充実した授業を振り返ってコンスタントに日記を更新していきたいと思います。 / Hidey ( 2002-12-13 11:52 )

2002-11-23 友人たちとの時間 1

二年生になって自分の選択科目の教室へ移動することにより、同じ教室で一年間を過ごした80人のセクションメイトともなかなか会えなくなったという話は以前にも書いた。これで友人と会う機会もめっきり減るかと思われたが、ところがどっこい、そこは別名パーティー・スクールと呼ばれる学校だけあって、毎週どこかで誰かが電子メールを駆使し、何かしら集まる機会をつくっている。

先日同じセクションのBillがセクションメイト全員にメールを発信した。
「セクションEのみなさんへ。僕は今週の金曜日ガールフレンドのLisaにプロポーズをします。金曜日の夜9時からブロムフィールド・ストリート100番地のシルバーストーンというバーでお祝いをしたいのでよかったらみんなで来てください」

おいおい、いくら自信があるとは言え万が一彼女に断られたらどうするんだと他人事ながら心配になった。いや、断られた場合に集まることを想像すると決して他人事ではない。彼になんて声を掛けたらいいか分からないもんね。でもこんなに天真爛漫なメールを送りつけるところからすると、もしかしたら事前の仮交渉はすんで、何らかの確証があるのかもしれない。週後半のBusiness Marketingの授業でBillとは一緒なので差し障りのない聞き方で確かめてみることにした。

「ねえBill、金曜の夜はぜひパーティーに参加させてもらうけど、彼女には何時ごろプロポーズするの?」
「3時に会ってプロポーズする予定だよ」
「それは彼女にとってサプライズになるわけ?」
「うん、結婚なんてはじめて口にするんだ」
ええっと内心びっくりしてしまったが、Billはやっぱり天真爛漫な笑顔を浮かべているので僕もにっこりして「Good luck!」と言うしかなかった。

結局心配は杞憂に終わり、Billは無事Lisaの心をつかんだ。シルバーストーンでBillとLisaにおめでとうと声を掛けると二人ともとても幸せそうに微笑んでありがとうと答えた。まあでも果敢なBill君のお陰でこの日は30人近くのセクションメイトが集まり懐かしく話をすることができた。時節柄就職活動の話も多かったけれど、みなついさっきまで同じ授業を受けていたかのようにわいわい騒いだ。何人かの連中に「でもBillって勇気があるよね。プロポーズする前に我々にメールをするなんて」と話したら、みんな実は同じ心配をしていたということだった。

なんだかうちのセクションは最近婚約ラッシュで、Billのプロポーズの翌週にはZaidが同じくうちの学校に通うパキスタン美女Miriamと婚約し、「Zaid is engaged!!」というタイトルで「Congratulations to Zaid and Miriam!!!」と大きな文字で書かれたメールをほかのセクションメイトがみんなに送った。その翌日にはブラジル人のセクションメイト、Carlosが長くつきあっていたらしいJoannaと婚約したということで、Zaidの婚約の報せの文面を真似て、「Carlos is engaged!!」というタイトルで「Congratulations to Carlos and Joanna!!!」とやはり大きな文字のメールがまわった。するとまたその翌日にUgwunnaというやつが自ら「Ugwunna is engaged!!」というタイトルでメールをよこしたので「おーっ」と思ってクリックすると、巨大なフォントで「Just kidding!!! Zaid and Carlos – congratulations!」と書いてあった。まったくもう。でもほんとにみなさん、おめでとう。お幸せにね。


