さて、出かけるか、と思った瞬間、どこからともなく出て来るのが、日本の実家にいる猫。
どこいっちゃうの?
なんて、まるで青天の霹靂、というよな、きょとんとした瞳で見上げてくる。
ふだんはどこかで眠り猫をしているというのに、その瞬間を必ず嗅ぎ付けるのは、本当にすごい。
思わず、ささ身を一掴みあげ、身体中をぐしぐししてしまう。
そして、出かけないよ、ずっとそばにいるよ、と。
Ile de Franceのある村に、小さな礼拝堂がある。
一面の壁にはJean Cocteauが描いた花が咲いた薬草、祭壇のキリスト、石の床の中心は彼の墓碑になっており、そこにはステンドグラスが映る。
聴こえるのは彼が愛した俳優の声。
その壁の一つの隅に、一匹の猫がいる。
見上げる様子が、まるで実家においてきた猫の様ですごく好きだと思っていたのだけど、実際に見たら、たまらない気持ちになった。
神聖で、自分がとても小さくなったような。
心細く、けれど、包まれているような。
涙まで滲んできて。
この猫は、神様に見守られたわたし達全てなのだ。
そんな気がする。
dans la Chapelle Saint-Blaise des Simples,
Il a laisse un message pour tout,"Je reste avec vous". |