またいつものように月曜の朝が始まりました。今日も私はいい笑顔で「いってらっしゃい」を「いってきます」を言い合えたでしょうか?
小さな頃に読んだ漫画「私を月まで連れてって!」の中の『金魚鉢の恋』というストーリーの中にこんなセリフがあったんです。「私ね あれから気がついたのよ 毎朝主人を送るとき ああ もうこれで会えないかもしれないって・・・覚悟してるってこと。だから帰ってきたらあんなに嬉しいんだってこと。わかったのよ ウフフ」。何故かドッキーンとして子供ながらに「朝、家族と喧嘩をするのはやめよう。」「必ず玄関まで見送って極上の笑顔で『行ってらっしゃい』を言おうと決めたんです。
そして、その気持ちが一層強くなったのは最近のことです。
彼女は私が働いていた隣のセクションに新入社員として入ってきました。いかにも育ちの良さそうなお嬢さん然とした子でした。それでいて意思の強さを時折見せる目を持っていて。私は彼女の指導員といつもお昼を食べていたので、彼女と一緒になることもしばしばありました。そして、1年半。私はアメリカに行くために退職をしました。
彼とはそのアメリカで親しくなりました。近所に住んでいたので、彼の送別会はウチで催したりもしました。
そして、彼から遅れること1年後に私たちも帰国。
銀座の横断歩道で偶然お母様と一緒に歩いていた彼女に出会いました。走ってきて、私の両手をとり「結婚するんです!」と嬉しそうに言って。
何ヵ月後かにハガキが一枚来ました。私の住所を知っているはずがないのに。裏返して写真を良く見ると、相手はあのアメリカで一緒だった彼!あとから聞いた話だと、彼女は彼が大好きで、アメリカにまで追いかけてきてやっと射止めたんだとのこと。
そして2年前。うちのツレはNYに転勤希望を出しました。それは残念ながら叶わず、前後するように彼がNYへと旅立っていきました。
それ以来2人の事はすっかり忘れていました。あの日までは。
TVのテロップに「行方不明者」として彼の名前が流れるまでは。
同じ時、同じ貿易センタービルで働いていた別の先輩は避難しているときに「職場に戻ってください」のアナウンスを聞いても戻らなかった。そして、そのまま地下鉄に乗って無事に家に帰りついたとすぐにメールをくれました。
でも、彼は戻ってしまった?
確か、まだ小さな子供が2人の間にはいたはずです。
今年に入ってからやっと新聞に彼の死亡が確認されたとの記事が載っていました。
私の家族がもし、希望が叶ってNYにいたのなら、彼のように戻ってしまっていたことでしょう。
人の運命は紙一重です。
別に悪い事を考えて悪い未来を引きよせるつもりはありません。
ただ、後悔したくないので、朝だけは笑顔で送り出そう。
そう、改めて心に誓った事は確かです。 |