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Hideyの「蛍の光の下で」

帰国に伴い長い間ご愛読いただいたこの日記を終了させていただきます。
もうこのサイトに文章を綴ることはありませんが
もしこの先もおつきあいいただけるようであれば
メールをいただければ幸甚です。
皆様、本当にありがとうございました。お元気で。

絵日記

目次 (総目次)   [次の10件を表示]   表紙

2002-10-09 ダイヤモンドは永遠の輝き 2
2002-10-09 ダイアモンドは永遠の輝き 1
2002-10-04 江角マキコさんのこと 2
2002-10-04 江角マキコさんのこと 1
2002-09-29 AIBOの真実 4
2002-09-29 AIBOの真実 3
2002-09-29 AIBOの真実 2
2002-09-29 AIBOの真実 1
2002-09-27 イノベーターの条件 2
2002-09-27 イノベーターの条件 1


2002-10-09 ダイヤモンドは永遠の輝き 2

こうしてみるとまるでダイヤモンド・マフィアそのものという感じだが、冒頭に書いたとおり、デビアスはそれなりにダイヤモンド業界における世界的な秩序を構築する役割を負ったのも事実だった。

まずCSOは各国のダイヤモンド供給業者に対し米ドルの即金で代金を支払った。運転資金のやりくりが大変辛い供給業者はお陰でかなりキャッシュフローを改善することができた。次にCSOは各国で産出されたダイヤモンドを一手に査定し、これにより国際的に統一された価値基準が初めて形成された。CSOは有無を言わさず宝石商に同一の価格規準によってダイヤモンドを買い取らせたため、末端小売価格にもそれほどばらつきがでなかった。三年に一度CSOは大掛かりな市場調査を行い末端消費者の今後の需要を予測、また流通の各過程での在庫量を測定し、これらによって需要にみあった供給をすることにより、ダイヤモンドの価格を安定させた。

またデビアス本社としては需要を喚起するために大量の広告を出稿。1939年から「ダイヤモンドは永遠の輝き(A diamond is forever)」という有名なコピーを使い、ダイヤモンドの知覚品質を高めた。「婚約指輪は給料二か月分(最近は三か月分のようだが)」という世の男性にとっては実に余計なお世話でしかない基準も設定。これは国によって所得格差があっても統一して使用できる巧妙な基準であった。ケースではこうしたキャンペーンは日本で特に功を奏したとしており、1967年には花嫁の6%しかダイヤモンドの婚約指輪をしていなかったのが1982年には65%にまで上昇したと書いてある。今はほぼ100%と言っていいだろう。すべてデビアスが遥か昔に種をまいた結果なのだ。

これらのあらゆるコントロールにより、デビアスは結果的にダイヤモンドに関わるすべての業者のために安定した国際的な業界構造・システム・規準を構築し、彼らの商売に貢献したのである。

およそあらゆる仲介的企業は、このようにある業界の複数の構成員(供給業者、流通業者、小売業者、末端消費者など)がそれぞれに利益を獲得できるような構造をつくることによって価値を創造し、創造された価値から、上記構成員の誰よりも多い取り分を獲得しようと努力するものである。似たような例としてはF1界の黒幕、バーニー・エクレストン氏がF1という商業的スポーツの全体構造を創り上げ、ファン、コンストラクター、ドライバー、スポンサー、テレビ局などあらゆるステークホルダーに利益をもたらしながら、彼ひとり推定年間6億ドル以上もの利益を搾取しているというケースも学んだ。

近年は不況に加え、デビアスのコントロール外の生産・流通ルートがいくつか確立されたことによってデビアスの地位は相対化され、ダイヤモンドの価格も下がりつつある。しかしデビアス及びそのライバル企業たちはいたずらに価格を下げあって利益を吐き出したくはないので、ある程度互いに暗黙の協定を結び、相変わらず不法に高い利益をあげているはずだ。

ダイヤモンドは永遠に輝きつづける―デビアスの掌で。ということで女性ライターの皆さん、ダイヤモンドを買うときは怒りを込めて買うべし。決して給料何か月分などと踊らされてはいけません。

先頭 表紙

akemiさん、いえ、ちゃんと理解してました。僕の「でも」という接続詞の使い方が意味不明なだけです(笑)。「ところで」くらいのニュアンスだったのです。 / Hidey ( 2002-10-12 16:03 )
書き方が悪かったか…あたしは市場のひとりじめの是非ではなく、単純に男性に高価なモノを買わせる女性の根性が気に入らない、、ということでダイヤモンドに関して書かれた本文につっこみました。(笑) 搾取があっても、あたしの息抜きの空間であってくれたらいいわ>スタバ(だからあんなに店鋪増えてるのか〜納得) / akemi ( 2002-10-12 15:27 )
杏綬さん、はじめまして。おかしくありません!でも余りいないことは事実でしょうね。サッカーがお好きなのですね。皆さんの日記を読んで知りましたが今の日本は週末は夜通しサッカー三昧のようですね。月曜日仕事にならない人が増えたのでは…? / Hidey ( 2002-10-12 15:10 )
夢樂堂さん、僕は月の石とかのほうがよっぽど興味あるのです。宝石は余りに興味がないためデビアスの話も正直知りませんでした。 / Hidey ( 2002-10-12 15:03 )
Emikoさん、おひさしぶりです。僕もこんな話は妻には通じないので話しません(笑)。息子さんはよく教育してあげてくださいね。 / Hidey ( 2002-10-12 15:02 )
ガス欠コインさん、ダイヤモンドは世界でもっとも固い物質ということもあってのことなのでしょうが、確かに個人的にはサファイやヤなんかの方が好きだったりしますからねえ。おっしゃるとおり究極のブランディングですね。でもコインさん、そのセリフ女性に言ったら振られます、間違いなく。 / Hidey ( 2002-10-12 15:00 )
KATSUMIさん、漫画って結構勉強になりますよね。ゴルゴ13なんかでもでてきそう。広告業界・・・笑ってごまかしましょう。まあでもこの業界参入障壁は全然高くないですからね。結局売り手と買い手でどちらの希少性が高いかで相対的な地位が決まるものですが、そういう意味ではやっぱり東京キー局がいちばん強いですかね。もちろん媒体である限り代理店に従う姿勢を取りますが地力はあちらの方がずっと上でしょう。 / Hidey ( 2002-10-12 14:57 )
りりさん、スイート10、そうらしいですね。香港はイギリスの絡みでデビアスの息は確かにかかっていることでしょうね。中国本土は現在別ルートの代表的な経路とのことです。 / Hidey ( 2002-10-12 14:52 )
akemiさんらしいつっこみ、ありがとうございます(笑)。でもakemiさんの大好きなスタバも実はものすごく搾取しているんですよ。南米のコーヒー豆をつくる農家、仲買人、商社など様々な市場参加者がいる中で、スターバックスは最終価格の70%近くをひとりで搾取しているはずです。世の中どこを見回してもそういうことばかりですけどね。 / Hidey ( 2002-10-12 14:50 )
azzurriさん、ダイヤモンド展、僕も行ってみたかったのですが暇がありませんでした。うっとりしてしまうこと自体は当然でしょう!でも男には単純に石一個に何十万、何百万というのはやはり永遠の謎です(笑) / Hidey ( 2002-10-12 14:47 )
りぃなさん、でもアメリカ人ですらマイクロソフトなどは「悪の帝国」と見なしているところは面白いです。僕?僕はおとなしく妻の言うとおりの指輪を買わせていただきました。でも三か月分もしなかったけどね。 / Hidey ( 2002-10-12 14:44 )
はじめまして。…ダイアモンドくれるなら、新しいパソコンの基盤とスカパー撮る為のHDD+DVDレコーダーが欲しいと、いけシャーシャーと日本橋で答えた私は、よっぽどおかしいんでしょうか。…違うか。そういや、とある作家さんの長編国際謀略ものが好きで、そこでダイアモンドを題材にした話がありました。 / 杏綬@でも、ピアスは3つです。 ( 2002-10-12 01:37 )
確かにマフィアしていますね。これを知っている人は多いんだろうけど、やはり光に目がくらむ。。。 / 夢樂堂 ( 2002-10-11 16:44 )
それでも欲しい女心です。でも息子たちにはいずれHideyさんの記事を読ませなくては・・・(もちろん主人には読ませません!) / Emiko ( 2002-10-11 11:41 )
タイトル変わったんですね。カッコいいですよ、これ。 / ガス欠コイン ( 2002-10-10 14:20 )
ローズの話しは何故か知っていました。それにしても、この話しを聞いていると、ダイヤモンドというブランドを構築したという感じがします。エメラルドやサファイアでも良かったはずなのに。ただ、ひとつの鉱石の地位を完璧に確立したという面では、まあ大したもんだと思わなくもないですが。これから女性には「ダイヤモンドの輝きは悪魔の微笑み」とでも伝えるか(笑)。 / ガス欠コイン ( 2002-10-10 14:19 )
その昔「パタリロ!」という漫画で、ダイヤの流通については何となく知っていました。入れと出しの両方を握ると、強いですね。広告業界も同様では? まあ、これを理由にダイヤ不買!とか言うと女性には怒られそうですね(笑)。 / KATSUMI@活動再開 ( 2002-10-09 19:46 )
「スイート10」は供給過剰で余り物を売り捌くために仕組まれた、デ社の日本向けキャンペーンと聞いて以来、「ダイヤ=悪」のイメージがついてしまいました…。自由貿易港に住んでいるのでダイヤモンドの商売については色々聞きますが、全部息がかかっているんでしょうね。ふ〜。 / りり ( 2002-10-09 18:05 )
あああたしは、母から「もらわないと一生後悔する」と念を押されつつも貴金属になんの執着もないもので、ツレの負担を増やしたくなく婚約指輪をもらっていません。金で愛情をはかるようなコピーは噴飯ものだ!などと思ってしまうあたしの前世はやっぱり男性とのことです(笑) その母親譲りのダイヤは子どもの入学式や卒業式にしていっています。^^; / akemi ( 2002-10-09 17:50 )
2年ほど前に上野で「ダイヤモンド展」をやっているのを見に行きました。ジュエリーとしてだけの価値だけではなく、工業用にも多岐にわたって使われている事を知りましたが、デビアス社のことまでは・・・(笑)。高級ジュエラーのダイヤモンドは、ただでさえ高いルースにブランドの価値が加えられ、更に高くて、なかなか手の出ないものに・・・怒りたいものの、やっぱりその美しさにはうっとりしてしまう情けないazzurriだったりします(苦笑)。 / azzurri ( 2002-10-09 16:53 )
ビジネスの基本は、いかに利益を多くあげるか、ですもんね。ある意味、当然というか、なんといいますか。最後の段落に、ぷっと、笑ってしまいました。いつ買える身分になるか分かりませんが、買う時は諦めと共に、でしょうか。それか、王子様(?)に代わりに怒っていただきましょうか。。ところで、Hideyさんはお怒りになられました?(笑) / りぃな ( 2002-10-09 15:54 )

