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Hideyの「蛍の光の下で」

帰国に伴い長い間ご愛読いただいたこの日記を終了させていただきます。
もうこのサイトに文章を綴ることはありませんが
もしこの先もおつきあいいただけるようであれば
メールをいただければ幸甚です。
皆様、本当にありがとうございました。お元気で。

絵日記

目次 (総目次)   [次の10件を表示]   表紙

2002-11-08 デジタル・エンジェル 3
2002-11-08 デジタル・エンジェル 2
2002-11-08 デジタル・エンジェル 1
2002-10-26 ヤヌス・プロジェクト進行中 2
2002-10-26 ヤヌス・プロジェクト進行中 1
2002-10-12 セクション風景 2
2002-10-12 セクション風景 1
2002-10-09 ダイヤモンドは永遠の輝き 2
2002-10-09 ダイアモンドは永遠の輝き 1
2002-10-04 江角マキコさんのこと 2


2002-11-08 デジタル・エンジェル 3

ジェニファーという学生が「あなた方はこうした商品を世に送り出すか否かを自らの判断で決定できる唯一の立場にあった者として、少なくとも世の中に警鐘を鳴らしたり人権・プライバシーという問題に対し真剣に取り組む責任を感じていなかったのか。正直あなたの言葉からはそのような企業の真摯さは見出せない」と問いただした。ボルトン氏は少しむっとした口調で、「君たちは企業がどうやって最終的に利益を確保したり、さらに生産性を高めたりする方法論を学ぶためにこの学校に来ているのではないのか。そもそもビジネススクールはボトムラインをもっとも重要視する場所ではないのか」と聞き返した。教室中の学生たちが首を振った。ここにはリーダーシップや企業倫理など、企業と社会との調和を教える数々の素晴らしい授業がある。利益管理は大切だが、社会的にまっとうな経営が長期的にはいかに企業に利益をもたらすかを我々は徹底して学んできたのだ。ようやく場の雰囲気を悟り話の軌道を修正したボルトン氏は最後に「なんか嫌われちゃったな」と言い残して教室を去った。

翌週の授業のはじめに教授がデジタル・エンジェルの授業についてコメントした。「あなた方を不快にしてしまったかもしれないが、先日の授業は素晴らしい授業だったと私は思う。あなた方の発言はそれぞれに世の中を代表しており真摯さに充ちていた。そもそもあの授業は口コミやバイラル・マーケティングといった、話題を増幅してブランドを構築し維持する方法論を学ばせることを目的としていたが、同時に純粋なマーケティングから離れた価値観や視点を問題にすることも私の意図だった。実験につきあってもらったようで申し訳ないが、私はあなた方を誇りに思う」

「それぞれの観点にそれぞれの善意や正義があったと思う。企業がいかに効率的に商品を売りさばくかがマーケティングの目的だと思われることが多いが、マーケティングが商品を市場に適応させる行為である限り、企業倫理もその重要な要素となる。これまでのこの授業の中では見られなかったあなた方の別の顔を、リーダーシップや企業倫理の授業であなた方が見せる別の顔を見せてもらって、個人的にとても嬉しかった」

そして彼女は、苦悩する企業の一面を代表し我々の前で正直な心情を吐露したボルトン氏の立場もかばった。我々もそれはとうに理解していた。そしてボルトン氏という一個人の性格がどうであろうと、ADS社はこの商品が人間を護る天使になることを真剣に企図していたという事実に変わりはない。

所詮ビジネススクールは金儲けの方法を学ぶ場所であると言われて久しい。その指摘はあながち間違いとは言えず、うちの学校はその最たるものとして長年厳しい批判を浴びてきた。しかし相次ぐ企業倫理の崩壊にビジネススクールは社会的責任をもって応えるべきだと多くの学校が認識しはじめ、その姿勢は各校のカリキュラムにも反映されつつある。

結局のところそれは世間の批判をかわすための矛盾に充ちた施策に過ぎないと揶揄する人もいよう。しかし資本主義社会に生きることを選んだ現代の我々の中にその矛盾から免れる者などいるだろうか。あくまで矛盾を糾弾するならばその人は改めて共産主義的な理想を目指すしかない。その意味でビジネススクールは、様々な価値観がもっとも顕著に際立つ場面を創り出し、矛盾を解くことを人に強いる場所とも言える。倫理の瀬戸際に立ったこともないくせに物知り顔をして一面的な批判をするよりは少なくとも先の次元で悩む機会に恵まれていると思う。天使か悪魔か―それは現代のビジネス自体につきつけられた大きな疑問でもあるのだ。

先頭 表紙

ガス欠コインさん、おっしゃるとおり一人ひとりが自分の立場に置き換えて考えなくてはならない問題だと思います。商品としての便益をどこまで追求するかによって倫理問題は物理的には調整できますよね。チップは許さないけれど腕時計は許すとか。敢えて最高レベルの技術を実践しないこともひとつのあり方なのではないかと。これは倫理だけでなく、純粋に利潤を追求するマーケティングにおいてもたまに見られる現象・考え方です。 / Hidey ( 2002-11-15 17:37 )
PACHIさん、そもそも倫理とは社会通念的には相対的なものと僕も思います。それを絶対化するには確かに本能的な部分にまで遡らなければならないと思います。その本能が人類に共通のものであれば、ということですが。それすら単純ではないのでやはりどこまでも難しい問題です。企業が表向き責任を果たすのはもっと簡単なことなのかもしれません。なんの解決にも結びつかないだけで。 / Hidey ( 2002-11-15 17:32 )
ぶちょー、ご無沙汰です。先日は帰国しておきながら滅茶苦茶忙しくてご挨拶に伺えず失礼しました。仕事は順調ですか?クライアントと一蓮托生の広告屋には常に倫理観が求められますね。僕もかつて写真週刊誌担当をしていたときにそれを痛切に感じました。その辺の経験をビジネススクールのエッセイにも書いたりしました。 / Hidey ( 2002-11-15 17:29 )
azzurriさん、少なくとも彼のような立場にいる者が、人格的に偏りがあったりすると非常に危険ですよね。クラスの連中はみなそれを感じ取っていました。 / Hidey ( 2002-11-15 17:26 )
misatoさん、そのとおりですね。社会も消費者もさすがに馬鹿じゃないから、淘汰はこのところよく見られますし。結局個人個人が倫理を確立して、たやすく悪用できるものをもそれをしない、ということが最後は大事なのかなと思います。 / Hidey ( 2002-11-15 17:25 )
lim.さん、人次第ということ、同感です。ケースを読むとおっしゃるとおり企業側の崇高な理想が非常に感じられました。でも理想を伝えることと企業行動とは似て非なるものというか、理想プラスアルファの具体的な倫理を貫くための施策が求められますからね。誘拐されてから「エンジェル」があることが分かったら確かに命の危険がありますが、誘拐する前に触れ回っていれば、敢えて危険を冒して誘拐することは抑止できるかもしれませんね。 / Hidey ( 2002-11-15 17:23 )
Blueさん、はじめまして!このケースを学んだ時点で、まだオファーに対し返答をしていない状況だったはずです。その分臨場感がある授業でした。消費者側の努力という話、まったくもって同感です。少し思ったのですが、この商品をキャンペーンするにあたって、「ADS社としてはこれこれの姿勢を持っているが、消費者の皆さんは々考えますか?」と問いかける手もありかなと。このような複雑な問題については企業も謙虚に社会から学ぶ姿勢も重要なのではないかなと思います。 / Hidey ( 2002-11-15 17:14 )
たらママさん、まさにおっしゃるとおりなのですが、りぃなさんへのつっこみ返しにも書いたように、倫理と倫理がぶつかり合う問題なので、一筋縄には行かないですね。企業姿勢よりも企業行動が求められますので。 / Hidey ( 2002-11-15 17:10 )
りぃなさん、まさに光あれば影ですね。この企業の場合、突き詰めても正義と正義の対立で、そこにお金的要素が付与されてくるという、より複雑な状況なので辛いです。お金か正義かだけならまだ世の中簡単なんだけど。チップを埋め込むのは一瞬で終わる簡単な手術で、全然平気だそうですよ。そう言えば、映画「ビューティフル・マインド」にも出てきましたね。あの映画にはボストンのシーンがずいぶんあります。 / Hidey ( 2002-11-15 17:07 )
KATSUMIさん、ひとたび恥ずかしくない仕事についても、いつ何時倫理の瀬戸際にたたされるか分からないから社会って恐いですよね。サッカーは相当にドロドロしているでしょう。その辺を含めて論文を書く友達もいます。 / Hidey ( 2002-11-15 17:04 )
口車大王さん、天使か悪魔かは、僕も冒頭に書いたとおり、ものごと自体に正確はないのだと思います。すべて人次第ということ。倫理観のない企業が潰れるのが天使の仕業というのは同感です。「チャーリーズ・エンジェル」、バカ受けでした(笑)。 / Hidey ( 2002-11-15 17:02 )
何か、文字化けしてしまったようです。冒頭は日本の多くの〜です。ハンドルネームまで文字化けしていますね(笑)。 / ガス欠コイン ( 2002-11-13 16:58 )
s・{の多くの企業は、図らずも、企業倫理の低さを次々と露呈していった訳ですが、このケースはそれとは明らかに異なり、単純な解答を出せる問題ではないですね。Hideyさんの言われる通り、製品に限ってみても、その性格は初めからは持ち得ていないのでしょう。と言って、倫理観は人それぞれの問題ですから、より複雑です。つきつめれば、あなた自身は誘拐の危険に晒されている時、デジタル・エンジェルを使用するかというところから始まるのでしょう。P.S.今度はこちらから送ったメールが戻ってきてしまいました(苦笑)。まあ、またお会 / cKス欠コイン ( 2002-11-13 16:56 )
利益追求と倫理問題は常に相反しがちなもの。経済的な「利潤」という利益だけでなく、人類全体にとっての利益となるかもしれない技術、たとえば人工臓器とかクローン開発のような技術なども、「人道的」という見地から考えると即座に賛否を判断できないことが多々ありますね。それに利権なども関わってくると、もう何がなんだか。心の根底にある生理的に近い好悪感情に、いかに理性で折り合いをつけるか、なんでしょうか……。 / PACHI ( 2002-11-12 17:10 )
現実に組織としてマーケティングに携わるとこの手の課題が最も大きい気がします。広告屋の立場で何ができるのか、ともすれば得意以上に助長もできれば止める事もできる。世の中への責任は結構重い・・かもしれない。 / ぶちょー ( 2002-11-12 13:45 )
つい先日も誘拐の危険に備えてイギリスのある親が娘の体にマイクロチップを埋め込んだニュースをやっていました。企業は利益を得る為に活動しているとはいえ(ボルトン氏の切実さもわかるのですが)、企業トップがそういうスタンスでは開発のもとがどんなに人道的なことだったとしても疑ってしまいますね。 / azzurri ( 2002-11-11 15:25 )
倫理はどのような場合でも絶対的に根底に存在しなければならないものと考えています。それがベースにない企業(人もだけど)は結局最終的に淘汰されていくように感じています。そして本当に天使と悪魔はいつも背中合わせ。便利と危険も表裏一体。それぞれの側面を知りながら上手く使っていくことができればと思います。 / misato ( 2002-11-11 13:18 )
思考も道具も、使い方はヒトそれぞれ。「エンジェル」はテレビで見ましたが、私は制作側の理想に違和感を感じませんでした。命あっての、と思う人は多いと思うから。でも、「エンジェル」が体内にあることがわかってしまったら、逆に命が危険になるでしょうね。RH-の人がペンダントして表示するのはいいことなのに・・ああ、何も纏まらないつっこみになってしまいました。 / lim. ( 2002-11-11 13:07 )
最終的にその商品が南米に売られたのかどうか、興味があります。TVでその商品のことは見ましたけど、ホントに表裏一体ですね。車の盗難防止に携帯電話を車内に置いておいて、GPSで場所を探すということを防犯会社でやってるみたいですけど、それも妨害電波を発生する装置で簡単に妨害できてしまうそうですし、技術はいたちごっこですよね。デジタルエンジェルなるものがエンジェルでありつづけるためには消費者側の努力が必要なのかもしれませんね。 / Blue ( 2002-11-11 12:03 )
企業倫理を軽んじると、そのツケはいずれ払わされます。 / たらママ ( 2002-11-08 22:04 )
光あれば、そこに影も存在する、物事の多面性、トップの孤独、ということを、ひしひしと感じました。よかれと思って開発したものも、悪用する人がどうしても出てきてしまいます。。悲しいことですが。突き詰めると、お金か正義か?なんですけど、人間である限り、お金への欲求は尽きないし・・・。関係ないですが、デジタルチップを埋め込む、って、痛いそうですぅ(涙) / りぃな@行方不明者、確かに多いですよね ( 2002-11-08 20:43 )
人様に恥ずかしくない仕事に就く、と言われて育った気がしますが、そうありたいと常に思っています。みんなが幸せになることでお金を稼げたらよいのですが、サッカーの世界でさえ、それが普遍でなくなっているような気がします。 / KATSUMI@活動再開 ( 2002-11-08 19:39 )
「チャーリーズ・エンジェル」の続編の話かと思ってしまった。 / 口車大王 ( 2002-11-08 14:27 )
企業倫理が以下に重要か,日本は不況に苦しみながら貴重な経験を積んでいると思います。不況と思うと「悪魔」ですが,倫理観のない企業があっと言う間に潰れていくという状況は,「天使」と言えるかもしれません。 / 口車大王 ( 2002-11-08 14:27 )
天使か悪魔か,それはやじろべえみたいなものです。ものにはいろいろな角度からの見方があり,どんなに良いこととをしていると思っていても,別の角度から見ればとんでもないことであったりする。そのバランスが重要なんではないでしょうか。しかし,考えるという場もなかったら,すべて一面的になってしまって暴走してしまう。 / 口車大王 ( 2002-11-08 14:26 )

