himajin top
Hideyの「蛍の光の下で」

帰国に伴い長い間ご愛読いただいたこの日記を終了させていただきます。
もうこのサイトに文章を綴ることはありませんが
もしこの先もおつきあいいただけるようであれば
メールをいただければ幸甚です。
皆様、本当にありがとうございました。お元気で。

絵日記

目次 (総目次)   [次の10件を表示]   表紙

2002-10-26 ヤヌス・プロジェクト進行中 2
2002-10-26 ヤヌス・プロジェクト進行中 1
2002-10-12 セクション風景 2
2002-10-12 セクション風景 1
2002-10-09 ダイヤモンドは永遠の輝き 2
2002-10-09 ダイアモンドは永遠の輝き 1
2002-10-04 江角マキコさんのこと 2
2002-10-04 江角マキコさんのこと 1
2002-09-29 AIBOの真実 4
2002-09-29 AIBOの真実 3


2002-10-26 ヤヌス・プロジェクト進行中 2

そして最後に、これらの新規プロジェクトによる新しいビジネスモデルは多分に社外のリソースを要するが、ここで必要な複数の技術開発は相互関連性が高いため(デジタル技術によるマルチメディア統合など)それらの相互調整が必要になる。これに照らし、単純にアウトソーシングするのではなく子会社を設立して技術を開発させることで、機動性を高めながら自社グループ内での念入りな相互調整を可能にする体制をつくり、さらにノウハウの流出を防いだ社の賢明さを評価した。

今回のペーパーは中間試験の代わりとなり、同じテーマをさらに深めて将来的な提案を含めたペーパーを再度期末に提出しなくてはならない。ちょっとうんざり。

Globalization and Strategyのペーパーではうちの会社のグローバル戦略に関し、過去の戦略評価、今後の戦略のあり方を書くことにしている。うちの会社の国際化は1980年代に既に始まってはいたが正直ほとんど名目的なものに過ぎなかった。しかし90年代後半にグローバリゼーションの嵐が吹き荒れて世界規模でのブランド・マネジメントが当たり前になると、広告代理店もクライアントから本格的な国際化を迫られるようになった。言語や文化などの障壁によって国内代理店がその砦を堅く守ってきた最後の巨大広告市場日本に、海外のメガ・エージェンシーが積極的に参入しようとする動きが活発化。うちの会社も国内のグローバル企業の要請により海外ネットワークの拡充を求められた。国境を越えた戦国時代の到来である。

そんな中ようやくうちの会社と海外のメガ・エージェンシー・グループとの国際提携が整ったのだが、その矢先に提携先グループが別のメガ・エージェンシー・グループに買収されるという思わぬ事態になり、新しい枠組みの中で正式な提携関係ができあがったのがつい最近のこと。社はこの提携をいかに戦略的に活かすべきか、課題が山積みというのが現状である。それだけに論文のテーマとしては臨場感があり、うまく書けば面白いものができると思うが、すべて僕の能力次第だ。

提出期限は12月初旬だが、社のグローバル戦略とはほとんど無縁の仕事をしていたため情報が足りない。そこで10月30日から11月6日にかけて就職活動週間の休みにあわせて一時帰国し、関係部署へのヒアリング、業界誌などのリサーチをするとともに、来年6月の帰国後の配属先希望をかためるために軽い情報収集も行うことにした。今回の帰国で8つの部署を廻ってヒアリングをする際にできるだけその効率を高めるため、既に今週論文の全体構成をつくり、8人の担当者と国際電話でアポを取り、彼らにそれぞれ何を質問するかを細かく書いたメールを送らなくてはならない。彼らにお土産も買っていかないと。今回も慌しい帰国になってしまった。せめて美味しいものを食べよう。

そんな生活を送っている今日この頃。ヤヌス・プロジェクトのお陰でばたばたが続いているが、買い物に行ったり美容院に行ったりする時にはデジカメを持参し、いい絵があったらフレームに収めるようにしている。もう同じ季節を繰り返し見ることはできないから。誰のためでもなく自分のために、文章と写真で貴重な今を残していきたい。

先頭 表紙

whitecatさん、そうなんです。僕はもう入社14年目になるジジイなのですよ(笑)。会社から給料も学費も生活費も全部もらって派遣されているので、会社のために知識を還元するのはいわば当然なのです。余暇の方はちょっとこれから楽しめない時期が続きそうです。12月中旬からの冬休みに期待! / Hidey ( 2002-11-03 02:06 )
マイケルさん、そうそう、それを避けたかったのでいい機会になると思って「絵日記」を始めました。でもまだまだ時間がない中いろいろな場所に出てまわれていないのが悔しいです。季節は足早に通り過ぎていってしまいます(笑)。 / Hidey ( 2002-11-03 02:03 )
口車大王2号さん、アメリカ人の口にするグローバリゼーションという言葉は、往々にして傍若無人で、井の中の蛙をよしとする傲慢さの裏返しなのですが、傲慢さも通ってしまえば規模の経済性、統一ブランドの強みを享受できてしまう、ということもありますね。でもやはり賢い企業ほどグローバリゼーションと組み合わせてローカリゼーションをうまく実践しており、これに関しては常に異文化との摩擦が当たり前だったヨーロッパの方が進んでいるのは間違いないですね。 / Hidey ( 2002-11-03 02:01 )
夢樂堂さん、おっしゃるとおりなのです!敵は必ずしも競合代理店ではなくて変わり切れない自分自身だったりもしますので。我々の世代に課せられた課題は大きいのです。 / Hidey ( 2002-11-03 01:53 )
ガス欠コインさん、でもご存知のとおりまだ危機感をもっている人が多くないのです。どこの業界でもそうですが、トップに近い年寄りの人たちは自分たちの引退後にどうなろうとどうでもいいみたいだし。今回、ちょっとやはり忙しくてフットサル参加はできません。夜だけでも行けるといいのだけど...。 / Hidey ( 2002-11-03 01:49 )
たらママさん、いつも死語と化した「ビッグバン」という言葉が遅まきながら使われていました。日本の広告主、代理店の国際化は遅かったのですが、欧米の場合は早くから全世界共通でブランディングをし、同じ代理店がexecutionするという方式をとっていました。今帰国中ですが連休中も会社の情報センターに詰めております。 / Hidey ( 2002-11-03 01:46 )
今更、こんなこと言うのもなんだけど(?)、会社に在籍しながら留学されてるのですね。私の大学の同期は、仕事を辞めて留学してたので、その感覚しか無かったもんで・・・。仕事と学校の両立だと、ホントに大変ですね。 でも、そんな多忙な中で余暇も楽しんでいるHideyさんはさすがだな〜。(笑) / whitecat ( 2002-10-30 00:25 )
僕の場合、帰任が決まってからバタバタしてあまりマイアミの写真とか撮れなくて悔しい思いをしたなぁ。最終的にはまたいつか来る、ということで自分を納得させましたが。 / マイケル ( 2002-10-28 14:21 )
グローバリゼーションというと、とかくアメリカのみ見てしまいがちですが、アメリカのみ見ていると、道を踏み外します。 / 口車大王2号 ( 2002-10-28 05:25 )
ISO9000のような国際規格はグローバリゼーションの中核になるわけですが、こういう規格づくりになるとヨーロッパ諸国は一日の長がある。つまるところ、コツコツ地道にやっって汗をかいたところが利益を享受できるわけですが、こういう部分ですごいところがあります。もっとも、日本もこういうところは苦手としながらも結構がんばっているのですけれどね。 / 口車大王2号 ( 2002-10-28 05:24 )
先々週(13日から19日)プラハに国際規格の会議で行ってきたのですが、私もこういうことに関わるようになって12年になるのですが、これだけやっているといろいろ見えてくることがあります。グローバリゼーションというとアメリカ型のゴリ押しで自分達の都合の良いようにねじ曲げるというのが目立っていますが、そういう手法は結局一過性でしかない。最近のアメリカ企業の不祥事を見ていると、その点を強く感じます。 / 口車大王2号 ( 2002-10-28 05:20 )
私が最初に勤めた会社は、売り上げの70%以上が海外、しかもお得意さんが共産圏という、極めて特異な会社でした。中国を相手に、一度も赤字を出していないし、有名な宝山製鉄所のプロジェクトの前の国交回復前に受注していたという会社でもあります。そんな、独特のノウハウを持った会社が今や構造不況業種。原因は、一言、私の入社時の次の社長が、社員を大事にしなかったからということにつきます。 / 口車大王2号 ( 2002-10-28 05:12 )
国際化、単に海外勢力とのせめぎあいではなく、世界という土俵の上での競争。大変さが増してきましたね。 / 夢樂堂 ( 2002-10-27 22:36 )
まさに、戦国時代到来ですね。ヤヌスという言葉に妙に惹かれました。でも、オーバーワークには気をつけてください。今度の帰国は忙しそうですね。時間が取れるようでしたら、メールでもください。 / ガス欠コイン ( 2002-10-27 09:13 )
そちらの業界のグローバル化は90年代後半だったんですか。興味深いです。国により生活習慣や文化が違うから、あまりグローバリゼーションは必要ない業界なのかと思っておりました。 / たらママ ( 2002-10-26 11:31 )

2002-10-26 ヤヌス・プロジェクト進行中 1

二年生になって授業が楽になったと思ったら振り出しに戻ってしまった。今週の月曜日までに提出する論文があったため絵日記の更新しかできなかった。あちらは写真のストックがある限り毎日更新しようと決めたので意地で続けているが結構つらい。毎朝4時起きで勉強してまさに蛍の光状態である。