2002-10-09 ダイアモンドは永遠の輝き 1

Globalization and Strategyの授業で女性の永遠の憧れ、ダイヤモンドの流通・販売のからくりについてたっぷり学んだのでご紹介したい。ただちょっとその前におカタイ話。

国際的な環境においてはビジネスを成立させるために不可欠な要因が往々にして不足することがある。各国の消費者の嗜好性などの情報の把握、リーズナブルなコストで生産するための原材料・資金調達、人材確保。そして多国間の取引を円滑に進めるための統一的な規準。国内的なビジネスにおいてはこれらをサポートする諸機関が存在するが、国境をまたいで同様なサービスを展開する機関は少ない。敵味方を問わず同じビジネスに関わる様々な企業が皆こうした不足の状況に苛まれる。こうした有効に仲介的機能を果たす機関の「欠如」を補うのがグローバル企業の役割であり、そこに彼らのチャンスがある、というのがこの授業の大前提である。そのようなグローバル企業の例として授業で一番初めに取り上げられたのが世界のダイヤモンドの流通を長年牛耳ってきたデビアスだった。

1867年、世界で最初のキンバーライト(ダイヤモンドを含む火成岩の鉱脈)が南アフリカで発見された。採鉱には大量の水を使用するためにポンプが必要であり、そのポンプを独占的に供給していたのがセシル・ローズという男だった。彼はポンプの代金の代わりにダイヤモンド採掘権を譲り受けるようになり、これらの権利を束ねてデビアス鉱山会社を設立した。ローズは権謀術数によりライバル会社を破綻の危機に追い込みこれを買収するなどし、世界のダイヤモンドの産出量の95%を手中に収めるに至った。

しかしさらに上手がいた。1908年にナミビアに新たな大鉱脈が発見され、これを獲得したのがアーネスト・オッペンハイマーという人物だったのだが、危機感を持ったデビアスは大量のデビアス株の譲渡によってオッペンハイマーの会社を買収し、オッペンハイマーはデビアスの取締役会に席を持つようになった。彼はその後もあらゆる機会にデビアス株を買い入れ、ついに1929年、デビアスの会長となって実権を握った。

オッペンハイマーは大恐慌によるダイヤモンド業界の危機を逆手にとって、当時世界のダイヤモンドの90%を卸しながらもはや破産寸前のロンドンのシンジケートを買い取りデビアス中央販売機構(CSO)を設立した。これによってデビアスはダイヤモンドの採鉱、流通の両面でほぼ独占的な地位を確立した。

その後ザイールや旧ソ連で南アフリカを凌ぐほどの大量のダイヤモンドを産出する鉱脈が発見されたが、それらはすべてCSOによって流通された。またボツワナではデビアスが新たな鉱脈を発見し、その勢いはますます盛んになった。

CSOは宝石商たちに対して強大な力を持っていた。ダイヤモンドの卸売りはイギリスでCSOが年に10回開催する「サイト」と呼ばれる販売会において行われ、150の「サイトホルダー」と呼ばれる宝石商だけが招待された。「サイトホルダー」はあらかじめ希望するダイヤモンドの量とグレードを申し込み、CSOがそれに従って用意したダイヤモンドを見せられる。この際「サイトホルダー」は、ダイヤモンドが事前の希望と若干違っていても文句を言うことを許されないし、値段の交渉も一切できない。ただ買うか買わないかだけを選択する。しかし現実的には「サイトホルダー」として招待されなくなることを恐れて、宝石商はほとんどの場合見せられたダイヤモンドを言い値で買い上げることになる。規定の価格表が存在するが、CSOは大恐慌以後一度もその値を下げたことがなく、未来永劫下げることはないと宣言していた。

(つづく)

先頭 表紙

りぃなさん、でもローズも凄かったんですよ。ライバル会社を危機に追い込むために、デビアスのダイヤモンドの在庫を一気に市場に放出して価格を下落させて、瀕死の状態になったライバル会社を買い取ったのです。価格の下落はデビアス自身ももちろん傷つくことなのに。その後供給を止めて価格を回復したそうですが。仁義なき世界。 / Hidey ( 2002-10-12 14:42 )
オッペンハイマー、うまいですね。長いものにまかれて、内部から食いやぶったというか。 / りぃな ( 2002-10-09 15:48 )

2002-10-04 江角マキコさんのこと 2

緑の芝生の上でロケ用の椅子に腰掛けていた江角さんの足に蟻が這っていた。スタッフがそれを見て蟻を払おうとすると江角さんは、「いいの。私小さな生き物にも魂があると思っているから乱暴にするのは嫌なの」と言ってゆっくりと蟻を指に乗せて地面に放した。まあそんな風に思う人は世の中にいくらでもいるかもしれないけれど、臆面もなく堂々と口に出せてしまう人はそうはいない。彼女の考え方よりも彼女の行動に僕はしばし雷に撃たれたようになっていた。

ロケ地でケータリングの昼食を皆で食べていると、「それちょうだいよ」と言って僕の皿から食べ物をつまんだりする。そのかわり僕にも彼女の皿から何やら分けてくれた。「こういうのって本当に心が許せるようになるよね。」レストランに入ったときは「よく日本の女の子ってメインディッシュを残すくせにデザートはしっかり注文したりするじゃない?私ああいうのって大嫌い」とも話していた。ロケ地に設置した簡易トイレにまつわるあまり上品とは言えない冗談なども豪快に笑いながら口にしていた。

仕事になると目つきが変わって真剣な表情になる。撮影の合間に名前を呼ばれて何かと思って行ってみると、「思うんだけどあの人とあの人、仕事に気合入ってないよ。だらだらしてやるべきことやってない」と僕に注意を促した。撮影は無事終了し、彼女は我々より一足先に日本へ帰った。

一週間ほどした日曜の朝、我々スタッフは恵比寿の編集スタジオにいた。作業が一段落して少し休憩ということで地下一階のロビーに出ると、なんと江角さんが階段を下りてこちらに向かってきた。「今日だって聞いてたから来ちゃった。」編集に立ち会う女優さんなんて聞いたこともない。まあ今ほど忙しくないし有名ではなかったにしても、それでも、である。普通のモデルだって立会いにギャラが出るわけではないのでそんなことは絶対にしない。

1996年2月末から完成したCMがオンエアされ、僕もようやく落ち着いた生活を取り戻していた。そんなある日オフィスに一枚の絵葉書が届いた。今や知る人ぞ知る達筆で、江角さんは今回の仕事について、そこでの貴重な出会いについて感謝の気持ちを書き綴っていた。彼女は若くして島根の実家を離れ、モデルとしてキャリアを積み頂点を極めた後、当時の僕と同じ29歳という年齢で新しい世界に挑んでいた。来る日も来る日も理不尽極まりない世界に相対しながら、誰にも恥じない自分らしい生き方を貫いていた。芸能界という特殊な設定を取り払ったとしても彼女の姿勢は真っ直ぐで麗しかった。