2002-11-08 デジタル・エンジェル 2

ケースはこの商品の持つ機能的便益、情緒的便益は何か、ターゲットのプロフィールはどんなもので、彼らにどんなメッセージをどんな媒体で訴求すれば効果的か、そして世論によるバッシングを抑制できるかなどを問うていた。この日はADS社のキース・ボルトン副社長がゲストとして教室に来ていたが、独特な商品特性も手伝い、彼の存在に憚られることなくこのような商品を世に送り出すことの是非論が繰り広げられた。

小さな子供を持つ何人かの学生たちは、プライバシーの問題はあっても大切な子供の安全には替えられないと切実に話し、ある者は、開発された技術をなかったものとして後戻りさせることはできないので、その技術をよい方向で活用する方法論を考えるのが我々の義務だと冷静な意見を述べた。逆にそうした善意とは裏腹に企業や国家がこうした技術を秘密裏に悪用することがいかにたやすいかを例示し、患者や子供にも確固たる人権があると激しく論じる者もいた。

ケースの中では取り上げられていなかったのだが、デジタル・エンジェルは社会的な物議を醸しメディアで大きく取り上げられたものの、先行投資に対し売上が振るわなかったという後日談が授業の途中で紹介された。そしてそんな折に南米のある国の大企業から、多発するビジネスマンの誘拐対策として自社の管理職全員にデジタル・エンジェルのチップを埋め込みたい、という大量注文があったということだった。

この注文ひとつで大幅な収益の改善が見込まれるため、ADS社にとっては喉から手が出るほど飛びつきたいオファーだった。しかし発注元の企業がどこまで社員の人権を守った形でデジタル・エンジェルを利用するのか、そして南米という法の整備や執行が不安視される地域でこの危険な技術がどのように飛び火しうるかという倫理問題がすぐに想起された。南米出身の学生たちはこの話に敏感に反応し、南米企業にとって社員の誘拐がいかに深刻な問題となっているかを話し、危険を孕むことは否定できないが意義は大いに理解できると発言した。

ひと通りの議論が終わり、ボルトン氏がケースの解説を始めた。最初からエキセントリックな印象を与えた彼は、南米の誘拐が実際どのように行われるのかという話を切り出した。乱暴に拉致され、車でどこかに運ばれながら身包みをすべてはがれ、縛り上げられ、身体の自由を与えられず、身代金を得るための駆け引きのためには、残忍な方法で傷つけられたり、場合によっては殺されてしまうという、リアルで惨い話だった。

そして彼は、上場企業である限り彼は株主に対して大きな責任を負っており、多額の投資を回収して一日も早く累積黒字に転換する必要があることを訴えた。そしてその責任をCEOから個人的に追及される、担当副社長としての彼のつらい立場を強調した。学生から倫理的な観点の質問や意見が上がっても、彼は悪びれた様子もなく「上場企業の責任」、そして「ボトムライン(損益計算書の一番下に表記される最終利益のこと)」という言葉をくどいほどに繰り返し口にして自己を正当化した。教室には不快感が漂いはじめていた。

(つづく)

先頭 表紙

プルーさん、その映画は見たことがありません。ちょっと保険に関しても残念ながら知識がありません。「うちの社員はチップ埋め込み済み」と触れ回ることで犯罪を抑止しようということかもしれませんね。試行錯誤しながらトライ、という話、僕も同感です。 / Hidey ( 2002-11-15 17:00 )
南米での誘拐は恐いみたいですね。映画「プルーフオブライフ」のようなものでしょう。そういうところで働く場合、やっぱりランサム保険かけるのでしょうか。チップを埋め込んで場所が分かったとしても救出することは出来るのかしら。この商品はプライバシーの侵害という可能性も抱えているけど、人間が進歩していくには試行錯誤しながらもトライするしかないように思います。その彼が株主にたいして大きな責任を追っていて早く投資を回収したい心理は良く分かります。よくも悪くもアメリカ企業の考えですね。 / プルー ( 2002-11-08 23:16 )

2002-11-08 デジタル・エンジェル 1

およそ「天使のような」と形容されるすべての対象は、時と場合、そして見る者の立場によっては「悪魔のような」とまったく逆の表現をされるものだ。清らかで可愛らしい赤ん坊だって、同時に大人からあらゆる自由を奪い去る鬼畜になりうる。ものごとにはそもそも善悪の性格はなく、人がそれを与えるのかもしれない。

Consumer Marketing(消費者マーケティング)の授業でデジタル・エンジェルという商品を取り上げた。この商品は通常、使用者の脈拍、体温、現在地を感知する機能を持った腕時計という形をとる。そしてこれらの情報をワイヤレスで離れた場所にいる別の人間に伝えることにより、使用者の健康状態を遠隔管理することができるのだ。