*Bill & Lisa


先頭 表紙

夢樂堂さん、この間書かせていただいたとおり、二度サプライズされました。一粒で二度びっくり(笑)。ほんとにこんないいサプライズで世の中が埋まってしまえばいいのに。 / Hidey ( 2002-12-13 11:22 )
あややん、ありがごう!快い文章はなかなか書けませんが僕こそあややん中毒です。三人にはよろしく言っておきましょう。 / Hidey ( 2002-12-13 11:21 )
鳥さん、こちらではお久しぶりです。というか僕自身がここのところご無沙汰でした。この二人、顔似てますか?うーん。僕には全然違うように見えるのですが(笑)。でもこれから似てくるのでしょうね。家の場合は似てきたなんていうと間違いなく怒られます(笑)。 / Hidey ( 2002-12-13 11:20 )
ちえちゃん、ありがとう。「これから日記はじめるね」なんていってた頃が信じられません。よく書いたものだ。ちえちゃんだってきっと情熱的なプロポーズがあったんでしょ? / Hidey ( 2002-12-13 11:18 )
えむさん、ありがとうございます。「変更・削除」でしたっけ?それをクリックすると過去の日記一覧とともにその数が表示されますよね。200回というきりのいい数字が表示されたのでびっくりした次第です。Ugwunna、ほんとにいい奴なんです。あんないい奴、なかなかいない。 / Hidey ( 2002-12-13 11:17 )
reiさん、ごぶさた。忙しそうだね。今回もちょっと会えなさそうで残念。その分さやこさんに遊んでもらおうかと思います。あなたはどんなに派手に婚約しても予定調和(笑)。 / Hidey ( 2002-12-13 11:15 )
撫子さん、あなたの場合は本気か芝居か男には簡単に見破れないんじゃないかな?でも我らが撫子さんにはやはりまだ独身でいてもらっていろんな刺激的な話を聞かせてもらわないとね。僕も楽しませてもらっています(笑)。 / Hidey ( 2002-12-13 11:14 )
みるみるさん、パーティーはまさに日常茶飯事。毎週何かしらの誘いが来ますが、日本人の勉強のペースではなかなか参加できないのが悲しいです。 / Hidey ( 2002-12-13 11:12 )
azzurriさん、ありがとうございます。僕の場合あれからまだたった一年しか経っていないのかと、愕然とすることがあります。やはり起伏に富んで過ぎ去った時間以上に時を重ねている気になります。Billの件、二人の間でしか分からない呼吸ってありますからね。彼には確信があったのでしょう。僕もハッピーになりました。 / Hidey ( 2002-12-13 11:10 )
みほさん、ありがとうございます。結婚の話はまだ早いと思っていてもいつなにが起こるか分からないからね。僕はイタリアでプロポーズしましたが夫婦ともに酔っ払っていたのであまりよく覚えていません(笑)。 / Hidey ( 2002-12-13 11:07 )
パンドラさん、ありがとうございます。このところ期末で滞ってしまいましたが、おっしゃる通り貴重な時間を少し戻って記録していきたいと思います。 / Hidey ( 2002-12-13 11:06 )
ガス欠コインさん、大変ご無沙汰してしまい失礼いたしました。お祝いありがとうございます。先日この20倍くらい凝ったうちのアメリカ人学生のプロポーズの方法を聞きました。ちょっと日本人にはわからない感覚でした。 / Hidey ( 2002-12-13 11:05 )
夢樂堂の件もビッグサプライズだったのかな。でもいいことでのサプライズならいいよね。 / 夢樂堂@お祝いメッセージありがとう ( 2002-12-10 18:18 )
200回おめでとう!快い文章は麻薬。私はジャンキー。Congratulations to Bill, Zaid, and Carlos! / あやや ( 2002-12-03 16:53 )
珍しくこちらに遊びにきてみました。200回、おめでとうございます! すてきなお話ですね。こちらまで幸せな気分になります。”うまくいく二人は顔立ちも似ている”とか”夫婦は顔が次第に似てくる”とかいうけど、このお二人もなんとなく顔が似てる気がします。 / ( 2002-12-01 23:12 )
200回おめでとう〜☆それにしても「これからプロポーズする」って宣言するって凄いわ。でも良い結果で良かったね。Lisaさん、羨ましいなぁ。 / Chie ( 2002-11-30 09:47 )
200回おめでとうございます!・・私はいったいいくつ日記を書いているのでしょう?自分でも不明です。Mr.Ugwunna、いいキャラしてますね(笑) / えむ ( 2002-11-27 09:56 )
200回、おめでとう!最近ものすごくごぶさたしてて、ごめんね〜。元気そうでなによりです。またいつかサヤコちゃんも一緒に飲みに行きたいっす。私もいつか派手に婚約してみたいっす。(笑) / rei ( 2002-11-26 13:13 )
私なんか好きな男に「結婚してー!」といいましたが振られました。あーあ。19のころです。 / 撫子 ( 2002-11-25 19:52 )
わ!とっても凄いサプライズですね。でも何だからしいですよね。パーティーって日本じゃあまり日常的ではないけど海外ではほんと、楽しいライフワークでもありますよね。ドキドキするけど楽しそうなパーティです^^ 200回記念おめでとうございます! / みるみる@Atelier ( 2002-11-25 13:25 )
200回記念、おめでとうございます!日記を読み返したりすると感慨深いものがあったりしますよね。これからも素敵な絵日記ともども楽しみにしています♪・・・ところで、Billさんがプロポーズを受けてもらえなかったら、みんなで励ます会になっていたのかな、、、?とにもかくにもおめでたい事って周りもハッピーにさせてくれますよね! / azzurri ( 2002-11-25 12:03 )
失礼、義理の従兄弟の誤りです(笑)。 / ガス欠コイン ( 2002-11-24 20:05 )
付き合っている人から突然「結婚してくれ」あぁ〜!憧れるシチュエーションですねぇ。って,私は当然ながら結婚する気はありませんが(笑)日記200回目とHideyさんのお友達におめでとう!です / みほ ( 2002-11-24 16:08 )
まあ、200回おめでとう! 貴重な一日の積み重ねの記録、ずしんときます。 そして、とっても幸せそうなおふたりの笑顔。おめでとう!の言葉に、幸せはますますふくらむね。  / パンドラ ( 2002-11-23 23:32 )
200回目、おめでとうございます。僕も少し前に超えました。その後、ペースが落ちていますが。アメリカの義理の従姉妹がBillと言います。こんな告白、日本でも見てみたいなあ。僕は嫌だけれど(笑)。 / ガス欠コイン ( 2002-11-23 20:32 )
ところで今日の日記が記念すべき200回目だそうです。ペースとしては決して頻繁ではありませんが、今後もゆっくり更新していこうと思います。授業に関する日記を書こうとすると、ケースをそのまま訳しただけでは何の意味もないので、もう一度ケースを読み直し、教授の解説、友人の発言を思い起こし、その上で自分なりに消化し直すというプロセスが必要であり、おいそれと書き始めることが出来ません。現在論文作業で忙しい身としては、いずれ冬休みにでもまとめて印象に残った授業について書こうと思いますので、少々お待ちください。 / Hidey ( 2002-11-23 18:54 )

2002-11-15 つかの間の帰国

10月30日から11月6日(日本着は10月31日)にかけて一時帰国をした。Globalization and Strategyの期末論文のためのリサーチが目的だった。うちの会社の国際戦略について論ずるために、社内のキーパーソンに会って話を聞き、業界誌を中心に諸情報を収集する必要があった。