9月15日の日記に書いた「ふたつの顔(ヤヌスとも言う)」を着々と実践している。学生として学びながらも、一企業の社員として現在学んでいることを社の現状分析、将来戦略の策定にいかに結びつけるかを考えるというものだ。今のところ二つの形でプロジェクトが進行している。ひとつはBuilding a Sustainably Successful Enterprise(持続的成功企業の構築、以下BSSE)という授業で提出するペーパー(論文のこと)、もうひとつはGlobalization and Strategyという授業のペーパー。両方ともうちの会社について書くことにより、学問の理解を深めながらいずれ自分が取り組むかもしれない問題を考えるという一石二鳥作戦である。今週月曜日に提出したのが前者のペーパーだった。

以前にも書いたが、BSSEは究極的にはイノベーションを価値創造に結びつけるためのシステムをいかに確立するかを学ぶ授業である。「破壊的技術(disruptive technology)」という概念を用いながら、技術革新が企業の競争や市場に与える影響を論じた「イノベーションのジレンマ」の著者クレイトン・クリステンセンが教える授業なのだが、残念ながら僕は科目登録の関係で別の教授による同じ授業を受けている。しかし様々なセオリーと実在企業のケースを対にして教えるので得るところは非常に大きい。

今回提出のペーパーの目的は授業で学んだ概念を実在の企業にあてはめて企業診断をするという言わば基礎分析的なものだった。ここであまり具体的なことを説明すると長くなるし、概念だけを簡単に書くと抽象的すぎて分からないのでうまくその中間的な説明をしてみたい。

ペーパーではまずうちの会社特有の統合型ビジネスモデルを紹介。海外や国内の他代理店といかに異なるかを論じた。次にうちの会社が稀に見る明快な文化を持つ企業であることを指摘。授業で学んだところでは企業文化とは、その企業が追及すべき価値及びその価値を実現するための方法論という二点において、企業内でどれだけの合意があるかの度合によって決定するということである。

また、授業で学んだ「自然発生的戦略(emergent strategy)」と「意図的戦略(intended strategy)」というフレームにより現状の社の戦略を分析。企業の創成期や大きな環境変化のある時期には自然発生的戦略がとられるもので、これは90年代後半からのグローバリゼーション、デジタリゼーションの波に翻弄されつつ試行錯誤で方向性を見出した当時の社の状況にあてはまる。その後経験を得て意図的戦略の形成が可能になり、それにより様々な革新的プロジェクトが誕生したことを書いた。

さらに社の戦略との合致、社のリソースのキャパシティの制約などの条件によって、どの種類のプロジェクトをいくつ実現するかを戦略的に決定すべきなのだが(この方法論をaggregate project planningと呼ぶ)、それに照らして現在の社の様々なプロジェクトの必然性を論証。激しい環境変化においては革命的技術で新市場を形成する「ブレークスルー」的プロジェクトへのリソース配分の比重が高くなり、次いで次世代技術で新規顧客を獲得する「プラットフォーム」、そして通常の技術改良により既存顧客により多くのサービスを提供する「デリバティブ(派生的商品・サービス)」という順になる実例を示した。

(つづく)

先頭 表紙

りぃなさん、そう言えば「ヤヌスの鏡」とかいうテレビドラマがありましたね。ヤヌスとはすべての行動のはじめを司る二つの顔を持った古代ローマの神のこと(広辞苑より)。ちょっと象徴的でしょ?美容院は日本人の美容師ばかりのところです。パーマかけると100ドル取られるけど、まあアメリカ人にやらせるよりはよっぽどましですからね。 / Hidey ( 2002-11-15 16:57 )
朝4時起床なんて、私にとっては夢のまた夢です・・・。寝るタイミングを逃して4時まで起きているのはしょっちゅうですが(苦笑)もう一つ、つっこむポイントが違うのですが、ヤヌス・プロジェクトって、昼メロのタイトルみたい・・・なんて思ってしまいました、すみません。。今までの基礎勉強が、会社に貢献できる形になっていっているのですね。一瞬の帰国とおっしゃってましたが、本当にお疲れ様でした。美容院は、日本の方のでしょうか? アメリカ人の美容師さんに切ってもらうのは怖くて、結局器用な友達にお願いしています(苦笑) / りぃな ( 2002-11-09 16:43 )

2002-10-12 セクション風景 2

「Shark」:文字通り鮫のことである。うちのセクションのボードには常に小さな鮫のぬいぐるみがぶら下がっていた。要は誰かがちょっとした問題発言をすると「You sharked!」と言って鮫が飛んでくるのだ。問題発言をした者はその授業の残りの時間机の上に鮫を載せていなければならない。別の誰かが問題発言をした場合は選手交代が可能だ。鮫が飛び交うことになる。

たまに豪胆にも教授に対してsharkする奴がいる。不用意にもBill君は我らがスーパー韓国人女性マーケティング教授に彼の趣味についてからかわれ「だから年配の女性は分からないんだよ」と口走った。墓穴を掘った彼は以後三回続けて誰もが恐れる授業のオープニングのたたき台の発言をさせられるはめになった。

「Confusaprof」:学期に一度くらいの割合で学生が皆いつもと違う席に座り、ネームカードだけはもとの席に残して教授を混乱に陥れるというくだらないゲームである。これは相手を間違えると大変なことになるのでしゃれの通じる教授を選ばなくてはならない。成績をつけるために教授のアシスタントが授業中の発言を簡単に記録するのだが、この日ばかりはお手上げになる。記憶力に自信のない教授は諦めて顔とは明らかに異なるネームカード上の名前を読み上げる。するとあてられた者はネームカード上の学生の物真似をして発言しなくてはならない。皆無理矢理ウケ狙いの物真似につなげるような発言しかしないので、深遠な授業は一気に小学生以下にまでレベルを下げる。

その他にも非アメリカ人学生がお国の料理を持ち寄ったpotluck partyや、全員が黒ずくめで朝7:30からシャンパンやビールを飲んだクリスマス・パーティー、学期の最後の授業ではそれぞれの教授のために笑いたっぷりの謝恩会を催したりした。

選択科目ばかりで皆ばらばらの教室で学ぶ二年生になってからは、まだ一度も顔を見ていない者さえある。寂しい限りだ。ネットワーキングのための学校と半ば揶揄されることも多いこの学校だが、セクションメイトだけは生涯無条件の繋がりだと話す卒業生は多いと聞く。授業の負荷が多少なりとも軽くなった今、セクション主催の飲み会にはできるだけ顔を出したいし、そのうち僕の家でも人気の日本料理のディナー・パーティーを開催したいと思っている。