管理者はPCや携帯電話からデジタル・エンジェルのウェブサイトにログインし、必要に応じて「信号」を送る。するとデジタル・エンジェルのデータ・センターを通じて腕時計に組み込まれたセンサーが使用者の脈拍、体温を計測し、それらの情報とGPSによって確認された使用者の現在地情報が管理者に送り返されるという仕組みだ。また使用者は緊急ボタンによって警察、救急サービスに通報することもできる。

2001年秋の発売に先立ち、この技術を開発したアプライド・デジタル・ソリューションズ(ADS)社は、典型的な利用例としてアルツハイマー患者の介護と子供の安全管理を想定していた。2000年の時点で全米には480万人ものアルツハイマー患者がおり、その数は加速度的に増加することが予想されていた。これらの患者は知らない場所を徘徊して家に帰れなくなったり、誰の目も届かない場所で負傷したりする危険に晒されていた。また2000年における行方不明者は876,213人にのぼり、その85〜90%は誘拐などにより姿を消した子供であった。デジタル・エンジェルはアルツハイマー患者を介護する家族や小さい子供を持つ親たちにとって、患者や子供の安全を守り、彼ら自身の不安とストレスを取り除く、まさに守護天使となることが期待されていた。しかし天使は同時に悪魔でもありうるのだ。

商品の早期発売を熱望する声が聞かれる傍ら、人権・プライバシーという観点から異議を唱える者もいた。権力者が個人情報を管理・悪用する危険性や「隠れる権利」の侵害が問題にされた。腕時計だと本人や他者によって簡単に取り外せてしまうことが懸念されていたが、これを回避するためにデジタル・エンジェルのチップを皮膚の下に埋め込むことも技術的には可能だという話もあったので、論争はなおさら激しさを増した。

(つづく)

先頭 表紙

2002-10-26 ヤヌス・プロジェクト進行中 2

そして最後に、これらの新規プロジェクトによる新しいビジネスモデルは多分に社外のリソースを要するが、ここで必要な複数の技術開発は相互関連性が高いため(デジタル技術によるマルチメディア統合など)それらの相互調整が必要になる。これに照らし、単純にアウトソーシングするのではなく子会社を設立して技術を開発させることで、機動性を高めながら自社グループ内での念入りな相互調整を可能にする体制をつくり、さらにノウハウの流出を防いだ社の賢明さを評価した。

今回のペーパーは中間試験の代わりとなり、同じテーマをさらに深めて将来的な提案を含めたペーパーを再度期末に提出しなくてはならない。ちょっとうんざり。

Globalization and Strategyのペーパーではうちの会社のグローバル戦略に関し、過去の戦略評価、今後の戦略のあり方を書くことにしている。うちの会社の国際化は1980年代に既に始まってはいたが正直ほとんど名目的なものに過ぎなかった。しかし90年代後半にグローバリゼーションの嵐が吹き荒れて世界規模でのブランド・マネジメントが当たり前になると、広告代理店もクライアントから本格的な国際化を迫られるようになった。言語や文化などの障壁によって国内代理店がその砦を堅く守ってきた最後の巨大広告市場日本に、海外のメガ・エージェンシーが積極的に参入しようとする動きが活発化。うちの会社も国内のグローバル企業の要請により海外ネットワークの拡充を求められた。国境を越えた戦国時代の到来である。

そんな中ようやくうちの会社と海外のメガ・エージェンシー・グループとの国際提携が整ったのだが、その矢先に提携先グループが別のメガ・エージェンシー・グループに買収されるという思わぬ事態になり、新しい枠組みの中で正式な提携関係ができあがったのがつい最近のこと。社はこの提携をいかに戦略的に活かすべきか、課題が山積みというのが現状である。それだけに論文のテーマとしては臨場感があり、うまく書けば面白いものができると思うが、すべて僕の能力次第だ。

提出期限は12月初旬だが、社のグローバル戦略とはほとんど無縁の仕事をしていたため情報が足りない。そこで10月30日から11月6日にかけて就職活動週間の休みにあわせて一時帰国し、関係部署へのヒアリング、業界誌などのリサーチをするとともに、来年6月の帰国後の配属先希望をかためるために軽い情報収集も行うことにした。今回の帰国で8つの部署を廻ってヒアリングをする際にできるだけその効率を高めるため、既に今週論文の全体構成をつくり、8人の担当者と国際電話でアポを取り、彼らにそれぞれ何を質問するかを細かく書いたメールを送らなくてはならない。彼らにお土産も買っていかないと。今回も慌しい帰国になってしまった。せめて美味しいものを食べよう。

そんな生活を送っている今日この頃。ヤヌス・プロジェクトのお陰でばたばたが続いているが、買い物に行ったり美容院に行ったりする時にはデジカメを持参し、いい絵があったらフレームに収めるようにしている。もう同じ季節を繰り返し見ることはできないから。誰のためでもなく自分のために、文章と写真で貴重な今を残していきたい。

先頭 表紙

whitecatさん、そうなんです。僕はもう入社14年目になるジジイなのですよ(笑)。会社から給料も学費も生活費も全部もらって派遣されているので、会社のために知識を還元するのはいわば当然なのです。余暇の方はちょっとこれから楽しめない時期が続きそうです。12月中旬からの冬休みに期待! / Hidey ( 2002-11-03 02:06 )
マイケルさん、そうそう、それを避けたかったのでいい機会になると思って「絵日記」を始めました。でもまだまだ時間がない中いろいろな場所に出てまわれていないのが悔しいです。季節は足早に通り過ぎていってしまいます(笑)。 / Hidey ( 2002-11-03 02:03 )
口車大王2号さん、アメリカ人の口にするグローバリゼーションという言葉は、往々にして傍若無人で、井の中の蛙をよしとする傲慢さの裏返しなのですが、傲慢さも通ってしまえば規模の経済性、統一ブランドの強みを享受できてしまう、ということもありますね。でもやはり賢い企業ほどグローバリゼーションと組み合わせてローカリゼーションをうまく実践しており、これに関しては常に異文化との摩擦が当たり前だったヨーロッパの方が進んでいるのは間違いないですね。 / Hidey ( 2002-11-03 02:01 )
夢樂堂さん、おっしゃるとおりなのです!敵は必ずしも競合代理店ではなくて変わり切れない自分自身だったりもしますので。我々の世代に課せられた課題は大きいのです。 / Hidey ( 2002-11-03 01:53 )
ガス欠コインさん、でもご存知のとおりまだ危機感をもっている人が多くないのです。どこの業界でもそうですが、トップに近い年寄りの人たちは自分たちの引退後にどうなろうとどうでもいいみたいだし。今回、ちょっとやはり忙しくてフットサル参加はできません。夜だけでも行けるといいのだけど...。 / Hidey ( 2002-11-03 01:49 )
たらママさん、いつも死語と化した「ビッグバン」という言葉が遅まきながら使われていました。日本の広告主、代理店の国際化は遅かったのですが、欧米の場合は早くから全世界共通でブランディングをし、同じ代理店がexecutionするという方式をとっていました。今帰国中ですが連休中も会社の情報センターに詰めております。 / Hidey ( 2002-11-03 01:46 )
今更、こんなこと言うのもなんだけど(?)、会社に在籍しながら留学されてるのですね。私の大学の同期は、仕事を辞めて留学してたので、その感覚しか無かったもんで・・・。仕事と学校の両立だと、ホントに大変ですね。 でも、そんな多忙な中で余暇も楽しんでいるHideyさんはさすがだな〜。(笑) / whitecat ( 2002-10-30 00:25 )
僕の場合、帰任が決まってからバタバタしてあまりマイアミの写真とか撮れなくて悔しい思いをしたなぁ。最終的にはまたいつか来る、ということで自分を納得させましたが。 / マイケル ( 2002-10-28 14:21 )
グローバリゼーションというと、とかくアメリカのみ見てしまいがちですが、アメリカのみ見ていると、道を踏み外します。 / 口車大王2号 ( 2002-10-28 05:25 )
ISO9000のような国際規格はグローバリゼーションの中核になるわけですが、こういう規格づくりになるとヨーロッパ諸国は一日の長がある。つまるところ、コツコツ地道にやっって汗をかいたところが利益を享受できるわけですが、こういう部分ですごいところがあります。もっとも、日本もこういうところは苦手としながらも結構がんばっているのですけれどね。 / 口車大王2号 ( 2002-10-28 05:24 )
先々週(13日から19日)プラハに国際規格の会議で行ってきたのですが、私もこういうことに関わるようになって12年になるのですが、これだけやっているといろいろ見えてくることがあります。グローバリゼーションというとアメリカ型のゴリ押しで自分達の都合の良いようにねじ曲げるというのが目立っていますが、そういう手法は結局一過性でしかない。最近のアメリカ企業の不祥事を見ていると、その点を強く感じます。 / 口車大王2号 ( 2002-10-28 05:20 )
私が最初に勤めた会社は、売り上げの70%以上が海外、しかもお得意さんが共産圏という、極めて特異な会社でした。中国を相手に、一度も赤字を出していないし、有名な宝山製鉄所のプロジェクトの前の国交回復前に受注していたという会社でもあります。そんな、独特のノウハウを持った会社が今や構造不況業種。原因は、一言、私の入社時の次の社長が、社員を大事にしなかったからということにつきます。 / 口車大王2号 ( 2002-10-28 05:12 )
国際化、単に海外勢力とのせめぎあいではなく、世界という土俵の上での競争。大変さが増してきましたね。 / 夢樂堂 ( 2002-10-27 22:36 )
まさに、戦国時代到来ですね。ヤヌスという言葉に妙に惹かれました。でも、オーバーワークには気をつけてください。今度の帰国は忙しそうですね。時間が取れるようでしたら、メールでもください。 / ガス欠コイン ( 2002-10-27 09:13 )
そちらの業界のグローバル化は90年代後半だったんですか。興味深いです。国により生活習慣や文化が違うから、あまりグローバリゼーションは必要ない業界なのかと思っておりました。 / たらママ ( 2002-10-26 11:31 )