とても慌しかったが、それだけの価値がある帰国になった。文化の日の三連休をはさんだ11月1日と11月5日に会社を訪ね、国際事業統括、営業統括海外担当、外資系企業担当営業、海外展開をする国内大手企業担当営業、うち独自のメディア・プランニング・システムの国際事業展開担当の合計9人にインタビューをした。ほどんどが局次長、部長級の人たちだった。

細かいことは書けないが、朧げに想像していたうちの国際戦略がはっきり見えてきたと同時に、相当に練りこまれていることが分かって心強かった。しかし戦略不在の時代が長かったことによるハンディキャップとともに、戦略だけではどうにもならない文化的障壁の重さを思い知った。いずれもペーパーを書くための重要な要素であり、書き物からだけでは読み取れないニュアンスを知れたことは大変貴重だった。腐っても大企業なだけあって、戦略を支える基盤、資金力、人材が重厚であり、極めて優秀な社員が各所に散在していることを痛感した。卒業後浮気をせずに自社に戻ることの意義を改めて感じられて本当によかった。

何度か書いた、スタンフォードに留学していた親友とも昼食をともにして色々と話を聞いた。彼は今年新設された少数精鋭の経営トップの参謀的部署に配属され、既に全社戦略策定の要となっていた。彼の年齢では通常考えられないようなレベルでの仕事に充実を感じつつも、働き盛りとしては現場作業の手応え、直接的な収益への貢献が実感できないことにもどかしさを抱いていたのも事実だった。しかし彼にしかできない仕事があるのだ。

三連休のうち二日間は会社の情報センターにこもって膨大な資料を検索しコピーやプリントをした。海外からは見られないイントラネット上の国際事業関連情報が大変役立ち、それだけのためにでも帰国する価値があった。11月3日にはフィー子さん夫婦、そして先述の親友を含む7人の旧友とメキシコ料理屋にて再会、久しぶりに心の底から笑った。

お約束の美食三昧だけは完遂した。成田に到着してすぐに母に電話をし、「今夜は豚ちりね」と通告。ボストンの豚はあまりおいしくないのだ。これを皮切りに銀座のイタリアン、築地の寿司屋、原宿のメキシカン、八丁堀の坦々麺、麹町のインドカレー、築地の魚料理、高田馬場の愛しのパキスタンカレーと食べまくった。実家ではひれカツ、餃子、すき焼きなどなど。そうそう、おいしい日本のあさりで自らスパゲティ・アレ・ボンゴレをつくって小確幸も味わった。さすがに2キロほど増えましたね。それしか楽しみがないんだもの。

いや、密かに楽しみにしていたのが「蒼天航路」という漫画の最新刊2冊を読むことだった。曹操猛徳を中心に据えたネオ三国志で、けっこう重厚な作品なのだ。会社に向かう途中に本屋に駆け込んで購入し、地下鉄に揺られながら一心不乱に読んだ。日本の馬鹿リーマン丸出しであった。ちょっと最近話が理屈っぽいのだけどまあいい。それから小説8冊と論文関連の本3冊を購入。一週間で結構散財した。

ということで目下の悩みは脳からはちきれるほどに聞き込んできた情報を短期間でいかに料理して論文に落とし込むかということ。あと3週間の勝負。ちょっとひまじんはその間お留守になりそうです。絵日記はがんばって更新するけど。