*謝恩会で教授の物真似をするKevinの図


先頭 表紙

そうですね。茶目っ気は大事ですね。でも僕自身お茶目かどうかは自信がないなあ。PAOさんはお茶目な感じ。なんせいつもPAOってるし(笑)。 / Hidey ( 2002-11-03 01:42 )
いくつになっても茶目っ気を忘れずに持っていたいとおもうなあ。 / 走る酔人(PAO) ( 2002-10-27 18:00 )
Hirokoさん、やっぱり?誰もつっこまなかったら自分で書こうと思っていたのですが、よくぞご指摘くださいました。まったく緑のジャケットを着せたいです。 / Hidey@赤ルパンは嫌い ( 2002-10-26 04:32 )
azzurriさん、実はKevinは高校時代秋田で交換留学生として一年ほど過ごしており、日本語はペラペラとは言えないけれど、大変綺麗な発音をします。とてもいい奴です。 / Hidey ( 2002-10-26 04:31 )
りぃなさん、後ろの連中はまさにスカイデックの連中で、謝恩会のときも活躍していました。ところで一番右側に座っているのがジャイアンことJacqueです。この日は起きてます。僕は学級委員の奴を真似をして「では今日のお知らせ…」とかやってました。 / Hidey ( 2002-10-26 04:30 )
KATSUMIさん、僕も高校の頃クラス全員で先生をおちょくったのを思い出しました。教卓をクラスの真中に置いてみたり、アラームがなったら立ち上がって校歌を歌い出したり。けっこうバンカラでいいでしょ? / Hidey ( 2002-10-26 04:27 )
りりさん、Hirokoさんも書いてますがKevinは僕にはどう見てもルパン三世にしか見えません(笑)。そうそう、結構はまるものです。授業の初めから最後まで爆笑の嵐。 / Hidey ( 2002-10-26 04:25 )
KN! Never knew you were an "E"er yourself! You've passed down good traditions... We hope we are still keeping them just the same. I do mind cold calls. / Hidey ( 2002-10-26 04:22 )
トモコさん、そうそうほんの一部なのです。お望みでしたらいつでも替わってさしあげます。 / Hidey ( 2002-10-26 04:19 )
whitecatさん、見えませんか、その図が。想像してください。簡単です(笑)。 / Hidey ( 2002-10-26 04:18 )
パンドラさん、そうですね、辛いものがあるから甘いものが美味しいように。Confusaprofは時々学生の方がconfuseされてました。つい自分の名前を呼ばれると返事をしちゃったりして。 / Hidey ( 2002-10-26 04:17 )
ガス欠コインさん、ぜひ来てみてください!楽しいことばかりですから(笑)。ああ、ちょっと息抜きしたい…。 / Hidey ( 2002-10-26 04:16 )
夢樂堂さん、そうなんです。これがあるからまだ救われます。 / Hidey ( 2002-10-26 04:15 )
しゃどうさん、6人授業というのも学ぶ側の効率はいいけど逃げ場がなくてつらそうですね。 / Hidey ( 2002-10-26 04:14 )
まる子さん、それは素晴らしい。うちの学校も5年ごとにreunionがあります。また何度かボストンを訪れるんだろうな。potluck、僕はしゃぶしゃぶを披露しました。間違いなく一番人気でした。 / Hidey ( 2002-10-26 04:13 )
たらママさん、ネームカードは表も裏も名前が表記されています。教授が教室中歩き回ってもどの角度からも学生を指名できるように。綺麗なお題目ばかりではない、ビジネスプロフェッショナルのための学校ですからね、おっしゃる通りネットワーキングは実に大事です。 / Hidey ( 2002-10-26 04:11 )
「僕ちゃん、ルパ〜ン三〜世ィ」って言ってそう。。。/頭のキレる人達って、笑いのセンスもよさそう♪ 楽しそうでいいな♪ / Hiroko ( 2002-10-20 00:46 )
Kevinさんの表情がとてもイキイキとしていて、場がなごみそうですね。やはり苦楽を共にした仲間はいつまで経っても、大切にしたいですよね。 / azzurri ( 2002-10-16 19:53 )
写真後ろの、見に来ている方々もいい味だしてますね♪よく学び、よく遊べ、というのを思い出します。ところでHideyさんは物真似はなさらないんですかー? / りぃな@にやり。 ( 2002-10-16 17:10 )
息の抜き方って難しいですね。でもHideyさんの話を聞いていると、万国共通のような気がします(笑)。 / KATSUMI@活動再開 ( 2002-10-15 22:15 )
Kevinくんのヒョウキンな表情がいいですね。こういゲーム的な企画って最初は「くだらない」と斜めに見ていても、最後には一番はまっていたりしませんか? / りり ( 2002-10-15 18:34 )
Go "E"ers!! Never mind Cold Call!! / KN(Section E '98) ( 2002-10-15 09:05 )
なんか楽しそう〜。まぁ大変な中の、そのほんの一部分のお楽しみなんでしょうけど。でも、ちょっと羨ましい。 / トモコ ( 2002-10-15 05:23 )
見たいな〜。美人教授のお尻を前に目のやり場に困ってるHideyの図。(笑) しかし、Hideyさんのイメージが・・・? / whitecat ( 2002-10-15 00:21 )
そう、楽しそう! でも、日頃の学びの激しさがあればこそ、なんだろうなと思います。個人的には「Confusaprof」が面白そうだなあ(笑) / パンドラ ( 2002-10-14 21:19 )
これだけ聞いていると、行きたくなりますね(笑)。何にせよ、息抜きは必要ですよ。 / ガス欠コイン ( 2002-10-14 16:30 )
こういう茶目っ気があると嬉しいね。 / 夢樂堂 ( 2002-10-14 09:11 )
ネームカードがあるのね。今とっている授業の学生の人数は6人くらい。席を替えても、すぐにばれちゃいます。でも、イベントがいっぱいあって、楽しそうでいいなぁ。 / しゃどう@ぽっとろっく好き。 ( 2002-10-14 06:12 )
大学時のセクションメイトとは今でも良く会います。そしてこれからもこの付き合いはずっと続くんだろうなぁという確かな予感があります。。。ところで、食いしん坊な私はpotluck partyを週一で希望致します!!笑。鮫のぬいぐるみが机の上に。ははは。 / まる子 ( 2002-10-13 01:52 )
ネームカードがあるんですか。ネットワーキング、これはとても羨ましいことです。 / たらママ ( 2002-10-12 20:50 )

2002-10-12 セクション風景 1

今週のはじめにセクション(学級)のヘッド(学級委員)からセクションメイト全員にメールが廻った。「二年生になってもう同じ教室で会うことはできなくなってしまったけど、セクションEのスピリットを誇示すべく金曜日は揃いのフリースを着よう!」

日本では今どき小学校でも流行らない連帯感の押しつけのような言葉だが、今日キャンパスで会った級友たちは皆背中の天辺の部分に縦長に「E」というデザインをあしらったフリースを着ていた。僕もその一人だった。

誰もが多かれ少なかれ相応のストレスを抱えながら登校していた一年生の頃は、学校生活を少しでも楽しいものにしようと、様々なゲーム性のある企画が持ち上がった。お前らいくつだと思うようなことも少なからずあったが、それなりに肩の力を抜かせてもらったことには違いない。今や既に懐かしく思えてしまうが、我がセクションEの様々なしきたりをご紹介しよう。

「Skydeck awards」:うちの学校の教室は、黒板に向かってU字型の机が段々畑のように重なるという構造をしているのだが、その最上段をスカイデックと呼んでいる。学期ごとに席順が指定されるのだが、スカイデックに座った連中は、毎週金曜日スカイデック・アウォードというイベントを主催しなければならない。要は一週間分の授業中の珍発言を再現して茶化すというものだ。とっちゃん坊やのようなシンガポールのボンボンChunの時代錯誤バブリー発言やら、企業倫理についてシニカルな態度を見せたBrianの決めゼリフ「僕のいたエンロンでは当たり前のことだけどね」やら、教授が何を聞いても「フウィー」と鼻を潰されたような意味不明の相槌をうつイスラエルのItamarやら、何の脈絡もなくいきなり火星探検の重要性を説きはじめるPhelpsやらが槍玉に上がる。

発言だけでなく特筆すべき行動も表彰される。こいつはジャイアンかといった感じの中国人Jacqueは、今週7回居眠りをしたと発表されていた。彼は堂々たる体躯で最前列に座っていながら堂々と寝る。昼休みの後の授業が始まって10分経っても戻ってこないJacqueの机に誰かが枕を置き、「Do not disturb」と書かれた紙を貼ったこともあった。一体枕はどこから出てきたのか?

そう言えば僕も一度表彰された。ストラテジーの授業のベルギー美人教授Estelleは最前列に座っていた僕の目の前でよくあちらを向いてセクション全体に語りかけた。HideyはEstelleのお尻の前で目のやり場に困っていたと発表された。まったくよく見ている。実際あの時は困った。

(つづく)


*Skydeck awardsで居眠りを表彰されるJacqueの図


先頭 表紙

akemiさん、鮫、あげます。 / Hidey ( 2002-10-26 04:09 )
あ、見えた見えた美人教授のヒップに目が釘付けのHideyの図(笑) / akemi ( 2002-10-12 23:09 )

2002-10-09 ダイヤモンドは永遠の輝き 2

こうしてみるとまるでダイヤモンド・マフィアそのものという感じだが、冒頭に書いたとおり、デビアスはそれなりにダイヤモンド業界における世界的な秩序を構築する役割を負ったのも事実だった。

まずCSOは各国のダイヤモンド供給業者に対し米ドルの即金で代金を支払った。運転資金のやりくりが大変辛い供給業者はお陰でかなりキャッシュフローを改善することができた。次にCSOは各国で産出されたダイヤモンドを一手に査定し、これにより国際的に統一された価値基準が初めて形成された。CSOは有無を言わさず宝石商に同一の価格規準によってダイヤモンドを買い取らせたため、末端小売価格にもそれほどばらつきがでなかった。三年に一度CSOは大掛かりな市場調査を行い末端消費者の今後の需要を予測、また流通の各過程での在庫量を測定し、これらによって需要にみあった供給をすることにより、ダイヤモンドの価格を安定させた。

またデビアス本社としては需要を喚起するために大量の広告を出稿。1939年から「ダイヤモンドは永遠の輝き(A diamond is forever)」という有名なコピーを使い、ダイヤモンドの知覚品質を高めた。「婚約指輪は給料二か月分(最近は三か月分のようだが)」という世の男性にとっては実に余計なお世話でしかない基準も設定。これは国によって所得格差があっても統一して使用できる巧妙な基準であった。ケースではこうしたキャンペーンは日本で特に功を奏したとしており、1967年には花嫁の6%しかダイヤモンドの婚約指輪をしていなかったのが1982年には65%にまで上昇したと書いてある。今はほぼ100%と言っていいだろう。すべてデビアスが遥か昔に種をまいた結果なのだ。

これらのあらゆるコントロールにより、デビアスは結果的にダイヤモンドに関わるすべての業者のために安定した国際的な業界構造・システム・規準を構築し、彼らの商売に貢献したのである。

およそあらゆる仲介的企業は、このようにある業界の複数の構成員(供給業者、流通業者、小売業者、末端消費者など)がそれぞれに利益を獲得できるような構造をつくることによって価値を創造し、創造された価値から、上記構成員の誰よりも多い取り分を獲得しようと努力するものである。似たような例としてはF1界の黒幕、バーニー・エクレストン氏がF1という商業的スポーツの全体構造を創り上げ、ファン、コンストラクター、ドライバー、スポンサー、テレビ局などあらゆるステークホルダーに利益をもたらしながら、彼ひとり推定年間6億ドル以上もの利益を搾取しているというケースも学んだ。

近年は不況に加え、デビアスのコントロール外の生産・流通ルートがいくつか確立されたことによってデビアスの地位は相対化され、ダイヤモンドの価格も下がりつつある。しかしデビアス及びそのライバル企業たちはいたずらに価格を下げあって利益を吐き出したくはないので、ある程度互いに暗黙の協定を結び、相変わらず不法に高い利益をあげているはずだ。

ダイヤモンドは永遠に輝きつづける―デビアスの掌で。ということで女性ライターの皆さん、ダイヤモンドを買うときは怒りを込めて買うべし。決して給料何か月分などと踊らされてはいけません。