2002-10-26 ヤヌス・プロジェクト進行中 1

二年生になって授業が楽になったと思ったら振り出しに戻ってしまった。今週の月曜日までに提出する論文があったため絵日記の更新しかできなかった。あちらは写真のストックがある限り毎日更新しようと決めたので意地で続けているが結構つらい。毎朝4時起きで勉強してまさに蛍の光状態である。

9月15日の日記に書いた「ふたつの顔(ヤヌスとも言う)」を着々と実践している。学生として学びながらも、一企業の社員として現在学んでいることを社の現状分析、将来戦略の策定にいかに結びつけるかを考えるというものだ。今のところ二つの形でプロジェクトが進行している。ひとつはBuilding a Sustainably Successful Enterprise(持続的成功企業の構築、以下BSSE)という授業で提出するペーパー(論文のこと)、もうひとつはGlobalization and Strategyという授業のペーパー。両方ともうちの会社について書くことにより、学問の理解を深めながらいずれ自分が取り組むかもしれない問題を考えるという一石二鳥作戦である。今週月曜日に提出したのが前者のペーパーだった。

以前にも書いたが、BSSEは究極的にはイノベーションを価値創造に結びつけるためのシステムをいかに確立するかを学ぶ授業である。「破壊的技術(disruptive technology)」という概念を用いながら、技術革新が企業の競争や市場に与える影響を論じた「イノベーションのジレンマ」の著者クレイトン・クリステンセンが教える授業なのだが、残念ながら僕は科目登録の関係で別の教授による同じ授業を受けている。しかし様々なセオリーと実在企業のケースを対にして教えるので得るところは非常に大きい。

今回提出のペーパーの目的は授業で学んだ概念を実在の企業にあてはめて企業診断をするという言わば基礎分析的なものだった。ここであまり具体的なことを説明すると長くなるし、概念だけを簡単に書くと抽象的すぎて分からないのでうまくその中間的な説明をしてみたい。

ペーパーではまずうちの会社特有の統合型ビジネスモデルを紹介。海外や国内の他代理店といかに異なるかを論じた。次にうちの会社が稀に見る明快な文化を持つ企業であることを指摘。授業で学んだところでは企業文化とは、その企業が追及すべき価値及びその価値を実現するための方法論という二点において、企業内でどれだけの合意があるかの度合によって決定するということである。

また、授業で学んだ「自然発生的戦略(emergent strategy)」と「意図的戦略(intended strategy)」というフレームにより現状の社の戦略を分析。企業の創成期や大きな環境変化のある時期には自然発生的戦略がとられるもので、これは90年代後半からのグローバリゼーション、デジタリゼーションの波に翻弄されつつ試行錯誤で方向性を見出した当時の社の状況にあてはまる。その後経験を得て意図的戦略の形成が可能になり、それにより様々な革新的プロジェクトが誕生したことを書いた。

さらに社の戦略との合致、社のリソースのキャパシティの制約などの条件によって、どの種類のプロジェクトをいくつ実現するかを戦略的に決定すべきなのだが(この方法論をaggregate project planningと呼ぶ)、それに照らして現在の社の様々なプロジェクトの必然性を論証。激しい環境変化においては革命的技術で新市場を形成する「ブレークスルー」的プロジェクトへのリソース配分の比重が高くなり、次いで次世代技術で新規顧客を獲得する「プラットフォーム」、そして通常の技術改良により既存顧客により多くのサービスを提供する「デリバティブ(派生的商品・サービス)」という順になる実例を示した。

(つづく)

先頭 表紙

りぃなさん、そう言えば「ヤヌスの鏡」とかいうテレビドラマがありましたね。ヤヌスとはすべての行動のはじめを司る二つの顔を持った古代ローマの神のこと(広辞苑より)。ちょっと象徴的でしょ?美容院は日本人の美容師ばかりのところです。パーマかけると100ドル取られるけど、まあアメリカ人にやらせるよりはよっぽどましですからね。 / Hidey ( 2002-11-15 16:57 )
朝4時起床なんて、私にとっては夢のまた夢です・・・。寝るタイミングを逃して4時まで起きているのはしょっちゅうですが(苦笑)もう一つ、つっこむポイントが違うのですが、ヤヌス・プロジェクトって、昼メロのタイトルみたい・・・なんて思ってしまいました、すみません。。今までの基礎勉強が、会社に貢献できる形になっていっているのですね。一瞬の帰国とおっしゃってましたが、本当にお疲れ様でした。美容院は、日本の方のでしょうか? アメリカ人の美容師さんに切ってもらうのは怖くて、結局器用な友達にお願いしています(苦笑) / りぃな ( 2002-11-09 16:43 )

2002-10-12 セクション風景 2

「Shark」:文字通り鮫のことである。うちのセクションのボードには常に小さな鮫のぬいぐるみがぶら下がっていた。要は誰かがちょっとした問題発言をすると「You sharked!」と言って鮫が飛んでくるのだ。問題発言をした者はその授業の残りの時間机の上に鮫を載せていなければならない。別の誰かが問題発言をした場合は選手交代が可能だ。鮫が飛び交うことになる。

たまに豪胆にも教授に対してsharkする奴がいる。不用意にもBill君は我らがスーパー韓国人女性マーケティング教授に彼の趣味についてからかわれ「だから年配の女性は分からないんだよ」と口走った。墓穴を掘った彼は以後三回続けて誰もが恐れる授業のオープニングのたたき台の発言をさせられるはめになった。

「Confusaprof」:学期に一度くらいの割合で学生が皆いつもと違う席に座り、ネームカードだけはもとの席に残して教授を混乱に陥れるというくだらないゲームである。これは相手を間違えると大変なことになるのでしゃれの通じる教授を選ばなくてはならない。成績をつけるために教授のアシスタントが授業中の発言を簡単に記録するのだが、この日ばかりはお手上げになる。記憶力に自信のない教授は諦めて顔とは明らかに異なるネームカード上の名前を読み上げる。するとあてられた者はネームカード上の学生の物真似をして発言しなくてはならない。皆無理矢理ウケ狙いの物真似につなげるような発言しかしないので、深遠な授業は一気に小学生以下にまでレベルを下げる。

その他にも非アメリカ人学生がお国の料理を持ち寄ったpotluck partyや、全員が黒ずくめで朝7:30からシャンパンやビールを飲んだクリスマス・パーティー、学期の最後の授業ではそれぞれの教授のために笑いたっぷりの謝恩会を催したりした。

選択科目ばかりで皆ばらばらの教室で学ぶ二年生になってからは、まだ一度も顔を見ていない者さえある。寂しい限りだ。ネットワーキングのための学校と半ば揶揄されることも多いこの学校だが、セクションメイトだけは生涯無条件の繋がりだと話す卒業生は多いと聞く。授業の負荷が多少なりとも軽くなった今、セクション主催の飲み会にはできるだけ顔を出したいし、そのうち僕の家でも人気の日本料理のディナー・パーティーを開催したいと思っている。