*実家の愛猫ポコです。


先頭 表紙

あみすけさん、ありがとうございます。ネコちゃんたちのご様子は時々は意見させていただいています。ゴジラには笑えました! / Hidey ( 2002-12-13 11:03 )
らりほさん、お返事が遅くなり大変失礼いたしました。らりほさんは文章そのままBillyの曲でも男性的なものがお好きなようですね。僕は趣味そのまま女性的なものが好きなようです(笑)。今日車に乗っていたら「She's Got a Way」が流れていてなかなかいい気分になりました。今は久しぶりにStingにはまり中。 / Hidey ( 2002-12-13 11:02 )
ボコちゃん、可愛いですね!うちの猫たちも、こんな恰好してますよ^^;。 / あみすけ ( 2002-11-28 22:38 )
え。そうなんですかっ。うらやましいなあ。「Movi'n Out」観てらした折りには,ぜひ感想などをお知らせくださいませ。ものすごく興味もってしまったモンで。はは。/ あ。その曲おれも好きです。あとは同じく月並みだけど「Big Shot」「Only The Goog Die Young」あたりかな。あ。もちろん「Movi'n Out」も(笑)。 / らりほ ( 2002-11-24 18:31 )
らりほさん、いらっしゃいませ。つっこみにあんなに喜んでいただけるとは思わなかったので、もう少しビリーの話を。現在ブロードウェーで彼の曲をつなげて作った「Movin' Out」というミュージカルを上演中です。近いうちに行ってみたいと思っています。「Angry Young Man」の他に僕が個人的に好きな曲は、ちょっと月並みですが「She's Always a Woman to Me」、「Piano Man」といったところです。 / Hidey ( 2002-11-23 17:50 )
えむさん、憧れて入社して、いろいろ会ったけど何度でも惚れ直した会社ですからね。豊富な人材というのが大きいです。自分を成長させてくれる多くの人に会えます。ところで馬場のカレー屋はラージ・プートといって、駅から早稲田通りを小滝橋に向かって徒歩5分くらい、左側の2階です。過去の日記に二度ほど記述したことがありますが、ここに行ったらぜひ「クライチキン」を注文してください。カレー観が変わります!「夢民」は聞いたことはあるけれど、残念ながら行ったことはないです。美味しいのですか? / Hidey ( 2002-11-23 17:45 )
lim.さん、ほんとにちょっと疲れました。こちらに帰ってからも昼夜逆転状態が続いたし。ポコ可愛いでしょう?ありがとう!lim.さんも猫が好きなんですね。「近所のネコ」ってのも何とも言えずいいよね。 / Hidey ( 2002-11-23 17:41 )
パンドラさん、そうですかぁ?似てますかぁ?(けっこう嬉しい) ほんとに今回はカンパイの機会を、それもお祝いのカンパイの機会を逸してしまいましたが、ぜひいずれ挽回させてください。 / Hidey ( 2002-11-23 17:39 )
ライラックさん、こちらの日記でははじめましてですね。ポコ、可愛いでしょう?少しだけダイエットをさせたいところだけど。ああ、これでもうずまきネコになるわけですね?今度村上氏が住んでいたという家の辺りも散策してみたいと思います。 / Hidey ( 2002-11-23 17:38 )
ナライフさん、また会い損ないましたね。国際化の件は社内でも色々あって難しいようですが、黒船が来襲した今、何かがなされなければならないのは事実。そしてそれに対してもっとも有効なのは、クライアントの情報と信頼を握っている国内営業ですからね。いろいろご意見を聞きたかった。 / Hidey ( 2002-11-23 17:35 )
マイケルさん、お会いしたかったー!我々には色々共通点があるようなので、話もきっと盛り上がったでしょうに。今度は12月開催ですか。それはとても行けませんが、またぜひいつか。 / Hidey ( 2002-11-23 17:33 )
しゃどうさん、ぜひポコをしゃどう猫くんとお見合いさせたいくらいです。でも随分年上の女房になっちゃうけどね。 / Hidey ( 2002-11-23 17:31 )
Hirokoさん、世界のコマーシャル博覧会、僕もぜひ観てみたかった!仕事上の興味というだけではなく、現在Consumer Marketingでも論文を書いていて、それには随分プラスになったはずだから。最近はご旅行されていますか? / Hidey ( 2002-11-23 17:30 )
みほさん、ようこそ!アメリカはともかくNZはあまり時差がないので楽そうだけど。留学というか、編入の件、応援しています。これまで日本で過ごしていたらもう出てしまっても何も支障はないと思いますよ。むしろバランスを取れるほうが大きいと思います。うまく行くといいですね。 / Hidey ( 2002-11-23 17:29 )
みるみるさん、ただいまです(ずいぶんご挨拶が遅れましたが)。ラーメンは上記の通り(笑)。ぜひ今度試してみてください。ポコはこう見えてけっこう人懐こくてかわいいやつです。よろしく。 / Hidey ( 2002-11-23 17:27 )
フィー子さん、ふたたび。そっかー。僕の大泉学園の家にも遊びに来てくれたことあったっけー?正直あまり記憶にない。両親は猫が大好きです。はじめは僕がもらってきて迷惑していたんだけど、いまや猫なしには生きていけないですね。特に隠居の父は。 / Hidey ( 2002-11-23 17:25 )
azzurriさん、「蒼天航路」、はっきり言ってお奨めです。長い間それなりに多くの漫画を読んできたけど、この作品は傑出しています。曹操が偉いかっこいいし。ある意味原典より面白いです。読んでるとなんとなく仕事でも力を与えられちゃったりなんかしてね(笑)。単純。3巻あたりまではちょっと臭みが残るのですが、それさえやり過ごしていただければもう一気に26巻まで夢中になれます。なにしろ文字だけでは誰が誰だか分からなくなってしまうけどみんな特徴ある顔を与えられているので分かり易い! / Hidey ( 2002-11-23 17:23 )