先頭 表紙

akemiさん、いえ、ちゃんと理解してました。僕の「でも」という接続詞の使い方が意味不明なだけです(笑)。「ところで」くらいのニュアンスだったのです。 / Hidey ( 2002-10-12 16:03 )
書き方が悪かったか…あたしは市場のひとりじめの是非ではなく、単純に男性に高価なモノを買わせる女性の根性が気に入らない、、ということでダイヤモンドに関して書かれた本文につっこみました。(笑) 搾取があっても、あたしの息抜きの空間であってくれたらいいわ>スタバ(だからあんなに店鋪増えてるのか〜納得) / akemi ( 2002-10-12 15:27 )
杏綬さん、はじめまして。おかしくありません!でも余りいないことは事実でしょうね。サッカーがお好きなのですね。皆さんの日記を読んで知りましたが今の日本は週末は夜通しサッカー三昧のようですね。月曜日仕事にならない人が増えたのでは…? / Hidey ( 2002-10-12 15:10 )
夢樂堂さん、僕は月の石とかのほうがよっぽど興味あるのです。宝石は余りに興味がないためデビアスの話も正直知りませんでした。 / Hidey ( 2002-10-12 15:03 )
Emikoさん、おひさしぶりです。僕もこんな話は妻には通じないので話しません(笑)。息子さんはよく教育してあげてくださいね。 / Hidey ( 2002-10-12 15:02 )
ガス欠コインさん、ダイヤモンドは世界でもっとも固い物質ということもあってのことなのでしょうが、確かに個人的にはサファイやヤなんかの方が好きだったりしますからねえ。おっしゃるとおり究極のブランディングですね。でもコインさん、そのセリフ女性に言ったら振られます、間違いなく。 / Hidey ( 2002-10-12 15:00 )
KATSUMIさん、漫画って結構勉強になりますよね。ゴルゴ13なんかでもでてきそう。広告業界・・・笑ってごまかしましょう。まあでもこの業界参入障壁は全然高くないですからね。結局売り手と買い手でどちらの希少性が高いかで相対的な地位が決まるものですが、そういう意味ではやっぱり東京キー局がいちばん強いですかね。もちろん媒体である限り代理店に従う姿勢を取りますが地力はあちらの方がずっと上でしょう。 / Hidey ( 2002-10-12 14:57 )
りりさん、スイート10、そうらしいですね。香港はイギリスの絡みでデビアスの息は確かにかかっていることでしょうね。中国本土は現在別ルートの代表的な経路とのことです。 / Hidey ( 2002-10-12 14:52 )
akemiさんらしいつっこみ、ありがとうございます(笑)。でもakemiさんの大好きなスタバも実はものすごく搾取しているんですよ。南米のコーヒー豆をつくる農家、仲買人、商社など様々な市場参加者がいる中で、スターバックスは最終価格の70%近くをひとりで搾取しているはずです。世の中どこを見回してもそういうことばかりですけどね。 / Hidey ( 2002-10-12 14:50 )
azzurriさん、ダイヤモンド展、僕も行ってみたかったのですが暇がありませんでした。うっとりしてしまうこと自体は当然でしょう!でも男には単純に石一個に何十万、何百万というのはやはり永遠の謎です(笑) / Hidey ( 2002-10-12 14:47 )
りぃなさん、でもアメリカ人ですらマイクロソフトなどは「悪の帝国」と見なしているところは面白いです。僕?僕はおとなしく妻の言うとおりの指輪を買わせていただきました。でも三か月分もしなかったけどね。 / Hidey ( 2002-10-12 14:44 )
はじめまして。…ダイアモンドくれるなら、新しいパソコンの基盤とスカパー撮る為のHDD+DVDレコーダーが欲しいと、いけシャーシャーと日本橋で答えた私は、よっぽどおかしいんでしょうか。…違うか。そういや、とある作家さんの長編国際謀略ものが好きで、そこでダイアモンドを題材にした話がありました。 / 杏綬@でも、ピアスは3つです。 ( 2002-10-12 01:37 )
確かにマフィアしていますね。これを知っている人は多いんだろうけど、やはり光に目がくらむ。。。 / 夢樂堂 ( 2002-10-11 16:44 )
それでも欲しい女心です。でも息子たちにはいずれHideyさんの記事を読ませなくては・・・(もちろん主人には読ませません!) / Emiko ( 2002-10-11 11:41 )
タイトル変わったんですね。カッコいいですよ、これ。 / ガス欠コイン ( 2002-10-10 14:20 )
ローズの話しは何故か知っていました。それにしても、この話しを聞いていると、ダイヤモンドというブランドを構築したという感じがします。エメラルドやサファイアでも良かったはずなのに。ただ、ひとつの鉱石の地位を完璧に確立したという面では、まあ大したもんだと思わなくもないですが。これから女性には「ダイヤモンドの輝きは悪魔の微笑み」とでも伝えるか(笑)。 / ガス欠コイン ( 2002-10-10 14:19 )
その昔「パタリロ!」という漫画で、ダイヤの流通については何となく知っていました。入れと出しの両方を握ると、強いですね。広告業界も同様では? まあ、これを理由にダイヤ不買!とか言うと女性には怒られそうですね(笑)。 / KATSUMI@活動再開 ( 2002-10-09 19:46 )
「スイート10」は供給過剰で余り物を売り捌くために仕組まれた、デ社の日本向けキャンペーンと聞いて以来、「ダイヤ=悪」のイメージがついてしまいました…。自由貿易港に住んでいるのでダイヤモンドの商売については色々聞きますが、全部息がかかっているんでしょうね。ふ〜。 / りり ( 2002-10-09 18:05 )
あああたしは、母から「もらわないと一生後悔する」と念を押されつつも貴金属になんの執着もないもので、ツレの負担を増やしたくなく婚約指輪をもらっていません。金で愛情をはかるようなコピーは噴飯ものだ!などと思ってしまうあたしの前世はやっぱり男性とのことです(笑) その母親譲りのダイヤは子どもの入学式や卒業式にしていっています。^^; / akemi ( 2002-10-09 17:50 )
2年ほど前に上野で「ダイヤモンド展」をやっているのを見に行きました。ジュエリーとしてだけの価値だけではなく、工業用にも多岐にわたって使われている事を知りましたが、デビアス社のことまでは・・・(笑)。高級ジュエラーのダイヤモンドは、ただでさえ高いルースにブランドの価値が加えられ、更に高くて、なかなか手の出ないものに・・・怒りたいものの、やっぱりその美しさにはうっとりしてしまう情けないazzurriだったりします(苦笑)。 / azzurri ( 2002-10-09 16:53 )
ビジネスの基本は、いかに利益を多くあげるか、ですもんね。ある意味、当然というか、なんといいますか。最後の段落に、ぷっと、笑ってしまいました。いつ買える身分になるか分かりませんが、買う時は諦めと共に、でしょうか。それか、王子様(?)に代わりに怒っていただきましょうか。。ところで、Hideyさんはお怒りになられました?(笑) / りぃな ( 2002-10-09 15:54 )

2002-10-09 ダイアモンドは永遠の輝き 1

Globalization and Strategyの授業で女性の永遠の憧れ、ダイヤモンドの流通・販売のからくりについてたっぷり学んだのでご紹介したい。ただちょっとその前におカタイ話。

国際的な環境においてはビジネスを成立させるために不可欠な要因が往々にして不足することがある。各国の消費者の嗜好性などの情報の把握、リーズナブルなコストで生産するための原材料・資金調達、人材確保。そして多国間の取引を円滑に進めるための統一的な規準。国内的なビジネスにおいてはこれらをサポートする諸機関が存在するが、国境をまたいで同様なサービスを展開する機関は少ない。敵味方を問わず同じビジネスに関わる様々な企業が皆こうした不足の状況に苛まれる。こうした有効に仲介的機能を果たす機関の「欠如」を補うのがグローバル企業の役割であり、そこに彼らのチャンスがある、というのがこの授業の大前提である。そのようなグローバル企業の例として授業で一番初めに取り上げられたのが世界のダイヤモンドの流通を長年牛耳ってきたデビアスだった。

1867年、世界で最初のキンバーライト(ダイヤモンドを含む火成岩の鉱脈)が南アフリカで発見された。採鉱には大量の水を使用するためにポンプが必要であり、そのポンプを独占的に供給していたのがセシル・ローズという男だった。彼はポンプの代金の代わりにダイヤモンド採掘権を譲り受けるようになり、これらの権利を束ねてデビアス鉱山会社を設立した。ローズは権謀術数によりライバル会社を破綻の危機に追い込みこれを買収するなどし、世界のダイヤモンドの産出量の95%を手中に収めるに至った。

しかしさらに上手がいた。1908年にナミビアに新たな大鉱脈が発見され、これを獲得したのがアーネスト・オッペンハイマーという人物だったのだが、危機感を持ったデビアスは大量のデビアス株の譲渡によってオッペンハイマーの会社を買収し、オッペンハイマーはデビアスの取締役会に席を持つようになった。彼はその後もあらゆる機会にデビアス株を買い入れ、ついに1929年、デビアスの会長となって実権を握った。

オッペンハイマーは大恐慌によるダイヤモンド業界の危機を逆手にとって、当時世界のダイヤモンドの90%を卸しながらもはや破産寸前のロンドンのシンジケートを買い取りデビアス中央販売機構(CSO)を設立した。これによってデビアスはダイヤモンドの採鉱、流通の両面でほぼ独占的な地位を確立した。

その後ザイールや旧ソ連で南アフリカを凌ぐほどの大量のダイヤモンドを産出する鉱脈が発見されたが、それらはすべてCSOによって流通された。またボツワナではデビアスが新たな鉱脈を発見し、その勢いはますます盛んになった。