*謝恩会で教授の物真似をするKevinの図


先頭 表紙

そうですね。茶目っ気は大事ですね。でも僕自身お茶目かどうかは自信がないなあ。PAOさんはお茶目な感じ。なんせいつもPAOってるし(笑)。 / Hidey ( 2002-11-03 01:42 )
いくつになっても茶目っ気を忘れずに持っていたいとおもうなあ。 / 走る酔人(PAO) ( 2002-10-27 18:00 )
Hirokoさん、やっぱり?誰もつっこまなかったら自分で書こうと思っていたのですが、よくぞご指摘くださいました。まったく緑のジャケットを着せたいです。 / Hidey@赤ルパンは嫌い ( 2002-10-26 04:32 )
azzurriさん、実はKevinは高校時代秋田で交換留学生として一年ほど過ごしており、日本語はペラペラとは言えないけれど、大変綺麗な発音をします。とてもいい奴です。 / Hidey ( 2002-10-26 04:31 )
りぃなさん、後ろの連中はまさにスカイデックの連中で、謝恩会のときも活躍していました。ところで一番右側に座っているのがジャイアンことJacqueです。この日は起きてます。僕は学級委員の奴を真似をして「では今日のお知らせ…」とかやってました。 / Hidey ( 2002-10-26 04:30 )
KATSUMIさん、僕も高校の頃クラス全員で先生をおちょくったのを思い出しました。教卓をクラスの真中に置いてみたり、アラームがなったら立ち上がって校歌を歌い出したり。けっこうバンカラでいいでしょ? / Hidey ( 2002-10-26 04:27 )
りりさん、Hirokoさんも書いてますがKevinは僕にはどう見てもルパン三世にしか見えません(笑)。そうそう、結構はまるものです。授業の初めから最後まで爆笑の嵐。 / Hidey ( 2002-10-26 04:25 )
KN! Never knew you were an "E"er yourself! You've passed down good traditions... We hope we are still keeping them just the same. I do mind cold calls. / Hidey ( 2002-10-26 04:22 )
トモコさん、そうそうほんの一部なのです。お望みでしたらいつでも替わってさしあげます。 / Hidey ( 2002-10-26 04:19 )
whitecatさん、見えませんか、その図が。想像してください。簡単です(笑)。 / Hidey ( 2002-10-26 04:18 )
パンドラさん、そうですね、辛いものがあるから甘いものが美味しいように。Confusaprofは時々学生の方がconfuseされてました。つい自分の名前を呼ばれると返事をしちゃったりして。 / Hidey ( 2002-10-26 04:17 )
ガス欠コインさん、ぜひ来てみてください!楽しいことばかりですから(笑)。ああ、ちょっと息抜きしたい…。 / Hidey ( 2002-10-26 04:16 )
夢樂堂さん、そうなんです。これがあるからまだ救われます。 / Hidey ( 2002-10-26 04:15 )
しゃどうさん、6人授業というのも学ぶ側の効率はいいけど逃げ場がなくてつらそうですね。 / Hidey ( 2002-10-26 04:14 )
まる子さん、それは素晴らしい。うちの学校も5年ごとにreunionがあります。また何度かボストンを訪れるんだろうな。potluck、僕はしゃぶしゃぶを披露しました。間違いなく一番人気でした。 / Hidey ( 2002-10-26 04:13 )
たらママさん、ネームカードは表も裏も名前が表記されています。教授が教室中歩き回ってもどの角度からも学生を指名できるように。綺麗なお題目ばかりではない、ビジネスプロフェッショナルのための学校ですからね、おっしゃる通りネットワーキングは実に大事です。 / Hidey ( 2002-10-26 04:11 )
「僕ちゃん、ルパ〜ン三〜世ィ」って言ってそう。。。/頭のキレる人達って、笑いのセンスもよさそう♪ 楽しそうでいいな♪ / Hiroko ( 2002-10-20 00:46 )
Kevinさんの表情がとてもイキイキとしていて、場がなごみそうですね。やはり苦楽を共にした仲間はいつまで経っても、大切にしたいですよね。 / azzurri ( 2002-10-16 19:53 )
写真後ろの、見に来ている方々もいい味だしてますね♪よく学び、よく遊べ、というのを思い出します。ところでHideyさんは物真似はなさらないんですかー? / りぃな@にやり。 ( 2002-10-16 17:10 )
息の抜き方って難しいですね。でもHideyさんの話を聞いていると、万国共通のような気がします(笑)。 / KATSUMI@活動再開 ( 2002-10-15 22:15 )
Kevinくんのヒョウキンな表情がいいですね。こういゲーム的な企画って最初は「くだらない」と斜めに見ていても、最後には一番はまっていたりしませんか? / りり ( 2002-10-15 18:34 )
Go "E"ers!! Never mind Cold Call!! / KN(Section E '98) ( 2002-10-15 09:05 )
なんか楽しそう〜。まぁ大変な中の、そのほんの一部分のお楽しみなんでしょうけど。でも、ちょっと羨ましい。 / トモコ ( 2002-10-15 05:23 )
見たいな〜。美人教授のお尻を前に目のやり場に困ってるHideyの図。(笑) しかし、Hideyさんのイメージが・・・? / whitecat ( 2002-10-15 00:21 )
そう、楽しそう! でも、日頃の学びの激しさがあればこそ、なんだろうなと思います。個人的には「Confusaprof」が面白そうだなあ(笑) / パンドラ ( 2002-10-14 21:19 )
これだけ聞いていると、行きたくなりますね(笑)。何にせよ、息抜きは必要ですよ。 / ガス欠コイン ( 2002-10-14 16:30 )
こういう茶目っ気があると嬉しいね。 / 夢樂堂 ( 2002-10-14 09:11 )
ネームカードがあるのね。今とっている授業の学生の人数は6人くらい。席を替えても、すぐにばれちゃいます。でも、イベントがいっぱいあって、楽しそうでいいなぁ。 / しゃどう@ぽっとろっく好き。 ( 2002-10-14 06:12 )
大学時のセクションメイトとは今でも良く会います。そしてこれからもこの付き合いはずっと続くんだろうなぁという確かな予感があります。。。ところで、食いしん坊な私はpotluck partyを週一で希望致します!!笑。鮫のぬいぐるみが机の上に。ははは。 / まる子 ( 2002-10-13 01:52 )
ネームカードがあるんですか。ネットワーキング、これはとても羨ましいことです。 / たらママ ( 2002-10-12 20:50 )

2002-10-12 セクション風景 1

今週のはじめにセクション(学級)のヘッド(学級委員)からセクションメイト全員にメールが廻った。「二年生になってもう同じ教室で会うことはできなくなってしまったけど、セクションEのスピリットを誇示すべく金曜日は揃いのフリースを着よう!」

日本では今どき小学校でも流行らない連帯感の押しつけのような言葉だが、今日キャンパスで会った級友たちは皆背中の天辺の部分に縦長に「E」というデザインをあしらったフリースを着ていた。僕もその一人だった。

誰もが多かれ少なかれ相応のストレスを抱えながら登校していた一年生の頃は、学校生活を少しでも楽しいものにしようと、様々なゲーム性のある企画が持ち上がった。お前らいくつだと思うようなことも少なからずあったが、それなりに肩の力を抜かせてもらったことには違いない。今や既に懐かしく思えてしまうが、我がセクションEの様々なしきたりをご紹介しよう。

「Skydeck awards」:うちの学校の教室は、黒板に向かってU字型の机が段々畑のように重なるという構造をしているのだが、その最上段をスカイデックと呼んでいる。学期ごとに席順が指定されるのだが、スカイデックに座った連中は、毎週金曜日スカイデック・アウォードというイベントを主催しなければならない。要は一週間分の授業中の珍発言を再現して茶化すというものだ。とっちゃん坊やのようなシンガポールのボンボンChunの時代錯誤バブリー発言やら、企業倫理についてシニカルな態度を見せたBrianの決めゼリフ「僕のいたエンロンでは当たり前のことだけどね」やら、教授が何を聞いても「フウィー」と鼻を潰されたような意味不明の相槌をうつイスラエルのItamarやら、何の脈絡もなくいきなり火星探検の重要性を説きはじめるPhelpsやらが槍玉に上がる。

発言だけでなく特筆すべき行動も表彰される。こいつはジャイアンかといった感じの中国人Jacqueは、今週7回居眠りをしたと発表されていた。彼は堂々たる体躯で最前列に座っていながら堂々と寝る。昼休みの後の授業が始まって10分経っても戻ってこないJacqueの机に誰かが枕を置き、「Do not disturb」と書かれた紙を貼ったこともあった。一体枕はどこから出てきたのか?

そう言えば僕も一度表彰された。ストラテジーの授業のベルギー美人教授Estelleは最前列に座っていた僕の目の前でよくあちらを向いてセクション全体に語りかけた。HideyはEstelleのお尻の前で目のやり場に困っていたと発表された。まったくよく見ている。実際あの時は困った。

(つづく)


*Skydeck awardsで居眠りを表彰されるJacqueの図


先頭 表紙

akemiさん、鮫、あげます。 / Hidey ( 2002-10-26 04:09 )
あ、見えた見えた美人教授のヒップに目が釘付けのHideyの図(笑) / akemi ( 2002-10-12 23:09 )

2002-10-09 ダイヤモンドは永遠の輝き 2

こうしてみるとまるでダイヤモンド・マフィアそのものという感じだが、冒頭に書いたとおり、デビアスはそれなりにダイヤモンド業界における世界的な秩序を構築する役割を負ったのも事実だった。

まずCSOは各国のダイヤモンド供給業者に対し米ドルの即金で代金を支払った。運転資金のやりくりが大変辛い供給業者はお陰でかなりキャッシュフローを改善することができた。次にCSOは各国で産出されたダイヤモンドを一手に査定し、これにより国際的に統一された価値基準が初めて形成された。CSOは有無を言わさず宝石商に同一の価格規準によってダイヤモンドを買い取らせたため、末端小売価格にもそれほどばらつきがでなかった。三年に一度CSOは大掛かりな市場調査を行い末端消費者の今後の需要を予測、また流通の各過程での在庫量を測定し、これらによって需要にみあった供給をすることにより、ダイヤモンドの価格を安定させた。

またデビアス本社としては需要を喚起するために大量の広告を出稿。1939年から「ダイヤモンドは永遠の輝き(A diamond is forever)」という有名なコピーを使い、ダイヤモンドの知覚品質を高めた。「婚約指輪は給料二か月分(最近は三か月分のようだが)」という世の男性にとっては実に余計なお世話でしかない基準も設定。これは国によって所得格差があっても統一して使用できる巧妙な基準であった。ケースではこうしたキャンペーンは日本で特に功を奏したとしており、1967年には花嫁の6%しかダイヤモンドの婚約指輪をしていなかったのが1982年には65%にまで上昇したと書いてある。今はほぼ100%と言っていいだろう。すべてデビアスが遥か昔に種をまいた結果なのだ。