KATSUMIさん、お会いしたかった!華麗なプレーも見せていただきたかったです。食べまくると言っても、なんでもない納豆とか明太子、混じりけがなく美味しい牛乳など、普通のものさえなんでも日本は美味しくて幸せなんですよぉ。 / Hidey ( 2002-11-23 17:18 )
ガス欠コインさん、本当にお会いできず残念です。でも参加された皆さんの日記を読むと本当に盛り上がったようでよかったです。文化的障壁は充分想像もできたのですが、現実は想像以上のようです。ソニーなどは文化的障壁を越えて海外の現地法人をしっかり一元コントロールしているのに。過去の歴史、人材開発、動機づけなどの点で天と地の開きがありますね。まあ利益構造上これまでは正しい動きだったのですけど。 / Hidey ( 2002-11-23 17:17 )
トモコさん、食べまくりますよぉ。太りますよぉ。まあ僕は一週間、2キロで済んだのでアメリカに戻ったらすぐに体重は落ちたけど、長期間日本に戻ってしまうとちょっと大変かもしれませんね。 / Hidey ( 2002-11-23 17:12 )
むらぱぱさん、「坦゛々麺」に笑ってしまった。そのとおりです。「支那麺はしご」、銀座の東芝ビルの地下にもありますよね。うちの社員はみんな大好き。ホッケーではお手柔らかにね。 / Hidey ( 2002-11-23 17:11 )
たまたまさん、お久しぶり。最近は香港づいているの?何をしているのかな?一時帰国はほんとにばたばたでした。 / Hidey ( 2002-11-23 17:08 )
フィー子さん、いえ、まるで「つくれ」と言わんばかりに人数分のあさりを母が買ってきていたので、否応なくつくることになりました。まあ美味しかったのでいいんだけど。 / Hidey ( 2002-11-23 17:07 )
らりほです。お忙しいところ,お立ち寄りくださりありがとうございました。海外にいらっしゃるとは存じませんでした。まずはお礼まで。 / らりほ ( 2002-11-21 12:38 )
自分のいる会社に誇りを持てるってすごいと思います。私もそういう刺激を受けるような職場で働きたいです・・。ところで馬場のカレー屋ってなんていうお店ですか?私は学生時代によく「夢民(むーみん)@明治通り」に行ってました。ご存知ですか? / えむ ( 2002-11-21 08:34 )
一時帰国、お疲れさまでした。猫ちゃん可愛い!私も階下に遊びにくるトラ猫にソーセージをやる日々です。 / lim. ( 2002-11-20 15:17 )
まあ! ポコちゃん、なんて美人さん! ・・・ちょっとHideyさまの面影が(笑) ぎゅっとだっこするアナタが目にうかぶよ。 そして、忙しいながらも充実した日本の1週間、よかったね。またカンパイの機会を楽しみに待ってます。 / パンドラ ( 2002-11-20 06:53 )
昨日は本当に感激をありがとうございました!実はこちらも読ませていただいているのですが、今日はポコちゃんがのっていたので、初つっこみです(笑)ああ、やっぱり、Hideyさんにもうずまき猫いらっしゃるじゃないですか(笑)よかったぁ / ライラック@村上さん、うずまき猫、そしてボストンと線で結ばれましたね(笑) ( 2002-11-20 00:33 )
お疲れ様でした。おぼろげながらも貴重なお話でしたし。それにしても相当胃袋に詰めましたね! / ナライフ ( 2002-11-19 19:10 )
短くかつご多忙、ということでお目にかかれず残念でした。でもFC Coigne はこれからも地道に活動を続けてゆきますので、ぜひ機会がありましたらご一緒しましょう。 / マイケル ( 2002-11-19 12:12 )
うぅ、ポコちゃん可愛いぃ。 / しゃどう ( 2002-11-19 10:39 )
もうアメリカに帰られたのですね。お忙しい一週間だったようですね。15日の夜からオールナイトで「世界のコマーシャル博覧会」のようなものがあったのですよ。結構面白そうだったのですが、忙しすぎて行けませんでした。残念。。。 / Hiroko ( 2002-11-19 02:54 )
こんにちは,おじゃまします!短期間な帰国ですね。時差ボケとか考えて,アメリカやNZにいる知り合いは短期間の日本滞在を嫌がるのですが(笑) / みほ ( 2002-11-19 01:36 )
お帰りなさい!お忙しそうな帰国でしたね。でも美食三昧が出来てよかったです。ラーメン食べましたか(笑)ところでボコちゃん、以前私が飼っていた猫ちゃんにそっくりです☆可愛い〜。 / みるみる@Atelier ( 2002-11-18 21:54 )
うわー、画像が追加されてる!ポコちゃん!そういや昔のHidey家にお邪魔した時とことこ歩いてる猫がいたような(笑)。きゃーんかわいいわ〜。ご両親、猫好きなの? / フィー子 ( 2002-11-18 18:25 )
お仕事の方も食の方も充実した帰国になられたんですね。因みに「蒼天航路」はazzurriも読んでみたい漫画です・・・でも、「三国志」を集めるのに6巻ぐらいで挫折(苦笑)。 / azzurri ( 2002-11-18 09:06 )
ホント多忙だったのですね。私も食べまくりたいなあ・・・。 / KATSUMI@活動再開 ( 2002-11-17 19:26 )
お会いできなくて残念でしたが、さすがHideyさん、超多忙の中にも楽しみありで何よりでした。文化的障壁、もちろんご存じと思いますが、相当重いです。 / ガス欠コイン ( 2002-11-15 22:33 )
私も日本に帰ったら食べまくるだろうなぁ。太るだろうなぁ・・・。 / トモコ ( 2002-11-15 20:53 )
八丁堀の坦々麺って坦゛々麺のことですか?御社の方々は好きですからねぇ。 / むらぱぱ ( 2002-11-15 19:15 )
ぜひまたお会いしたかったわ!とかいいながら、その時期は香港に行っていましたが、、、 / たまたま ( 2002-11-15 18:30 )
そういう1週間だったのね。ところでまたまたお母様の愛を感じたわ〜。ひれカツ、餃子、すき焼きかあ。ボンゴレはその御礼に作ったのかな?! / フィー子 ( 2002-11-15 18:29 )