CSOは宝石商たちに対して強大な力を持っていた。ダイヤモンドの卸売りはイギリスでCSOが年に10回開催する「サイト」と呼ばれる販売会において行われ、150の「サイトホルダー」と呼ばれる宝石商だけが招待された。「サイトホルダー」はあらかじめ希望するダイヤモンドの量とグレードを申し込み、CSOがそれに従って用意したダイヤモンドを見せられる。この際「サイトホルダー」は、ダイヤモンドが事前の希望と若干違っていても文句を言うことを許されないし、値段の交渉も一切できない。ただ買うか買わないかだけを選択する。しかし現実的には「サイトホルダー」として招待されなくなることを恐れて、宝石商はほとんどの場合見せられたダイヤモンドを言い値で買い上げることになる。規定の価格表が存在するが、CSOは大恐慌以後一度もその値を下げたことがなく、未来永劫下げることはないと宣言していた。

(つづく)

先頭 表紙

りぃなさん、でもローズも凄かったんですよ。ライバル会社を危機に追い込むために、デビアスのダイヤモンドの在庫を一気に市場に放出して価格を下落させて、瀕死の状態になったライバル会社を買い取ったのです。価格の下落はデビアス自身ももちろん傷つくことなのに。その後供給を止めて価格を回復したそうですが。仁義なき世界。 / Hidey ( 2002-10-12 14:42 )
オッペンハイマー、うまいですね。長いものにまかれて、内部から食いやぶったというか。 / りぃな ( 2002-10-09 15:48 )

2002-10-04 江角マキコさんのこと 2

緑の芝生の上でロケ用の椅子に腰掛けていた江角さんの足に蟻が這っていた。スタッフがそれを見て蟻を払おうとすると江角さんは、「いいの。私小さな生き物にも魂があると思っているから乱暴にするのは嫌なの」と言ってゆっくりと蟻を指に乗せて地面に放した。まあそんな風に思う人は世の中にいくらでもいるかもしれないけれど、臆面もなく堂々と口に出せてしまう人はそうはいない。彼女の考え方よりも彼女の行動に僕はしばし雷に撃たれたようになっていた。

ロケ地でケータリングの昼食を皆で食べていると、「それちょうだいよ」と言って僕の皿から食べ物をつまんだりする。そのかわり僕にも彼女の皿から何やら分けてくれた。「こういうのって本当に心が許せるようになるよね。」レストランに入ったときは「よく日本の女の子ってメインディッシュを残すくせにデザートはしっかり注文したりするじゃない?私ああいうのって大嫌い」とも話していた。ロケ地に設置した簡易トイレにまつわるあまり上品とは言えない冗談なども豪快に笑いながら口にしていた。

仕事になると目つきが変わって真剣な表情になる。撮影の合間に名前を呼ばれて何かと思って行ってみると、「思うんだけどあの人とあの人、仕事に気合入ってないよ。だらだらしてやるべきことやってない」と僕に注意を促した。撮影は無事終了し、彼女は我々より一足先に日本へ帰った。

一週間ほどした日曜の朝、我々スタッフは恵比寿の編集スタジオにいた。作業が一段落して少し休憩ということで地下一階のロビーに出ると、なんと江角さんが階段を下りてこちらに向かってきた。「今日だって聞いてたから来ちゃった。」編集に立ち会う女優さんなんて聞いたこともない。まあ今ほど忙しくないし有名ではなかったにしても、それでも、である。普通のモデルだって立会いにギャラが出るわけではないのでそんなことは絶対にしない。

1996年2月末から完成したCMがオンエアされ、僕もようやく落ち着いた生活を取り戻していた。そんなある日オフィスに一枚の絵葉書が届いた。今や知る人ぞ知る達筆で、江角さんは今回の仕事について、そこでの貴重な出会いについて感謝の気持ちを書き綴っていた。彼女は若くして島根の実家を離れ、モデルとしてキャリアを積み頂点を極めた後、当時の僕と同じ29歳という年齢で新しい世界に挑んでいた。来る日も来る日も理不尽極まりない世界に相対しながら、誰にも恥じない自分らしい生き方を貫いていた。芸能界という特殊な設定を取り払ったとしても彼女の姿勢は真っ直ぐで麗しかった。

この9月で江角さん主演の「ショムニ FINAL」が終了したと聞く。日本にいてもテレビドラマをまったく見ないので前作も一度も見たことがないが、週刊モーニング愛読者の僕は坪井千夏の現代人離れしたキップのよさをよく知っている。正直漫画のイメージとはまったく異なるのだが彼女ならではの違った味わいを醸したのだろう。彼女自身軽蔑していた、視聴率狙いで演出過剰な日本独特のドラマになったことは目に見えるようだが、そんなことはお構いなしに自分の仕事をこなす江角さんの姿も目に浮かぶ。決して器用な人ではないけれど、どこまでもありのままに真っ直ぐ伸びて欲しい人である。