これらのあらゆるコントロールにより、デビアスは結果的にダイヤモンドに関わるすべての業者のために安定した国際的な業界構造・システム・規準を構築し、彼らの商売に貢献したのである。

およそあらゆる仲介的企業は、このようにある業界の複数の構成員(供給業者、流通業者、小売業者、末端消費者など)がそれぞれに利益を獲得できるような構造をつくることによって価値を創造し、創造された価値から、上記構成員の誰よりも多い取り分を獲得しようと努力するものである。似たような例としてはF1界の黒幕、バーニー・エクレストン氏がF1という商業的スポーツの全体構造を創り上げ、ファン、コンストラクター、ドライバー、スポンサー、テレビ局などあらゆるステークホルダーに利益をもたらしながら、彼ひとり推定年間6億ドル以上もの利益を搾取しているというケースも学んだ。

近年は不況に加え、デビアスのコントロール外の生産・流通ルートがいくつか確立されたことによってデビアスの地位は相対化され、ダイヤモンドの価格も下がりつつある。しかしデビアス及びそのライバル企業たちはいたずらに価格を下げあって利益を吐き出したくはないので、ある程度互いに暗黙の協定を結び、相変わらず不法に高い利益をあげているはずだ。

ダイヤモンドは永遠に輝きつづける―デビアスの掌で。ということで女性ライターの皆さん、ダイヤモンドを買うときは怒りを込めて買うべし。決して給料何か月分などと踊らされてはいけません。

先頭 表紙

akemiさん、いえ、ちゃんと理解してました。僕の「でも」という接続詞の使い方が意味不明なだけです(笑)。「ところで」くらいのニュアンスだったのです。 / Hidey ( 2002-10-12 16:03 )
書き方が悪かったか…あたしは市場のひとりじめの是非ではなく、単純に男性に高価なモノを買わせる女性の根性が気に入らない、、ということでダイヤモンドに関して書かれた本文につっこみました。(笑) 搾取があっても、あたしの息抜きの空間であってくれたらいいわ>スタバ(だからあんなに店鋪増えてるのか〜納得) / akemi ( 2002-10-12 15:27 )
杏綬さん、はじめまして。おかしくありません!でも余りいないことは事実でしょうね。サッカーがお好きなのですね。皆さんの日記を読んで知りましたが今の日本は週末は夜通しサッカー三昧のようですね。月曜日仕事にならない人が増えたのでは…? / Hidey ( 2002-10-12 15:10 )
夢樂堂さん、僕は月の石とかのほうがよっぽど興味あるのです。宝石は余りに興味がないためデビアスの話も正直知りませんでした。 / Hidey ( 2002-10-12 15:03 )
Emikoさん、おひさしぶりです。僕もこんな話は妻には通じないので話しません(笑)。息子さんはよく教育してあげてくださいね。 / Hidey ( 2002-10-12 15:02 )
ガス欠コインさん、ダイヤモンドは世界でもっとも固い物質ということもあってのことなのでしょうが、確かに個人的にはサファイやヤなんかの方が好きだったりしますからねえ。おっしゃるとおり究極のブランディングですね。でもコインさん、そのセリフ女性に言ったら振られます、間違いなく。 / Hidey ( 2002-10-12 15:00 )
KATSUMIさん、漫画って結構勉強になりますよね。ゴルゴ13なんかでもでてきそう。広告業界・・・笑ってごまかしましょう。まあでもこの業界参入障壁は全然高くないですからね。結局売り手と買い手でどちらの希少性が高いかで相対的な地位が決まるものですが、そういう意味ではやっぱり東京キー局がいちばん強いですかね。もちろん媒体である限り代理店に従う姿勢を取りますが地力はあちらの方がずっと上でしょう。 / Hidey ( 2002-10-12 14:57 )
りりさん、スイート10、そうらしいですね。香港はイギリスの絡みでデビアスの息は確かにかかっていることでしょうね。中国本土は現在別ルートの代表的な経路とのことです。 / Hidey ( 2002-10-12 14:52 )
akemiさんらしいつっこみ、ありがとうございます(笑)。でもakemiさんの大好きなスタバも実はものすごく搾取しているんですよ。南米のコーヒー豆をつくる農家、仲買人、商社など様々な市場参加者がいる中で、スターバックスは最終価格の70%近くをひとりで搾取しているはずです。世の中どこを見回してもそういうことばかりですけどね。 / Hidey ( 2002-10-12 14:50 )
azzurriさん、ダイヤモンド展、僕も行ってみたかったのですが暇がありませんでした。うっとりしてしまうこと自体は当然でしょう!でも男には単純に石一個に何十万、何百万というのはやはり永遠の謎です(笑) / Hidey ( 2002-10-12 14:47 )
りぃなさん、でもアメリカ人ですらマイクロソフトなどは「悪の帝国」と見なしているところは面白いです。僕?僕はおとなしく妻の言うとおりの指輪を買わせていただきました。でも三か月分もしなかったけどね。 / Hidey ( 2002-10-12 14:44 )
はじめまして。…ダイアモンドくれるなら、新しいパソコンの基盤とスカパー撮る為のHDD+DVDレコーダーが欲しいと、いけシャーシャーと日本橋で答えた私は、よっぽどおかしいんでしょうか。…違うか。そういや、とある作家さんの長編国際謀略ものが好きで、そこでダイアモンドを題材にした話がありました。 / 杏綬@でも、ピアスは3つです。 ( 2002-10-12 01:37 )
確かにマフィアしていますね。これを知っている人は多いんだろうけど、やはり光に目がくらむ。。。 / 夢樂堂 ( 2002-10-11 16:44 )
それでも欲しい女心です。でも息子たちにはいずれHideyさんの記事を読ませなくては・・・(もちろん主人には読ませません!) / Emiko ( 2002-10-11 11:41 )
タイトル変わったんですね。カッコいいですよ、これ。 / ガス欠コイン ( 2002-10-10 14:20 )
ローズの話しは何故か知っていました。それにしても、この話しを聞いていると、ダイヤモンドというブランドを構築したという感じがします。エメラルドやサファイアでも良かったはずなのに。ただ、ひとつの鉱石の地位を完璧に確立したという面では、まあ大したもんだと思わなくもないですが。これから女性には「ダイヤモンドの輝きは悪魔の微笑み」とでも伝えるか(笑)。 / ガス欠コイン ( 2002-10-10 14:19 )
その昔「パタリロ!」という漫画で、ダイヤの流通については何となく知っていました。入れと出しの両方を握ると、強いですね。広告業界も同様では? まあ、これを理由にダイヤ不買!とか言うと女性には怒られそうですね(笑)。 / KATSUMI@活動再開 ( 2002-10-09 19:46 )
「スイート10」は供給過剰で余り物を売り捌くために仕組まれた、デ社の日本向けキャンペーンと聞いて以来、「ダイヤ=悪」のイメージがついてしまいました…。自由貿易港に住んでいるのでダイヤモンドの商売については色々聞きますが、全部息がかかっているんでしょうね。ふ〜。 / りり ( 2002-10-09 18:05 )
あああたしは、母から「もらわないと一生後悔する」と念を押されつつも貴金属になんの執着もないもので、ツレの負担を増やしたくなく婚約指輪をもらっていません。金で愛情をはかるようなコピーは噴飯ものだ!などと思ってしまうあたしの前世はやっぱり男性とのことです(笑) その母親譲りのダイヤは子どもの入学式や卒業式にしていっています。^^; / akemi ( 2002-10-09 17:50 )
2年ほど前に上野で「ダイヤモンド展」をやっているのを見に行きました。ジュエリーとしてだけの価値だけではなく、工業用にも多岐にわたって使われている事を知りましたが、デビアス社のことまでは・・・(笑)。高級ジュエラーのダイヤモンドは、ただでさえ高いルースにブランドの価値が加えられ、更に高くて、なかなか手の出ないものに・・・怒りたいものの、やっぱりその美しさにはうっとりしてしまう情けないazzurriだったりします(苦笑)。 / azzurri ( 2002-10-09 16:53 )
ビジネスの基本は、いかに利益を多くあげるか、ですもんね。ある意味、当然というか、なんといいますか。最後の段落に、ぷっと、笑ってしまいました。いつ買える身分になるか分かりませんが、買う時は諦めと共に、でしょうか。それか、王子様(?)に代わりに怒っていただきましょうか。。ところで、Hideyさんはお怒りになられました?(笑) / りぃな ( 2002-10-09 15:54 )

2002-10-09 ダイアモンドは永遠の輝き 1

Globalization and Strategyの授業で女性の永遠の憧れ、ダイヤモンドの流通・販売のからくりについてたっぷり学んだのでご紹介したい。ただちょっとその前におカタイ話。

国際的な環境においてはビジネスを成立させるために不可欠な要因が往々にして不足することがある。各国の消費者の嗜好性などの情報の把握、リーズナブルなコストで生産するための原材料・資金調達、人材確保。そして多国間の取引を円滑に進めるための統一的な規準。国内的なビジネスにおいてはこれらをサポートする諸機関が存在するが、国境をまたいで同様なサービスを展開する機関は少ない。敵味方を問わず同じビジネスに関わる様々な企業が皆こうした不足の状況に苛まれる。こうした有効に仲介的機能を果たす機関の「欠如」を補うのがグローバル企業の役割であり、そこに彼らのチャンスがある、というのがこの授業の大前提である。そのようなグローバル企業の例として授業で一番初めに取り上げられたのが世界のダイヤモンドの流通を長年牛耳ってきたデビアスだった。