2002-11-08 デジタル・エンジェル 3

ジェニファーという学生が「あなた方はこうした商品を世に送り出すか否かを自らの判断で決定できる唯一の立場にあった者として、少なくとも世の中に警鐘を鳴らしたり人権・プライバシーという問題に対し真剣に取り組む責任を感じていなかったのか。正直あなたの言葉からはそのような企業の真摯さは見出せない」と問いただした。ボルトン氏は少しむっとした口調で、「君たちは企業がどうやって最終的に利益を確保したり、さらに生産性を高めたりする方法論を学ぶためにこの学校に来ているのではないのか。そもそもビジネススクールはボトムラインをもっとも重要視する場所ではないのか」と聞き返した。教室中の学生たちが首を振った。ここにはリーダーシップや企業倫理など、企業と社会との調和を教える数々の素晴らしい授業がある。利益管理は大切だが、社会的にまっとうな経営が長期的にはいかに企業に利益をもたらすかを我々は徹底して学んできたのだ。ようやく場の雰囲気を悟り話の軌道を修正したボルトン氏は最後に「なんか嫌われちゃったな」と言い残して教室を去った。

翌週の授業のはじめに教授がデジタル・エンジェルの授業についてコメントした。「あなた方を不快にしてしまったかもしれないが、先日の授業は素晴らしい授業だったと私は思う。あなた方の発言はそれぞれに世の中を代表しており真摯さに充ちていた。そもそもあの授業は口コミやバイラル・マーケティングといった、話題を増幅してブランドを構築し維持する方法論を学ばせることを目的としていたが、同時に純粋なマーケティングから離れた価値観や視点を問題にすることも私の意図だった。実験につきあってもらったようで申し訳ないが、私はあなた方を誇りに思う」

「それぞれの観点にそれぞれの善意や正義があったと思う。企業がいかに効率的に商品を売りさばくかがマーケティングの目的だと思われることが多いが、マーケティングが商品を市場に適応させる行為である限り、企業倫理もその重要な要素となる。これまでのこの授業の中では見られなかったあなた方の別の顔を、リーダーシップや企業倫理の授業であなた方が見せる別の顔を見せてもらって、個人的にとても嬉しかった」

そして彼女は、苦悩する企業の一面を代表し我々の前で正直な心情を吐露したボルトン氏の立場もかばった。我々もそれはとうに理解していた。そしてボルトン氏という一個人の性格がどうであろうと、ADS社はこの商品が人間を護る天使になることを真剣に企図していたという事実に変わりはない。

所詮ビジネススクールは金儲けの方法を学ぶ場所であると言われて久しい。その指摘はあながち間違いとは言えず、うちの学校はその最たるものとして長年厳しい批判を浴びてきた。しかし相次ぐ企業倫理の崩壊にビジネススクールは社会的責任をもって応えるべきだと多くの学校が認識しはじめ、その姿勢は各校のカリキュラムにも反映されつつある。

結局のところそれは世間の批判をかわすための矛盾に充ちた施策に過ぎないと揶揄する人もいよう。しかし資本主義社会に生きることを選んだ現代の我々の中にその矛盾から免れる者などいるだろうか。あくまで矛盾を糾弾するならばその人は改めて共産主義的な理想を目指すしかない。その意味でビジネススクールは、様々な価値観がもっとも顕著に際立つ場面を創り出し、矛盾を解くことを人に強いる場所とも言える。倫理の瀬戸際に立ったこともないくせに物知り顔をして一面的な批判をするよりは少なくとも先の次元で悩む機会に恵まれていると思う。天使か悪魔か―それは現代のビジネス自体につきつけられた大きな疑問でもあるのだ。