先頭 表紙

ナライフさん、ピストルオペラって海外で賞を取るとか取らないとか言われていたやつでしょうか?いい作品を選んで出演しているのですね。よかったよかった。 / Hidey ( 2002-10-26 04:09 )
和代さん、そうだったのですか!まさに真理だと思います。江角さんに似合いそう。 / Hidey ( 2002-10-26 04:08 )
TV等を通じての印象だけで僕も江角さんのことを好きだったのですが、お話を聞いて印象以上の方なのですね。映画『ピストルオペラ』,賛否両論のようですが、僕は大好きです。 / ナライフ ( 2002-10-18 20:29 )
あのね・・・ワタシのセリフでした。。。(^^;;; 真理だと思ってくれますか?Hideyさんも。 / 和代 ( 2002-10-16 22:50 )
lim.さん、いい表現をされますね。たしかにあの人と話すときは僕も背筋が伸びました。ところで、冬になって雪のあかりが美しくなると、間違いなく勉強を放棄して窓辺で酒を飲みます、経験上(笑)。 / Hidey ( 2002-10-09 15:17 )
チップさん、はじめまして。これで商品ご購入の決心がつきましたか(笑)。でも本当にまずは試乗をなさることです。「乗ったら買わなきゃいけないかな」という心理的バリアがあると思いますが、それは自転車屋さん自身が一番心配していること。気軽に貸してもらって家の近所を走ってみてください。 / Hidey@また宣伝になっちゃった ( 2002-10-09 15:15 )
ウサ子さん、もうかれこれ6年前のことですが、彼女の言葉、口調、すべて印象に残っています。そういう意味でも凄い人です。ところで、そのとおり、島根でしたね。ハズカシー。出雲ってのは分かってたんだけど、地理感覚のなさが露呈されてしまいました。さっそく直しときます。 / Hidey ( 2002-10-09 15:12 )
むらぱぱさん、二度もつっこみ、畏れ多いです。残念ながらこちらでは蛍は見たことありません。これは単なる蛍光灯というだけのこと。UPENNにはいましたか。さすが今やMBAランキングトップ校(意味不明)。日本の蛍が見たいです、来年。 / Hidey ( 2002-10-09 15:10 )
おとじろうさん、たしかにゴクミちゃんも江角さんも芯が座ってますね。男としては非常に考えさせれられます。あんな女性たちがもっと増えるといいですね。ショムニ、一度くらいこちらのビデオ屋でレンタルしてみようかなあ。 / Hidey ( 2002-10-09 15:08 )
あややん、そう、タイトル変えたよーん。やっとスッキリしたって感じ。後藤さん、江角さんの他には浅田美代子さんと3年間仕事をさせていただきました。あの人は単純にいい人でした。あのまんまです。そして僕が生まれて初めて好きになったアイドルでもあります(笑)。その話をしたらその当時の浅田さんのアップの写真が表紙になった少年マガジンのテレカ(!)をご本人からいただきました。一応大事にとってあります。 / Hidey ( 2002-10-09 15:07 )
プルーさん、そう言えばあの撮影の頃Oggiの表紙の契約をしてましたね。ハンサムウーマン、言い得て妙ですね。それにしてもあの人は歳を取らない。 / Hidey ( 2002-10-09 15:03 )
りぃなさん、まあ何にしても真面目でしたね。青臭いくらいに。そんな無防備で不器用で純粋なところが心を打ちました。りぃなさんはやるときはちゃんとやる人だと思うけど。 / Hidey ( 2002-10-09 15:01 )
↓向ける→剥ける / Hidey ( 2002-10-09 15:00 )
夢樂堂さん、晩成ですか。なるほど。でも正直彼女は晩成するかどうか、はなはだ疑問ではあります。僕は女優江角マキコにはそれほど興味はなくて人間江角マキコに惚れました。まあ今の芸能界ならキャラクターだけで生きていけちゃうんですけどね。彼女も本当に女優を極めるのなら本当に演じることの奥深さ、自分を客観することを学んでもらいたいし、そうすれば彼女も一皮向けるんでしょうね。大変生意気な言い方ですが。 / Hidey ( 2002-10-09 14:59 )
和代さん、そ、それはドラマのセリフですか?それともローランド氏のこと?いずれにしてもそれ、真理ですね。 / Hidey ( 2002-10-09 14:56 )
たらママさん、その口調だと個人的にはあまりお好きではないようですね(笑)。僭越ながらあのあとより成長した江角さんとまた仕事をして、その仕事振りを見てみたかったですね。僕もあの頃は仕事の何たるかなんて全然分かってなかったし。 / Hidey ( 2002-10-09 14:55 )
Hirokoさん、たしかに皆さんショムニのイメージで捉えている方が多いようですね。裏返すとああいう役以外はそれほどうまく演じていないということなのでしょう。真っ直ぐなだけにそんなに器用な人じゃないし。ところで手塚治虫、僕は「シュマリ」、「三つ目がとおる」、「ユニコ」(なんと贅沢なオールカラーが芸術的に美しい)というところですかね。僕にとって彼の場合はどの作品がって感じではないのです。人が、生き様が、そして成し遂げたことが凄い。 / Hidey ( 2002-10-09 14:52 )
トモコさん、そう、タイトル変わりました(笑)。一目して日記の正確を理解してもらおうと思っていたのであのようにつけましたが正直野暮ったいし重いし、ようやく変えられました。今後はタレントさんで第一線の人と出会う機会はほとんどなくなるような気がします。そういう仕事には就かないと思うので。ちょっと寂しいけど、違う分野の凄い人たちと会いたいと思います。 / Hidey ( 2002-10-09 14:48 )
みなみさん、「燃えるゴミ」は僕も軽く立ち読みしました。あの人っぽい本でしたね。そしてあの達筆がぎっしり並んでいて。ところで、よいお誕生日になりましたか? / Hidey ( 2002-10-09 14:46 )
むらぱぱさん、改名おめでとうございます。ゴクミちゃんのことを昔書いたときも印象が変わったというご意見がありました。そういうの、本人でなくても嬉しいものですね。でもプロは公の場の印象でのみ勝負するのだ。 / Hidey ( 2002-10-09 14:45 )
akemiさん、そのつもりはなかったんだけど、確かに書いた後にakemiさんのことを思い浮かべて笑っちゃったりしてました(笑)。脚立女というのが全然分からなかったんだけど、ドラマのHPを見てようやく納得。やはり漫画とは違う設定のようですね。確かに、お礼状って今の世の中ではなかなかない心遣いですよね。ただしその絵葉書というのが彼女の顔どアップというものだったのでちょっと恥ずかしかったのですが(笑)。 / Hidey ( 2002-10-09 14:43 )
マッキ〜さんもバレーボールやってらしたのですか?そう言えばマッキ〜さんもかつては「マキコ」さんというお名前で書いてらしたんですよね?最近の日記に書いてらっしゃる「しなやかな筋肉、かっこいいカラダ」っていうの、そのまま江角さんのイメージです。 / Hidey ( 2002-10-09 14:40 )
azzurriさん、確かにあの強さ、歯に衣着せぬところが好き嫌いの分かれるところですね。正直彼女との出会いは衝撃でした。あの年の三本の指に入る衝撃だったような気がします。忘れていた純粋なものを思い起こさせてくれたようです。青っぽさが昔の僕に似てたから。 / Hidey ( 2002-10-09 14:38 )
江角さんは背筋がぴんとしてて綺麗な人だと思います。 ところで、冬になったら雪のあかりで勉強されるのでしょうか(笑)? / lim. ( 2002-10-09 13:28 )
かっこいいですねー 以前から好きな女優さんでしたが、さらに高感度UPです。 / チップ ( 2002-10-08 18:04 )
私はしっかりした女性ということでとても好きな女優さんです。お話を聞いてちょっとイメージ通りでうれしかったです。でで出身地ですが多分鳥取ではなく島根のはずです。 / ウサ子 ( 2002-10-08 11:51 )
そちらにも蛍は居ますか。UPENNにもたくさん居ました。「蛍=きれいな清流」というイメージが強いので、不思議な気分です。 / むらぱぱ ( 2002-10-07 15:41 )
ゴクミとはまた違ったカッコよさがありますね。どちらも共通しているのは芯がしっかりしている。ショムニ復活しないかなぁ。 / おとじろう ( 2002-10-07 09:21 )
タイトル変わってる・・。蛍雪の功、遠くから応援しております。江角マキコさん、ピンとした意思がお顔に出てる方の代表のように思います。後藤さんといい、素晴らしい女性とお仕事なさってますね。 / あやや ( 2002-10-07 09:16 )
昔Oggiという雑誌に載っていた頃はそう興味もなかったのだけど、テレビで何度か見て彼女の顔にそういう強い意思が表れているなと思うようになりました。Hideyさんのお話で確信。まさに凛として美しい人って感じ。ハンサムウーマンと呼んでも良いかな。 / プルー ( 2002-10-07 01:18 )
江角さんは、本当の意味で仕事人なんですね。何事も中途半端より、そこまで徹底できる方の方が好きです♪自分がそう出来ないから余計ですね。。 / りぃな ( 2002-10-06 19:53 )
晩成した人の生き方に関心があります。ジュペリや植草甚一は大ファンです。 / 夢樂堂 ( 2002-10-06 08:01 )
別れをどう消化して歩き出すかが見せどころよ(笑)。←意味なし(^^;;; / 和代 ( 2002-10-06 02:26 )
どんな分野であっても、個人的に共感できるタイプであってもなくても、一線で活躍できる人のオーラって、何か違うんですよね。仕事への姿勢や意志も半端じゃない。ある意味、頂点を極めたいなら、駆け出しの頃無給だろうが何だろうが最大限の努力をするのは当然とも思いますけど。 / たらママ ( 2002-10-05 20:30 )
タイトル変わりましたね。初めてでは?? 江角さんは好きな女優さんのひとりで、「ショムニ」のイメージがガッチリとついてしまってます(笑)。 真っ直ぐなところが彼女の魅力ですよね♪ /私も手塚治虫さんの影響をかなりうけました。「リボンの騎士」とか「ブッダ」とか「ブラックジャック」「火の鳥」とかね。。。Hideyさんのお気に入りはなんですか? / Hiroko ( 2002-10-05 18:14 )
あ、タイトル変わってる・・・。それにしてもHideyさんって、素敵な人とたくさんお仕事されてるんですね。第一線で活躍する人と接する機会があるというのは、たとえ違う分野であっても、刺激になりますよね。これからもたくさんよい出逢いがありますように。 / トモコ ( 2002-10-05 17:06 )
「燃えるゴミ」という彼女の本を手にして、ああこの人は凄いなぁと思ったのを覚えています。まずタイトルからして凄いし。その本を紹介する文章を、当時作ってたコピー雑誌に書いてしまったくらいです。あの本どこへやったかな。……それにしても達筆ですよね。 / みなみ ( 2002-10-04 22:58 )
彼女に対する印象が変わりました。とっても一生懸命な人なんですね。見直しました。 / むらぱぱ ( 2002-10-04 19:15 )
冒頭のセリフ…お約束になってます?(笑) 脚立女は(子どもと1〜2回観たことある)実直というか、媚びない凛々しさを持った人なんですね。それとお礼状ってとても大切ですね。今、あまりそういうものを書かない人が多いので余計に価値があるのだと思います。 / akemi ( 2002-10-04 18:36 )
彼女がバレーボール選手だったというのもあるけれど、違う意味もあって親近感を持っています。 / マッキ〜 ( 2002-10-04 18:23 )
江角マキコさんは、女性の間でも賛否両論な女優さんですよね、、、私は自分自身をキチンと持っていて、足を大地にしっかりとつけた印象が強く、好きな女優さんなのですが、Hideyさんのお話を聞いて、思っていた以上の方だったんだと思いました。マスコミに何を言われようと、これからも美しく輝く女優さんでいて欲しいです。 / azzurri ( 2002-10-04 17:38 )

2002-10-04 江角マキコさんのこと 1

ビデオテープの整理をしていたら僕が関わった電動自転車のCM集が出てきたので懐かしく見てしまった。僕が主体的に関わった初めての作品は1996年制作の第二作だった。その頃は駆け出しの女優さんだったのでおそらく記憶されている方は少ないと思うが、主演したのは江角マキコさんだった。彼女がタレントだとかそんなことは関係なく、これまでの人生で出会った人の中でも僕にもっとも強い印象を与えた人のひとりである。所詮はミーハー代理店営業お得意のセレブ話に過ぎないが、人とシェアしてもちょっといい話だと思うので、僕の見た彼女について書いてみたい。

スポーティーなミニサイクルモデルを綺麗に乗りこなして颯爽と走れる人ということでクリエーティブが提案したのが当時まだ映画「幻の光」でモデルから女優に転向したての江角さんだった。きりりとした目が印象的な写真とプロフィールを手にしたが、僕のリアクションは正直「誰それ?」というもの。当然クライアントもまったく知らなかったが、クリエーティブいわく「彼女は間違いなくブレークしますよ」

1995年のクリスマス前にうちの会社に江角さんを呼んで顔合わせと絵コンテの説明を行った。ひと通り説明を聞いた彼女は、自分の演じる中学校の教師の役柄に関しちょっと納得できないところがある、こう変えたらどうかといきなり逆提案をしてきた。確かに指摘されると少し不自然なところもあるが、その裏には緻密に計算されたマーケティング的な意図があるのだと説明すると、「そういうことなら分かりました」と納得してくれた。事前に彼女に関する資料を読んではいたが、話どおり歯に衣着せず自分の意見をずばずばと言う人だった。

1996年1月末、温かい絵を求めてオーストラリアのパースでのロケに向かった。なぜパースかはご想像にお任せする。我々は撮影の二日前から現地入りしロケ地の確認や現地スタッフとの打ち合わせを済ませ、シドニーでの別のCM撮影の後撮影前夜にパース入りした江角さんと合流した。

近代的な建物と豊かな自然の調和が美しいパースは青空が果てしなく高く、空気が澄んでいた。そんな朝の風景の中でスタッフは着々と撮影準備をする。江角さんも早くからメイクを済ませ日本から同行の男性ヘアメイクさんと雑談していた。撮影準備に思いのほか時間がかかり、江角さんたちもさすがに話が尽きたらしくて手持ち無沙汰にしていた。撮影現場では、責任者であること以外ほとんどまったく仕事がなくなる営業の僕は、ちょっと話相手にでもなろうかなという軽い気持ちで二人と雑談をはじめた。ありきたりの会話のあとに江角さんは、私は最近これこれの社会問題に対しこういった意見を持ってるんだけど、○○さんはどう思う?と僕に鋭く切り込んできた。一瞬面食らったが、そういう話は嫌いではないので僕も僕の意見を述べた。それから丸二日間、撮影の合間を縫って僕たちはそんな話ばかりしていた。