この9月で江角さん主演の「ショムニ FINAL」が終了したと聞く。日本にいてもテレビドラマをまったく見ないので前作も一度も見たことがないが、週刊モーニング愛読者の僕は坪井千夏の現代人離れしたキップのよさをよく知っている。正直漫画のイメージとはまったく異なるのだが彼女ならではの違った味わいを醸したのだろう。彼女自身軽蔑していた、視聴率狙いで演出過剰な日本独特のドラマになったことは目に見えるようだが、そんなことはお構いなしに自分の仕事をこなす江角さんの姿も目に浮かぶ。決して器用な人ではないけれど、どこまでもありのままに真っ直ぐ伸びて欲しい人である。

先頭 表紙

ナライフさん、ピストルオペラって海外で賞を取るとか取らないとか言われていたやつでしょうか?いい作品を選んで出演しているのですね。よかったよかった。 / Hidey ( 2002-10-26 04:09 )
和代さん、そうだったのですか!まさに真理だと思います。江角さんに似合いそう。 / Hidey ( 2002-10-26 04:08 )
TV等を通じての印象だけで僕も江角さんのことを好きだったのですが、お話を聞いて印象以上の方なのですね。映画『ピストルオペラ』,賛否両論のようですが、僕は大好きです。 / ナライフ ( 2002-10-18 20:29 )
あのね・・・ワタシのセリフでした。。。(^^;;; 真理だと思ってくれますか?Hideyさんも。 / 和代 ( 2002-10-16 22:50 )
lim.さん、いい表現をされますね。たしかにあの人と話すときは僕も背筋が伸びました。ところで、冬になって雪のあかりが美しくなると、間違いなく勉強を放棄して窓辺で酒を飲みます、経験上(笑)。 / Hidey ( 2002-10-09 15:17 )
チップさん、はじめまして。これで商品ご購入の決心がつきましたか(笑)。でも本当にまずは試乗をなさることです。「乗ったら買わなきゃいけないかな」という心理的バリアがあると思いますが、それは自転車屋さん自身が一番心配していること。気軽に貸してもらって家の近所を走ってみてください。 / Hidey@また宣伝になっちゃった ( 2002-10-09 15:15 )
ウサ子さん、もうかれこれ6年前のことですが、彼女の言葉、口調、すべて印象に残っています。そういう意味でも凄い人です。ところで、そのとおり、島根でしたね。ハズカシー。出雲ってのは分かってたんだけど、地理感覚のなさが露呈されてしまいました。さっそく直しときます。 / Hidey ( 2002-10-09 15:12 )
むらぱぱさん、二度もつっこみ、畏れ多いです。残念ながらこちらでは蛍は見たことありません。これは単なる蛍光灯というだけのこと。UPENNにはいましたか。さすが今やMBAランキングトップ校(意味不明)。日本の蛍が見たいです、来年。 / Hidey ( 2002-10-09 15:10 )
おとじろうさん、たしかにゴクミちゃんも江角さんも芯が座ってますね。男としては非常に考えさせれられます。あんな女性たちがもっと増えるといいですね。ショムニ、一度くらいこちらのビデオ屋でレンタルしてみようかなあ。 / Hidey ( 2002-10-09 15:08 )
あややん、そう、タイトル変えたよーん。やっとスッキリしたって感じ。後藤さん、江角さんの他には浅田美代子さんと3年間仕事をさせていただきました。あの人は単純にいい人でした。あのまんまです。そして僕が生まれて初めて好きになったアイドルでもあります(笑)。その話をしたらその当時の浅田さんのアップの写真が表紙になった少年マガジンのテレカ(!)をご本人からいただきました。一応大事にとってあります。 / Hidey ( 2002-10-09 15:07 )
プルーさん、そう言えばあの撮影の頃Oggiの表紙の契約をしてましたね。ハンサムウーマン、言い得て妙ですね。それにしてもあの人は歳を取らない。 / Hidey ( 2002-10-09 15:03 )
りぃなさん、まあ何にしても真面目でしたね。青臭いくらいに。そんな無防備で不器用で純粋なところが心を打ちました。りぃなさんはやるときはちゃんとやる人だと思うけど。 / Hidey ( 2002-10-09 15:01 )
↓向ける→剥ける / Hidey ( 2002-10-09 15:00 )
夢樂堂さん、晩成ですか。なるほど。でも正直彼女は晩成するかどうか、はなはだ疑問ではあります。僕は女優江角マキコにはそれほど興味はなくて人間江角マキコに惚れました。まあ今の芸能界ならキャラクターだけで生きていけちゃうんですけどね。彼女も本当に女優を極めるのなら本当に演じることの奥深さ、自分を客観することを学んでもらいたいし、そうすれば彼女も一皮向けるんでしょうね。大変生意気な言い方ですが。 / Hidey ( 2002-10-09 14:59 )
和代さん、そ、それはドラマのセリフですか?それともローランド氏のこと?いずれにしてもそれ、真理ですね。 / Hidey ( 2002-10-09 14:56 )
たらママさん、その口調だと個人的にはあまりお好きではないようですね(笑)。僭越ながらあのあとより成長した江角さんとまた仕事をして、その仕事振りを見てみたかったですね。僕もあの頃は仕事の何たるかなんて全然分かってなかったし。 / Hidey ( 2002-10-09 14:55 )
Hirokoさん、たしかに皆さんショムニのイメージで捉えている方が多いようですね。裏返すとああいう役以外はそれほどうまく演じていないということなのでしょう。真っ直ぐなだけにそんなに器用な人じゃないし。ところで手塚治虫、僕は「シュマリ」、「三つ目がとおる」、「ユニコ」(なんと贅沢なオールカラーが芸術的に美しい)というところですかね。僕にとって彼の場合はどの作品がって感じではないのです。人が、生き様が、そして成し遂げたことが凄い。 / Hidey ( 2002-10-09 14:52 )
トモコさん、そう、タイトル変わりました(笑)。一目して日記の正確を理解してもらおうと思っていたのであのようにつけましたが正直野暮ったいし重いし、ようやく変えられました。今後はタレントさんで第一線の人と出会う機会はほとんどなくなるような気がします。そういう仕事には就かないと思うので。ちょっと寂しいけど、違う分野の凄い人たちと会いたいと思います。 / Hidey ( 2002-10-09 14:48 )
みなみさん、「燃えるゴミ」は僕も軽く立ち読みしました。あの人っぽい本でしたね。そしてあの達筆がぎっしり並んでいて。ところで、よいお誕生日になりましたか? / Hidey ( 2002-10-09 14:46 )
むらぱぱさん、改名おめでとうございます。ゴクミちゃんのことを昔書いたときも印象が変わったというご意見がありました。そういうの、本人でなくても嬉しいものですね。でもプロは公の場の印象でのみ勝負するのだ。 / Hidey ( 2002-10-09 14:45 )
akemiさん、そのつもりはなかったんだけど、確かに書いた後にakemiさんのことを思い浮かべて笑っちゃったりしてました(笑)。脚立女というのが全然分からなかったんだけど、ドラマのHPを見てようやく納得。やはり漫画とは違う設定のようですね。確かに、お礼状って今の世の中ではなかなかない心遣いですよね。ただしその絵葉書というのが彼女の顔どアップというものだったのでちょっと恥ずかしかったのですが(笑)。 / Hidey ( 2002-10-09 14:43 )
マッキ〜さんもバレーボールやってらしたのですか?そう言えばマッキ〜さんもかつては「マキコ」さんというお名前で書いてらしたんですよね?最近の日記に書いてらっしゃる「しなやかな筋肉、かっこいいカラダ」っていうの、そのまま江角さんのイメージです。 / Hidey ( 2002-10-09 14:40 )
azzurriさん、確かにあの強さ、歯に衣着せぬところが好き嫌いの分かれるところですね。正直彼女との出会いは衝撃でした。あの年の三本の指に入る衝撃だったような気がします。忘れていた純粋なものを思い起こさせてくれたようです。青っぽさが昔の僕に似てたから。 / Hidey ( 2002-10-09 14:38 )
江角さんは背筋がぴんとしてて綺麗な人だと思います。 ところで、冬になったら雪のあかりで勉強されるのでしょうか(笑)? / lim. ( 2002-10-09 13:28 )
かっこいいですねー 以前から好きな女優さんでしたが、さらに高感度UPです。 / チップ ( 2002-10-08 18:04 )
私はしっかりした女性ということでとても好きな女優さんです。お話を聞いてちょっとイメージ通りでうれしかったです。でで出身地ですが多分鳥取ではなく島根のはずです。 / ウサ子 ( 2002-10-08 11:51 )
そちらにも蛍は居ますか。UPENNにもたくさん居ました。「蛍=きれいな清流」というイメージが強いので、不思議な気分です。 / むらぱぱ ( 2002-10-07 15:41 )
ゴクミとはまた違ったカッコよさがありますね。どちらも共通しているのは芯がしっかりしている。ショムニ復活しないかなぁ。 / おとじろう ( 2002-10-07 09:21 )
タイトル変わってる・・。蛍雪の功、遠くから応援しております。江角マキコさん、ピンとした意思がお顔に出てる方の代表のように思います。後藤さんといい、素晴らしい女性とお仕事なさってますね。 / あやや ( 2002-10-07 09:16 )
昔Oggiという雑誌に載っていた頃はそう興味もなかったのだけど、テレビで何度か見て彼女の顔にそういう強い意思が表れているなと思うようになりました。Hideyさんのお話で確信。まさに凛として美しい人って感じ。ハンサムウーマンと呼んでも良いかな。 / プルー ( 2002-10-07 01:18 )
江角さんは、本当の意味で仕事人なんですね。何事も中途半端より、そこまで徹底できる方の方が好きです♪自分がそう出来ないから余計ですね。。 / りぃな ( 2002-10-06 19:53 )
晩成した人の生き方に関心があります。ジュペリや植草甚一は大ファンです。 / 夢樂堂 ( 2002-10-06 08:01 )
別れをどう消化して歩き出すかが見せどころよ(笑)。←意味なし(^^;;; / 和代 ( 2002-10-06 02:26 )
どんな分野であっても、個人的に共感できるタイプであってもなくても、一線で活躍できる人のオーラって、何か違うんですよね。仕事への姿勢や意志も半端じゃない。ある意味、頂点を極めたいなら、駆け出しの頃無給だろうが何だろうが最大限の努力をするのは当然とも思いますけど。 / たらママ ( 2002-10-05 20:30 )
タイトル変わりましたね。初めてでは?? 江角さんは好きな女優さんのひとりで、「ショムニ」のイメージがガッチリとついてしまってます(笑)。 真っ直ぐなところが彼女の魅力ですよね♪ /私も手塚治虫さんの影響をかなりうけました。「リボンの騎士」とか「ブッダ」とか「ブラックジャック」「火の鳥」とかね。。。Hideyさんのお気に入りはなんですか? / Hiroko ( 2002-10-05 18:14 )
あ、タイトル変わってる・・・。それにしてもHideyさんって、素敵な人とたくさんお仕事されてるんですね。第一線で活躍する人と接する機会があるというのは、たとえ違う分野であっても、刺激になりますよね。これからもたくさんよい出逢いがありますように。 / トモコ ( 2002-10-05 17:06 )
「燃えるゴミ」という彼女の本を手にして、ああこの人は凄いなぁと思ったのを覚えています。まずタイトルからして凄いし。その本を紹介する文章を、当時作ってたコピー雑誌に書いてしまったくらいです。あの本どこへやったかな。……それにしても達筆ですよね。 / みなみ ( 2002-10-04 22:58 )
彼女に対する印象が変わりました。とっても一生懸命な人なんですね。見直しました。 / むらぱぱ ( 2002-10-04 19:15 )
冒頭のセリフ…お約束になってます?(笑) 脚立女は(子どもと1〜2回観たことある)実直というか、媚びない凛々しさを持った人なんですね。それとお礼状ってとても大切ですね。今、あまりそういうものを書かない人が多いので余計に価値があるのだと思います。 / akemi ( 2002-10-04 18:36 )
彼女がバレーボール選手だったというのもあるけれど、違う意味もあって親近感を持っています。 / マッキ〜 ( 2002-10-04 18:23 )
江角マキコさんは、女性の間でも賛否両論な女優さんですよね、、、私は自分自身をキチンと持っていて、足を大地にしっかりとつけた印象が強く、好きな女優さんなのですが、Hideyさんのお話を聞いて、思っていた以上の方だったんだと思いました。マスコミに何を言われようと、これからも美しく輝く女優さんでいて欲しいです。 / azzurri ( 2002-10-04 17:38 )