先頭 表紙

ガス欠コインさん、おっしゃるとおり一人ひとりが自分の立場に置き換えて考えなくてはならない問題だと思います。商品としての便益をどこまで追求するかによって倫理問題は物理的には調整できますよね。チップは許さないけれど腕時計は許すとか。敢えて最高レベルの技術を実践しないこともひとつのあり方なのではないかと。これは倫理だけでなく、純粋に利潤を追求するマーケティングにおいてもたまに見られる現象・考え方です。 / Hidey ( 2002-11-15 17:37 )
PACHIさん、そもそも倫理とは社会通念的には相対的なものと僕も思います。それを絶対化するには確かに本能的な部分にまで遡らなければならないと思います。その本能が人類に共通のものであれば、ということですが。それすら単純ではないのでやはりどこまでも難しい問題です。企業が表向き責任を果たすのはもっと簡単なことなのかもしれません。なんの解決にも結びつかないだけで。 / Hidey ( 2002-11-15 17:32 )
ぶちょー、ご無沙汰です。先日は帰国しておきながら滅茶苦茶忙しくてご挨拶に伺えず失礼しました。仕事は順調ですか?クライアントと一蓮托生の広告屋には常に倫理観が求められますね。僕もかつて写真週刊誌担当をしていたときにそれを痛切に感じました。その辺の経験をビジネススクールのエッセイにも書いたりしました。 / Hidey ( 2002-11-15 17:29 )
azzurriさん、少なくとも彼のような立場にいる者が、人格的に偏りがあったりすると非常に危険ですよね。クラスの連中はみなそれを感じ取っていました。 / Hidey ( 2002-11-15 17:26 )
misatoさん、そのとおりですね。社会も消費者もさすがに馬鹿じゃないから、淘汰はこのところよく見られますし。結局個人個人が倫理を確立して、たやすく悪用できるものをもそれをしない、ということが最後は大事なのかなと思います。 / Hidey ( 2002-11-15 17:25 )
lim.さん、人次第ということ、同感です。ケースを読むとおっしゃるとおり企業側の崇高な理想が非常に感じられました。でも理想を伝えることと企業行動とは似て非なるものというか、理想プラスアルファの具体的な倫理を貫くための施策が求められますからね。誘拐されてから「エンジェル」があることが分かったら確かに命の危険がありますが、誘拐する前に触れ回っていれば、敢えて危険を冒して誘拐することは抑止できるかもしれませんね。 / Hidey ( 2002-11-15 17:23 )
Blueさん、はじめまして!このケースを学んだ時点で、まだオファーに対し返答をしていない状況だったはずです。その分臨場感がある授業でした。消費者側の努力という話、まったくもって同感です。少し思ったのですが、この商品をキャンペーンするにあたって、「ADS社としてはこれこれの姿勢を持っているが、消費者の皆さんは々考えますか?」と問いかける手もありかなと。このような複雑な問題については企業も謙虚に社会から学ぶ姿勢も重要なのではないかなと思います。 / Hidey ( 2002-11-15 17:14 )
たらママさん、まさにおっしゃるとおりなのですが、りぃなさんへのつっこみ返しにも書いたように、倫理と倫理がぶつかり合う問題なので、一筋縄には行かないですね。企業姿勢よりも企業行動が求められますので。 / Hidey ( 2002-11-15 17:10 )
りぃなさん、まさに光あれば影ですね。この企業の場合、突き詰めても正義と正義の対立で、そこにお金的要素が付与されてくるという、より複雑な状況なので辛いです。お金か正義かだけならまだ世の中簡単なんだけど。チップを埋め込むのは一瞬で終わる簡単な手術で、全然平気だそうですよ。そう言えば、映画「ビューティフル・マインド」にも出てきましたね。あの映画にはボストンのシーンがずいぶんあります。 / Hidey ( 2002-11-15 17:07 )
KATSUMIさん、ひとたび恥ずかしくない仕事についても、いつ何時倫理の瀬戸際にたたされるか分からないから社会って恐いですよね。サッカーは相当にドロドロしているでしょう。その辺を含めて論文を書く友達もいます。 / Hidey ( 2002-11-15 17:04 )
口車大王さん、天使か悪魔かは、僕も冒頭に書いたとおり、ものごと自体に正確はないのだと思います。すべて人次第ということ。倫理観のない企業が潰れるのが天使の仕業というのは同感です。「チャーリーズ・エンジェル」、バカ受けでした(笑)。 / Hidey ( 2002-11-15 17:02 )
何か、文字化けしてしまったようです。冒頭は日本の多くの〜です。ハンドルネームまで文字化けしていますね(笑)。 / ガス欠コイン ( 2002-11-13 16:58 )
s・{の多くの企業は、図らずも、企業倫理の低さを次々と露呈していった訳ですが、このケースはそれとは明らかに異なり、単純な解答を出せる問題ではないですね。Hideyさんの言われる通り、製品に限ってみても、その性格は初めからは持ち得ていないのでしょう。と言って、倫理観は人それぞれの問題ですから、より複雑です。つきつめれば、あなた自身は誘拐の危険に晒されている時、デジタル・エンジェルを使用するかというところから始まるのでしょう。P.S.今度はこちらから送ったメールが戻ってきてしまいました(苦笑)。まあ、またお会 / cKス欠コイン ( 2002-11-13 16:56 )
利益追求と倫理問題は常に相反しがちなもの。経済的な「利潤」という利益だけでなく、人類全体にとっての利益となるかもしれない技術、たとえば人工臓器とかクローン開発のような技術なども、「人道的」という見地から考えると即座に賛否を判断できないことが多々ありますね。それに利権なども関わってくると、もう何がなんだか。心の根底にある生理的に近い好悪感情に、いかに理性で折り合いをつけるか、なんでしょうか……。 / PACHI ( 2002-11-12 17:10 )
現実に組織としてマーケティングに携わるとこの手の課題が最も大きい気がします。広告屋の立場で何ができるのか、ともすれば得意以上に助長もできれば止める事もできる。世の中への責任は結構重い・・かもしれない。 / ぶちょー ( 2002-11-12 13:45 )
つい先日も誘拐の危険に備えてイギリスのある親が娘の体にマイクロチップを埋め込んだニュースをやっていました。企業は利益を得る為に活動しているとはいえ(ボルトン氏の切実さもわかるのですが)、企業トップがそういうスタンスでは開発のもとがどんなに人道的なことだったとしても疑ってしまいますね。 / azzurri ( 2002-11-11 15:25 )
倫理はどのような場合でも絶対的に根底に存在しなければならないものと考えています。それがベースにない企業(人もだけど)は結局最終的に淘汰されていくように感じています。そして本当に天使と悪魔はいつも背中合わせ。便利と危険も表裏一体。それぞれの側面を知りながら上手く使っていくことができればと思います。 / misato ( 2002-11-11 13:18 )
思考も道具も、使い方はヒトそれぞれ。「エンジェル」はテレビで見ましたが、私は制作側の理想に違和感を感じませんでした。命あっての、と思う人は多いと思うから。でも、「エンジェル」が体内にあることがわかってしまったら、逆に命が危険になるでしょうね。RH-の人がペンダントして表示するのはいいことなのに・・ああ、何も纏まらないつっこみになってしまいました。 / lim. ( 2002-11-11 13:07 )
最終的にその商品が南米に売られたのかどうか、興味があります。TVでその商品のことは見ましたけど、ホントに表裏一体ですね。車の盗難防止に携帯電話を車内に置いておいて、GPSで場所を探すということを防犯会社でやってるみたいですけど、それも妨害電波を発生する装置で簡単に妨害できてしまうそうですし、技術はいたちごっこですよね。デジタルエンジェルなるものがエンジェルでありつづけるためには消費者側の努力が必要なのかもしれませんね。 / Blue ( 2002-11-11 12:03 )
企業倫理を軽んじると、そのツケはいずれ払わされます。 / たらママ ( 2002-11-08 22:04 )
光あれば、そこに影も存在する、物事の多面性、トップの孤独、ということを、ひしひしと感じました。よかれと思って開発したものも、悪用する人がどうしても出てきてしまいます。。悲しいことですが。突き詰めると、お金か正義か?なんですけど、人間である限り、お金への欲求は尽きないし・・・。関係ないですが、デジタルチップを埋め込む、って、痛いそうですぅ(涙) / りぃな@行方不明者、確かに多いですよね ( 2002-11-08 20:43 )
人様に恥ずかしくない仕事に就く、と言われて育った気がしますが、そうありたいと常に思っています。みんなが幸せになることでお金を稼げたらよいのですが、サッカーの世界でさえ、それが普遍でなくなっているような気がします。 / KATSUMI@活動再開 ( 2002-11-08 19:39 )
「チャーリーズ・エンジェル」の続編の話かと思ってしまった。 / 口車大王 ( 2002-11-08 14:27 )
企業倫理が以下に重要か,日本は不況に苦しみながら貴重な経験を積んでいると思います。不況と思うと「悪魔」ですが,倫理観のない企業があっと言う間に潰れていくという状況は,「天使」と言えるかもしれません。 / 口車大王 ( 2002-11-08 14:27 )
天使か悪魔か,それはやじろべえみたいなものです。ものにはいろいろな角度からの見方があり,どんなに良いこととをしていると思っていても,別の角度から見ればとんでもないことであったりする。そのバランスが重要なんではないでしょうか。しかし,考えるという場もなかったら,すべて一面的になってしまって暴走してしまう。 / 口車大王 ( 2002-11-08 14:26 )