1867年、世界で最初のキンバーライト(ダイヤモンドを含む火成岩の鉱脈)が南アフリカで発見された。採鉱には大量の水を使用するためにポンプが必要であり、そのポンプを独占的に供給していたのがセシル・ローズという男だった。彼はポンプの代金の代わりにダイヤモンド採掘権を譲り受けるようになり、これらの権利を束ねてデビアス鉱山会社を設立した。ローズは権謀術数によりライバル会社を破綻の危機に追い込みこれを買収するなどし、世界のダイヤモンドの産出量の95%を手中に収めるに至った。

しかしさらに上手がいた。1908年にナミビアに新たな大鉱脈が発見され、これを獲得したのがアーネスト・オッペンハイマーという人物だったのだが、危機感を持ったデビアスは大量のデビアス株の譲渡によってオッペンハイマーの会社を買収し、オッペンハイマーはデビアスの取締役会に席を持つようになった。彼はその後もあらゆる機会にデビアス株を買い入れ、ついに1929年、デビアスの会長となって実権を握った。

オッペンハイマーは大恐慌によるダイヤモンド業界の危機を逆手にとって、当時世界のダイヤモンドの90%を卸しながらもはや破産寸前のロンドンのシンジケートを買い取りデビアス中央販売機構(CSO)を設立した。これによってデビアスはダイヤモンドの採鉱、流通の両面でほぼ独占的な地位を確立した。

その後ザイールや旧ソ連で南アフリカを凌ぐほどの大量のダイヤモンドを産出する鉱脈が発見されたが、それらはすべてCSOによって流通された。またボツワナではデビアスが新たな鉱脈を発見し、その勢いはますます盛んになった。

CSOは宝石商たちに対して強大な力を持っていた。ダイヤモンドの卸売りはイギリスでCSOが年に10回開催する「サイト」と呼ばれる販売会において行われ、150の「サイトホルダー」と呼ばれる宝石商だけが招待された。「サイトホルダー」はあらかじめ希望するダイヤモンドの量とグレードを申し込み、CSOがそれに従って用意したダイヤモンドを見せられる。この際「サイトホルダー」は、ダイヤモンドが事前の希望と若干違っていても文句を言うことを許されないし、値段の交渉も一切できない。ただ買うか買わないかだけを選択する。しかし現実的には「サイトホルダー」として招待されなくなることを恐れて、宝石商はほとんどの場合見せられたダイヤモンドを言い値で買い上げることになる。規定の価格表が存在するが、CSOは大恐慌以後一度もその値を下げたことがなく、未来永劫下げることはないと宣言していた。

(つづく)

先頭 表紙

りぃなさん、でもローズも凄かったんですよ。ライバル会社を危機に追い込むために、デビアスのダイヤモンドの在庫を一気に市場に放出して価格を下落させて、瀕死の状態になったライバル会社を買い取ったのです。価格の下落はデビアス自身ももちろん傷つくことなのに。その後供給を止めて価格を回復したそうですが。仁義なき世界。 / Hidey ( 2002-10-12 14:42 )
オッペンハイマー、うまいですね。長いものにまかれて、内部から食いやぶったというか。 / りぃな ( 2002-10-09 15:48 )

2002-10-04 江角マキコさんのこと 2

緑の芝生の上でロケ用の椅子に腰掛けていた江角さんの足に蟻が這っていた。スタッフがそれを見て蟻を払おうとすると江角さんは、「いいの。私小さな生き物にも魂があると思っているから乱暴にするのは嫌なの」と言ってゆっくりと蟻を指に乗せて地面に放した。まあそんな風に思う人は世の中にいくらでもいるかもしれないけれど、臆面もなく堂々と口に出せてしまう人はそうはいない。彼女の考え方よりも彼女の行動に僕はしばし雷に撃たれたようになっていた。

ロケ地でケータリングの昼食を皆で食べていると、「それちょうだいよ」と言って僕の皿から食べ物をつまんだりする。そのかわり僕にも彼女の皿から何やら分けてくれた。「こういうのって本当に心が許せるようになるよね。」レストランに入ったときは「よく日本の女の子ってメインディッシュを残すくせにデザートはしっかり注文したりするじゃない?私ああいうのって大嫌い」とも話していた。ロケ地に設置した簡易トイレにまつわるあまり上品とは言えない冗談なども豪快に笑いながら口にしていた。

仕事になると目つきが変わって真剣な表情になる。撮影の合間に名前を呼ばれて何かと思って行ってみると、「思うんだけどあの人とあの人、仕事に気合入ってないよ。だらだらしてやるべきことやってない」と僕に注意を促した。撮影は無事終了し、彼女は我々より一足先に日本へ帰った。

一週間ほどした日曜の朝、我々スタッフは恵比寿の編集スタジオにいた。作業が一段落して少し休憩ということで地下一階のロビーに出ると、なんと江角さんが階段を下りてこちらに向かってきた。「今日だって聞いてたから来ちゃった。」編集に立ち会う女優さんなんて聞いたこともない。まあ今ほど忙しくないし有名ではなかったにしても、それでも、である。普通のモデルだって立会いにギャラが出るわけではないのでそんなことは絶対にしない。

1996年2月末から完成したCMがオンエアされ、僕もようやく落ち着いた生活を取り戻していた。そんなある日オフィスに一枚の絵葉書が届いた。今や知る人ぞ知る達筆で、江角さんは今回の仕事について、そこでの貴重な出会いについて感謝の気持ちを書き綴っていた。彼女は若くして島根の実家を離れ、モデルとしてキャリアを積み頂点を極めた後、当時の僕と同じ29歳という年齢で新しい世界に挑んでいた。来る日も来る日も理不尽極まりない世界に相対しながら、誰にも恥じない自分らしい生き方を貫いていた。芸能界という特殊な設定を取り払ったとしても彼女の姿勢は真っ直ぐで麗しかった。

この9月で江角さん主演の「ショムニ FINAL」が終了したと聞く。日本にいてもテレビドラマをまったく見ないので前作も一度も見たことがないが、週刊モーニング愛読者の僕は坪井千夏の現代人離れしたキップのよさをよく知っている。正直漫画のイメージとはまったく異なるのだが彼女ならではの違った味わいを醸したのだろう。彼女自身軽蔑していた、視聴率狙いで演出過剰な日本独特のドラマになったことは目に見えるようだが、そんなことはお構いなしに自分の仕事をこなす江角さんの姿も目に浮かぶ。決して器用な人ではないけれど、どこまでもありのままに真っ直ぐ伸びて欲しい人である。