2002-10-04 江角マキコさんのこと 1

ビデオテープの整理をしていたら僕が関わった電動自転車のCM集が出てきたので懐かしく見てしまった。僕が主体的に関わった初めての作品は1996年制作の第二作だった。その頃は駆け出しの女優さんだったのでおそらく記憶されている方は少ないと思うが、主演したのは江角マキコさんだった。彼女がタレントだとかそんなことは関係なく、これまでの人生で出会った人の中でも僕にもっとも強い印象を与えた人のひとりである。所詮はミーハー代理店営業お得意のセレブ話に過ぎないが、人とシェアしてもちょっといい話だと思うので、僕の見た彼女について書いてみたい。

スポーティーなミニサイクルモデルを綺麗に乗りこなして颯爽と走れる人ということでクリエーティブが提案したのが当時まだ映画「幻の光」でモデルから女優に転向したての江角さんだった。きりりとした目が印象的な写真とプロフィールを手にしたが、僕のリアクションは正直「誰それ?」というもの。当然クライアントもまったく知らなかったが、クリエーティブいわく「彼女は間違いなくブレークしますよ」

1995年のクリスマス前にうちの会社に江角さんを呼んで顔合わせと絵コンテの説明を行った。ひと通り説明を聞いた彼女は、自分の演じる中学校の教師の役柄に関しちょっと納得できないところがある、こう変えたらどうかといきなり逆提案をしてきた。確かに指摘されると少し不自然なところもあるが、その裏には緻密に計算されたマーケティング的な意図があるのだと説明すると、「そういうことなら分かりました」と納得してくれた。事前に彼女に関する資料を読んではいたが、話どおり歯に衣着せず自分の意見をずばずばと言う人だった。

1996年1月末、温かい絵を求めてオーストラリアのパースでのロケに向かった。なぜパースかはご想像にお任せする。我々は撮影の二日前から現地入りしロケ地の確認や現地スタッフとの打ち合わせを済ませ、シドニーでの別のCM撮影の後撮影前夜にパース入りした江角さんと合流した。

近代的な建物と豊かな自然の調和が美しいパースは青空が果てしなく高く、空気が澄んでいた。そんな朝の風景の中でスタッフは着々と撮影準備をする。江角さんも早くからメイクを済ませ日本から同行の男性ヘアメイクさんと雑談していた。撮影準備に思いのほか時間がかかり、江角さんたちもさすがに話が尽きたらしくて手持ち無沙汰にしていた。撮影現場では、責任者であること以外ほとんどまったく仕事がなくなる営業の僕は、ちょっと話相手にでもなろうかなという軽い気持ちで二人と雑談をはじめた。ありきたりの会話のあとに江角さんは、私は最近これこれの社会問題に対しこういった意見を持ってるんだけど、○○さんはどう思う?と僕に鋭く切り込んできた。一瞬面食らったが、そういう話は嫌いではないので僕も僕の意見を述べた。それから丸二日間、撮影の合間を縫って僕たちはそんな話ばかりしていた。

江角さんは医療ミスによって早くに父親を亡くしているので医療問題、とりわけインフォームド・コンセントには深い関心を持っているのだと話した。僕も一ヶ月ほど前に祖父の死に立ち会ったばかりだったので現代医療に関して思うところを語った。そんな話に始まり、日本のテレビ番組のくだらなさ、映画、宗教、恋愛論、果ては漫画論まで飛び出した。実は僕は手塚治虫の漫画を300冊近く持っており、子供の頃は彼が死んだら後を継いで漫画を描こうと思っていたのだと言うと、彼女は「私、手塚治虫さんは神様がこの世に遣わした天使のような気がするのよね」と話し、彼女の思い入れのある作品について語った。

(つづく)

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2002-09-29 AIBOの真実 4

僕自身は彼女の話に感銘を受けながらも少し違うことを考えていた。本音のところソニーはAIBOが売れなくても全然構わなかったのではないか。AIBOが発表された1999年5月のことは僕もはっきりと覚えているが、僕のそのときの印象は「ソニーがまたやった」というものだった。

電動自転車の広告営業を担当したときに僕はソニーの恐ろしさを痛切に感じたことがあった。ある年のサイクルショーでそれまで自転車製品などつくったことのないソニーが突然ブースを出展し、販売未定の参考出品ながら電動自転車を展示していた。ソニーはこの乗り物を「エンターテインメント・ビークル」と称していた。「ソニーがつくれば自転車はこうなる」と、これでもかというくらい思い知らされた。スタイリングを見ているだけで楽しくなるし、装備も隅々まで遊び心に溢れていた。ソニーのブランドが乗り物という新しい形を与えられたに過ぎなかった。初めて見るのにいつものスマートなソニーだった。ソニーはものを売ってすらいないのに他のプレイヤーに大きな脅威を与え、世の中に対してまた確実に鋭いプロフィールを刻んだのだ。

ソニーにとってものづくりはエンターテインメントであり、ソニーがつくる限りその製品は楽しくてユニークでスタイリッシュなものであるべきなのだ。それがソニー神話を支えるブランド力であり、AIBOは仮に売れなかったとしてもソニーのブランド力をもう一段階引き上げることに大きく寄与したのだ。見た目が似ている二つの製品が並んでいたとしても、あのAIBOをつくった「SONY」のロゴが入っているというだけでその製品は違う見え方をするものだ。そう言えばソニーはAIBOのことも「エンターテインメント・ロボット」と定義していた。