2002-11-08 デジタル・エンジェル 2

ケースはこの商品の持つ機能的便益、情緒的便益は何か、ターゲットのプロフィールはどんなもので、彼らにどんなメッセージをどんな媒体で訴求すれば効果的か、そして世論によるバッシングを抑制できるかなどを問うていた。この日はADS社のキース・ボルトン副社長がゲストとして教室に来ていたが、独特な商品特性も手伝い、彼の存在に憚られることなくこのような商品を世に送り出すことの是非論が繰り広げられた。

小さな子供を持つ何人かの学生たちは、プライバシーの問題はあっても大切な子供の安全には替えられないと切実に話し、ある者は、開発された技術をなかったものとして後戻りさせることはできないので、その技術をよい方向で活用する方法論を考えるのが我々の義務だと冷静な意見を述べた。逆にそうした善意とは裏腹に企業や国家がこうした技術を秘密裏に悪用することがいかにたやすいかを例示し、患者や子供にも確固たる人権があると激しく論じる者もいた。

ケースの中では取り上げられていなかったのだが、デジタル・エンジェルは社会的な物議を醸しメディアで大きく取り上げられたものの、先行投資に対し売上が振るわなかったという後日談が授業の途中で紹介された。そしてそんな折に南米のある国の大企業から、多発するビジネスマンの誘拐対策として自社の管理職全員にデジタル・エンジェルのチップを埋め込みたい、という大量注文があったということだった。

この注文ひとつで大幅な収益の改善が見込まれるため、ADS社にとっては喉から手が出るほど飛びつきたいオファーだった。しかし発注元の企業がどこまで社員の人権を守った形でデジタル・エンジェルを利用するのか、そして南米という法の整備や執行が不安視される地域でこの危険な技術がどのように飛び火しうるかという倫理問題がすぐに想起された。南米出身の学生たちはこの話に敏感に反応し、南米企業にとって社員の誘拐がいかに深刻な問題となっているかを話し、危険を孕むことは否定できないが意義は大いに理解できると発言した。

ひと通りの議論が終わり、ボルトン氏がケースの解説を始めた。最初からエキセントリックな印象を与えた彼は、南米の誘拐が実際どのように行われるのかという話を切り出した。乱暴に拉致され、車でどこかに運ばれながら身包みをすべてはがれ、縛り上げられ、身体の自由を与えられず、身代金を得るための駆け引きのためには、残忍な方法で傷つけられたり、場合によっては殺されてしまうという、リアルで惨い話だった。

そして彼は、上場企業である限り彼は株主に対して大きな責任を負っており、多額の投資を回収して一日も早く累積黒字に転換する必要があることを訴えた。そしてその責任をCEOから個人的に追及される、担当副社長としての彼のつらい立場を強調した。学生から倫理的な観点の質問や意見が上がっても、彼は悪びれた様子もなく「上場企業の責任」、そして「ボトムライン(損益計算書の一番下に表記される最終利益のこと)」という言葉をくどいほどに繰り返し口にして自己を正当化した。教室には不快感が漂いはじめていた。

(つづく)

先頭 表紙

プルーさん、その映画は見たことがありません。ちょっと保険に関しても残念ながら知識がありません。「うちの社員はチップ埋め込み済み」と触れ回ることで犯罪を抑止しようということかもしれませんね。試行錯誤しながらトライ、という話、僕も同感です。 / Hidey ( 2002-11-15 17:00 )
南米での誘拐は恐いみたいですね。映画「プルーフオブライフ」のようなものでしょう。そういうところで働く場合、やっぱりランサム保険かけるのでしょうか。チップを埋め込んで場所が分かったとしても救出することは出来るのかしら。この商品はプライバシーの侵害という可能性も抱えているけど、人間が進歩していくには試行錯誤しながらもトライするしかないように思います。その彼が株主にたいして大きな責任を追っていて早く投資を回収したい心理は良く分かります。よくも悪くもアメリカ企業の考えですね。 / プルー ( 2002-11-08 23:16 )

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