15歳になったばかりの初夏に、わたしは心身共に壊れかけて日本に帰った。
籍を置いていた中学校に戻る手続きをしたあとも、何をするでもなくふらふらしていたわたしを心配して、わたしを育ててくれた人が引き合わせてくれたのが彼だった。
ちょうどひと回り年上の彼はまだ大学に残っていたため時間もあって、ひと夏をほとんど一緒に過ごした。
そして、わたしたちは、秋には一卵生の双児のようになっていた。
弱いところがよく似た双児。
そのあと一年半くらい恋人のように一緒にいろいろなことをして、あとは心中くらいしかなくなったので、それぞれ自立しましょう、ということになった。
彼は2歳年下の素敵な恋人を見つけ、わたしは初めて同じ年の女の子の友達を作った。
彼はわたしの友人を娘婿のように歓待したし、わたしは彼の恋人に可愛がってもらい、それは本当に完璧だった。
完璧すぎたせいかもしれない。
わたしが19歳の2月の終わりに彼は自殺した。
お葬式は、彼の弟のパトロネスが取り仕切ってくれ(彼ら兄弟は早くに両親を亡くしていた)、彼の一家に馴染みの深い教会で行われた。
彼の恋人は最高に優雅な黒い喪服を着て「喪服を着た女の美しさ」を教えてくれ、わたしは喪服を持っていなかったので、濃い紫のワンピースと白い下着を身につけた。
無感動に、泣くこともなくただ吐き気を堪えながら立っているわたしの、ワンピースの腰のところを握りしめた彼の恋人の白い指。
彼が死んだことより、そっちの印象の方が強く残っている。
小説も音楽も映画も。
数学も物理も世界史も。
お酒も煙草もセックスも。
すべて彼が教えてくれた。
今、ここにいるわたしは、きっと、彼の生きた残り滓のようなもの。
それは鬱陶しいほどに優しい夢想。 |