いくら今後の自分の仕事のために戦略系の授業から集中的に学ぼうと思っても、消費者の心を揺さぶり行動パターンを変容させるマーケティングの勉強にはどうしても広告人としての血がうずいてしまう。12年間前線でそれなりの知識と経験を積んで自分なりの洞察を得ていたはずなのに、次から次へと新しい視点を与えられ目を開かれることの多いこの素晴らしい教授の授業であればなおさらだ。今後も特筆すべき授業があれば、時間の許す限りこの日記上でレポートしていきたいと思う。

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りぃなさん、熱く語ってくれてありがとう。僕はやはり「大貧民」、正式には「大貧民、大富豪」という名前で呼んでいたと思います。先日中国人の友達夫婦がうちに来たときはルールを教えてあげて一緒に遊びました。 / Hidey ( 2002-10-09 14:33 )
azzurriさん、ありがとうございます。こちらではどの授業に見ても「ソニー」という名前が出ただけで誰もが背筋を正す雰囲気があります。教授も「あのソニーが」というニュアンスの表現が多いです。代理店任せ・・・嬉しいようだけど確かにそれじゃダメなんですよね。代理店も結局苦しむし。 / Hidey ( 2002-10-09 14:31 )
おぉっと、言葉が足りませんでしたね。お察しの通り、トランプの大富豪です。人や地方によっては、大貧民と呼ぶみたいですね。内輪では、大貧民の事をド貧民、もっと略してド貧と呼んでます(笑)他にも身分の差別を付けたり、色々あるんですけど(笑) / りぃな@あぁン、語っちゃったわン。。 ( 2002-10-06 19:48 )
興味深く拝見させていただきました。ソニーに関する本は私もいくつか読んだのですが、その発想力やマーケティング力は、他社を飛び抜けている印象を強く受けていましたが、Hidey様のレポートを読んで、尚更強くそう感じました。宣伝の全てを広告代理店任せにしてしまう企業の行く末は知れている・・・と思う、今日この頃です。 / azzurri ( 2002-10-04 17:31 )
えむさん、はじめまして!古参のライターさんの方にあらためて初つっこみをいただけるというのは何とも嬉しいものですね。僕もみなみちゃんから「えむさんの日記はお奨め!」と伺っていたのですが、ついおうかがいせずにいてしまいました。まさにマーケティングは国境を越えることもあるし越えないこともある。奥の深いものですね。いずれ書こうと思うポケモンなどはアメリカ人も相当に考えてアメリカ文化に馴染ませる部分、日本のテイストをそのまま残す部分を分けたそうです。これからもよろしくお願いします。 / Hidey ( 2002-10-04 16:27 )
ガス欠コインさん、この教授は立て板に水で非常に歯切れよく話す人なので「ふーん、なるほどー、そっかー!」と聞いて納得してしまうのですが、公平に見て割と結果論者でもあります。DVDにしてもソニーは別にDVDを売ろうという意図はなかったと思うし。結果普及しただけのように思いますし、AIBOももともと6本の足で支えていた機械が犬になっただけのようです。でも文中にも書いたとおり、その解釈は今後の戦略として立派に使えるので、やっぱり感激して聞いてしまったりしてます。 / Hidey ( 2002-10-04 16:22 )
パンドラさん、ありがとうございます。どこの企業も心を込めて真面目な製品づくりをするんですけど、悲しいかなそれだけではだめなんですよね。適度な不真面目さと万人の要望を敢えて生かさずばっさり切る潔さが本当に人を引っ張る魅力を生むのだと思います。人が欲するものをつくるのではダメで、人が想像したこともないくらい欲しがるものをつくることが大事かと。 / Hidey ( 2002-10-04 16:18 )
あみすけさん、いらっしゃいませ!あみすけさんならそろそろ簡易版ロボットなどつくってしまわれそうですが。僕は当面本物の動物を飼いたくて仕方がありません。都会生活者にとっては餌やトイレの世話をしなくて便利なペットとのことですが、はっきり言って僕にはよく理解できません。 / Hidey ( 2002-10-04 16:13 )
Risaさん、オーナーさんでいらっしゃいましたか!それにしても当初の目的が「分解」とは。。。はっきり言って一歩手前です(笑)!でもきっと本当に可愛いんでしょうね。ああ、本物の犬が飼いたい。 / Hidey ( 2002-10-04 16:10 )
whitecatさん、いらっしゃいませ。そちらこそ正念場ですね。なにかと必死で闘ってらっしゃる方の日記は無条件に大好きです。こちらも負けずに頑張りたいところですが36歳の脳みそには少々辛い部分もあります(学生の平均年齢は27歳)。これからもお互い励ましあって頑張りましょう。よろしくお願いします。 / Hidey ( 2002-10-04 16:08 )
たらママさん、そうなんですよね。まあそこに我々代理店の存在意義が生じるわけですが。以前社内研修でみんなで真面目に考えましたが、うちの会社のバリューのひとつは遊びの達人であるということでした。一理あると思います。 / Hidey ( 2002-10-04 16:05 )
lim.さん、抵抗が大きいのは分かる気もしますが、学者としては探求しがいのあるテーマでしょうね。人間の心が腐食されるような逆流がなく、人間が一方的に機械に心を与えられれば(良心に限るけど)素晴らしいことですね。 / Hidey ( 2002-10-04 16:03 )
おとじろうさん、マーケティングに関して世界的な権威とされているフィリップ・コトラーによれば「マーケティングとは、交換仮定を通して、ニーズ(必要性)とウォンツ(欲求)を満たすことを意図する人間の活動である」とあります。僕は現実的には製品・サービスを市場に適応させるためのあらゆる活動と理解しています。でもこの教授はマーケティングとはスポーツだ!と言い切っていました。あらゆる知力体力、技を駆使して敵を負かすことだとのこと。 / Hidey ( 2002-10-04 16:01 )
トモコさん、いえいえ、音楽でもきっと同じ現象はあるのではないかと思います。クラシックは分かりませんがポップス・ロックはまさにそうですね。特に日本は。今やマーケティングしかないのではないでしょうか。音楽性ではなくてキャラクター性をどう料理してどこにどれだけお金をかけて売り出すか、戦略をとるかということだけですね。僕はどうせリリースされてから2〜3年くらいしてしかCDを買わないような人なので余り影響を受けなくて済んでいますが。 / Hidey ( 2002-10-04 15:56 )
口車大王2号さん、おっしゃるとおりです。僕の知っている事例は富士ではなくて本家ゼロックスの方ですが、DTPの最先端のような機能を利用して素人でも簡単に本が作れるような機械を作っておきながら、結局どうにもマーケティングできずに終わってしまったというケースが昨年ありました。ゼロックス及び富士ゼロックス自体は経営や企業倫理はしっかりしている会社ですけどね。 / Hidey ( 2002-10-04 15:53 )
和代さん、消費者マーケティングは別に難しく考えることないのでするするっと読んでいただいて面白かったらいいのだとおもいます。面白くないということなら製品ないしマーケティングに魅力がないのでしょう。マーケティングの話は日記としても面白くしやすいので今後もいくつか書いていきたいと思います。 / Hidey ( 2002-10-04 15:50 )
KATSUMIさん、まさに、マーケ魂がそのまま生きたエンジニアリングがソニーの醍醐味ですね。今の日本の企業は多少の無理をしてでも(それこそ上の圧力をもってしてでも)マーケティング主導の企業にしないとバランス的にやばいですね。アメリカではその逆も結構あるようですが。 / Hidey ( 2002-10-04 15:48 )
りぃなさん、ソニーの場合、エンジニアも皆マーケターの感覚を持っているのが強いのだと思います。普通の企業は縦割りになってしまってエンジニアはかたーい人たちが多いのですが。最後の方、ちょっとよく理解できませんでした。トランプの大富豪をトライするということなら結構得意だよ。 / Hidey ( 2002-10-04 15:45 )
はじめまして。私は元営業でしたので、マーケティングの重要さを常々感じていました。購買層の年令、土地(国)柄などちょっとでも違えば、同じ商品でも売れ方に全く違いが表れますし、(製品)デザインもそれらの事情によって大きく変わってくるのですよね。・・ちなみに電動自転車、同期がよく社内で試乗してましたよ(ちょっと関連したカンパニーにいたので・・) / えむ ( 2002-10-04 09:37 )
話し変わって、マーケティングについてですが、プレイステーションにDVDプレイヤーを隠したことについては、Hideyさんのこの日記によって再認識させられ、愕然とさせられました。僕も広告人の一人として、ひとつの媒体を使った制作物に、どんどん付加価値をつけることを迫られています。そう考える時、まだまだ自分はコピー職人の域を出ていないなと痛感させられるのです。本当に面白い日記でした。ありがとう。 / ガス欠コイン ( 2002-10-03 12:40 )
初めて、知人の事務所でAIBOを目にした時、まさに僕は“ペット”をイメージしていました。多分、ビジュアルやその仕草に愛らしさを感じたのだからと思います。逆に本物のペットは、もはや愛玩動物ではなく、人間のパートナーとして捉えられてきているのが現状だと思います。アメリカ人の合理的な考え方(AIBOに求めるもの)にも納得するところはあります。(続く) / ガス欠コイン ( 2002-10-03 12:33 )
「エンターテインメント」! 楽しいって何するにもすんごく大切ですもんね。 教授のお話もさることながら、Hideyさまの視点に共感しました。 うまく言えないけれど、ココロがくっついてこないモノはやっぱりアカン、と思うのです。 / パンドラ ( 2002-10-02 21:14 )
はじめまして! 興味深く読ませていただきました(AIBO話)。僕の考えるロボットに期待するところは、生活を支援する技術として浸透すれば、と思ってます。AIBOに関しては、一消費者として購入意欲を掻き立てる商品ですね! うちは猫を飼ってますが、動物の代わりにとしての機能を果たすかはわかりませんね^^;。 / あみすけ ( 2002-10-02 06:37 )
初代アイボの所有者として興味深く読ませていただきました。愛着がわいてしまい当初の目的の「分解」ができなかったことを考えると私は真の「ハイテクおたく」ではないようです(笑) / Risa ( 2002-10-02 03:50 )
熱心に勉強されてるのですね。下の日記も読ませてもらいましたけど、頑張ってる姿が日記から伝わってきます。 私も、Hideyさんとはレベルが違いますけど、現在、情報処理試験に向けて奮闘してるところです。(実際には、それほど奮闘してなかったり…?笑) 目標を持ち、それに向かって頑張ってる人に出会うと凄く励まされます。学校のほう、いろいろと大変だと思うけど頑張って下さい。 / whitecat ( 2002-10-01 00:24 )
せっせとマジメに働いていれば済むってわけじゃないんですよね。いかに顧客のニーズをつかんで何を提供できるか、どう売り込むか、すべての条件が揃わないと競争に勝ち残れません。 / たらママ ( 2002-09-30 22:53 )
次は「ロボット」と言う考えは、私のいる工学研究科にもある風潮のようです。少しだけですが、私はコンピュータにいわゆる「心」を持たせ、人間の「言語」を話させるプログラムに参加しているので、やはり時代がそれを求めているのだ、ということを実感しています。「心」を持つロボットの存在は、人間の心のデジタル化と表裏一体。哲学科ではなかなか抵抗も大きいようです。 / lim. ( 2002-09-30 13:19 )
なるほど。マーケティングの概念って幅が広すぎてが今ひとつつかめないものがあたのですが、なんとなくわかってきました。マーケティング術と言われるようにあれは技ですね。←ちっとも解ってない? / おとじろう ( 2002-09-30 10:09 )
音楽的・技術的に素晴らしい音楽家はもっと他にもいるのに、そういう人達を差し置いて売れちゃってる音楽家っていうのは、やっぱりマーケティングに成功してるからなんだろうか(ちょっと違)・・・なんて考えちゃいました。何でも自分のことに置き換えてしまう私・・・。 / トモコ ( 2002-09-29 20:22 )
逆に、「良いもの」を作っても、マーケティングで失敗するとビジネス敵には全く売れなかったりするのは、結構あることですね。その、最大の失敗例はゼロックスに求めることができます。もっとつきつめれば富士ゼロックスと言えば良いでしょうか。現在我々が使っているMacintoshやWindowsの原形のシステムを、しかも極めて完成度の高いものを作りながら、結局撤退せざるを得ませんでした。突き詰めれば、ブランドイメージを大切にしなかったからです。 / 口車大王2号 ( 2002-09-29 18:42 )
お礼に伺いました(笑)。ワタシもするするっと読ませて頂きましたが、全く理解できていないかと(^^; マーケティングの話は夫もしますがオツムがついていけません。 / 和代@ゴミつっこみでごめんね ( 2002-09-29 18:27 )
欠陥技術をマーケティングによって売りぬくという教授の意見には賛同します。ただそのためにはマーケティングに即した味付けが本当に大事です。それがうまいのがSONYなんでしょうね。メーカーの宣伝部の悲哀がそこにある気がします。 / KATSUMI@活動再開 ( 2002-09-29 17:38 )
なるほど♪するするっと読んでしまい、感想が出てこないのですが(苦笑)ソニーはマーケティングと技術やデザインの部門が、一体化しているような印象をうけました。ソニーのマーケティングの方々は、さぞかし頭が切れるんでしょうね。。手持ちのカード(=製品)を、うまく使ってます。彼らに大富豪させたら、面白いかも。Hideyさん、機会があれば、是非トライして下さいv / りぃな@こらこら ( 2002-09-29 16:49 )