先頭 表紙

ナライフさん、ピストルオペラって海外で賞を取るとか取らないとか言われていたやつでしょうか?いい作品を選んで出演しているのですね。よかったよかった。 / Hidey ( 2002-10-26 04:09 )
和代さん、そうだったのですか!まさに真理だと思います。江角さんに似合いそう。 / Hidey ( 2002-10-26 04:08 )
TV等を通じての印象だけで僕も江角さんのことを好きだったのですが、お話を聞いて印象以上の方なのですね。映画『ピストルオペラ』,賛否両論のようですが、僕は大好きです。 / ナライフ ( 2002-10-18 20:29 )
あのね・・・ワタシのセリフでした。。。(^^;;; 真理だと思ってくれますか?Hideyさんも。 / 和代 ( 2002-10-16 22:50 )
lim.さん、いい表現をされますね。たしかにあの人と話すときは僕も背筋が伸びました。ところで、冬になって雪のあかりが美しくなると、間違いなく勉強を放棄して窓辺で酒を飲みます、経験上(笑)。 / Hidey ( 2002-10-09 15:17 )
チップさん、はじめまして。これで商品ご購入の決心がつきましたか(笑)。でも本当にまずは試乗をなさることです。「乗ったら買わなきゃいけないかな」という心理的バリアがあると思いますが、それは自転車屋さん自身が一番心配していること。気軽に貸してもらって家の近所を走ってみてください。 / Hidey@また宣伝になっちゃった ( 2002-10-09 15:15 )
ウサ子さん、もうかれこれ6年前のことですが、彼女の言葉、口調、すべて印象に残っています。そういう意味でも凄い人です。ところで、そのとおり、島根でしたね。ハズカシー。出雲ってのは分かってたんだけど、地理感覚のなさが露呈されてしまいました。さっそく直しときます。 / Hidey ( 2002-10-09 15:12 )
むらぱぱさん、二度もつっこみ、畏れ多いです。残念ながらこちらでは蛍は見たことありません。これは単なる蛍光灯というだけのこと。UPENNにはいましたか。さすが今やMBAランキングトップ校(意味不明)。日本の蛍が見たいです、来年。 / Hidey ( 2002-10-09 15:10 )
おとじろうさん、たしかにゴクミちゃんも江角さんも芯が座ってますね。男としては非常に考えさせれられます。あんな女性たちがもっと増えるといいですね。ショムニ、一度くらいこちらのビデオ屋でレンタルしてみようかなあ。 / Hidey ( 2002-10-09 15:08 )
あややん、そう、タイトル変えたよーん。やっとスッキリしたって感じ。後藤さん、江角さんの他には浅田美代子さんと3年間仕事をさせていただきました。あの人は単純にいい人でした。あのまんまです。そして僕が生まれて初めて好きになったアイドルでもあります(笑)。その話をしたらその当時の浅田さんのアップの写真が表紙になった少年マガジンのテレカ(!)をご本人からいただきました。一応大事にとってあります。 / Hidey ( 2002-10-09 15:07 )
プルーさん、そう言えばあの撮影の頃Oggiの表紙の契約をしてましたね。ハンサムウーマン、言い得て妙ですね。それにしてもあの人は歳を取らない。 / Hidey ( 2002-10-09 15:03 )
りぃなさん、まあ何にしても真面目でしたね。青臭いくらいに。そんな無防備で不器用で純粋なところが心を打ちました。りぃなさんはやるときはちゃんとやる人だと思うけど。 / Hidey ( 2002-10-09 15:01 )
↓向ける→剥ける / Hidey ( 2002-10-09 15:00 )
夢樂堂さん、晩成ですか。なるほど。でも正直彼女は晩成するかどうか、はなはだ疑問ではあります。僕は女優江角マキコにはそれほど興味はなくて人間江角マキコに惚れました。まあ今の芸能界ならキャラクターだけで生きていけちゃうんですけどね。彼女も本当に女優を極めるのなら本当に演じることの奥深さ、自分を客観することを学んでもらいたいし、そうすれば彼女も一皮向けるんでしょうね。大変生意気な言い方ですが。 / Hidey ( 2002-10-09 14:59 )
和代さん、そ、それはドラマのセリフですか?それともローランド氏のこと?いずれにしてもそれ、真理ですね。 / Hidey ( 2002-10-09 14:56 )
たらママさん、その口調だと個人的にはあまりお好きではないようですね(笑)。僭越ながらあのあとより成長した江角さんとまた仕事をして、その仕事振りを見てみたかったですね。僕もあの頃は仕事の何たるかなんて全然分かってなかったし。 / Hidey ( 2002-10-09 14:55 )
Hirokoさん、たしかに皆さんショムニのイメージで捉えている方が多いようですね。裏返すとああいう役以外はそれほどうまく演じていないということなのでしょう。真っ直ぐなだけにそんなに器用な人じゃないし。ところで手塚治虫、僕は「シュマリ」、「三つ目がとおる」、「ユニコ」(なんと贅沢なオールカラーが芸術的に美しい)というところですかね。僕にとって彼の場合はどの作品がって感じではないのです。人が、生き様が、そして成し遂げたことが凄い。 / Hidey ( 2002-10-09 14:52 )
トモコさん、そう、タイトル変わりました(笑)。一目して日記の正確を理解してもらおうと思っていたのであのようにつけましたが正直野暮ったいし重いし、ようやく変えられました。今後はタレントさんで第一線の人と出会う機会はほとんどなくなるような気がします。そういう仕事には就かないと思うので。ちょっと寂しいけど、違う分野の凄い人たちと会いたいと思います。 / Hidey ( 2002-10-09 14:48 )
みなみさん、「燃えるゴミ」は僕も軽く立ち読みしました。あの人っぽい本でしたね。そしてあの達筆がぎっしり並んでいて。ところで、よいお誕生日になりましたか? / Hidey ( 2002-10-09 14:46 )
むらぱぱさん、改名おめでとうございます。ゴクミちゃんのことを昔書いたときも印象が変わったというご意見がありました。そういうの、本人でなくても嬉しいものですね。でもプロは公の場の印象でのみ勝負するのだ。 / Hidey ( 2002-10-09 14:45 )
akemiさん、そのつもりはなかったんだけど、確かに書いた後にakemiさんのことを思い浮かべて笑っちゃったりしてました(笑)。脚立女というのが全然分からなかったんだけど、ドラマのHPを見てようやく納得。やはり漫画とは違う設定のようですね。確かに、お礼状って今の世の中ではなかなかない心遣いですよね。ただしその絵葉書というのが彼女の顔どアップというものだったのでちょっと恥ずかしかったのですが(笑)。 / Hidey ( 2002-10-09 14:43 )
マッキ〜さんもバレーボールやってらしたのですか?そう言えばマッキ〜さんもかつては「マキコ」さんというお名前で書いてらしたんですよね?最近の日記に書いてらっしゃる「しなやかな筋肉、かっこいいカラダ」っていうの、そのまま江角さんのイメージです。 / Hidey ( 2002-10-09 14:40 )
azzurriさん、確かにあの強さ、歯に衣着せぬところが好き嫌いの分かれるところですね。正直彼女との出会いは衝撃でした。あの年の三本の指に入る衝撃だったような気がします。忘れていた純粋なものを思い起こさせてくれたようです。青っぽさが昔の僕に似てたから。 / Hidey ( 2002-10-09 14:38 )
江角さんは背筋がぴんとしてて綺麗な人だと思います。 ところで、冬になったら雪のあかりで勉強されるのでしょうか(笑)? / lim. ( 2002-10-09 13:28 )
かっこいいですねー 以前から好きな女優さんでしたが、さらに高感度UPです。 / チップ ( 2002-10-08 18:04 )
私はしっかりした女性ということでとても好きな女優さんです。お話を聞いてちょっとイメージ通りでうれしかったです。でで出身地ですが多分鳥取ではなく島根のはずです。 / ウサ子 ( 2002-10-08 11:51 )
そちらにも蛍は居ますか。UPENNにもたくさん居ました。「蛍=きれいな清流」というイメージが強いので、不思議な気分です。 / むらぱぱ ( 2002-10-07 15:41 )
ゴクミとはまた違ったカッコよさがありますね。どちらも共通しているのは芯がしっかりしている。ショムニ復活しないかなぁ。 / おとじろう ( 2002-10-07 09:21 )
タイトル変わってる・・。蛍雪の功、遠くから応援しております。江角マキコさん、ピンとした意思がお顔に出てる方の代表のように思います。後藤さんといい、素晴らしい女性とお仕事なさってますね。 / あやや ( 2002-10-07 09:16 )
昔Oggiという雑誌に載っていた頃はそう興味もなかったのだけど、テレビで何度か見て彼女の顔にそういう強い意思が表れているなと思うようになりました。Hideyさんのお話で確信。まさに凛として美しい人って感じ。ハンサムウーマンと呼んでも良いかな。 / プルー ( 2002-10-07 01:18 )
江角さんは、本当の意味で仕事人なんですね。何事も中途半端より、そこまで徹底できる方の方が好きです♪自分がそう出来ないから余計ですね。。 / りぃな ( 2002-10-06 19:53 )
晩成した人の生き方に関心があります。ジュペリや植草甚一は大ファンです。 / 夢樂堂 ( 2002-10-06 08:01 )
別れをどう消化して歩き出すかが見せどころよ(笑)。←意味なし(^^;;; / 和代 ( 2002-10-06 02:26 )
どんな分野であっても、個人的に共感できるタイプであってもなくても、一線で活躍できる人のオーラって、何か違うんですよね。仕事への姿勢や意志も半端じゃない。ある意味、頂点を極めたいなら、駆け出しの頃無給だろうが何だろうが最大限の努力をするのは当然とも思いますけど。 / たらママ ( 2002-10-05 20:30 )
タイトル変わりましたね。初めてでは?? 江角さんは好きな女優さんのひとりで、「ショムニ」のイメージがガッチリとついてしまってます(笑)。 真っ直ぐなところが彼女の魅力ですよね♪ /私も手塚治虫さんの影響をかなりうけました。「リボンの騎士」とか「ブッダ」とか「ブラックジャック」「火の鳥」とかね。。。Hideyさんのお気に入りはなんですか? / Hiroko ( 2002-10-05 18:14 )
あ、タイトル変わってる・・・。それにしてもHideyさんって、素敵な人とたくさんお仕事されてるんですね。第一線で活躍する人と接する機会があるというのは、たとえ違う分野であっても、刺激になりますよね。これからもたくさんよい出逢いがありますように。 / トモコ ( 2002-10-05 17:06 )
「燃えるゴミ」という彼女の本を手にして、ああこの人は凄いなぁと思ったのを覚えています。まずタイトルからして凄いし。その本を紹介する文章を、当時作ってたコピー雑誌に書いてしまったくらいです。あの本どこへやったかな。……それにしても達筆ですよね。 / みなみ ( 2002-10-04 22:58 )
彼女に対する印象が変わりました。とっても一生懸命な人なんですね。見直しました。 / むらぱぱ ( 2002-10-04 19:15 )
冒頭のセリフ…お約束になってます?(笑) 脚立女は(子どもと1〜2回観たことある)実直というか、媚びない凛々しさを持った人なんですね。それとお礼状ってとても大切ですね。今、あまりそういうものを書かない人が多いので余計に価値があるのだと思います。 / akemi ( 2002-10-04 18:36 )
彼女がバレーボール選手だったというのもあるけれど、違う意味もあって親近感を持っています。 / マッキ〜 ( 2002-10-04 18:23 )
江角マキコさんは、女性の間でも賛否両論な女優さんですよね、、、私は自分自身をキチンと持っていて、足を大地にしっかりとつけた印象が強く、好きな女優さんなのですが、Hideyさんのお話を聞いて、思っていた以上の方だったんだと思いました。マスコミに何を言われようと、これからも美しく輝く女優さんでいて欲しいです。 / azzurri ( 2002-10-04 17:38 )

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