江角さんは医療ミスによって早くに父親を亡くしているので医療問題、とりわけインフォームド・コンセントには深い関心を持っているのだと話した。僕も一ヶ月ほど前に祖父の死に立ち会ったばかりだったので現代医療に関して思うところを語った。そんな話に始まり、日本のテレビ番組のくだらなさ、映画、宗教、恋愛論、果ては漫画論まで飛び出した。実は僕は手塚治虫の漫画を300冊近く持っており、子供の頃は彼が死んだら後を継いで漫画を描こうと思っていたのだと言うと、彼女は「私、手塚治虫さんは神様がこの世に遣わした天使のような気がするのよね」と話し、彼女の思い入れのある作品について語った。

(つづく)

先頭 表紙

2002-09-29 AIBOの真実 4

僕自身は彼女の話に感銘を受けながらも少し違うことを考えていた。本音のところソニーはAIBOが売れなくても全然構わなかったのではないか。AIBOが発表された1999年5月のことは僕もはっきりと覚えているが、僕のそのときの印象は「ソニーがまたやった」というものだった。

電動自転車の広告営業を担当したときに僕はソニーの恐ろしさを痛切に感じたことがあった。ある年のサイクルショーでそれまで自転車製品などつくったことのないソニーが突然ブースを出展し、販売未定の参考出品ながら電動自転車を展示していた。ソニーはこの乗り物を「エンターテインメント・ビークル」と称していた。「ソニーがつくれば自転車はこうなる」と、これでもかというくらい思い知らされた。スタイリングを見ているだけで楽しくなるし、装備も隅々まで遊び心に溢れていた。ソニーのブランドが乗り物という新しい形を与えられたに過ぎなかった。初めて見るのにいつものスマートなソニーだった。ソニーはものを売ってすらいないのに他のプレイヤーに大きな脅威を与え、世の中に対してまた確実に鋭いプロフィールを刻んだのだ。

ソニーにとってものづくりはエンターテインメントであり、ソニーがつくる限りその製品は楽しくてユニークでスタイリッシュなものであるべきなのだ。それがソニー神話を支えるブランド力であり、AIBOは仮に売れなかったとしてもソニーのブランド力をもう一段階引き上げることに大きく寄与したのだ。見た目が似ている二つの製品が並んでいたとしても、あのAIBOをつくった「SONY」のロゴが入っているというだけでその製品は違う見え方をするものだ。そう言えばソニーはAIBOのことも「エンターテインメント・ロボット」と定義していた。

いくら今後の自分の仕事のために戦略系の授業から集中的に学ぼうと思っても、消費者の心を揺さぶり行動パターンを変容させるマーケティングの勉強にはどうしても広告人としての血がうずいてしまう。12年間前線でそれなりの知識と経験を積んで自分なりの洞察を得ていたはずなのに、次から次へと新しい視点を与えられ目を開かれることの多いこの素晴らしい教授の授業であればなおさらだ。今後も特筆すべき授業があれば、時間の許す限りこの日記上でレポートしていきたいと思う。