2002-09-29 AIBOの真実 3

ここに第四のオプションの必然性が生じる。第一世代の技術は失敗に終わるかもしれないが、マーケティングによって製品を失敗から救う術がある。それはその製品を他の種類の製品に見せかけることによってその製品の新しい価値を創造するという手法である。

人々のロボットに対する期待値はSFで描かれている通り非常に精巧で高い知能を有しているというものである。しかもアメリカではロボットは人間に少なからず怖れを抱かせるものとして認識されている。そんなロボットが技術の未熟により指令どおりに動かなかったりつまづいて壊れたりしてしまったらそれは高価で手の込んだ単なる物笑いの種に過ぎない。

命令通りに動かない気まぐれや馬鹿さ加減が許され、しかも人間に怖れを抱かせないためにはどのような見せかけをつくればよいか。ペットである。ペットなら人間の言うことを素直に聞かなくてもそれが可愛さとして許容され、メカに弱い老人にすら親しみを抱かせる。メーカーにとってもっとも恐るべき批判的なメディアをも煙にまいて味方につけることさえできる。そしてペットであればこそ、指令どおりに新聞を持ってくるほど技術が発達した場合、持ち主は単純にその機能的なメリットを喜ぶのではなく、飼い主としての誇りからロボット犬との間に深い愛情を通わせ得るのだ。

そしてペットという見せかけを利用してでもソニーが他社に先駆けてAIBOを世に送り出す先行者利益が存在する。それは初物に対する反響という形で市場からの膨大なフィードバックを得ることであり、またその製品分野における製品価値の定義や基準を任意に設定できることである。

このように技術が不十分な製品を他の分野の製品に見せかけることによって販売に成功した例は他にもいくらでもある。アメリカにおけるDVDの普及率は目を見張るものがあるが、1996年に市場に導入されたDVDプレイヤーは最初の3年間累計販売台数が100万台に留まっていた。しかし他ならぬソニーは1999年、たった4ヶ月で300万台のDVDプレイヤーを売りさばいた。ソニーは他の製品にDVDプレイヤーを隠すことによってこれを成し遂げたのだ。プレイステーションである。これを機にゲームに限らず数多くの種類のDVDソフトが発売され、それは一般のDVDプレイヤーの販売を促した。このようにある製品を他の分野の製品に隠してマーケティングすることを「ステルス・マーケティング」と教授は称した。

教授の結論は、マーケティングは欠陥技術をも売り抜く技であり、製品が売れないのは技術のせいではなくマーケターのイマジネーションが足りないからであるということだった。ソニーが教授の言うことのどこまでを本当に意図していたかは知る限りではない。しかし結果論に過ぎなかったとしても彼女の洞察は非常に的を射ており、違った企業が同じような状況に陥った際にその企業を救う貴重な処方箋であることは間違いない。

(つづく)

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2002-09-29 AIBOの真実 2

簡単にケース上の説明を書く。日本では一般消費者が生活上の大切なパートナーとしてAIBOを捉えはじめたのに対してアメリカの一般消費者は、「で、AIBOってのは何をしてくれるんだい?」というように、ロボットとしての機能性ばかりを求め、その結果25万円を払ったのに何の家事もこなさないこの犬型ロボットを購入することを拒んだのだという。ケースは日本の漫画文化まで取り上げてこの日米の価値観の相違の根源をさらに深く掘り下げている。日本では「鉄腕アトム」や「ドラえもん」の影響により、ロボットは人間の親しい友人であるという概念が子供の頃から定着しているのに対し、アメリカでは漫画でも映画でもロボットは人間の敵として登場することが多いという。ターミネーターなどを指しているのだろう。

ケースは、ソニーは今後アメリカでAIBOをどう売るべきかを問うていた。授業の終わりの方で何人かのアメリカ人学生がソニーは人間の形をして新聞を取ってきてくれたり掃除をしてくれたりするようなロボットを開発すべきだと発言した。ケース上でも紹介されていたが、ホンダの人間型ロボット、アシモには彼らもより納得していたようだった。彼らは教授の術中にはまっていた。ここから彼女の芸術的な解説が始まる。

コンピューター関連のアナリストの誰もが、パソコンの次に訪れるべきブレークスルーはロボット技術であると主張している。それも学生たちの言うとおり、表計算などといったメンタルな便益を提供するだけではなく、より物理的に人の役に立つロボットが求められているのだ。各メーカーも同じ見解に基づいて日夜技術革新に取り組んでいる。しかしアナリストにしてもメーカーにしても誰もが現在の技術はブレークスルーと呼べるレベルにまで達していないことを知っている。アップルが「ニュートン」によってPDA市場の扉を開こうとしたが、あまりにお粗末な技術によって失態を演じたことは世界中の人の知るところである。アップルは2002年の今なおその傷を引きずっている。新技術で新しいプラットフォームを築こうとするとき、メーカーには英雄になるか、単なる笑いものになるかという究極的な選択肢しかないのだ。

こうした状況においてロボット技術を開発するソニーには三つのオプションがある。一つ目は何もしないことである。しかし何もしないなどという選択肢はソニーのDNAには存在しない。二つ目は企業として最大級の人的及び金銭的投資を行い長期的に「完全な」ロボットの完成に取り組むことだ。しかしこれはソニーと言えども株主に対し責任を負う企業である限り、現実的にリターンが見込めるか、またいつそれが見込めるかも分からない製品に対し、社のリソースを際限なく注ぎ込むというのは組織として許されないことである。三つ目のオプションは、現状において実現可能な技術を搭載した第一世代のモデルをとりあえず世に送り出すことである。しかしソニーほどの企業にとってこれは大変に危険な賭けなのだ。なぜならソニーには失敗は許されないからだ。製品を発表したはいいが誰も見向きもしない、または購入したものの誰もが失望する、というのはこれまでソニーが築き上げた眩しいほどのブランドを一瞬にして破壊することに繋がるのだ。

(つづく)

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2002-09-29 AIBOの真実 1

BSSE(Building a Sustainably Successful Enterprise)の授業が面白いと書いたが、二年生秋学期の本命は実はConsumer Marketing(消費者マーケティング)だ。昨年何度か書いた韓国出身の女性教授の質の高い授業に惚れ込み、彼女がはじめて二年生で専門科目を教えるということで第一希望教科として登録した授業なのだ。

最初の授業で彼女は、「一年生の必修科目のマーケティングでは教科書的な概念に即したケースの取り上げ方、教え方に徹したが、二年生のこの授業では教科書的なフレームでは捉えきれない、より現実的なマーケティングを徹底的に掘り下げる。よくも悪くも私の主観的な考察や信念を散りばめて教えていくことになるが、それを受け入れるか否かはあなた方の自由だ。いずれにしても私はマーケティングに関して私が知るすべてをあなた方とシェアしたい」と話した。すでに7つのケースをこなしてきたが、彼女の溺愛する子供に関する笑い話から始まり、80人の学生たちとの掛け合い漫才がいつしか真剣な議論に変わり、最後には彼女の十八番である芸術的な解説と洞察で授業を決めるという独特のスタイルは健在である。

どの授業もここでご紹介したいところだが、今日は取りあえず彼女が自ら執筆したソニーのAIBOのケースについて書く。

AIBO。言わずと知れたソニーの最先端のAI技術を搭載した初期定価25万円のロボット犬だ。1999年6月にインターネットで申し込みの受付を開始した際、この破格の値段にも関わらず3000体のAIBOが20分で完売したのは周知の事実である。実は時を同じくしてアメリカでも2000体のAIBOを売り出したのだが、怒涛の申し込みによりサーバーがクラッシュしたという。

ソニーは消費者の悲鳴にも似た追加販売の要求に応え、同じ年の11月に1万体のAIBOを日米共通で追加販売。数日の間に13万5000もの申し込みが殺到した。翌2月の3万体の最追加販売もあっという間に売り切れたという。

これ以上ない市場導入であったが、ソニーには懸念材料があった。11月の追加販売での13万5000の申し込みはその98%が日本からのものであり、翌2月に発売された3万体のAIBOもその90%が国内への出荷であった。そして購入者のプロフィールを調べたところ、日米の購入者特性の違いにソニーは愕然とした。6月の初期販売においてこそ日米とも新しい物好き、メカ好きが集中したのだが、その後日本では極めて一般的な中年男性や主婦、OLなどによる購入が顕著に増えたのに対し、アメリカの購入者は相変わらずハイテクおたくのような連中ばかりだった。

(つづく)

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おとじろうさん、実はケースをそのまま訳したわけではないのですが、あとからケースを見てみると"a bunch of techies"と書いてありました。まあそのまんまですね。 / Hidey ( 2002-10-04 15:42 )
りさ子さん、それは知りませんでした。となるとりさ子さん必携アイテムですね!今度の小熊のようなAIBOはちょっといただけないけど。 / Hidey ( 2002-10-04 15:31 )
りぃなさん、なぜツボをつかれる(笑)!?いずれにしても寝不足はよくないよ。寝たほうがいいね。 / Hidey@全然人のこと言えない ( 2002-10-04 15:30 )
教授がどのような文章を書いたのかはわかりませんが、「ハイテクおたくのような連中ばかり」はいい訳ですね。 / おとじろう ( 2002-09-30 09:46 )
初代アイボはスヌーピーがモデルなんですってネ / りさ子 ( 2002-09-29 21:26 )
明け方に読み直して、ハイテクおたくのような連中ばかり、に、なんだかツボをつかれてしまいました。寝た方がいいですね。 / りぃな@徹夜禁止令 ( 2002-09-29 20:10 )

2002-09-27 イノベーターの条件 2

日本にも典型的なイノベーターが存在した。織田信長その人である。

自ら考案した三段構えの鉄砲隊により無敵の武田騎馬軍団を殲滅した長篠の合戦はあまりにも有名だ。弾の充填に10秒以上かかり有効射程距離も100メートルほどという火縄銃はそれまで戦場においてはせいぜい威嚇程度の役にしか立たなかった。それを馬防柵によって騎馬隊を足止めすることで安全かつ有効な距離を保ち、鉄砲隊を三段構えにすることで一段目が撃ち終わればすぐに二段目、三段目が続けて撃ち、その間に一段目が充填を完了するという斬新な戦術によって、信長は鉄砲の価値を極大化したのだ。これは当時世界的にも前例のない革命的な戦術だった。スコットによる砲術の革新に極めて酷似している。

実は僕が古今東西もっとも尊敬する人物は織田信長である。うちの学校を受験する際に提出した五つの小論文のひとつの設問が「あなたが尊敬するヒーロー、リーダー、手本とすべき人物は誰か。その人物はあなたの成長にどのような影響を与えたか」というようなものだったのだが、僕は迷わず織田信長について書いた。

好むと好まざるとに関わらず異国の文化を事実として受け止め、西洋からもたらされた地球儀を見ては地球が丸いのだと納得した最初の日本人。俗悪で権威主義的な当時の仏教を弾圧し比叡山を焼き払った神仏をも恐れぬ男。戦の勝敗は七割方その準備において決するのだと嘯き、近代的情報戦の基礎をつくった。家臣たちを敢えて挑発し殊勲を競わせつつ知の共有を促し全軍のコンピタンスを高めた。楽市楽座の導入により政治と経済をより緊密にしたのも彼だった。そして冷徹なほどに感情を排除し真理を求めつづけた男。

先述のイノベーターの条件は信長にそのまま当てはまる。彼は戦に明け暮れた当時の日本を平定することにより政治経済的に稼働率が高く無駄のない国家の建設を目論む、変革の精神の持ち主だった。そんな頃種子島に最初の鉄砲が伝来し、先見の明をもってこれを熱心に買い漁ったのは信長だけだった。信長は鉄砲という新しい技術に酔いしれることなく、これをいかに用いるかに英知を集中させた。そして信長の天下統一の最大の敵は朝廷や仏門という旧態依然とした「体制」だった。

不況にあえぐ現代の日本を顧みると否応なしに信長が出現する直前の室町末期が重なって見える。高度成長期の原動力となったものの今や足かせに過ぎない硬直化した企業構造。変革の重要性を認識しつつも波風を立てず任期を全うすることしか考えない経営者。そして揺らぎつつある大企業の傘や幻想と化した終身雇用制度にいつまでもしがみつく甘えた社員たち。時代は本物の英雄を求めている。

持続的成長(sustainable growth)という言葉が合言葉のように使われているが、そのためには大鉈を振るうイノベーターの存在が極めて重要であることを痛感させられる授業だった。古きを温ね新しきを知る姿勢はまだまだ必要なのだ。