先頭 表紙

りぃなさん、熱く語ってくれてありがとう。僕はやはり「大貧民」、正式には「大貧民、大富豪」という名前で呼んでいたと思います。先日中国人の友達夫婦がうちに来たときはルールを教えてあげて一緒に遊びました。 / Hidey ( 2002-10-09 14:33 )
azzurriさん、ありがとうございます。こちらではどの授業に見ても「ソニー」という名前が出ただけで誰もが背筋を正す雰囲気があります。教授も「あのソニーが」というニュアンスの表現が多いです。代理店任せ・・・嬉しいようだけど確かにそれじゃダメなんですよね。代理店も結局苦しむし。 / Hidey ( 2002-10-09 14:31 )
おぉっと、言葉が足りませんでしたね。お察しの通り、トランプの大富豪です。人や地方によっては、大貧民と呼ぶみたいですね。内輪では、大貧民の事をド貧民、もっと略してド貧と呼んでます(笑)他にも身分の差別を付けたり、色々あるんですけど(笑) / りぃな@あぁン、語っちゃったわン。。 ( 2002-10-06 19:48 )
興味深く拝見させていただきました。ソニーに関する本は私もいくつか読んだのですが、その発想力やマーケティング力は、他社を飛び抜けている印象を強く受けていましたが、Hidey様のレポートを読んで、尚更強くそう感じました。宣伝の全てを広告代理店任せにしてしまう企業の行く末は知れている・・・と思う、今日この頃です。 / azzurri ( 2002-10-04 17:31 )
えむさん、はじめまして!古参のライターさんの方にあらためて初つっこみをいただけるというのは何とも嬉しいものですね。僕もみなみちゃんから「えむさんの日記はお奨め!」と伺っていたのですが、ついおうかがいせずにいてしまいました。まさにマーケティングは国境を越えることもあるし越えないこともある。奥の深いものですね。いずれ書こうと思うポケモンなどはアメリカ人も相当に考えてアメリカ文化に馴染ませる部分、日本のテイストをそのまま残す部分を分けたそうです。これからもよろしくお願いします。 / Hidey ( 2002-10-04 16:27 )
ガス欠コインさん、この教授は立て板に水で非常に歯切れよく話す人なので「ふーん、なるほどー、そっかー!」と聞いて納得してしまうのですが、公平に見て割と結果論者でもあります。DVDにしてもソニーは別にDVDを売ろうという意図はなかったと思うし。結果普及しただけのように思いますし、AIBOももともと6本の足で支えていた機械が犬になっただけのようです。でも文中にも書いたとおり、その解釈は今後の戦略として立派に使えるので、やっぱり感激して聞いてしまったりしてます。 / Hidey ( 2002-10-04 16:22 )
パンドラさん、ありがとうございます。どこの企業も心を込めて真面目な製品づくりをするんですけど、悲しいかなそれだけではだめなんですよね。適度な不真面目さと万人の要望を敢えて生かさずばっさり切る潔さが本当に人を引っ張る魅力を生むのだと思います。人が欲するものをつくるのではダメで、人が想像したこともないくらい欲しがるものをつくることが大事かと。 / Hidey ( 2002-10-04 16:18 )
あみすけさん、いらっしゃいませ!あみすけさんならそろそろ簡易版ロボットなどつくってしまわれそうですが。僕は当面本物の動物を飼いたくて仕方がありません。都会生活者にとっては餌やトイレの世話をしなくて便利なペットとのことですが、はっきり言って僕にはよく理解できません。 / Hidey ( 2002-10-04 16:13 )
Risaさん、オーナーさんでいらっしゃいましたか!それにしても当初の目的が「分解」とは。。。はっきり言って一歩手前です(笑)!でもきっと本当に可愛いんでしょうね。ああ、本物の犬が飼いたい。 / Hidey ( 2002-10-04 16:10 )
whitecatさん、いらっしゃいませ。そちらこそ正念場ですね。なにかと必死で闘ってらっしゃる方の日記は無条件に大好きです。こちらも負けずに頑張りたいところですが36歳の脳みそには少々辛い部分もあります(学生の平均年齢は27歳)。これからもお互い励ましあって頑張りましょう。よろしくお願いします。 / Hidey ( 2002-10-04 16:08 )
たらママさん、そうなんですよね。まあそこに我々代理店の存在意義が生じるわけですが。以前社内研修でみんなで真面目に考えましたが、うちの会社のバリューのひとつは遊びの達人であるということでした。一理あると思います。 / Hidey ( 2002-10-04 16:05 )
lim.さん、抵抗が大きいのは分かる気もしますが、学者としては探求しがいのあるテーマでしょうね。人間の心が腐食されるような逆流がなく、人間が一方的に機械に心を与えられれば(良心に限るけど)素晴らしいことですね。 / Hidey ( 2002-10-04 16:03 )
おとじろうさん、マーケティングに関して世界的な権威とされているフィリップ・コトラーによれば「マーケティングとは、交換仮定を通して、ニーズ(必要性)とウォンツ(欲求)を満たすことを意図する人間の活動である」とあります。僕は現実的には製品・サービスを市場に適応させるためのあらゆる活動と理解しています。でもこの教授はマーケティングとはスポーツだ!と言い切っていました。あらゆる知力体力、技を駆使して敵を負かすことだとのこと。 / Hidey ( 2002-10-04 16:01 )
トモコさん、いえいえ、音楽でもきっと同じ現象はあるのではないかと思います。クラシックは分かりませんがポップス・ロックはまさにそうですね。特に日本は。今やマーケティングしかないのではないでしょうか。音楽性ではなくてキャラクター性をどう料理してどこにどれだけお金をかけて売り出すか、戦略をとるかということだけですね。僕はどうせリリースされてから2〜3年くらいしてしかCDを買わないような人なので余り影響を受けなくて済んでいますが。 / Hidey ( 2002-10-04 15:56 )
口車大王2号さん、おっしゃるとおりです。僕の知っている事例は富士ではなくて本家ゼロックスの方ですが、DTPの最先端のような機能を利用して素人でも簡単に本が作れるような機械を作っておきながら、結局どうにもマーケティングできずに終わってしまったというケースが昨年ありました。ゼロックス及び富士ゼロックス自体は経営や企業倫理はしっかりしている会社ですけどね。 / Hidey ( 2002-10-04 15:53 )
和代さん、消費者マーケティングは別に難しく考えることないのでするするっと読んでいただいて面白かったらいいのだとおもいます。面白くないということなら製品ないしマーケティングに魅力がないのでしょう。マーケティングの話は日記としても面白くしやすいので今後もいくつか書いていきたいと思います。 / Hidey ( 2002-10-04 15:50 )
KATSUMIさん、まさに、マーケ魂がそのまま生きたエンジニアリングがソニーの醍醐味ですね。今の日本の企業は多少の無理をしてでも(それこそ上の圧力をもってしてでも)マーケティング主導の企業にしないとバランス的にやばいですね。アメリカではその逆も結構あるようですが。 / Hidey ( 2002-10-04 15:48 )
りぃなさん、ソニーの場合、エンジニアも皆マーケターの感覚を持っているのが強いのだと思います。普通の企業は縦割りになってしまってエンジニアはかたーい人たちが多いのですが。最後の方、ちょっとよく理解できませんでした。トランプの大富豪をトライするということなら結構得意だよ。 / Hidey ( 2002-10-04 15:45 )
はじめまして。私は元営業でしたので、マーケティングの重要さを常々感じていました。購買層の年令、土地(国)柄などちょっとでも違えば、同じ商品でも売れ方に全く違いが表れますし、(製品)デザインもそれらの事情によって大きく変わってくるのですよね。・・ちなみに電動自転車、同期がよく社内で試乗してましたよ(ちょっと関連したカンパニーにいたので・・) / えむ ( 2002-10-04 09:37 )
話し変わって、マーケティングについてですが、プレイステーションにDVDプレイヤーを隠したことについては、Hideyさんのこの日記によって再認識させられ、愕然とさせられました。僕も広告人の一人として、ひとつの媒体を使った制作物に、どんどん付加価値をつけることを迫られています。そう考える時、まだまだ自分はコピー職人の域を出ていないなと痛感させられるのです。本当に面白い日記でした。ありがとう。 / ガス欠コイン ( 2002-10-03 12:40 )
初めて、知人の事務所でAIBOを目にした時、まさに僕は“ペット”をイメージしていました。多分、ビジュアルやその仕草に愛らしさを感じたのだからと思います。逆に本物のペットは、もはや愛玩動物ではなく、人間のパートナーとして捉えられてきているのが現状だと思います。アメリカ人の合理的な考え方(AIBOに求めるもの)にも納得するところはあります。(続く) / ガス欠コイン ( 2002-10-03 12:33 )
「エンターテインメント」! 楽しいって何するにもすんごく大切ですもんね。 教授のお話もさることながら、Hideyさまの視点に共感しました。 うまく言えないけれど、ココロがくっついてこないモノはやっぱりアカン、と思うのです。 / パンドラ ( 2002-10-02 21:14 )
はじめまして! 興味深く読ませていただきました(AIBO話)。僕の考えるロボットに期待するところは、生活を支援する技術として浸透すれば、と思ってます。AIBOに関しては、一消費者として購入意欲を掻き立てる商品ですね! うちは猫を飼ってますが、動物の代わりにとしての機能を果たすかはわかりませんね^^;。 / あみすけ ( 2002-10-02 06:37 )
初代アイボの所有者として興味深く読ませていただきました。愛着がわいてしまい当初の目的の「分解」ができなかったことを考えると私は真の「ハイテクおたく」ではないようです(笑) / Risa ( 2002-10-02 03:50 )
熱心に勉強されてるのですね。下の日記も読ませてもらいましたけど、頑張ってる姿が日記から伝わってきます。 私も、Hideyさんとはレベルが違いますけど、現在、情報処理試験に向けて奮闘してるところです。(実際には、それほど奮闘してなかったり…?笑) 目標を持ち、それに向かって頑張ってる人に出会うと凄く励まされます。学校のほう、いろいろと大変だと思うけど頑張って下さい。 / whitecat ( 2002-10-01 00:24 )
せっせとマジメに働いていれば済むってわけじゃないんですよね。いかに顧客のニーズをつかんで何を提供できるか、どう売り込むか、すべての条件が揃わないと競争に勝ち残れません。 / たらママ ( 2002-09-30 22:53 )
次は「ロボット」と言う考えは、私のいる工学研究科にもある風潮のようです。少しだけですが、私はコンピュータにいわゆる「心」を持たせ、人間の「言語」を話させるプログラムに参加しているので、やはり時代がそれを求めているのだ、ということを実感しています。「心」を持つロボットの存在は、人間の心のデジタル化と表裏一体。哲学科ではなかなか抵抗も大きいようです。 / lim. ( 2002-09-30 13:19 )
なるほど。マーケティングの概念って幅が広すぎてが今ひとつつかめないものがあたのですが、なんとなくわかってきました。マーケティング術と言われるようにあれは技ですね。←ちっとも解ってない? / おとじろう ( 2002-09-30 10:09 )
音楽的・技術的に素晴らしい音楽家はもっと他にもいるのに、そういう人達を差し置いて売れちゃってる音楽家っていうのは、やっぱりマーケティングに成功してるからなんだろうか(ちょっと違)・・・なんて考えちゃいました。何でも自分のことに置き換えてしまう私・・・。 / トモコ ( 2002-09-29 20:22 )
逆に、「良いもの」を作っても、マーケティングで失敗するとビジネス敵には全く売れなかったりするのは、結構あることですね。その、最大の失敗例はゼロックスに求めることができます。もっとつきつめれば富士ゼロックスと言えば良いでしょうか。現在我々が使っているMacintoshやWindowsの原形のシステムを、しかも極めて完成度の高いものを作りながら、結局撤退せざるを得ませんでした。突き詰めれば、ブランドイメージを大切にしなかったからです。 / 口車大王2号 ( 2002-09-29 18:42 )
お礼に伺いました(笑)。ワタシもするするっと読ませて頂きましたが、全く理解できていないかと(^^; マーケティングの話は夫もしますがオツムがついていけません。 / 和代@ゴミつっこみでごめんね ( 2002-09-29 18:27 )
欠陥技術をマーケティングによって売りぬくという教授の意見には賛同します。ただそのためにはマーケティングに即した味付けが本当に大事です。それがうまいのがSONYなんでしょうね。メーカーの宣伝部の悲哀がそこにある気がします。 / KATSUMI@活動再開 ( 2002-09-29 17:38 )
なるほど♪するするっと読んでしまい、感想が出てこないのですが(苦笑)ソニーはマーケティングと技術やデザインの部門が、一体化しているような印象をうけました。ソニーのマーケティングの方々は、さぞかし頭が切れるんでしょうね。。手持ちのカード(=製品)を、うまく使ってます。彼らに大富豪させたら、面白いかも。Hideyさん、機会があれば、是非トライして下さいv / りぃな@こらこら ( 2002-09-29 16:49 )

2002-09-29 AIBOの真実 3

ここに第四のオプションの必然性が生じる。第一世代の技術は失敗に終わるかもしれないが、マーケティングによって製品を失敗から救う術がある。それはその製品を他の種類の製品に見せかけることによってその製品の新しい価値を創造するという手法である。

人々のロボットに対する期待値はSFで描かれている通り非常に精巧で高い知能を有しているというものである。しかもアメリカではロボットは人間に少なからず怖れを抱かせるものとして認識されている。そんなロボットが技術の未熟により指令どおりに動かなかったりつまづいて壊れたりしてしまったらそれは高価で手の込んだ単なる物笑いの種に過ぎない。

命令通りに動かない気まぐれや馬鹿さ加減が許され、しかも人間に怖れを抱かせないためにはどのような見せかけをつくればよいか。ペットである。ペットなら人間の言うことを素直に聞かなくてもそれが可愛さとして許容され、メカに弱い老人にすら親しみを抱かせる。メーカーにとってもっとも恐るべき批判的なメディアをも煙にまいて味方につけることさえできる。そしてペットであればこそ、指令どおりに新聞を持ってくるほど技術が発達した場合、持ち主は単純にその機能的なメリットを喜ぶのではなく、飼い主としての誇りからロボット犬との間に深い愛情を通わせ得るのだ。

そしてペットという見せかけを利用してでもソニーが他社に先駆けてAIBOを世に送り出す先行者利益が存在する。それは初物に対する反響という形で市場からの膨大なフィードバックを得ることであり、またその製品分野における製品価値の定義や基準を任意に設定できることである。

このように技術が不十分な製品を他の分野の製品に見せかけることによって販売に成功した例は他にもいくらでもある。アメリカにおけるDVDの普及率は目を見張るものがあるが、1996年に市場に導入されたDVDプレイヤーは最初の3年間累計販売台数が100万台に留まっていた。しかし他ならぬソニーは1999年、たった4ヶ月で300万台のDVDプレイヤーを売りさばいた。ソニーは他の製品にDVDプレイヤーを隠すことによってこれを成し遂げたのだ。プレイステーションである。これを機にゲームに限らず数多くの種類のDVDソフトが発売され、それは一般のDVDプレイヤーの販売を促した。このようにある製品を他の分野の製品に隠してマーケティングすることを「ステルス・マーケティング」と教授は称した。

教授の結論は、マーケティングは欠陥技術をも売り抜く技であり、製品が売れないのは技術のせいではなくマーケターのイマジネーションが足りないからであるということだった。ソニーが教授の言うことのどこまでを本当に意図していたかは知る限りではない。しかし結果論に過ぎなかったとしても彼女の洞察は非常に的を射ており、違った企業が同じような状況に陥った際にその企業を救う貴重な処方箋であることは間違いない。

(つづく)

先頭 表紙


[次の10件を表示] (総目次)