先頭 表紙

トモコさん、あらためてありがとうございます。僕こそトモコさんの日記はこれからもずっと楽しみにしています。ところで弟さんの具合はいかがですか?ちょっと心配しています。 / Hidey ( 2002-10-04 15:29 )
りぃなさん、まさに今は応用編を楽しんでいます。今のところ順調にやっていますが、これから一年生の頃にはなかったペーパー(いわゆる研究論文)が三つもあるからなー。まあ、頑張りましょう。 / Hidey ( 2002-10-04 15:27 )
りぃなさん、遣隋使は言い得てますね。僕もその意識は日増しに強くなっています。国のためと言うよりは社のためですが、こちらでかつての日本企業の強大さをまざまざと知るにつれ、うちの会社もそんな風になれたらと考えてしまいます。 / Hidey ( 2002-10-04 15:26 )
スーパーしえろさん、「ひょっこりひょうたん島」は子供の頃のかすかな記憶にありますが、ドンガバチョはよく知りません。今度調べてみます。 / Hidey ( 2002-10-04 15:23 )
七面倒くさいなんてとんでもない!無駄なモノが少しもなくて、興味深いお話ばかりでした。時には何故かうるうるしちゃったりして・・・。うー、私も頑張ろうっと。 / トモコ ( 2002-09-29 20:29 )
一つ前の話題になるんですが・・・。基礎が終わって、それからの応用やら、発展のクラスが楽しいんですよね。わくわくしてはりますか?苦しい波も、多く寄せてくるかもしれませんが、お互い楽しんで、波に乗るように学んでいきたいですね♪ / りぃな ( 2002-09-29 16:42 )
こちらに出発する前、ある方から「君は昔で言う、遣随使のアメリカ版だよ。しっかり勉強して、吸収した知識を、国の為に役立てるんだよ」という言葉を戴きました。留学生も、きっとイノベーターになる要素があるはず。あちこちで眠っているイノベーターの卵が、早く目覚めますように☆ / りぃな ( 2002-09-29 16:39 )
ひょっこりひょうたん島(NHKテレビで昔やってた)に出てくるドンガバチョという自称政治家の自称フルネームです。ごめんね、ふと、思い出してしまっただけで・・・ / スーパーしえろ ( 2002-09-29 16:13 )
トモコさん、こーんな七面倒くさい日記を最初から全部読んでくれたなんて、正直恥ずかしいとともに畏れ多いです。その反面それなりにベストを尽くして文章を書いている者としてはこんなに嬉しくて光栄なお言葉はありません。でも真面目な話、僕こそトモコさんの飾らない真摯な文章に心酔しています。お互い似たような立場で努力するもの同士励ましあえればいいですね。今後ともよろしくお願いします。 / Hidey ( 2002-09-29 15:56 )
スーパーしえろさん、ドンガバチョゴム長?なにそれ? / Hidey ( 2002-09-29 15:51 )
スーパーしえろさん、鋭い!それはありますよね。誰をも必要としない才能とカリスマを持ち合わせているが故に周囲の人間は居場所を見出せず、それが組織としての脆さを生むことは大いにありえると思います。部下としても上司を補う居場所があればこそ有効に機能するもの。でも僕としてはあの絶対的な強さに憧れてしまうのです。 / Hidey ( 2002-09-29 15:51 )
たらママさん、おっしゃる通りですね。言わば現代は群雄割拠の戦国時代なので、この逆境にもまれながら本物の経営者があちらこちらで誕生しているのだと思います。未曾有の不況が逆に長期的な日本の活力を生み出すことを切に願うとともに自分も主体的に努力しなくてはと戒めている次第です。 / Hidey ( 2002-09-29 15:48 )
ガス欠コインさん、よくも悪くも日本には徳川家康タイプが多いですね。意図的に彼を敬愛してそのようにある人が多いのでしょうか?360年間の安定した世を築いたと言ってもそれは鎖国という異常な管理方法による(これは家光ですが)ものだったのに。後の世の大きな足かせを作ったということでは徳川幕府は戦後日本と非常に似ている感じがします。信長よ、再び! / Hidey ( 2002-09-29 15:45 )
akemiさん、ほんとに今の世にあって斬新さを感じさせるキャラクターですよね。それだけ今いないキャラなんですね。超現代的なキャラなのに。 / Hidey ( 2002-09-29 15:40 )
Hideyさんの過去日記、たった今ようやく全部読み終えました。私の知識欲をくすぐる文章ばかりで、ただただ感動。怠け心が顔を出したら、また最初から読み直させてくださいね。これからも楽しみにしてます! / トモコ@本文と関係なくてごめんなさい! ( 2002-09-29 07:41 )
すみません、すごく馬鹿なつっこみをしてもいいですか。摂政関白太政大臣藤原のドンガバチョゴム長。を思い出しました。(赤面) / スーパーしえろ ( 2002-09-28 22:25 )
織田信長のカリスマ性に興味あり。先見の明と柔軟な頭脳にカリスマ性がプラスされると、最強のようで、もろい気がする。リーダーって少人数のチームであることが必要なのではないかしら。 / スーパーしえろ ( 2002-09-28 19:15 )
個別でみると、独自の戦略で不況期でも成功している企業はありますね。既成の枠内での発想しかできないと成長が止まるんでしょうね。 / たらママ ( 2002-09-27 23:07 )
織田信長、僕も好きでした。先見の明と柔軟な頭脳。残念ながら、今の日本には両方とも欠けていることが多いように思われます。 / ガス欠コイン ( 2002-09-27 16:16 )
単純に「斬新で潔くてかっこいい!」と思っていました。>織田信長 / akemi ( 2002-09-27 15:50 )

2002-09-27 イノベーターの条件 1

「Building a Sustainably Successful Enterprise(持続的成功企業の構築)」という授業が面白い。この授業では企業が持続的な成功を収めるために必要な組織のあり方、競争力の高い製品・サービスを生むための戦略とそれに応じたリソース配分、新機軸製品が既存製品を駆逐する条件とパターンなどを学ぶ。この授業で一番初めに学んだのがインベンターとイノベーターの違いは何かということだった。

非常にクラシックな事例として多くのビジネススクールで採用されている「Gunfire at Sea(海上砲火)」というケースを取り上げた。19世紀末のイギリス海軍の話。当時の戦艦に搭載された銃砲の精度は極めて低いものであった。砲撃手はまず標準的な射程距離にあわせて小さなハンドルで銃砲の上下角を調整する。そして谷照門(銃砲に取りつけられている、谷型に窪んだ照準器)を通して敵を睨み、艦を揺らす波の加減によってぴたりと照準があうタイミングをうまく計って発射する。銃砲には望遠機能のついた照準器も取りつけられていたが、発射の反動によって前後に動く銃身部分に固定されていたため照準器が目に食い込んでしまい、現実的には誰もこれを使用しなかった。発射までに時間がかかる上に、艦の揺れを予測、脳が発射の指令を出す瞬間から実際に手が発射ボタンを押す瞬間までのタイムラグを計算して撃つなど、ほとんど職人芸というべき作業だった。しかし職人的な砲撃手をもってしても、25分にわたる砲撃テストにおいて1600ヤード離れた標的にたった2発しか命中しないほどの頼りない武器に過ぎなかった。

ある日イギリス海軍のスコット提督は砲撃テストにおいて一人の砲撃手が他の者に比べ著しく高い確率で的を捉える様を驚いて眺めた。見るとその砲撃手は無意識に銃砲を上下させて波による艦の揺れを中和し、不完全ながらある程度の成果を得ていた。スコットは「一人の男が無意識に部分的ながら成功を収められるのなら、意識的にこれを行う努力をすれば誰もがより完全な成功を収めることができるだろう」と考えた。そして彼は銃砲を上下させる装置のギア比を変えることでよりスムーズに銃砲を動かせるようにし、照準器を銃身でなく発射の反動が影響しない銃筒の部分に取り付けた。そしてクランクで上下に動かせる小さな標的を銃口の先の部分に取り付けて、簡単に波の動きをシミュレーションする仕組みを開発した。これによってスコットの艦隊の砲撃の精度は驚くほどに高まり、あるテストにおいては1分間に15回1600ヤード先の標的を射抜いたほどであった。「連続照準発射法」の誕生である。

技術的な才能により銃砲を創り出した者がインベンター(発明者)だとすれば、それを戦術的に活用し効果を高めたのがイノベーター(革新者)であるスコットであった。銃砲やそれを上下させる装置や照準器自体は何も新しくない、数十年も前から存在していたものだった。しかしそれらが真価を発揮するにはスコットの出現を待たなくてはならなかったのだ。ケースによればイノベーター出現の典型的な条件は以下の通りである。

1. 革新的な発想は往々にして偶然の力に左右されつつも、変革に必要な諸条件が整っている環境と変革の可能性を認識する用意のある柔軟な頭脳に訪れる。

2. 革新に必要な素材(銃砲、照準器等)はその設計にのみ興味を持つ者によって用意されるが、革新をもたらす者は素材自体に興味はなく、それによって何を成すかにこそ興味を持つ。

3. イノベーターは往々にして反体制的な思想の持ち主である(スコットは権威主義的で硬直化したイギリス海軍に常々憤りを感じていた)。

(つづく)

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